【感想・ネタバレ】覇王の家(上)のレビュー

あらすじ

徳川三百年――戦国時代の騒乱を平らげ、長期政権(覇王の家)の礎を隷属忍従と徹底した模倣のうちに築き上げた徳川家康。三河松平家の後継ぎとして生まれながら、隣国今川家の人質となって幼少時を送り、当主になってからは甲斐、相模の脅威に晒されつつ、卓抜した政治力で地歩を固めて行く。おりしも同盟関係にあった信長は、本能寺の変で急逝。秀吉が天下を取ろうとしていた……。

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司馬遼太郎が描く徳川家康。

信長、秀吉の次に登場し、覇者となった家康は忍耐と長寿の人だ。

家康最大のピンチは同盟者、織田信長に武田家への内通を疑われた家康の妻と長男の処分を指示されたとき。しかも、その発端は徳川家の最重要家臣、酒井忠次の裏切りとも言える行動。酒井忠次を排除し、信長へ反旗を翻してもおかしくない場面。が、家康は耐えた。自らの手で妻と長男を処刑し、信長との同盟関係と忠次の従僕関係を維持した。

家康は自らを感情を持つ人ではなく、組織の一機関として客観視することができたのだろう。

その耐えた後に、本能寺の変があり、信長のいない世界へたどり着けたのは家康の長寿のおかげだ。

時代は信長政権から秀吉政権へ。そんな新政権に惹き込まれる家康の家臣、石川和正が心情の変化を見せつつ、下巻へ続く。

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2025年09月09日

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 徳川家康の生涯の節目ごとを短編として、著者の独自の視点で考察しているが、日本人の歴史観に多大な影響を与えたいわゆる司馬史観を強く感じた。徳川政権は重農主義で保守、織田豊臣政権は重商主義で革新という二元論にたち、幕末から太平洋戦争までの後の歴史に影響を与えた保守的な重農主義が、創業期の徳川家においてどのような風土や経緯で培われたかを理解できる。現在の価値観や社会構造が、歴史の延長線上にあることを考えさせられる価値ある一冊と思えたと共に、歴史物語としても十分に楽しめた。

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2024年07月19日

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小説としての家康像は様々あって、好き嫌いを感じることもあったが、司馬遼太郎の本を初めて手に取り読んでみて、こういう歴史書があったんだと、今更ながらしみじみ感動した。
下巻も続けて読んでいく。

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2023年05月17日

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相変わらず司馬遼太郎節の炸裂。 この人のエロティシズムどこまで信用していいのかわかりませんが、とにかく興味深い。 徳川家康の幼少期から織田信長との関係、正妻 築山との関係、三河武士との関係、すべて興味深く拝読させて頂きました。

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2023年01月27日

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家康と三河の家来たちの物語。家康は基本的には地方の殿様で、もともと天下を取るような夢も持っていなかったし、それほどの器量があったわけではないとする。確かに、彼は自国を守ることに一杯いっぱいだったし、今川、武田、そして織田に囲まれた環境ではそれは無理もない。そして、三河の国はもともと小さな豪族の集まりで、織田家のような利得に基づく合理的な主従関係はなく、ただ濃密な人間関係が特長であったという。たしかにその観点で、徳川幕府というのは、地方の内向きの政権が大きくなった性格を持っていて、外国との交流を絶ち、ひたすら内部的安定を優先させたというのはその通りかもしれない。
秀吉との関係のくだりのあと、一気に家康の最期まで話が飛ぶなど、司馬作品としては珍しくバラつき感もある作品ですが、よく知られたエピソードの裏側にある、家康の性格、三河人の気質をえぐりだしているとこは、とても興味深かったです。

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2022年02月13日

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久々の司馬遼太郎。昔と違って、地名が出た時に検索すればすぐスマホで確認できるので、物語りが頭に入ってきやすくて、読み応えが上がったように感じた。

