あらすじ
「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」。明治三十八年五月二十七日早朝、日本海の朝靄の中にロシア帝国の威信をかけたバルチック大艦隊がついにその姿を現わした。国家の命運を背負って戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。大海戦の火ぶたが今まさに切られようとしている。感動の完結篇。
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8巻読んで良かった〜!
全てが決着し、このための物語だったんだなぁという感慨を感じた。気に入った箇所:
p92 「時間と空間が次第に圧縮されてゆく。刻々縮まってゆくこの時空は、この日のこの瞬間だけに成立しているものではなく、歴史そのものが加熱し、石を溶かし鉄をさえ燃え上がらせてしまうほどの圧縮熱を高めていたと言ってよかった。」
p278 「ロジェストウェンスキーは、彼が演じたあれほど長大な航海の目的地がこの佐世保海軍病院のベッドであったかのようにしずかに横たわっている。そのことが一種喜劇的ではあったが、元来戦争とはそういうものであろう。戦争が遂行されるために消費されるぼう大な人力と生命、さらにそれがために投下される巨大な資本のわりには、その結果が勝敗いずれであるにせよ、一種のむなしさがつきまとう。」
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最後は、一気に読み進めたくなった。「事実は、小説より奇なり」のような、偶然か必然なのか、自然現象までも重なって、日露戦争が、進んでいったんだ…
東郷のような上にたつ人が、違えば全然違う結末になっていたはず。そして、日本人は、優秀なんだと思った。この当時の日本人が、であるが…今も片鱗がちょっとは、あって欲しい。
勤勉さや愚直にただ一心に取り組む姿勢は素直さから来るのか、武士道につながる秋山兄弟の流れ、子規の明るさ、私たちの根底にあって欲しい。
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戊辰戦争後の明治時代を、正岡子規、秋山兄弟を主人公にして描いた作品。
日清日露戦争が特に中心になっており、陸軍の秋山好古と海軍の秋山真之が中編からは主軸となっていた。
文庫本全八巻と非常に長く、読むのに時間がかかったが、全体的には非常におもしろかった。
とくに日露戦争の戦術面での勝因を明確に記載しており、わかりやすかった。
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【30年ぶりに読む「坂の上の雲」】
最終第八巻は「敵艦見ゆ」「運命の海」「雨の坂」など。
「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、聯合艦隊ハ直ニ出動、之ヲ撃滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ浪高シ(p35)」
有名な日本海海戦開戦前の電文はやはり心動かされる。思い立って30年ぶりに全八巻という“一大叙事詩”を読み終えた感想としては、明治日本の若さと日本人の勤勉さ真面目さが眩しい!どうしても成熟した令和日本と比べてしまうが、どちらが良い悪いというものでもない。真之が作文した「聯合艦隊解散ノ辞」の結びの言葉である“勝って兜の緒を締めよ”は日露戦争やジャパン・アズ・ナンバーワン後の日本がもっと意識すべきだったな。
また、30年前に比べ、司馬さんの小説的技巧もわかるようになった気がする。折しも15年ぶりにNHKの「坂の上の雲」が再放送されている。つづいて映像でも楽しませてもらおう。
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長い小説で、読むのが遅いがために3ヶ月くらい使ってしまったけど、ほんとずっしり。
児玉源太郎が好きになりました。
乃木希典、いままでの認識と違って、ある意味はやはり被害者だったり。
またいつか、気が向いた時に読んでみようと思う。やっぱり、司馬遼太郎の小説はたまに読むとほんと良い。。
