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Posted by ブクログ
「西郷を玉とすれば、その玉をくだく者はその門人、敬慕者、郷党だろう。師は弟子によって身をあやまる」
江藤新平の残した言葉は正しかった。
ただ自分が言ったその言葉は、ブーメランのように自分に返ってくることは想像してないところが、江藤の特徴である、「うかつ」さ、なんだろうな、と思えた。
上巻より、下巻がとてつもなく面白かった。
大久保vs江藤、が書いてあるだけなんだけど、凄かった。
でも、日本を作り上げようとした、この二人の似た者同士の思考方法は、それぞれ大事ですね。そして、近親憎悪も政治には付き物かもしれないですね。
三権分立を唱え、初の司法卿として法律を整備して、警察組織も整えた。
その見事な法律と組織作りが、「佐賀の乱」に負けて逃れる自分自身を追いつめる全てになった。
立派に運用された結果、自身の顔写真も全国に即座に手配され、結果、捕縛されてしまうのが皮肉でシュール。
この写真の手配制度も江藤が整えたもの。
歴史は、ホントに、味わい深い!
Posted by ブクログ
下巻は江藤VS大久保の様相を呈してくる。
江藤は征韓論を軸に明治政府の転覆を狙うが、欧州帰りの大久保に阻まれる。この、明治政府の二大頭脳が凄まじい戦いを展開する・・・というより、大久保があまりにも老獪で、江藤がだんだん可哀想になってくる。江藤は正義や論理、法律を何よりも重視し、正義は勝つのだと純粋に信じていたようだ。しかし大久保は正義を曲げても、非情な手段を取ってでも自分の信念を通す男だった。その大久保の前では江藤は子供のようであり、下野し佐賀の乱を起こし戦いに敗れる。
僕がこの小説ですごいと思ったのは、江藤が佐賀の乱で敗れ鹿児島や高知に逃げていた時も、正義を通す男としての誇りを失わなかった事だ、鹿児島で会った西郷の前でも決して卑屈になる事無く、命乞いもしなかった。
そして最後には自らが司法卿だった頃に整備した警察網に自らが捕らえられるという結果に終わる。自分の仕事が完璧すぎたのだ。
その日暮らしのも困る貧窮の身から数年で国家の中枢にまで登り、非業の死を遂げるまでの江藤の生涯。この小説では彼の過ごした歳月を共に駆け抜けた気分になれた。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎先生の幕末維新モノとしては『翔ぶが如く』が著名だろうが明治政府の巨頭大久保利通がわざわざトドメを見届けに来るほど警戒していたところに江藤新平の凄さが分かる。金の無い書生を置いたり(史実によるとテストがあったらしい)している良さがあるのに何故か性格的に難のある人物となっている。分岐点は征韓論だろうか。周囲の忠告があるのに帰国したのはいただけない。妙な表現だが知能は高いが賢く無いような気がする(違ってるかもしれないが劉邦はその逆だと思う)。指名手配の写真を導入とかも仕事ができる証左だが己が反乱者かつ敗北者となって逃亡者として活用される運命の皮肉!
それにしても士族の反乱に巻き込まれずに最後まで政治家として大久保利通と対抗していたら法務大臣には収まっていたと思われる。合掌。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎の特に幕末小説を続け読みした。峠の河合継之助、最後の将軍の徳川慶喜、世に棲む日々の吉田松陰高杉晋作、そして歳月の江藤新平。童門冬二の新撰組、城山三郎の雄気堂々(渋沢栄一)も含め色んな目線、切り口から幕末、明治維新を見てみて色々思いながらも大久保利通だけはどうも気に入らない。
翔ぶが如く、読むか悩む。
とはいえ江藤新平頭固すぎる。河合継之助に通じるところがある。渋沢栄一や新島襄が向いてるかな。何かを変えるには常に変えられる相手がいることを実感し、対策を打つべき。これを学ぶ。
p199緊迫したシーンであるが『団にょんさん』って言う表現が和む。
真の主人公は
上巻より遥かに緊迫度を増した話が続いている下巻である。内務卿大久保利通の政治家ぶり悪人ぶりが見事に描かれている。この作品の主人公は一見 江藤新平のようであるが、真の主人公は大久保利通である。
大久保利通の狙いであった「見せしめとして江藤新平を死刑にして士族の反乱を抑える。」という目的は達成できたのだろうか?この後、士族の反乱は神風連の乱 秋月の乱 萩の乱 と続き、西南戦争へつながってゆくのだが。小説としての魅力はやはり描いている人物の魅力の違いだろうか、「翔ぶが如く」よりは劣ってしまうのはやむを得ない。
Posted by ブクログ
江藤新平の生涯 極貧から司法卿まで数奇な運命です。世が世なら貧乏武士で生涯を終えるはずだったのでそれ程悔いのない人生だったのではないでしょうか?この本読むまで江藤新平 佐賀の乱おこした唯の権力欲の強い男かと思ってましたが、筋の通ったなかなかの男だったんだなあ。
この本読んで 明治の初期の混乱期 大久保利通が新国家を作る上で現実を冷静に視て、原理原則にとらわれず、批判を恐れず信念に従って行動したのが江藤新平を通して逆に鮮明に感じられました。幕末の混乱をくぐり抜けた大久保と、佐賀のハズレで活きるのに全力を注ぐことしかできなかった江藤のこれも運命だったんでしょう。
司馬遼太郎を通して幕末から明治の人物像を色々読みましたが、江藤新平も熱い男の一人でした。
Posted by ブクログ
江藤新平という法律立法における天才といわれた人物と
大久保利通という日本初の宰相(松本清張の『史観宰相論』より)
のことがよくかわかる小説であった
江藤と大久保は似た気質であるという
司馬さんの文章にこうある
「人間の才能は、大別すればつくる才能と処理する才能のふたつにわけられるにちがいない。」
明治期、このつくる才能に恵まれたふたり
他の維新の面々が封建制を倒したのはいいが
日本国創造の抱負も実際の構想も持たなかった時
ふたりは才能を発揮し、がちんこしたのである
江藤新平には政治力がなく、うかつな性格、うぶな一面
大久保利通には冷たいまでの狡猾な理知があったという
こういうスタンスで紆余曲折の最後
大久保利通は江藤新平を「さらし首」という江戸時代に戻ったような刑にする
この『歳月』の結末を読んで大久保利通ってやな奴!どんな奴
と、わたしの好きな松本清張さんの『史観宰相論』をひもといてみた
清張さんの史観は
なんといっても「明治期を通じての大宰相であり大政治家だった。」
良くも悪くも日本の官僚制度をつくった張本人でもある
と認めている人物なのである(あたりまえである)
日本がたどってきた道を小説なり随筆で観るのはおもしろい
功罪あいなかば、好悪、結論は出ないのである
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