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2021年11月08日

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なんというカッコいい締めくくりだろう!読後の満足感と下巻への期待が最大限になって読み終えました。石川数正が到着して戦勝祝いをした際に、秀吉が返した言葉は流石と言うべきものだし、その後の著者の締めくくりがよく出来た舞台の幕引きみたいでした。いつも思いますが、司馬遼太郎の描くこの時期の秀吉はとても魅力的で好きです。この小説の主人公は家康の筈なのですが、最後に秀吉と著者に持っていかれてるところが面白い。笑

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2020年09月13日

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人間“家康”が、司馬遼太郎さんの筆致で深掘りされます。上巻は、家康の幼少期から信長の死(本能寺の変)、秀吉の台頭。

上巻前半で、家康が生まれた三河の国の気質(地味、我慢強いなど)が分かり、興味深かったです。

信長の前で律儀をモットーとする家康。それを示す最たるものが、正妻の築山殿と信康殺傷でした

家康の家族内の問題が、政治にまで及んでしまう事件で、ワイドショー的興味がそそられるように描かれていました。

武田攻めの後、信長凱旋のために、家康は最大級のおもてなしをします。(道や橋を造るなど)家康、どこまでも徹底しています。信長へのリスペクト、これでもか、という感じ。

賤ヶ岳の戦いの後、家康が秀吉に贈る戦勝祝いも最高級。(「初花」小壷の茶器、信長から家康の手に渡っていた)気の回しようが抜かりない。

現代社会でも組織における人間関係は、仕事を円滑に進めていく上で重要。時には根回しも。

家康の、人をそして情勢をも見抜き、遠くの将来まで見据えて対応する能力、腰の低さ、恐るべし!

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2025年08月23日

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 家康は信玄・謙信・信長・秀吉のような合戦の天才ではなかった。戦に負けること多数、三方原では脱糞しながら敗走。ただ、自分が凡庸とわかっていたから、敗戦から多くを学び、天才にはわからない凡庸な人間の気持ちもよくわかったのではないか。だからこそ凡庸な世継ぎが生まれた場合の世襲対策を強固に構築したのではないか。
 家康は忍耐の天才であった。大国に挟まれた彼は幼少期から人質生活、合戦では今川・織田の最前線における酷使に耐えた。
 人生の前半は愚直さと朴訥さが印象的であった。織田家の東方の壁として武田を抑え続け、織田の西方進出を助けた。調略を覚える後半・第二巻が楽しみだ。
 家康でさえ、何度となく錯乱して我を失うことがあるんだ。

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2025年03月29日

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家康はじめ信玄や信長など武将たちの性格の違い、それによる国の治め方、戦のしかたが生き生きとリアルに描かれていて、直接インタビューしたんですか?!って言いたくなる。
司馬遼本人は家康があまり好きではないらしく、その保守的性格や名門好きなどをほんのりディスっている。三河侍の排他的で滑稽なほど忠義なところも好きではないらしい。
私も信長の方がいいな…

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2024年06月27日

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『古今東西の良き例をまねるゆえ、一つ癖に陥ることがない』
『天才ではない者は己の知を張り出さずひとの良きものを学ぶ』
『幾つかの解釈が族党内の知恵者のあいだで百出することを好む』

まさに、平凡な者が大成するためにまねるべき人物なのだろう。

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2024年06月02日

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まずは上巻既読。率直な感想としては家康という人はイメージどおりだなと。よい言い方をすれば慎重。悪い言い方をすれば臆病。配下(武将)には恵まれていた。それも人望と言われればそうなのかもしれないが。どの武将からも一目を置かれている武田信玄がもし病死しなければ歴史はどう変わっていたのだろうか・・。

