【感想・ネタバレ】新装版 歳月(下)のレビュー

あらすじ

明治維新の激動期を司法卿として敏腕をふるいながらも、明治6年、征韓論争で反対派の大久保利通、岩倉具視らと対立。敗れて下野した江藤新平は佐賀の地から、明治中央政府への反乱を企てたが……。34歳から41歳までのわずか7年間に、栄光と転落を味わった「ふしぎ」な生涯を描く傑作歴史長編。

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「西郷を玉とすれば、その玉をくだく者はその門人、敬慕者、郷党だろう。師は弟子によって身をあやまる」

江藤新平の残した言葉は正しかった。

ただ自分が言ったその言葉は、ブーメランのように自分に返ってくることは想像してないところが、江藤の特徴である、「うかつ」さ、なんだろうな、と思えた。

上巻より、下巻がとてつもなく面白かった。
大久保vs江藤、が書いてあるだけなんだけど、凄かった。
でも、日本を作り上げようとした、この二人の似た者同士の思考方法は、それぞれ大事ですね。そして、近親憎悪も政治には付き物かもしれないですね。

三権分立を唱え、初の司法卿として法律を整備して、警察組織も整えた。
その見事な法律と組織作りが、「佐賀の乱」に負けて逃れる自分自身を追いつめる全てになった。

立派に運用された結果、自身の顔写真も全国に即座に手配され、結果、捕縛されてしまうのが皮肉でシュール。
この写真の手配制度も江藤が整えたもの。

歴史は、ホントに、味わい深い!

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2019年03月02日

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下巻は江藤VS大久保の様相を呈してくる。
江藤は征韓論を軸に明治政府の転覆を狙うが、欧州帰りの大久保に阻まれる。この、明治政府の二大頭脳が凄まじい戦いを展開する・・・というより、大久保があまりにも老獪で、江藤がだんだん可哀想になってくる。江藤は正義や論理、法律を何よりも重視し、正義は勝つのだと純粋に信じていたようだ。しかし大久保は正義を曲げても、非情な手段を取ってでも自分の信念を通す男だった。その大久保の前では江藤は子供のようであり、下野し佐賀の乱を起こし戦いに敗れる。
僕がこの小説ですごいと思ったのは、江藤が佐賀の乱で敗れ鹿児島や高知に逃げていた時も、正義を通す男としての誇りを失わなかった事だ、鹿児島で会った西郷の前でも決して卑屈になる事無く、命乞いもしなかった。
そして最後には自らが司法卿だった頃に整備した警察網に自らが捕らえられるという結果に終わる。自分の仕事が完璧すぎたのだ。
その日暮らしのも困る貧窮の身から数年で国家の中枢にまで登り、非業の死を遂げるまでの江藤の生涯。この小説では彼の過ごした歳月を共に駆け抜けた気分になれた。

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2013年02月13日

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ネタバレ

大久保利通が、江藤の事を邪魔に思っていたかが、特によく書かれている。大久保好きの自分には、大久保のダークな部分を知れた事はそれなりによかったと思う。
江藤自身も、下野後は非常に短絡的で中途半端な論理で反乱を起こしてしまい、本書の佐賀の乱が始まる辺りで、若い書生が江藤に対して「かれは英国貴族の家にうまれたほうがよかったであろう。」と想像するくだりがあるが、もし江藤が大久保の遭難後に中央に登場していたなら、もっと活躍出来ていたのではないかと感じた。

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2011年08月08日

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江藤新平と大久保利通の死闘。「薩人、智なけれど勇あり。長人智、あれど狡猾。」と評し、自らを智ありて勇あり、のつもりが存外うかつであったゆえ、呆気なく大久保の術数にはまってしまった。それにしても大久保は策士、忍人。
今回、講談社文庫新装版第1刷を手にしたが、誤字が多かった。新刷では訂正されているが、作品が素晴しいだけに残念。
P59 「工藤」☞「江藤」
P187 「中島胤」☞「中島錫胤」
p286「おとどし」☞「おととし」
P361「あったっている」☞「あたっている」

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2011年02月20日

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Kodama's review
征韓論で賛否が分かれた新政府。江藤新平は、佐賀に戻り政府に対抗することに。結局、征韓論を唱え、または支持した前参議は命を落とすことになった訳ですが、その江藤と西郷隆盛の共通点は、二人とも海外に行ったことがなかたこと。百聞は一見に如かず…果たして二人は海外渡航への経験があれば、違った人生を歩んでいたのかも知れません。
(10.2.28)
お勧め度
★★★★★