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クライマックスが一番スピード感あって面白かったから7巻は数ヶ月かかったのに最終巻は2週間半で読み終えました!とはいえ本編だけなので残すところ50ページ近くあるあとがき集を読み切ろうと思います。あとがきは筆者の考えなど当時の事情に寄り添っていたので考察の参考になりそう。
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ロジェストウェンスキーはなかなか考えさせられた。指揮することをまともに考えていない指揮官は戦いにおいている意味のない人に成り下がっている。けれど、皇帝の専制で戦争が行われているという意味ではこの指揮官も気の毒な被害者だとも言える。それらをひっくるめて?戦いあった同士?として敵国軍人に敬意を払う日本の軍人の姿は(いいことなのかそうでないのかわからないけど)なかなかかっこいいと思ってしまった。
またその一方で、勝って嬉しいわけではまったくなく多くの殺戮に苦悩し始めた真之の様子も印象深い。
戦争がもたらす苦悩とか虚しさを感じた。
全体を通して、維新でリセットされた日本社会とか、初めて国民とか国家を意識し始めた日本や世界とか、国民主権と専制君主の組織の力の強さの違いとか、いろいろ雰囲気を知ることができて有意義だった。
恐らく多分に司馬さんの好みや主観的な解釈が盛り込まれていると思われるが、一つの歴史の解釈を物語として追体験できた。
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▼エンタメと考えれば、この小説は(日露戦争は)いろいろあっても最後が日本海海戦で圧勝して終わるので、溜飲が下げられて素晴らしい。その、苦しい辛い中で最後スッキリというヤクザ映画的な語り口がこれまた上手い。海戦でも、まずは三笠が被弾しまくる描写も延々とやる。その次にロシア側の(日本軍と比べ物にならない)被弾を描く。そういう順番構成とか。上手い。
▼一つ勘違いしていたことがあって。ポーツマスの和平のあとで、日比谷焼き討ち事件がある。つまり民衆が「より戦争を、戦果を」と暴動を起こした。その戦慄の描写があって。そして、日本海海戦の完勝、その成果であるポーツマス条約。だがその中から昭和の戦争と完敗に向けた胎動が始まっている…というドロドロした思いが湧き上がって終わる。・・・と思っていたら、間違っていて、全然その描写は無かった。恐らく、同じ司馬遼太郎さんの「明治という国家」か、「昭和という国家」か、あるいは吉村昭さんの「ポーツマスの旗」か、どれかと記憶が混同していました。
▼今、個人的な興味関心で、「第一次世界大戦とは」というテーマに向けた読書の旅を続けていて、実は「明治日本と帝国主義先行国家とのせめぎあい」を畫いた坂の上の雲は、このテーマの流れとしてもとても良かった。
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日露戦争は日本の勝利と知っていたが、この本を読む事によって多くの両国の犠牲があった上でのことだと再認識させられる。
最後の章の、真之が子規庵に行った場面は海上での戦いとのコントラストを強く感じた。他愛ない日常も、戦争のもとでの日々も同じ人間の生活の一部なんだと思った。
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いよいよクライマックスで、この巻を読むためにここまで来たのだと思う。
日本海海戦がここまで圧勝とは知らなかったので、清々しさも感じた。
終わり方があっさりしているのは、この本についてはそれが良いと思った。それにしても超大作だった。
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この8巻を読んで本当によかった。
明治の歴史という今日にも続く通奏低音をこんなにクリアに生き生きと感じる文章に出会えたことは幸せなことだと思う。
「坂の上の雲」自分も坂の上にある雲に向かって進むような楽天主義を心に持っていたい。
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【全八巻の感想】
日露戦争史を通して国家とは、民族とは、日本人とは何かを深く掘り下げ追及している。
この戦勝こそが以降の日本軍を迷走させ、日本国を窮地に追い込んだ。
明治維新以降、西欧の帝国主義を模倣し、「国家」という概念を急速に醸成せざるを得なかった事情が我が国の精神と肉体とのあいだに巨大な齟齬を産んでしまったということが描かれている。