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2024年05月22日

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ネタバレ

司馬遼太郎の本は、いつもひとつの事柄から、違った方向にひろがっていったり、例え話をいれてくれたりしてわかりやすく、おもしろいです。本作は、大河を見て家康をもう少し知りたくなり読んでみました。三河衆の忠誠心の強さ、今川衆や織田衆の三河衆の見下し、信長より信玄の生き方を参考にしたこと、三河物語は大久保彦左衛門のひがみが書き込まれていること、信康が長篠の決戦前での退却戦で殿をつとめたことなど色々知ることができました。いちばんは、築山殿の話。10歳も家康より年上で、多淫であること、ヒステリックであることなどは大河で有村架純演じたものとは全く違い、私はどちらかというとこの作品のイメージでしたが、本来はどちらなんでしょうかな~と考えてしまいました。後半は、義理の叔父にあたる酒井忠次とのやりとりにも驚かされました。信康の非常識な行動からしたら仕方ないのかと思いますが、当時は当たり前のことなんでしょうかね。信長との同盟関係を20年続け、チャンスや恨みもあったろうに、ただの1度も裏切ることもなかったのも、辛抱強いとおもいました。長篠の戦いの後の勝頼との戦いは、色々テレビやら本やら読んでもあまり描かれておらず興味深かったです。勝頼は戦には、強かったが、内政をおろそかにしたこと、北条との同盟を破棄して、上杉と同盟したことなどが、衰退につながっていくことなどは始めて知りました。また、家康も本能寺の変後は強大な勢力である北条と敵対するが、暗愚の氏直と戦離れしている北条軍の弱さを見抜いていたことなどもすごいなと思いました。下巻も楽しみです。

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2024年01月02日

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30代前半までに、主要な司馬遼太郎作品は読んだと思っていたのだが、徳川家康を描いたこの作品は、「主要な」作品と捉えていなかった。今般、NHKの大河ドラマを観ていることもあり、遅ればせながら読んでみた。上巻は、本能寺の変まで。司馬さんは主人公のスキキライがハッキリしてるのだが(司馬史観?)、徳川家康については、「妙な男であった(p318)」と書いてあるとおり(たしかに妙な行動は多い)、そうスキでもなさそうだ。さて、下巻へ続こう。

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2023年09月18日

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大河ドラマが始まって家康についてタヌキおやじぐらいのイメージしかなかったのでこれは読まねば!と。
正直今まで司馬遼太郎作品を読んで家康は好きになれなかったけどやはり読んでみるとイメージはかわる。確かに「奇妙な方」だ。

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2023年03月27日

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大河ドラマの主人公を時代小説で読むことを続けている。司馬史観などと言われたりもするけれども、それはやはり文章が重しろいからなのだと思う。ひょっとしたらこうかもしれないなと思わせる書きぶりは見事。後半も楽しみ。

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2023年02月24日

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徳川家康の今川家の人質時代から桶狭間の合戦で今川義元が織田信長に敗れ、織田と同盟を結び、武田北条と政治力で領地を固めてゆく。新しい支配者 秀吉にどう対峙していくのか。家康の部下が生き生きと描かれていて面白い。正妻 息子を殺さなければなかった家康。悪妻の評判の築山殿だが彼女の強きなプライドも哀しい。家康が人間関係を重要視しているのがよくわかる。

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2023年01月29日

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 徳川三百年の礎を築いた徳川家康の生涯を描く歴史小説。

 なぜか、戦国時代の司馬作品では、この作品だけまだ読んだことがなく、おりしも大河ドラマで注目されているので、この機会に読んでみました。

 上巻は、信長が討たれた所まで描かれており、家康の巧みな政治力で徳川家を守ってきた苦労が伝わってきました

 また、三河の風土であったり、三河武士の特徴であったりしたものがこの時代を生き残る重要な要素であったことも理解することができました。

 時折挟まれる司馬史観の余談もこの令和の時代にあっても考えさせられる内容でした。 

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2023年01月22日

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知ってたつもりだった、家康と、支えた三河衆のその歩み。 上巻は、甲州武田との繋がりに多くが割かれた印象。屈辱の三方ヶ原の戦いだけでなく、前後の学びと領土・人材の組み込みが、その後の躍進の基盤に。 或いは、奥方と嫡男自害申し渡しの悲劇が、正室 築山の方のヒステリーによるものなど、徳川家康に於ける自らの記憶と、イメージ修正が必要だと感じるに至った一冊。 田舎者から、天下人への変遷を辿る下巻が、早くも楽しみでならない。

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2023年01月09日

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家康の凄さを改めて感じることができる作品。
信長に対して、この行動がどのような影響を与えるか等を常に考えていた様子が伝わってきた。
おもしろくて一気に読んでしまった。