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2010年03月07日

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司馬遼太郎の特に幕末小説を続け読みした。峠の河合継之助、最後の将軍の徳川慶喜、世に棲む日々の吉田松陰高杉晋作、そして歳月の江藤新平。童門冬二の新撰組、城山三郎の雄気堂々(渋沢栄一)も含め色んな目線、切り口から幕末、明治維新を見てみて色々思いながらも大久保利通だけはどうも気に入らない。
翔ぶが如く、読むか悩む。
とはいえ江藤新平頭固すぎる。河合継之助に通じるところがある。渋沢栄一や新島襄が向いてるかな。何かを変えるには常に変えられる相手がいることを実感し、対策を打つべき。これを学ぶ。
p199緊迫したシーンであるが『団にょんさん』って言う表現が和む。

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2025年11月11日

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征韓論から梟首まで。大久保利通 対 江藤新平。佐賀のお国柄か江藤新平の個性なのか。佐賀の乱でさっさと戦争に見切りをつけ、味方を見捨てて薩摩、土佐に説得に行く姿に共感はできないが、江藤新平なりの一本筋が通った理屈があったのだろう。大久保利通の忍人っぷりに恐怖。

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2023年12月28日

購入済み

真の主人公は

上巻より遥かに緊迫度を増した話が続いている下巻である。内務卿大久保利通の政治家ぶり悪人ぶりが見事に描かれている。この作品の主人公は一見 江藤新平のようであるが、真の主人公は大久保利通である。
大久保利通の狙いであった「見せしめとして江藤新平を死刑にして士族の反乱を抑える。」という目的は達成できたのだろうか?この後、士族の反乱は神風連の乱 秋月の乱 萩の乱 と続き、西南戦争へつながってゆくのだが。小説としての魅力はやはり描いている人物の魅力の違いだろうか、「翔ぶが如く」よりは劣ってしまうのはやむを得ない。

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2021年09月01日

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江藤新平の生涯 極貧から司法卿まで数奇な運命です。世が世なら貧乏武士で生涯を終えるはずだったのでそれ程悔いのない人生だったのではないでしょうか?この本読むまで江藤新平 佐賀の乱おこした唯の権力欲の強い男かと思ってましたが、筋の通ったなかなかの男だったんだなあ。

この本読んで 明治の初期の混乱期 大久保利通が新国家を作る上で現実を冷静に視て、原理原則にとらわれず、批判を恐れず信念に従って行動したのが江藤新平を通して逆に鮮明に感じられました。幕末の混乱をくぐり抜けた大久保と、佐賀のハズレで活きるのに全力を注ぐことしかできなかった江藤のこれも運命だったんでしょう。

司馬遼太郎を通して幕末から明治の人物像を色々読みましたが、江藤新平も熱い男の一人でした。

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2021年01月11日

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江藤新平という法律立法における天才といわれた人物と
大久保利通という日本初の宰相(松本清張の『史観宰相論』より)
のことがよくかわかる小説であった

江藤と大久保は似た気質であるという
司馬さんの文章にこうある
「人間の才能は、大別すればつくる才能と処理する才能のふたつにわけられるにちがいない。」
明治期、このつくる才能に恵まれたふたり
他の維新の面々が封建制を倒したのはいいが
日本国創造の抱負も実際の構想も持たなかった時
ふたりは才能を発揮し、がちんこしたのである

江藤新平には政治力がなく、うかつな性格、うぶな一面
大久保利通には冷たいまでの狡猾な理知があったという

こういうスタンスで紆余曲折の最後
大久保利通は江藤新平を「さらし首」という江戸時代に戻ったような刑にする

この『歳月』の結末を読んで大久保利通ってやな奴!どんな奴
と、わたしの好きな松本清張さんの『史観宰相論』をひもといてみた

清張さんの史観は
なんといっても「明治期を通じての大宰相であり大政治家だった。」
良くも悪くも日本の官僚制度をつくった張本人でもある

と認めている人物なのである(あたりまえである)