この作品は事実を小説化する限界と言っていいだろう。日本人に、また日本という国に関わるすべての人々にこの作品を強く勧めたいと思った。
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新生国家日本と巨大軍事国家ロシアの極東における攻防を描いた作品でしたが、始めから終わりまでその内容に釘づけになりました。本当に楽しく読めました。
また、いろいろな本を読んで今より広くて深い教養が身についた時に読み返してみたいです。
その時、この作品の中に新しい発見があることを楽しみにしています。
Posted by ブクログ
久々の小説にも関わらずこの大作を選んだのは、目下のロシア情勢もあって近現代史の勉強になればと思って手に取った。
調査〜執筆に10年かけられたこの大作は、司馬史観という言葉もあれど一つの史実と受け止めている。ロシアという国家の歴史をふまえ、なるほど今の侵略戦争も歴史の繰り返しなのだと納得する。
加えて、明治維新という激動の時代は密度の濃いものであるが、清国のように列強に侵略されまいともがき、ひたすらに上を目指す日本人の強さが輝いた時代の一つだったのだろう。
停滞感と閉塞感のある今の日本人が、先人に学ぶべく読むべき必読書である。
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日清日露を駆け抜けてきて、それがとうとう終わり、切ない気持ちになった。好古や真之、子規の生き様を感じることができた
日露戦争って日本人からすると自国防衛だけど、今後の各国の動きを左右するような戦争で、世界中から注目されてたんだな
Posted by ブクログ
坂の上の雲(8)
日露戦争については神話的に語られることが多いが、司令官たちの評価についてイメージが変わることが多かった。
そして、この勝利について参謀本部は自分たち自身で「日露戦争史」という、ただ出来事と数字だけを書いた何も役に立たないものを残した。
しっかりと分析と評価を書き込んだものを残しておいたのなら、
その後の昭和陸軍の愚行のようなものはなかっただろうと司馬遼太郎はあとがきでも語っている。
彼自身は直接、戦争そのものを否定する記述はなかったが、悲惨な戦争の描写と主人公の1人、真之がその後、精神世界に傾倒していったことで、戦争の狂気の面も描いている。
戦争は勝った国も狂わせる。
Posted by ブクログ
終わった...! 達成感がすごい。
8巻もの大作を読み切ったのは人生初かも?
(『天の瞳』は9巻だけど、別物な気がする)
司馬さん、まるで見ていたかのように描くなぁ。
と思いながら読んでいたけど、それができるのはやはり膨大な調査の賜物なんだろうな。
すごい仕事だ。
Posted by ブクログ
まるで戦場にいるかのようで、人物の心理にまで食い込んだ描写は、この巻だけではないがすごい!筆者の研究心、情熱はハンパないんだと思うこと、しきり。
日露戦争は日本の勝利、とだけ暗記していた学生時代の知識が、多いにアップデートされた。本当に際どい戦いだったんだなあ。
秋山真之が正岡子規の墓を訪れる場面。しみじみと心に残った。戦争に関する記述が多い中で、人が人を思う気持ちも描かれ、筆者の思いが感じとれた。
たくさんの、ブク友の皆さんの感想を読ませていただき勉強になりました。自分の歴史観の低さを痛感しました。歴史に興味がなく、日本史や世界史の授業は居眠りばかり。歴史を知らずして、今は語れない!学び直します。ありがとうございました。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎の代表作のひとつ。
文庫本にして八巻、構想五年・連載五年という大作。
1972年刊行。
伊予・松山の城下町に生まれた秋山好古・秋山真之兄弟と、真之の親友であった正岡子規の三人を主人公とし、明治初期〜日露戦争終結までを描いた小説。
秋山好古は、佐幕藩であった伊予松山藩の徒士(下級士族)の三男として生まれ、大阪師範学校を経て陸軍士官学校を卒業する。その際、創立間もない騎兵学科を選択する。以降、好古は生涯を懸けて日本騎兵を世界水準まで押し上げることに身を捧げ、「日本騎兵の父」と呼ばれるに至る。
後年、フランス軍人から「秋山好古の生涯の意味は、満州の野で世界最強の騎兵集団を破るというただ一点に尽きている」と賞される。
