【感想・ネタバレ】坂の上の雲(二)のレビュー

あらすじ

戦争が勃発した……。世界を吹き荒れる帝国主義の嵐は、維新からわずか二十数年の小国を根底からゆさぶり、日本は朝鮮をめぐって大国・清と交戦状態に突入する。陸軍少佐・秋山好古は騎兵を率い、海軍少尉・真之も洋上に出撃した。一方、正岡子規は胸を病みながらも近代短歌・俳句を確立しようと、旧弊な勢力との対決を決意する。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

文学の才能を余すことなく発揮している子規だけれど、軍事への憧れ、それに従事する真之を羨ましく思い、自己憐憫に浸る姿。一方、文学への想いに蓋をし、自分の適正を見極め、そして発端は生活のため軍事へ邁進する真之。才能ある2人でも、互いに無いものねだり、隣の芝は青い、というような想いを持つ姿には親近感を持つなぁ。子規は病気が進行していく中なのだから、余計に他に目がいきがちなのも当然だろう。
真之の、頭脳が考えた目的を最後実施するのは性格である。その性格をつくらねばならない、という考えは、いざという時に弱腰になりやすい、人間の弱さを受け入れた上で、厳しい戦場で目的を遂行する覚悟を感じる。
どこまでもシンプルで、実直な兄の好古は、武士の姿。
列強国が東アジアをも牛耳ろうといよいよ情勢が激しくなりつつある中、日本、そして子規、秋山兄弟がどのような運命を辿るのか。

0
2025年11月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 江戸時代の鎖国政策により、欧米に比べれば稀にみる平和が300年続いた日本。
列強の植民地政策に依り、いよいよ日本も安穏としては居られなくなり、明治という時代が幕を開いた。
 遅ればせながら西洋の物まねで、急速に近代化のピッチを上げた明治時代の日本。
 巻頭は、このような背景から、いかに日清戦争が起こったかを解り安く解説している。
 西洋の列強は後進国のアジアの国々を帝国主義という名のもとに支配下に置くことに、その食指を伸ばしていた。
 列強はシナをその支配下に置くことを熱望していた。しかし、「眠れる獅子」と言われる清国を刺激するのは躊躇われた。
 しかし、日清戦争により、その弱さを露呈した清国に列強は群がった。
特に、イギリスとロシアはその食指を清国に動かした。
 「清国の次に犯されるのは日本だ」と明治政府は危機感を抱いた。特にロシアは日本の侵略を計っていた。
 江戸時代末期に、ロシアは幕府をないがしろにして、対馬藩に交渉し、その領地を租借するという名目のもと、軍艦を対馬に停泊し停泊地付近で略奪暴行を行った。
 しかし、駐日英国公使がその艦隊勢力を背景にロシア側へ抗議し、ロシアの軍艦は去った。
 あやうく対馬はロシアの領地になることを免れた。
 明治になり、遅ればせながら列強の仲間入りをした日本。つい先日までチョンまげを結い、そのスネで歩いていた日本人を「猿」と西欧列強は馬鹿にしていた。
 大いなる危機感を抱いた明治政府はその貧弱な財政にも関わらず、最新の軍艦二隻をイギリスに発注した。
 明治時代の日本には軍艦の製造能力が無かった。「猿まね」と列強から揶揄された。しかし、帝国主義の領土侵略の恐怖から逃れるために、明治の日本は躍起に成っていた。
 満州を占領した帝政ロシアは、いよいよその食指を日本へ動かし始めた。
 この時代の帝国主義の侵略の嵐は何でもありだったのだろう。
 現代においても、他国への侵略戦争は絶えない。
 何百年経っても、人間の本質は変わらない。
 次巻は、日清戦争が終わって、十年の月日が経ち、日露戦争へ突入する。

0
2025年07月21日

Posted by ブクログ

日清戦争が起こり、当時の日本が戦争に挑むときの様子、緊迫感がビシビシ伝わってきた。

この2巻では、正岡子規が俳句の世界に大きな影響を与えていくところが描かれている。

病に侵されながら、血を吐きながら、研究に没頭する姿を感じて、自分の仕事に対する姿勢はどうかと振り返って読んでいた。

また秋山真之の言葉も印象的だった。

秋山真之が言う

「経験は必要だが、それによって智恵と同じだけ固定概念が染み付いてしまう。素人は新鮮な発想を取り入れて、時に玄人を負かしてしまう」

というような考え方が、今も通ずることだと感じる。

今、自分は会社内で新事業を始めようとしている。

素人は武器かもしれない。

日本の文明化がここから始まっていくんだ、という気配に満ちた2巻。

この先が楽しみ。

0
2025年04月14日

Posted by ブクログ

試験で仕方なく覚えた、歴史上の人物や事柄が、司馬遼太郎さんの手にかかると、生き生きと動き出してくるから不思議。

正岡子規が数学好きとのこと、初めて知った。源氏物語をよく読み込んでいたことも。源氏の写生力を絶賛していた。「読みさして月が出るなり須磨の巻」の句が記されていた。正岡子規は若くして亡くなったけれど、ホントすごい人だ。と同時に、司馬遼太郎さんも、小説にするまでの研究たるや、ものすごく大変だったと思う。

