中島京子のレビュー一覧
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姉の露子と、妹の佳子。
佳子が台湾人青年と結婚する事になり、その時期をめぐる露子と佳子の散文的な日々の記録。
「結婚」がテーマであるようであり、実際にはあまりそれにはこだわっていない本だ。
個人的に、露子の過去の恋愛(カメラマンの竹内)について心が傷んだ。女性の中には、こういう経験、つまり、恋愛において、相手からの愛情を得ることができずに苦しんだ経験を持つ人はきっと多いと思う。私にも心当たりがある。
相手が竹内のように悪い男でなくても、そういう経験、依存心は、思いの外長期にわたって自分の心をを苦しめるものだ。
露子が大事にして、誰にも見せないでいたクロッキー。
それを中華食堂の中で、みんな -
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ネタバレ部屋にまつわる7つの短編小説。作者曰くサブタイトルは「へやのなか」
ちょっとクセのある登場人物たちが、それぞれの部屋で過ごす日常を切り取ったごく普通の描写がすごく面白い。「クセのある」と書いたが、プライヴァシーの最たる場所たる我が家のそれも部屋の中であれば、誰だってクセはあるものなんだろう。テレビで帰宅する人の家についていく企画があるが、それだけで人間ドラマが撮影できるくらいに、人が住む部屋には住む人の数だけドラマがあるわけだ。
そのドラマをきちんと切り取って(フィクションだから構成して…か)短編小説にするのが小説家の腕なんだが、中島京子はその腕があるんで、読者としても安心して部屋の中のド -
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ポップな表紙が印象的な短編集。
1篇ごとに世界もがらりと変わる。
表紙のように、とてもカラフル。
が、共通するのは、どの作風も一風変わった人や設定があることだろうか。
小石川植物園で鰐を探し続けるヒロインも不思議だが、そこで彼女が出会うのは「銀杏の精」を演じ続ける中年男性。
放課後にだけ現れ、一部の人にしか見えない「ゴセイト」。
結婚前にした鼻の整形後のメンテナンスができず、鼻の話題に極端に過敏になっている女性。
彼女の夫はこともあろうに、ゴーゴリの「鼻」を生物学的に考証しようと、「鼻行類」などの話を滔々とする。
シュールな中に、独特なユーモアが感じられる。
シュールな作品に耐性(失礼! -
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スカイツリーが見える、東京の下町。
古くからのお店と新しいお店が混じり合う、明日町こんぺいとう商店街の、七軒のお店の物語を7人の作家が描くアンソロジー。
既読の作家さんは、大島真寿美さん、彩瀬まるさん、千早茜さん、中島京子さん。
それぞれの持ち味が出ていて、どれも面白かった。
大山淳子さんの『あずかりやさん』が、盲目の店主が一日百円で大切なものをあずかるというお店を舞台にしていて、にぎやかな商店街の中、しんとしずかな店という感じが良かった。
アンソロジーを手に取ると、こうして新しく好みに合いそうな作家さんが見つかるのが楽しみ。
こんぺいとう商店街シリーズとして続刊もあるらしいので、続きも -
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錚々たる方々の訳した古典文学!
竹取物語がモリミーの手にかかると、翁や貴公子たちの下心がスケスケで困惑するかぐや姫が目に浮かんでしまう。
和歌の訳がまたニヤニヤ。
むかし男ありけり、の伊勢物語はこんなに長いお話だったのかと驚いた。恋愛だけでなく友情や仕えた親王とのやり取りが印象的だった。
男としか出てこないので、これが業平のことなのか、時期はいつなのかとモヤモヤもするけれど、一遍の凝縮ぶりに愕然とする。
堤中納言物語はいろんなテイストの話が襲いかかってきて気が抜けない。
和歌の訳が絶妙!
有名な虫めづる姫君の女房たちの嫌らしさときたら、普通に和歌を訳しただけでは伝わってこないかも。
土佐日記、 -
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中島京子さんは初。
こちらのインスタで何度も目にしたため、読みたいと思っていました!
主人公の茜は43歳、独身。亡くなった父の桃蔵が残した古アパート「花桃館」の管理人を、会社を辞め、思い切って引き受けることに。
失恋に悩むウクレレ奏者に、父親がべらぼうに情けない3人息子の父子家庭、万年整形を繰り返す神出鬼没の女性、猫と暮らす探偵、そして、父の元恋人。
そこに住んでる住民たちはみな、一癖ありへんてこりんだ。
茜は彼等に巻き込まれ、翻弄されながらも、少しずつ管理人業に親しみを覚えていく。
高校時代の同級生であり、またこれも一癖ある尾木くんとの距離感も良いよね。
もう、彼等のやりとりが最高に -
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亡くなった父からの相続でアパート経営をする事になった40代のいかず後家の茜さんのお話
一癖も二癖もある住人たちとのコミュニケーションが愉快
目次が部屋の号数で、それぞれの住人のお話になっている
101号室 茜さんが大家になる経緯
302号室 家賃を滞納している売れないウクレレミュージシャンの玉井ハルオ
201号室 生活能力の乏しいシングルファザー妙蓮寺大輔と子供の陸、海、空
202号室 知的で教養のある仲むつまじい谷川夫婦だけど実は……
203号室 整形マニアの高岡日名子
303号室 部屋に猫がいる、探偵の槌田直樹
301号室 クロアチアからやってきたポーエットイヴァンほろほろヴィッチ
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最初は何となく垣谷美雨さんのような作品かと思った。
特に思い入れを持ってこの本を読み始めたわけではないけれど、面白く、すっかりはまってしまった。
49歳、税理士事務所パートの主婦、宇藤聖子。
夫の守は大学の同級生で、ライター。
その夫が、ある企業のPR雑誌に、創業者から女性論を連載する注文を受ける。
その女性論とは、伊藤整の『女性に関する十二章』。
これがストーリーの要所要所で、聖子の読書に連れて作中に導入されていく。
時に登場人物がこの文章を批判したり、思わず同感したり。
その塩梅が絶妙で、伊藤整に引きずられることもない。
こういうところが、キャリアのある作家だなあ、と感心するところ。