秋山真之は、好古の実弟で、秋山家の五男として生まれる。幼少期は腕白なガキ大将だった。地元の松山中学を中退した後、共立学校を経て、兄を頼って上京し、大学予備門(現東京大学教養学部)に入る。予備門では子規らと共に帝国大学進学を目指すが、経済的な事情で海軍兵学校に進学、主席で卒業する。
真之は、先輩・同輩から「異常に頭が切れる」と賞され、思考耐久力と直感力を併せ持った天才的な作戦家だった。その能力を買われ、日清戦争を経た日露戦争においては若くして連合艦隊作戦参謀となり、海上作戦を一任される。
正岡子規は、言わずとも知れた明治文学を代表する俳人。真之の幼馴染でもある。
子規は、松山中学を中退後、太政大臣になることを志して大学予備門に入る。卒業後、帝国大学に進学したものの、在学中に文学に強い興味を持つようになる。
大学を中退後、新聞『日本』の記者となり、傍らで文芸活動をおこなう。
子規は20歳頃から肺結核を患っており、35歳で若くして没するまで病に苦しんだ。しかし、彼の活動は俳句、短歌、新体詩、小説と多岐に渡り、日本の近代文学成立に多大な影響を与えた。
本作で司馬遼太郎が取り扱うのは、「日本人とは何か?」という問いである。
作者はこの問いの答えを、世界史上としても奇跡的な急成長を遂げた明治初期〜中期の日本に求めた。
作者は、この時期の日本を「史上最も楽天的な時代」だと称している。
はじめて日本が近代国家として成立し、その政府も陸海軍も小所帯であるが故に、どの階層の子も自らの努力と功績次第で国の中枢に入ることができる。各々の働きが日本の前進に直結する。この簡明さが、彼らのオプティミズムを醸成していると述べる。
実際、これは小説を読んでいて感じた。
若い国家において、若人が皆、健全な野心をもって世に出ていく。この価値観が強く描かれている。
彼らには迷いがない。己が日本を前に進める大物になることを信じて疑わない。
対して、現在の日本はどうだろうか。
長く低迷の時代が続き、アメリカに追いつくどころか、かつては歯牙にもかけなかった中国・韓国にすら経済規模で抜かれようとしている。
現在の日本の空気は暗く、日本人は自信喪失と自虐に蝕まれている。
悪い要因はいくつもある。
世襲と無能が招くビジョンが欠乏した政治、腐敗したオールド・メディア、現役世代を搾取し老人に「仕送り」を強制させる悪循環、挙げればキリがない。
しかし、全てを前の世代と他人のせいにはできない。
現役世代のビジネスパーソンは、99%は知識もスキルも足りていないと個人的に思う。危機感と主体性を欠いた怠惰な人間だと。
現在の日本に必要なのは、これらの悪環境を嘆いて暮らす従順さではない。自らが上位1%の人間となり、根本からの変革を主導してやるという、健全な野心なのだと、私は考える。
冒頭の問いに戻る。
「日本人とは何か?」
私が本書を読んで考える答えは、「日本人とは、勤勉さと勇猛さを兼ね備えた、本来は創意と工夫を得意とする類稀なる優秀な民族だ」ということだ。
日本人は、この資質を持って、列強国に200年を遅れた近代化(明治維新)からわずか三十余年で当時世界最大の国家の一つであるロシア帝国と対等に戦い、列国の仲間入りを果たすことができた。
このドラマは素晴らしい。それは間違いない。
しかし、本書においても触れられているように、巨大な成功体験はその国を狂わせる。
日露戦争の大勝は、後世の陸軍の自己批判の欠如を助長し、暴走を招いた。結果、日本を太平洋戦争という狂気に突入させた。
経済においても、戦後の高度成長という、単なる先進諸国へのキャッチアップに過ぎなかった事象が自信過剰を招き、構造的失陥を是正することなく持ち越されてしまった。
作中では、明治維新の藩閥を引きずる陸軍と、自浄作用を発揮して新生した海軍が対比的に描かれる。
陸軍に無能が跋扈して大量の犠牲を出したのに対して、海軍は若く、何の後ろ盾もない真之を連合艦隊作戦参謀に登用し、海戦史上で類を見ない完全勝利を果たした。
現在の日本で求められるのは、旧態依然とした体制からの脱却である。
この三十年間日本を停滞させてきた主犯の老人たちを一掃し、若く有能な若者を重要なポストに就かせるべきだ。これは政治でもビジネスの世界でも同じことだ。
現在の日本は、本書で描かれる老朽したロシア帝国とアナロジーだ。彼らは旧く、内に抱える構造的欠陥ゆえに亡国の憂き目に遭った。
日本を同じにしてはならない。変革が必要だ。
それが、日本を高めるために身を砕き、坂を上るように日本を引き上げた秋山好古・真之ら英雄に報いる唯一の手段である。
