あらすじ
肥前佐賀藩の小吏の家に生まれた江藤新平。子供の頃から一種の狂気を持った人物だった。慶応3年、大政奉還を知るや「乱世こそ自分の待ちのぞんでいたときである」と、藩の国政への参画と自分の栄達をかけて、藩の外交を担い、京へのぼった。そして、卓抜な論理と事務能力で頭角を現していった。が……。
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江藤新平といえば、新政府の国家デザインを担える人材でありながら、やがて大久保利通と対立。征韓論で敗れ、佐賀の乱を起こす、という程度の認識でした。
こういう教科書では単語やセンテンス程度の人物の物語を読むというのは、その時代の背景や流れを知ることに繋がるとともに、他の歴史的な人物との関係もうかがい知ることができるので、とっても刺激的。それなりに歴史小説を読んできて今更ですが、やっぱり歴史小説っておもしろいなと、再確認しました。
さて、本書の江藤新平は、なんというか正義感の塊のような人物で、とにかく苛烈。政治に関心(というかセンス)がなく、真面目一直線で行動するがゆえ、大久保の権謀術策にかかり自滅したように描かれています。どうも大久保に比べると一回り小物の印象を抱くのは司馬遼太郎氏の感性によるところでしょうか。
これまではどちらかというと清廉潔白の印象の強かった大久保ですが、江藤との関係を通じて利己的な一面を垣間見られたようで興味深かったです。
上下巻の構成ですが、特段の中だるみ感もなく、論点も整理され、とても読みやすかった作品でした。
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同郷で、佐賀の七賢人は、しっていたが江藤新平にそんなに詳しくなく。幸い、このとしになって司馬遼太郎さんの本に出会う。読んでみたいと思わせた通り!なんと面白いことよ。
西郷隆盛とか幕末の活躍者もおおくかかれているご、そこかしこに司馬さんの思想が散りばめられており、ややもすると司馬歴史観にひっぱられそうになる。そのあたり、読み方が難しいと思ったが、なんといっても、面白い!
多くの人が魅了される意味がわかった。
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今まで司馬作品の幕末、戦国ものはかなり読んできたが、何故、この作品を読むのが遅くなったのだろう。
薩長土肥の肥前佐賀藩の幕末、維新の動きは実はあまり知らなかったので、よく分かった。
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佐賀の乱で有名な江藤新平を描いた作品。
なるほど,明治初期の参議にまでなった江藤がまさか乞食同然の暮らしをしていた等とは知らなんだ。
しかし明晰な江藤の良さが分かる1冊です。
徳川家康と大久保利通の2人は,自身の為し得た業績に比べて非常に低い評価をされがちですが,やはり人物にくらさが出がちであり,司馬氏もそう好きではなかったんだろうなと思います。
もう一回翔ぶが如くを読むと面白いんでしょうが疲れるので,半年ぶりに佐賀城あたり見に行くことにいたします。
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時間もないので箇条書き程度の感想。
肥前佐賀藩は二重鎖国状態であった事。鍋島閑叟が「肥前の妖怪」と言われていた事。知らなかった事ばかり。
枝吉神陽という人物は、長州における吉田松陰のような人。その神陽が作った思想結社「義祭同盟」には、神陽の実弟の副島種臣、門人の大木喬任、大隈重信、江藤新平がいた。
岩倉、大久保、木戸などが洋行中の留守政府で、西郷、板垣がお昼の休憩時間を過ぎても、戊辰戦争の昔話や、相撲の話をしていたというエピソードで、「両人は戦争のはなしとすもうの話がよほどすきらしく、来る日も来る日もそうであった」という文章が、なんだかとても可笑しかった。
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江藤新平のような、頭が切れ、胆力がある人物は、あの時代でしか生み出されないだろうか。
大久保が最も警戒した人物、詰まり、自分を脅かすという意味で、能力を買っていたのだろう。
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Kodama's review
肥前佐賀藩の小吏の家に生まれ、幕末の風雲の中を掛けぬけ、新政府の参議にまで駆け上る。ここまで海外に赴くことがなかったにもかかわらず、海外に行ったことのある人間よりもその知識を持ち得ていることに人々は驚かされる。そんな卓抜した能力も彼が参議にまで至る理由なのでしょう。下巻へ!!!