秋山兄弟や、正岡子規の自分の心情にまっすぐ生きる姿、情熱、カッコいい!

当時の、ロシアについての理解も深まってきたので、次巻も楽しみ。現在のロシアについて、思いを馳せられることができるのもいい。

0
2025年02月27日

Posted by ブクログ

【30年ぶりに読む「坂の上の雲」】
第二巻は「日清戦争」「米西戦争」「子規庵」など。好古・真之の秋山兄弟と正岡子規の人生がダイナミックに展開し始めた。“これは小説だそ…”と言い聞かせ、司馬史観を念頭に置いても、もうひとりの主人公というべき明治日本が若々しくて魅力的だ。令和に読み返す「坂の上の雲」。3巻に進もう。

0
2024年07月15日

Posted by ブクログ

▼2巻は好古・真之・子規を追いつつ、日清戦争勃発。▼結局、秋山兄弟は貧乏のために軍人になる。正岡子規は貧乏とは言えない。なので軍人にはならぬ。単に出世を目指すが落ちこぼれて文学を目指す。その際に「"初めて世代"は良いなあ。大したことなくても世に出れた」と、嘆き羨む。これはほぼ、「西洋化」の第一世代か。▼結局、正岡子規は、アメリカ開拓時代終盤の移民者が必死に空き土地を探すかのように、自分の居場所を探して俳句・短歌の文学評論にたどり着く。▼このあたりの心情は、デジタル化という現今の変化でも、似たようなことがあるんだろうなあ。

0
2023年11月26日

Posted by ブクログ

ロシアの成り立ち、ロシアに関連する人の説明がメインでした。日露戦争がなぜおこったのか背景が丁寧に説明されている。
一転正岡子規の章は松山のお国言葉なども交じりあたたかい気持ちになった。

0
2023年09月21日

Posted by ブクログ

世界のうねり、日本の断捨離

◻︎感想
個人ドラマ、心情を通して近代国家の観念や盛衰を体感できる。だから司馬遼太郎氏の歴史小説はここまで有名になったのだろうとよくわかる。
近代以前の歴史や民族性にも触れながら、欧州国家や米露の成り立ち、清の現状が描かれており、その中で日本という国家がどういう意思決定をして、その中で躍動した日本人が居たわけである。秋山好古、真之、正岡子規に加え小村寿太郎なども加わる。

・思い切った西洋化はなぜ必要だったのか?
藩→県ではなく藩→国家、日本人(勝海舟の貢献が大きい)への転換期、帝国主義は必然だったのか

・秋山好古、真之の戦術家としての成長
企業人としても学ぶことが大きい(再)。戦略あってこその戦術だが、戦術を軽視してはいけないことがよくわかるし、戦術家になるということは多くの学びが(特に情報が不足していた120年前の時代は)必要なのだとわかる

・気の大切さ、ひいては観
頭脳明晰かどうかより、持って生まれた(後天的でも可?)性格が重要という描写が多い。好古の騎馬も真之の戦術実行もそうで、ロシアの皇帝にも使われている(父アレクサンドル3世と子ニコライ2世の比較)。
これは経営者は学歴よりも「観」が大切と説くことと、一致するわけではないものの、考え方としては近いのではないだろうか。後天的に勉強=studyによって鍛えるのではなく、経験によって観を鍛えさせることが大切であり、観がどれだけ磨かれるかはもはや生い立ちにまで遡る必要があるというのと、性格に帰結を求めるのは似ていると思える