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秋山兄弟と正岡子規を主人公に置いて、日清戦争から日露戦争へと向かう明治の日本を描いた歴史小説。日露戦争についての細かい知識が無い状態で読んだため、物語の展開を素直に楽しむことができた。また、各人物のキャラクターがハッキリしていて、なおかつ印象に残るフレーズも出てくるため、長さの割りには飽きずに読めた。もっとも、元が連載小説であるためか、同じ説明が何度も繰り返される点は、冗長に感じた。
読後、坂の上の雲の内容は、司馬史観と呼ばれ、批判されていることを知った。司馬遼太郎が描く明るい明治と暗い昭和の対比は、たしかに現代日本人にとってしっくりくる感じがある。しかし、それが本当に正しい見方なのかを疑うことも必要では無いか、などと考えさせられた。
色々な批判はあれど、坂の上の雲で描かれる明治日本の疾走感や、各人物の生き方には、勇気や戒めをもらえた。長かったが、読んで良かったと思う。
Posted by ブクログ
実は司馬遼太郎作品はこれが始めてでした。
学校の教科書では、東郷平八郎ひきいる日本海軍がバルチック艦隊に勝利した。くらいしか書いてなかった記憶があり、少年だった私も遠い昔の出来事として何も印象に残っていなかった。
日露戦争を全般的に書かれているので、陸軍の二百三高地の激戦やその他の戦いもあります。
作者の並々ならね膨大な取材に基づいた海戦、陸戦の細かい描写に頭が下がります。
当時の日本の国力を考えればロシアに勝つなんて奇跡でしたが、日露戦争になぜ勝てたのか、ロシアはなぜ負けのかが理解出来ました。そして大東亜戦争になぜ負けたのかも。最終巻に作者の解説があり、作者の思いが伝わりました。
でもロシアって昔から変わってないんだなとつくづく思う。
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ついに、ついに最終巻。
対馬コースを進んでいくバルチック艦隊を、日本の仮装巡洋艦、信濃丸が発見するところからはじまる。
極力敵の艦隊に近づこうとして、気がつけば囲まれていた…なんていうアクシデントや、余談として語られるこの船の日露戦争後の話も興味深い。
またこの信濃丸に代わってバルチック艦隊を監視する三等巡洋艦和泉の覚悟についても読んでいて胸が熱くなった。
本日天気晴朗なれども波高し
この有名な一文についての丁寧な取材による考察や、
皇国の興廃この一戦にあり
というフレーズで掲げられるZ旗など、
思わず自分の中のナショナリズムを思い出させる日本海海戦。
その中でも一番印象に残ったのは、いよいよバルチック艦隊と何時ごろどこら辺の海域で合間見えるんだ、と判明した時に各艦各船一斉に余剰の石炭を投棄した後、艦内をくまなく掃除、消毒させ、兵隊を風呂に入れて新しい戦闘服に着替えさせたというエピソード。
戦闘の厳しさを知った上で、後方である軍医がその後のことを考えた戦術と言ってもよいこの処置に、これまた読んでいてジーンときた。
それにしても、戦争を調べるのはめちゃくちゃ労力がいるんだな。
日本史上はもちろん、その後の世界史上に於いてさえ日露戦争の影響はとてつもなく大きかったということが、かなりの解像度で今回理解できた。
明治という激動の時代の日本人にどんな人がいて、国民全体としてはどんなふうだったのかということも、臨場感を持つ肌感覚でわかった気がする。
40代のほとんどをこの物語に費やした司馬遼太郎が、この作品を書き上げたのは49歳。この事実をあとがきで知り、ほぼ同年代だったのか…と驚いた。
3ヶ月ほどかけて、文庫版坂の上の雲を通読している間、生活の1/5くらいは激動の明治時代に片足を突っ込んでいるような気分でいたんだが、なんと今月からドラマ坂の上の雲の再放送が始まる。
放映当時はタイトルこそ知っていたけど全然興味がなくてスルーしていたこのドラマ、しっかり毎週予約完了したし、
まだまだマイ明治ブームは続くのかも。
また機会があれば坂の上の雲ミュージアムにも行きたいな。
全8巻、本当に面白かった。
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開国から30年あまりでロシアと戦わなければならなくなり死に物狂いで戦い綱渡りの様な状況とロシアの自滅
もあり勝った。
負けていたらと思うとおそロシア!