(10.2.21)
お勧め度
★★★★★
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一言でまとめると『江藤新平入門本』。笑
初代司法卿・江藤新平の活躍を描く長編です。
わずか七年間の栄光だったけど、そのわずかな間に行ったことが、現代の法の基礎として生かされてると思うと、素直に感動します。
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P330江藤新平の司法卿就任にあたって井上馨に渋沢栄一が異を唱えるシーン。どこかで読んだと思ったら、城山三郎の新潮文庫『雄気堂々』下巻P119でそのシーンがかなり微に入り書かれていた。歴史小説だから当たり前なんだけれども繋がってるのが嬉しかった。
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若い時に読んだ司馬遼太郎作品を一から読み直し中です。
飛ぶが如くの時代を別視点(主人公を変えて)の著作です。
前巻は江藤新平の前半生であり、薩長土肥の肥前の幕末での立ち位置を知ることができます。
江藤新平は才あるも、人間関係の調整、機微が分からない人物として描かれていて、私の会社にもそういう人がいるなぁと勝手なことを思って読んでしまいました。
(著者の私見も入っておられる思いますが)幕末という騒乱期では英雄であった参議等が、国家を作る政治家、行政家として活動しなくてはならなくなった時の立ち振る舞い、政治家等としての能力、性格を知ることできます。
幕末小説は多くの小説はあれど、その後のことを書いた小説として秀逸かと思います。
ハードボイルド的な主人公が活躍する歴史小説、時代小説ではなく、淡々とした書き方ではありながら、中味はギュッと詰まった感じのこの内容は私には合っております。
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「三国一の何々」という「三国」とは(近隣国では)
「唐天竺(中国インド)」と日本の中で一番だということで
「韓」というものがふくまれていないのだった
と、司馬ワールドではいう
古来、朝鮮という半島は国家については地理的位置が近接しすぎており、
しかも人種までが類似し、このため厳密な外国意識をもたずに数千年経てきている。
から
含まれなかったのはあまりにも近縁で他国視できなかったのであろう。
と
今読んでいる司馬遼太郎『歳月』(江藤新平栄光と転落の生涯)にある文章で
これ、わたしは「ははーん」と思ったことだった
おもしろいものだ
いまではとても同じ人種と思えない気質なのにね
でも、むかしからお互いに尊敬しあってないのだからね
この小説の舞台時代
(西郷隆盛を中心に「征韓論」が起こった一件に関係して江藤新平は転落していく)
明治初期のまだまだ政府の屋台骨があやふやな時
近代化しようとしている日本が近隣国(ロシアや清国)を意識し
富国強兵に進もうと、どこの国でもあるように、外に目を向けた
そして冒頭の日本の側の意識!
反対に朝鮮半島では中国の属国のような庇護を受け、かさに着ていて
朝鮮半島は中国の姓名を使ってるのに、日本は独特の苗字を名乗り
儒教という中国の文化も影響少なく、八百万の神を敬う
倭の国(日本)を尊敬していなかった
とある
まあね、お互い、これじゃねえ
この本の上巻、一章「征韓の一件」はおもしろかった
ところで、最近、天竺(インド)とは仲良くしようとしているね
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本流の薩長ではない肥前佐賀藩の出身ながら明治新政府の司法制度のほとんどを作り上げた男、江藤新平。上巻は江藤が脱藩、帰郷、蟄居を経て明治新政府に登用され、司法卿(当時の法務大臣)として改革を成し遂げつつも、征韓論を巡って大久保利通と対立するまでを描く。正義感が強く、時の権力者にも盾突きつつも、同時に34歳になるまで世に出られなかった焦りを抱えた野心家でもある複雑な人物として描かれている。下巻が楽しみ。
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他の作品では深謀遠慮から程遠い人物として描かれているだけに、優れた実務家、司法家としての表現、エピソードの数々は非常に興味深い。妾宅がわからず1時間待つ姿は苦笑せざるを得ない。「私は・・・」の後のセリフ、想像すればするほどこの人物に興味がわく。
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明治維新の立役者は「薩長土肥」である。薩摩、長州は同盟して鳥羽・伏見の戦いで幕府軍を破るのだが、土佐の参戦は一日遅く、薩長優位と分かり参戦に至る。佐賀藩は佐幕から譲位に方向転換するまでに時間を要するのだが、下級武士の江藤新平は時代を読み脱藩してまで京へのぼる。そこで見聞きしたことを死罪覚悟で自藩に持ち帰るのである。
