中島京子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
長年勤めた雑誌編集を辞め、日本文化を紹介する教師交換プログラムの教育実習生としてアメリカに赴いた作者の体験記。
3歳から14歳までのコドモたちを相手に奮闘する姿が描かれています。
アメリカだからなのか、この土地この学校だからなのか、異なるものを受け容れる力の強さを感じます。日本なまりの英語のことをぼやくと「でも私たちはあなたの英語が好きよ」と、さらりと答えてくれる。自分たちの場所に来た異物ではなく、私もあなたも彼も彼女もみんながいる場所として受け容れてくれる。そんな経験の素敵さが書かれ、この本を読むことでそれを疑似体験できることが嬉しいです。 -
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Posted by ブクログ
『東京観光』を読んで、久々にもっと中島さんの作品を読むかと思い読んだ。最近台湾に行ったりしたこともあり。
たぶん、今の自分の、いい加減にたゆたう状況に合っているのだろう。一気に読み切れた。
露子の、日常に退屈してしまっている感じと、佳子の、コミュニケーションの不器用さ。ちょこちょこと共感できるところがあり、考えさせられた。学生の頃、ひたすら日本は生きにくいと思っていた。そうしているのは自分自身に他ならないと思いながらも。それを思い出した。
終わり方のほっこりした感じと、露子も佳子も、自分の人生をつかんでいくんだろうな、と明るく感じられるところが良かった。
2014/10/29 -
Posted by ブクログ
久しぶりに中島さんの本を読んだ。やっぱり好きだなと思った。ありえない日常だけれど、少し視座を変えるとこんな日常もあるのではないかと。人間のやりとりが生々しいし、生々しいけれどユーモラスで、こんなやりとりができるユニークな人になりたいと思う。
お気に入りは、『コワリョーフの鼻』と『シンガポールでタクシーを拾うのは難しい』だ。どちらも夫婦が題材だが、やりとりがそれこそ、生々しいのだ。何を相手に求めているのか。それが違和感なく全て入ってくる。『コワリョーフの鼻』はそこに、さらにユーモラスも加わり、ほっこりする内容だった。
他の中島さんの作品も久々に読んでみようと思った。
2014/09/27 -
Posted by ブクログ
森のくまさんの歌が聞こえたら、逃げなければならないのよ。
そんな言葉をきっかけに始まる逃避行の物語。
中島京子の作品は、どちらかというと昔の物語に今の物語をシンクロさせて話を進めていくイメージが強いのですが、今回の作品は、今の物語に昔の物語を取り込んでいきます。それも、バラバラな話をたくさん、自由自在に。今ここでその話はちょっと無理があるかなと思う話もありますが、その話がこの物語の核になるので、そこは力技で。「イソポ」って。「イソポ」すごい語感ですよね。「イソポ」「イソポ」って言っていると、「イソポ」は絶対にいなくちゃいけなくなってくる。「イソポ」の勝利。そんなところも含めて自由自在です。
こ -
Posted by ブクログ
出て来る男はアホばっかりだしそんなヤツらにコロッと騙される瑛ってどうなのよ?と訝るところも無きにしも非ずなのだが…中島京子ファン限定で話をさせてもらえば今回はクリーンヒットなのだろう。「FUTON」「イトウの恋」でお馴染みの劇中劇も綺麗に纏まっているし逃げ出したニノを盗んだ自転車で捜し求める疾走感は「ハブテトル〜」の大輔を彷彿とさせる。言わば本作は彼女のエッセンスがギュっと濃縮されたような物語なのである。舞台は鹿児島か?生きるべき場所を見つけた砂糖屋の看板娘は純真な黒砂糖のようなニノと三温糖の如く優しいおばあちゃんとともに桜島の噴煙の下で生きていくんだろうね…いいお話でした
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Posted by ブクログ
いつしか加速度的に、早く続きが読みたい、続きが読みたいと思って、駅で電車を乗り換えるときも、改札へ向かうエスカレーターに乗るときも、ずっと手放せずに読んでしまった。
食べるときは、食べることに集中しようという私の信条(最近はじめた)も破ってしまうほど(簡単だった)ずっと手放せなくて、続きがものすごく気になった。
すごい推進力のある小説…!
気になるのは、もちろんIBと、イトウの恋の行方である。
イトウの想いは、どこへどういくのか、
彼はどこへ向かうのか。
ひっぱるのが、「恋の行方」というところがいい。
サスペンスは数あれど、恋の行方を謎にしたものはそんなにないような気がする。
「恋の行方、