中島京子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
九州の田舎町にある私の実家は、元々は4世帯が入るこじんまりとしたアパートだった。自営業を営んでいた両親が副業として運営していたアパートで、近くの小学校に勤める先生などが住んでいた。田舎のことなので家賃はかなり安くて、土地建物のローン返済と修繕費などを支払うと家賃収入はほとんど消えてしまっていたのではないだろうか。それでも世話好きだった両親は、大家さんとして店子さん達と楽しくやりとりしていたようだ。
時が過ぎて、高齢となった両親は営んでいたお店を廃業し、貸していたアパートの2階を改築して住むようになり、そのうち1階の住人にも退去してもらい、物置や仲間の集まる趣味の部屋として活用するようになった -
Posted by ブクログ
成人式を舞台にした大道芸人と新聞記者のお話「空に、ディアボロを高く」
結婚を斡旋するベテランの菊池マサエ。その相性を読む直感は冴え渡って来た。もう引退していたマサエが、請われて最後に世話したのは・・・「この方と、この方」
佐々木直之が命じられたのは、高齢女性を、葬式に連れて行くこと。何か訳ありの関係らしい。「葬式ドライブ」
田舎の山奥にある古い家で、最後のお盆をしようとする3姉妹。そこに現れたのは・・・「最後のお盆」
どれも、人生の妙を感じさせる、いいお話でした。
中島さんに、いろいろな人生や、人との出会いをさせてもらい、生きて行くことは、小さな運命の連続なのだと知らされているような気がしま -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ*15年ぶりに、しかも誕生日に、部屋に恋人未満の男を招くことになった36歳の由紀子。有休を取り、ベッドの到着を待ち、料理を作って待つが、肝心の山田伸夫が…来ない!表題作ほか、新入りが脱走した相撲部屋の一夜を描く「八十畳」。やもめ暮らしの大叔父が住む、木造平屋に残る家族の記憶をひもとく「私は彼らのやさしい声を聞く」など、“7つのへやのなか”を、卓越したユーモアで描く傑作短篇集*
この方は、こういう他愛もない日常の、さもない悲喜こもごもを描くのが本当に巧い。登場人物たちと一緒になって、悩んだり慌てたり喜んだり落ち込んだり、そんな体験が出来るのも、中島作品の醍醐味かも。
中でも、特に好きなのは、 -
Posted by ブクログ
本書の舞台は、銀婚式を迎え、一人息子は地方の大学院に進み、今は二人暮らしの家庭。夫 守は小さな編集プロダクションを営み、妻 聖子は経理事務所でパートとして働いている。
ある日、夫がある企業のPR誌に女性論の執筆依頼を受け、参考文献として書棚から60年前のベストセラーエッセイ 伊藤整著「女のための十二章」を取り出し、読み直している。その夫から「君も読んでみる?」という勧めもあって、妻はタブレットで読んでみることに。
本書は、妻 聖子の日常で起こる様々な出来事とふたりが読み進める「女のための十二章」が絶妙な塩梅で絡み、展開していく。
一見、平凡に見える日常も、いろんな小波が押し寄せては消え、 -
Posted by ブクログ
ストーリーラインは極めて悲惨、72歳の当主に66歳の妻、30歳の引きこもり長男3人家族に、自己破産した娘婿家族、離婚して未婚の母となる次女、そして姑。よくここまで集めたなといったオールスター軍団がひとつ屋根の下で集う(正確には3つ屋根の下、なんなら一つの敷地でもよい)物語。一つ一つの家族の形は取り出してみると、昔ほどは悲惨ではないが、でもやはり厳しい状況である。そしてそれが一つの敷地に集うとなると通常は「親の育て方が悪い」となるが、それはほとんど感じないのである。なるべくしてなった、そんな自然な形で物語は構成されている。
しかし、である。どことなく明るい。おそらく想像だが少しずつ上向き気味に