0
2023年01月04日

Posted by ブクログ

好古、真之、子規。

それぞれが猛烈なスピードで成熟していく様がとても面白い。
3人に共通しているのは、物質的に不自由な環境下で、精神的に充実しているということ。

自身の目標を明確にし、覚悟を持ってその達成に邁進している姿は、率直に言って妬ましい。

覚悟の裏にあるのは責任感。
前巻では功名心に猛っていた3人の変わり様も鮮やか。

0
2020年09月21日

Posted by ブクログ

この明治の時代に、主に清国を中心に各国がどのように応対していたのかがとてもよくわかった。司馬遼太郎は本当によく調べあげていて驚愕する。、

0
2020年07月13日

Posted by ブクログ

開戦までの緊張感。海外の技術や文化に触れる真之達の高揚感。それを羨む子規のもどかしさ。それを句にして大きくなっていく姿と闘病。
みんながみんな切磋琢磨してる感じがしてら面白い。
国家同士の思惑や策略が入り混じって世界は戦争、侵略ブームだったのかなと感じさせられる。
まだまだ序盤。これからも気になる。

0
2025年10月10日

Posted by ブクログ

真之と子規の友情、絆にグッとくるものがあった。命短い子規の覚悟を見ると医療の力で生き延びる現代との違いを考えさせられる。舞台がどんどん海外へと広がっていくのも面白い!

0
2025年08月28日

Posted by ブクログ

日清戦争から、子規の病床、そして甲午農民戦争が勃発し日露戦争手前の緊迫した時代へと入っていく。

真之は留学中に見た米西戦争で、後の日露戦争での封じ込め作戦に繋がっていく。真之は沢山の本を読んだり、起きた事象を分析し、物事の要点を抑えて不要な部分は捨てる。こういう人が戦略を組み立てられるのだな、と実感できるエピソードが節々にある。

0
2025年04月06日

Posted by ブクログ

正岡子規が俳人として名を成していく姿と病に蝕まれていく姿の対比が切ない。

正岡子規の言葉
「悟りをひらいたり念仏をとなえたりしているひまはない」

日露戦争の最前線にいた秋山真之は正岡子規より死に近かったのだと思う。
戦争は、『戦争をしない』という選択がなくなって、誰もその流れに逆らえない状態で始まる。
『戦争をしない』は、人類にとっては難しいのかも。

今後の秋山真之のメンタルの変化が気になる。

0
2024年12月29日

Posted by ブクログ

ロシアが、今のロシアと重なる。日本もではあるが…
真之の賢さ、先を読む力、大局をみる力、そして友を思いやる心、…ただただ感服。

0
2024年11月19日

Posted by ブクログ

日清戦争の実情が面白すぎる
とことんだらしない清国軍とやる気に満ちている日本
好古は天津の司令官になった
真之はイギリスやアメリカに留学に行き、米西戦争などから「戦術と戦略」を学ぶ。これが日露戦争で大いに役立ったと言われているらしい。
子規は尚、病床。悪化の一歩を辿る。日清戦争の記者になれて大喜び。「日本」よりも「ホトトギス」が売れだし、界隈では有名な作家となる。

0
2024年05月16日

Posted by ブクログ

自分は子規と比べるまでもなく凡庸な人だけど、幼なじみが出世して社会で影響力を増していく中で自分が燻っていることの悔しさとかこれでいいのかという気持ちはちょっとわかる。

0
2024年02月20日

Posted by ブクログ

日清戦争の描写に臨場感があり、三人の登場人物に感情移入しながら読める。戦争の渦中において三者それぞれの役割やその中で感情の機微を感じ取ることができ、且つ日本史を学ぶうえで転機となる戦争を日本の勝因、清の敗因を冷静な切り口で分析されていて読み応えがある。

0
2023年09月09日

Posted by ブクログ

日清戦争から義和団事件まで。
教科書の行間に埋もれた詳細な情景や外国視点での情報が豊富で文も読みやすい。

0
2022年08月18日

Posted by ブクログ

とても面白かった。
ロシアという国がなんとなく分かった気がする。
当時の日本の雰囲気もよく想像できた。

0
2022年06月09日

Posted by ブクログ

日清戦争勃発。真之の純粋、真面目な勤勉姿勢や正岡子規の死を意識した中での俳句への情熱。今とあまり変わらないロシアの思想、時代の世相を表した街の雰囲気。躍動的な時代を感じます。

0
2022年03月01日

Posted by ブクログ

正岡子規の従軍について触れられた章では夏目漱石が登場したり、同郷の真之とのやり取りに触れられて良かった。
真之の渡米の様子はその尋常ではない勤勉さに感心する。戦争と言うものが、真之始め様々な人間によって行われ、当たり前の事ですが、全ては人間の手によってその命運も分かれると言うことを痛感する。

