司馬遼太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
よく聞くPodcastの影響で、仏教の考えに少し興味が湧いてきたところ、前々から「空海はすごい」といった話を漠然と聞いていたので、じゃあ司馬遼太郎の作品を読んでみよう、と。
個人的に、勝手に、司馬遼太郎の作品には二つの傾向があると感じていまして、ひとつは「竜馬がゆく」や「燃えよ剣」のようなドラマ性の強い作品。ふたつは作品に司馬遼太郎ご本人が登場し、時代背景の説明や取材風景まで説明してくれる作品。もちろん、ふたつの傾向がどちらも現れる作品もありますが、本作はこのふたつめの傾向がガッツリ出てる作品です。
というのも、司馬遼太郎があとがきで言及していますが、「何分にも遠い過去の人であり、あたりまえのことだが、私はかれを見たことがない。その人物を見たこともないはるかな後世の人物が、あたかも見たようにして書くなどはできそうにもないし、結局は、空海が生存した時代の事情、その身辺、その思想などといったものに外光を当ててその起伏を浮かびあがらせ、筆者自身のための風景にしてゆくにつれてあるいは空海という実体に偶会できはしないかと期待した」とのことで、「空海の風景」という表題自体に意味が込められていた模様。司馬遼太郎という、数多くの歴史上の人物を手掛けてきた著名な歴史小説家が空海に対してはこのような態度をとるというところに、なんというか空海の容易には触れがたい神聖な何かを感じさせるところです。
本書の後半は空海と最澄との関係が厚く描かれています。平安初期に現れた二人の仏教僧。その性質は大きくかけ離れているように紹介されています。どちらにも魅力があり、その対比が結構おもしろかったりします。読む前は漠然と生真面目な超優等生キャラという印象を空海に抱いていたのですが、その印象とは相当かけ離れているようで(もちろん超優等生なんですが)、後半、最澄に対して辛辣に当たっていく姿に「高潔なお坊さんだと思っていたのに攻撃的だなぁ」とか「最澄も空海も自身の事業にものすごい情念を注いでいるなぁ」とか、我々庶民にもなんだか通じそうなところがあって、少しばかり身近に感じられてよかったです。
以下、個人的に気になった行を備忘がてら。
「池の多いことは讃岐へ来るたれものおどろきのひとつであるにちがいない。古代国家は国家や社会の基礎が水稲で成立していた。農耕が昇華して宗教になったり、ときには強烈な正義になったりした。正義といえば非農耕民を農耕化させて田畑に定着させることと、池をうがつことが政治の正義であり、最大の事業でもあった。大和にも和泉にも池が多い。しかしそれにもまして讃岐には池が多い。すでに空海のうまれたころにはこんにちの池のほとんどが存在した」(上巻P.12) -
Posted by ブクログ
山内一豊と千代の逸話は小学館出版の漫画(様々な戦国武将の物語を10ページ程でまとめたもの)で初めて知ったのだが、その漫画では土佐24万石の大名になった所で締めくくられていた。本シリーズもそこまでかなと思っていたが、4巻の後半は土佐の大名になった後の話で、全く知らない話ばかりで興味深く読み進めることができた。
ただ、後半の内容は、これまでの夫婦楽しく(?)戦国時代を生き抜いた話に比べるとどこか物寂しい。誤解を招くかもしれないが、劉邦の晩年の物語を彷彿とさせる。「種崎浜」の章で千代の山内家に対する感情を吐露したシーンは、読んでいて胸が苦しくなったものの、うまくいかないのも人生なのかなと、とにかく考えさせられる。ただフィクションの部分もあるので、これから読む人は史実との擦り合わせをおすすめする。 -
Posted by ブクログ
全9編の短編からなっており、それぞれ短く読みやすい作品だった。
幕末当時の人々が何を考え、どのように行動していたのかが描かれており、司馬遼太郎らしい歴史小説としての読み応えも感じられた。
また、これまであまりスポットライトが当たってこなかった人物たちに焦点を当て、彼らの視点から幕末の出来事を描いている点も面白かった。知らなかった人物や出来事に出会えたことは、この作品を読む大きな収穫だったと思う。
一方で、短編それぞれが読みやすい反面、読み終えた後に作品全体を振り返って余韻に浸れるかというと、少し物足りなさが残った。どの話もそれなりに楽しめたものの、「特に印象に残っている話は?」と聞かれると、すぐに思い浮かぶものがないのは残念だった。
読みやすさや、これまで知らなかった人物を知ることができた点は良かったが、強く心に残る作品というよりは、幕末という時代をさまざまな人物の視点から覗くことのできる一冊だった。