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2021年01月03日

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こういった歴史小説はあまり読まないので、読みきれるか不安だったが、読んでみると家康の新たな一面が次々と露わになってきて、あっという間に読み終えていた。
力強い肉体や、天才的な頭脳があったわけではなく、幼少期から人質生活を強いられ、常に誰かの顔色を伺いながら生きるようなその姿に、親近感が湧いた。
そんな彼が、300年続いた江戸時代を作り上げたのだと思うと、私にも何かできるのではないかと根拠のない自信が湧いてきて、仕事を頑張れた。

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2020年11月07日

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初めての司馬遼太郎で、メタ視線系の語り口に最初は少し違和感あったけれどすぐに慣れて戦国時代の物語に没入した。下巻へ。

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2025年07月20日

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信長、秀吉とは異なる人物像として丁寧に描かれていました。質朴、困苦に耐え、利害よりも情義を重んずる。商人尾張衆と農民三河衆の対比。浄土宗の信者。織田家の同盟者でありながら、信長にはまなばず、敵の信玄に心酔。三方ヶ原の戦いは特異点。現実主義者の家康がなぜ不利とわかって武田信玄と対峙したのかは不明でした。妻である築山殿の計画は恐ろしかったです。岡崎城内のどろどろとした人間関係の描写がとても気味の悪いものでした。日本の歴史に対し先覚的な事業をすこしも遺さなかっためずらしい存在、と記していることから司馬さんの家康評はあまりよくないのでは、と解釈しました。

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2025年04月08日

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三英傑の中の1人の徳川家康が主人公の小説を初めて読みました。徳川家康を含め家臣、三河衆の特徴についての書き方がわかりやすかった。私個人的には徳川家康を知るための入門書籍としては非常に参考になった。

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2023年05月21日

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どうも司馬遼との相性は余り良くない。

中学生の時に読んだ「項羽と劉邦」は抜群に面白かったし、大河ドラマと平行して読んだ「功名が辻」もなかなか良かったのだが、「坂の上の雲」は永遠と続く戦争シーンが退屈で4巻で断念したし(ただ子規が生きている間は良かった。日露戦争が始まったら作者が替わった様)、この本も下巻を読む気になるかどうか。読んだとしても内容次第で星が1つ減るかも。

合わない理由はまずは司馬遼が評価が低い人物をやや固執的にこき下ろし続ける事。「坂の上の雲」の伊地知(乃木)しかり、この本の家康(三河武士達)しかり。読んでいて鬱屈して来る。

後、日本の歴史を書いた作品が評価される事が殆どだが、海外の歴史を書いた作品の方が面白いと思うのだが。

因みに野沢尚脚本の「坂の上の雲」は素晴らしかった。(断念したが)原作を超えた脚本だと思う。

喜久屋書店あべの店にて購入。

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2023年02月07日

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ネタバレ

~全巻通してのレビューです~

「関ケ原」「城塞」と共に家康三部作とされている本書。
家康が童だった頃の人質時代から天下を獲るまでを描いています。
ただし、関ケ原の合戦や大坂冬の陣、夏の陣には触れられていません。

具体的には信玄との三方ヶ原の戦い、本能寺の変後の上方脱出劇、秀吉との小牧・長久手の戦い、石川数正出奔劇などが中心に描かれています。

家康は信玄をよっぽど尊敬していたんですね。
井伊の赤備えもできましたし。

また、信長の後継者に名乗りを上げた秀吉に対して、圧倒的兵力差がありながらも引かなかったのは凄いなと思いました。

「関ケ原」「城塞」を読んだ後に読む本としてはいいのではないでしょうか。
家康を知ろうとしてこれを読んだだけでは物足りないと思います。
私は山岡荘八の「徳川家康」を読んでたので、おさらいの意味でも読みやすかったですね。

あと、司馬先生は家康を好きではないようですね。
江戸時代という太平の世が長く続きましたが、反面閉鎖的で世界から取り残されましたからね。
評価は難しいところだと思います。