日本がたどってきた道を小説なり随筆で観るのはおもしろい
功罪あいなかば、好悪、結論は出ないのである

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2020年05月04日

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終盤の河野敏鎌裁判長のカッコ悪さは如何ともし難い。大久保利通の残酷さは、まだ、より高次の政略のため、と理解できなくもないけれど。
もし、江藤新平が生き延びていたら、日本史はどうなっていただろう。大久保には歯が立たなかったにせよ、紀尾井坂以降、外交で随分活躍できたのではないかと思う。数多の才能が天寿を全うせずに朽ちたことを思うと、生き延びることの価値を改めて思う。

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2019年08月11日

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下巻。
上巻を読んで、江藤新平という人は確かに欠点は多いものの、なんとなく愛着というか、憎めないものを感じてたので、後半の追い込まれる様は、読んでて辛かったです。恐るべし、大久保利通・・・。
日本の司法の仕組みを創ったともいえる、有能な人だっただけに、惜しまれます。

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2015年03月14日

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上巻の司法卿にまで成り上がっていった江藤新平と、下巻の征韓論以降の江藤新平は、同一人物だろうかと思える程違っていた。
ここまで両極端な性格がどちらも表に出た人も珍しいのではなかろうか。

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2009年10月04日

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 江藤新平が中心になって引き起こされる「佐賀の乱」は、あっけなく明治政府に鎮圧される。士族の不満を結集するはずが他藩の協力は得られない。負け戦だと判断すると江藤は戦地を離れる。政治犯の助命を東京での裁判で期待するがそれも叶わず、佐賀で斬首になる。大久保が後世に影響を及ぼすであろう江藤の政治力を恐れてのことであった。大久保を甘くみていたと言わざるを得ない。

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2013年12月10日

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日本の法制度を整えた人、江藤新平。
上巻では薩長中心の新政府にかちこみ、初代司法卿まで上り詰め、
下巻では征韓論で大久保利通と対立し、佐賀の乱の首謀者として晒し首にされるまで。
まさに、波瀾万丈。

司馬遼太郎の好みもハッキリわかる。
どの視点に立つかで全然見方が変わる“幕末明治”の面白さが存分に楽しめると思います。今度は大久保利通側からの本を読んでみよう!

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2013年06月07日

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ネタバレ

維新に出遅れた感満載の江藤新平が下野して佐賀の乱を起こす。今までいろいろな戦闘ものを読んできたが、この佐賀の乱ほど「へちょい」ものはないのではないか、と感じた。まんまと政敵大久保利通にやられているという感じ。これじゃ佐賀もんは浮かばれんなぁ・・・大隈重信ががんばるのかな?この本での大久保の悪役ぶりったらありゃしない。

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2012年03月13日

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物語は征韓論で紛糾する明治政府から始まる。
政韓派筆頭は西郷隆盛。対する政韓反対派は大久保利通や木戸孝允、岩倉具視…
江藤新平はというと政韓派に組みしていたようですが、具体的な動きはこれといってありません。彼の腹のうちには、政韓云々などよりも、政局から薩長閥を追い落とすことでいっぱいだったから!
の人、絶対逆恨みでしょ。維新の激動期をほとんど藩のうちで、しかも蟄居状態で内職しながら過ごしたんだから。早い段階から活躍していた薩長ウラヤマシスゆるすまじー!…みたいな;それを敏感に感じ取っていた大久保さんはほんとうにすごい方だと思います;

大久保 (江藤だけは、私怨と権謀だけで動いている。)←正解

江藤の友達の大木 喬任は、『江藤のヘンなところは、自分をまだ書生かなんかのよーに思ってるところだ!』みたいなことを仰っていましたが、江藤さんは自分が参議であることを忘れすぎ若しくは自覚しなさすぎ、なんですね。

それにしても大久保利通こわすぎ!!!!
江藤がお縄についてしょっぴかれたとき、東京で山田顕義とかと愉快にお花見してるし…酒宴もしてるし。絶対「江藤捕まえて嬉しいなvパーティー」ですよね(知らんがな)。
で、極めつけは…江藤さん処刑の日、大久保利通が自分の日記に書いた言葉

「江藤、醜躰(しゅうたい)、笑止なり」

……こわっっ!!!

しかも斬首だけじゃ飽き足らず梟首まで…(これって江藤さんが刑法改正したとき無くしたはずの刑だよねえ!!?)

あまりにも皮肉すぎる…ヽ(TдT)ノ

かわいそうすぎる人生を歩んだ江藤卿のご冥福をお祈りいたします。。

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2010年01月28日

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