その後、江藤新平は藩主より助命され、数年を経て佐賀藩と明治新政府の橋渡し的存在となる。そして末は新政府の参議まで上り詰めるのであった。上巻は江藤新平の立身出世物語であり、下巻は更なる怒涛の展開が期待できるであろう。
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明治維新時の日本において、近代的司法制度の創設を一手に担った鬼才・江藤新平の伝記。肥前佐賀藩に生まれ、佐幕を是とする藩風の中、命がけで勤皇を主張する。倒幕後の新政府における江藤の活躍がこの小説の主題。
薩長が牛耳る政府にあって、江藤はもう一度乱を起こし自らが政府の実権を握ろうとしていた。「正義」だけが彼の全てであり、いっさいの腐敗を許さない性格だった。
政府に機構を創るという仕事を誰よりも高い能力でこなした江藤の凄まじいまでの仕事力。彼の暗躍する姿がよく読みとれる。江藤に限らずこの時代の男達は本当に仕事に対して誠実であり命がけだと感じた。大学生の時に一度読んだ本だが当時より深く理解できた気がする。
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幕末ものといえば、薩摩、長州、土佐か幕府軍(徳川、新撰組)がメインだが、これは肥前藩の江藤新平の物語。革命に参画しなかった肥前が、江藤や大隈重信の尽力によって、いかに新政府に食い込んでいったかがよくわかる。よくそこまで動けるものだと江藤、大隈の行動力に脱帽である。そして明治新政府内部の権謀術数。電話やメールのない時代にやっているのだから恐れ入る。征韓論の背景もよくわかる。
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「策士」江藤新平の生涯。「佐賀の乱」で散った短い生涯を鋭く書きえぐっている。
才能だけでのし上がった一人の男のサクセスストーリーでもあり、明治政界の暗部にスケープゴートされた男の悲劇でもある。
華々しさはないがこれもまた一人の男の生き様を描いた傑作でしょう。
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司法卿・江藤新平のツンデレ小説
尾去沢事件で井上を政治からひきずり降ろしたり、山城屋和助事件で山縣有朋筆頭 長州軍閥を袋叩きにしたりと
やりたいHODAI!!
この時代の政治家には珍しいケッペキさというか、勧善懲悪主義というか、とにかく情状酌量の余地ってものがありません
マッハGO!GO!GO!でございます☆
それにしても江藤新平て、常に単独行動だなあと思ってたけど、要するに、友達いないんですね☆
同郷の大隈重信ともウマがあわなくてイライラ。(あれれ?でも維新前はともに国学者・枝吉神陽のもとへ通った仲なのに?
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初めて司馬遼太郎の小説を読んだのは40年以上前、中3の時に「竜馬がゆく」に出会った時だ。それ以来、歴史小説の面白さに目覚め、色々な司馬遼太郎の作品を読んだ。今でも一番好きな作品は何度も繰り返し読んだ「竜馬がゆく」だ。
司馬遼太郎に限らず歴史小説や大河ドラマは戦国時代や幕末を舞台にしたものが圧倒的に多く、維新後の明治の創成期を取り上げたものは少ない。国全体が生まれたばかりで混沌としたカオスの状態で、どうやって中央集権的な明治政府が作られていくのか。難解だが興味深いモチーフだ。
そういう意味では本作はまさに維新直前から西南戦争前までの国家が形成される様子がよく分かって面白い。
しかしながら、如何せん主人公の江藤新平が魅力的でない。司馬遼太郎作品で登場する坂本龍馬や斎藤道三らの魅力溢れるキャラクターに比べると、江藤は感情移入したくなるような魅力が乏しい。どちらかといえばあまり好きではないタイプと言ってもいい。
更に「翔ぶが如く」では2大主人公であった大久保利通。もちろん「翔ぶが如く」でも怜悧な政治家であるキャラクター像は十分に描かれていたが、それを補って余りある魅力も描かれていた。ところが本作では背筋が寒くなるような大久保の残忍さだけが終盤描かれており、それが読後感の悪さを助長している。モチーフとなっている舞台が興味あるだけに少し残念な作品だ。
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とぶが如くの前にみたほうがいいのか、後にみるのが正解なのか悩むが、なんせ、司馬節大爆発の明治維新もの。
わくわくで下巻に手を伸ばすと、なんと上巻だった(表紙だけ下巻)
そんな悲劇もありながらの、江藤新平のお話。
下巻大期待。
結末は知っているので。