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5巻を読んでいる頃、根岸にある子規庵を訪ねました。小さな日本家屋と季節の草花が植る庭から、子規の創作活動と家族3人での暮らしが想像できます。
日本海海戦から帰った真之は、この子規のいなくなった家を訪ねます。しかし、家の前まで行っても、戸を叩き、子規の母と妹に会うことはありませんでした。
真之は子規の家の前で何を思ったのでしょう。あの静かな路地にある真之の後ろ姿を想像すると、なんだかとても切ない気持ちになりました。
Posted by ブクログ
秋山兄弟を中心として、日露戦争を描いた長編小説のフィナーレ。読むのに時間がかかったが、非常に面白い作品だった。やはり司馬遼太郎作品はここの人物の人となりや当時の状況を大量の資料をもとに丁寧に描写していて、第三者的な視点で描かれているため臨場感はそれほどないものの、当時の状況が生き生きと想像できて面白い
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物語的な動きのある部分は面白く読めたが、やはり戦況の説明や戦力の説明部分は読み進めづらさがあった。
歴史の知識がもっとあればそこも楽しめたのかも。
最後のあとがきが面白く、そこを読んでこそこの物語のよさが分かるように思う。
Posted by ブクログ
ようやく読破。達成感が半端ない。
東郷率いる日本艦隊とロジェストウェンスキー率いるバルチック艦隊がついに日本海にて合間見える。日本側はバルチック艦隊が対馬側か宗谷、津軽側で来るのか直前まで迷い索敵などのおかげで対馬で待ち受けることができたのがこの戦いのポイントだろう。地理や天候などを考えたら対馬側から来る確率が高いが敵側の艦隊全てを沈没させることが勝利の絶対条件だった日本側は迷いに迷った。あの冷静な真之ですら直前まで北側からくるかもしれないと思っていたほどに。海戦が始まると日本側の統率の取れた艦隊運動、射撃能力をしてロシア軍を圧倒し歴史上稀に見る完勝を果たす。射撃に関しては当時では珍しく指揮官の命令により一斉射撃をする方式を取りこれにより命中率が格段と上がった。砲門の数で言えばロシアの方が多いが実際に当たる弾の数の方が大事であることを東郷が感じており、実際にそうなっている。この時のためだけに維新後から富国強兵をしてきたと言っても過言ではない。
この戦争に勝ったことでロシアの植民地になることは避けたが逆に日本軍の神格的な強さみたいなのが生まれてしまい40年後には太平洋戦争を引き起こしてしまうと考えると勝利時にあくまで辛勝で日露戦争があれ以上長引けば逆に負けていたということを国民自体が気づいている必要があったんだな、
こんな長編を書くにあたって作者は10年くらいかけているとあってさすがだなと。
Posted by ブクログ
完結巻。嗚呼、長かった物語もこれで終わりか。戦争の終結に至る過程はなんとも言えぬ思いで読んだ——ロジェストヴェンスキーが主将だったから露は負けたのだ。他の軍人だったならここまでの大敗はしなかっただろう。本当にどうしようもないヤツだ…。何があそこまでの強者を演出していたのか、不思議なくらいだ。
・・で、反対に日本のトップこと東郷であるが、故・野村克也みたいなひとだなぁ、と。
秋山兄弟を通して、日露戦争…いや"戦争"の何たるかをよーく学べた気がします。
(※後に、この快勝が太平洋戦争へと駆り立て、敗北へと導く原因のひとつなのですね…。)
愛媛旅行がきっかけで、ほぼ一年くらい掛けましたが、読んで良かったなぁと心から思いました。星三つ半。