0
2022年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ



「たとえば、軍艦というものはいちど海洋航海に出て帰ってくると、船底にかきがらがいっぱいくっついて船あしがうんと落ちる。

人間もおなじで、経験は必要じゃが、経験によってふえる智恵のとおなじ分量だけのかきがらが頭につく。

智恵だけとってかきがらを捨てるということは人間にとって大切なことじゃが、老人になればなるほどこれができぬ。」


「人間だけではない。国も古びる、海軍も古びる。かきがらだらけになる。」

「山本権兵衛という海軍省の大番頭は、かきがらというものを知っている。日清戦争をはじめるにあたって、戊辰以来の元勲的な海軍幹部のほとんどを首切ってしまった。この大整理は海軍のかきがら落しじゃ。(中略)おかげで日本海軍の船あしは機敏で清国戦隊をどんどん沈めた」


秋山真之・正岡子規の会話より。
海軍や和歌の世界をひっくり返そうとするときの会話がすごく心に残った。

0
2021年10月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ついに日清戦争勃発。
開国から30年ほどしか経っていない日本がなぜ中国やロシアに勝つことができたのか。

それは新興国であり勢いに乗った日本独特の時代の空気感だったんだろうなと。
その渦中にいた若者は、学ぶこと=自分が国を作っていくということにつながることをよく理解していて、
ある意味恵まれた時代でだったのだろうなと思う。

正岡子規や秋山兄弟の思想にも学ぶべきことが多々あった。
今はこの時代のようにシンプルな時代ではないけれど、自分の考えを持ちそれを論じるということは力強く生きるために必要なことと思う。

秋山真之の長旅を続ければ続けるほど船に付着していく牡蠣が戦闘力を弱める、古いものはしっかり管理して都度クリーンにせねばならない
正岡子規の要は運用である(誰がやり始めたかではなく誰が使ったか)
マハンの真似するだけでなく原理原則を学ぶことが重要
など学びあり

0
2021年02月18日

Posted by ブクログ

明治維新から数年で、諸外国と肩を並べられたのはなぜだろう?
今同じことを成し遂げるだけのエネルギーは存在するだろうか。

0
2020年10月26日

Posted by ブクログ

ついに日清戦争が勃発する。甲午農民戦争を機に清と戦争を始めるが当時の清の軍人たちは漢民族ではない国主たちに対しての怠慢などにより日本は勝つこととなる。この時秋山好古は騎兵隊を率いて旅順に侵攻するも負けてしまうが海軍の活躍などもあり旅順要塞を落とす。弟の真之は海軍として参加するも、主力艦には乗っておらず黄海海戦、威海衛戦には参加しなかった。その後真之はアメリカへと行き海戦について研究しまた米西戦争でのアメリカ海軍のやり方を学ぶ。その後北清事変を機に日本および西洋諸国が清へと軍を派遣して好古はその駐在軍を指揮することとなる。
時を同じくして正岡子規は短歌、俳句について持論をホトトギスで論じ紀貫之らの歌を批判するなど過激な評論をすることで内外から批判を受けることとなるが病身を奮い立たせ我が道を歩む。
帝国主義の恐ろしさが随所に現れていて西欧諸国の狡賢さには恐怖を感じる。自分の領土を広げることに邁進する国たちが近くに来たらそりゃあ近代化して抵抗したくわなるわな。

0
2024年11月28日

Posted by ブクログ

日清戦争は、老朽しきった秩序の清国と新生したばかりの秩序の日本とのあいだにおこなわれた大規模実験のような性格を持つとのこと。
小学生か中学生の時、上記のような背景には触れず、「日本が勝利し、下関条約で台湾、遼東半島などを割譲された云々」みたいなことを淡々と話されたくらいでした。

0
2023年07月16日

Posted by ブクログ

明治時代に興味がなかったせいで、時折出てくる偉人の名前が分からず、Googleで検索しながら読み進めた。
いつもの倍の時間がかかったが、更に先が気になる。

0
2023年01月03日

Posted by ブクログ

秋山兄弟の境涯と、正岡子規のそれとを対比させて読んでいました。登場人物の人間味が、前作よりも強烈に感じられます。次巻の展開が楽しみです!

0
2022年03月27日

Posted by ブクログ

大学2年または3年の時、同期から「読んだこともないの?」と言われてくやしくて読んだ。
長くかかったことだけを覚えている。
文庫本は実家にあるか、売却した。
そして2009年のNHKドラマの数年前にまた入手して読んだ。
秋山好古・真之、正岡子規について、初期など部分的に爽快感はあるが、とにかく二百三高地の長く暗い場面の印象が強い。
読むのにとても時間がかかった。
その後3回目を読んだ。
バルチック艦隊の軌跡など勉強になる点はある。なお現職の同僚が、バルチック艦隊を見つけて通報した者の子孫であることを知った。
いずれまた読んでみようと思う。(2021.9.7)
※売却済み

0
2021年09月07日

「歴史・時代」ランキング