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2021年02月27日

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改めて司馬遼太郎先生の徳川家康を読むというのも、やはり面白い。歴史も時代とともに色々な捉え方をして変わってくるものであるが、司馬遼太郎の歴史観は、やはり全ての基本なのだろうと思いますね。

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2021年01月10日

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物語というよりは、第三者(つまり著者である司馬遼太郎)の視点から徳川家康について語らせた伝記物もしくは人物伝の印象が強い。

スタート地点は三方ヶ原の戦いあたりからであるため、山岡荘八の『徳川家康』に比べると、深く書かれているわけではない。

家康については『関ヶ原』でも主人公の一人として登場しているが、それはあくまでも関ヶ原の戦いにスポットを当てたものである。

司馬はもしかすると、家康にはそれほど興味がなかったのかもしれない。

ただ、司馬の歴史小説には、山岡や吉川英治のように、一人の人物にスポットを当て、その生涯全般にわたって書いたものがほぼない。これが司馬のアプローチなのだろう。

まだ下巻を読んでいないので断定はできないが、本作もおそらくそうだろう。

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2021年01月03日

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ネタバレ

徳川家康の本。司馬遼太郎は家康があまり好きではないようで、家康の劇的な人生の割にはページ数も少なく、小牧長久手の戦いで話が終わってしまう。まあその後の話は、「関ヶ原」「城塞」を読んで欲しいということなのでしょう。司馬遼太郎の考えでは、家康は全く新しいことをせずに人の真似のみで天下を取った、さらに本人は別に天下を欲していたわけではなく自分の領土である三河・駿河を守ることしか考えていなかったらしい。家康のすごいところは自分を人間としてではなく、殿様(社長)という部品であると定義し、人格を消してあくまで機械として一生を全うしたということ。現代のサラリーマン社長的な面があり、そこが個性で通した信長や秀吉と異なるところであり、徳川幕府という大きな会社が250年もの間存続することができた大きな理由なのだろう。また三河人は田舎者でそのために豪奢なことを嫌い、同族意識が強く外部のものを寄せ付けず、かつ我慢強く精悍な武士とのこと。信長、秀吉は三河人であり、明るく贅沢好きで経済感覚が非常に発達しておりお金を通して全てを考えていたので、三河人とは正反対であった。最終的に三河人(家康)が天下を取ったため、三河人の外部を受け入れないという気質が国全体に敷衍されて鎖国となったなどというのはとても面白い考えである。また、現代日本人の我慢強さや質素を好むような面(いわゆる武士道精神)も結局は三河気質によっているようだ。家康が現代に残した影響は相当大きいと改めて感じた。

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2020年03月28日

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ネタバレ

――真似るのだ。
 という。独創や創意、頓知などは世間のものは知恵というがそういう知恵は刃物のように危険で、やがてはわが身の慢心になり、わが身をほろぼす害悪になってしまう。いや、わが身の勝手知恵というものは――とくに戦の軍略のばあいは――いかに古今に絶っしたいくさ上手であろうと、やり方が二通りか三通りしかなく、それが癖になって決まりものになってくる。いつのいくさのときもおなじやり口になってしまい、それを敵がのみこんでしまえば、敵のほうが逆手にとって出てくる。結局は三勝して最後に一敗大きくやぶれて身をほろぼすもとになる。
「そこへゆけば」
 と老師雪斎はいった。
「物まねびの心得ある者は、古今東西のよき例をまねるゆえ、一つ癖におちいることがない。それにはなにがよいかという、よいものを選ぶ心をつねに用意しておかねばならず、そういう心におのれの心を持しているためには、おのれの才に執着があってはならぬ。おのれの才がたかが知れたものと観じきってしまえば、無限に外の知恵というものが入ってくるもだ。そのうちの最良のものを選ぶだけのしごとですむのだ」

雪斎の説では、天才とは一生で大いくさを三度もすればそれで十分なもので、百戦百勝というようなことはせぬものだということになる。さらに雪斎の説は、天才でない者はおのれの知を張りださず、ひとのよきものを真似び、それによって生涯粗漏のなきことのみ考えてゆくべきだ、ということになるらしい。

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2020年01月31日

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