中島京子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
成人式、結婚、葬式、お盆。
日本の儀式をテーマに描かれる連作小説。
儀式そのものを舞台に展開される物語ではなく、主人公や作者の視点を少しずらして書かれていて、中島京子さんらしいユーモアも含まれていてとても面白かったです。
語り手は、成人式を取材に行った地方新聞の若手記者や、かつてお見合いおばさんだった六十代の女性、社命で老婦人の葬儀のお供をした青年、母の生家を手放すのを機に、田舎に集まって最後のお盆を迎える三姉妹。
今の時代、結婚式も葬式も簡素になってしまったけれど、ここに出てくるお見合いおばさんの存在が何とも微笑ましく、言うことが的を得ていて、中島さんの魅力が存分に感じられます。
そして登場人物のほんの少しのつながりがみられて、まるで長編小説を読んだかのような気分になれました。
親族や家族の集まる儀式って、いつの時代もどんな形であれいいものなのですね。
心が和みます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスランプに陥った作家「わたし」は唐津に旅をする。
そこで陶芸家の夫婦と知り合い、不思議な茶碗と、朝鮮の娘と、水神にまつわる話を聞かせてもらうことになった。
サワタローさんの語る『水神夜話』は、家に伝わる長い話で、水神とは河童のことらしい。
ファンタジーなのか、ファンタジーを装った歴史小説なのか。それとも反戦小説なのか。
ここでの水神の祖先は天竺からモンゴルを経て中国へ、半島から泳いで日本に渡り、九州に住み着いた。
水神は、人間社会に絡みつつも、人間の生態を観察し、一歩距離を置く。
『水神夜話』では秀吉の朝鮮出兵を止めようとする水神について語られる。読みごたえがあった。
ある日、朝鮮の名陶工の娘・銀緋(ウンビ)の焼いた不思議な茶碗が、カタカタと震え出す。
聚楽第の茶室での会話を聞いた茶碗が、猿が朝鮮半島を侵略するという情報を伝えたのだ。
戦が始まる。
インドから中国を経て日本に渡る間、各地に住み着いた水神の仲間がたくさんいる。
戦が起これば、仲間がたくさん殺される。川が血で汚れ、水が飲めなくなる。
水神たちは何とかして、猿の朝鮮出兵と、その先の明への侵略を止めなくてはと思う。
しかし、戦はヒトが行うもの。水神が直接手を下して止めることはできないのである。
そこで、水神たちは彼らの特性を生かして情報を収集する。
茶人と親交を持った者、島津義久の元にいる明人の医師の周辺を探る者、小西行長について回る者・・・
その過程で、猿以外の誰も明との戦いを望んでいないという状況に気づいていく。
しかし、中小の大名たちはもちろん、島津や徳川のような力のある武将も、猿の戦は愚かで無謀と分かっているのに、楯突くことが出来ないでいる。
どうやら、ヒトをあてにはできないらしい。
水神たちは、猿の野望を打ち砕くことができるのか!?
水神の一人、対馬の仁田川(にたがわ)にすむニタと小西行長のやりとりが面白い。
ニタは小西のつく「嘘」に驚き、興味を持つ。シンプルに生きる水神には、人の嘘が理解し難いようだ。
どうしてそんな嘘をつくのだとニタが問うと、その度に小西は「嘘ではなく駆け引きだ」とか、方便だとか、建前だとか言い返すのがちょっと漫才のようである。
そして、二人の腐れ縁。
人間に興味を持ちすぎた河童はヒト化するというが、大丈夫か?
銀緋(ウンビ)の茶碗はどんなものなのかと想像する。
こんこんと水が湧いてきたり、不吉なことを知らせたり。
きっと美しいのだろうな。
半島や大陸に出兵するのはとても愚かなこと。
隣人は大切にしないといけない。 -
Posted by ブクログ
ぼーっとしたい。
ということで、タイトル買い。
ぼーっとを目指し、あちこちへ。
紀行文としてもおもしろく、
さりげない描写、表現に
さすがだなぁ、と思うこともしばしば。
『ぼーっとする、ぼーっとすると書いてきたが、
本質は「よく生きる」ということだと思う。
理性を保ってよく生きるには、自分が
「ああ、これなら息がつける」と思える
ある程度のスペースと、ほどほどの人との
関わりが必要だ』
という一節。
あぁ、このぼーっとの時間が
作者の次の名作を紡ぎ出すエネルギーに
きっかけになるのだな、と思った。
紹介されたスポットを、ゆっくりと
訪れてみたい。 -
Posted by ブクログ
初読み作家。
ちょっと不思議な大人のおとぎ話みたいな短編集。
文章がシンプルなのに人間味があって、
スッと入ってくる感じがして読みやすく、面白かった!
個人的に好きな話は
1話目の
テレビから外国で起きたニュースが聞こえてきて
そういや昔あの辺りの地域に行ったことあるなぁって思い出す回想シーンが始まり、
そこでたまたま出会ったお婆さんが結構プレイボーイならぬプレイガールで、5人の男と結婚して別れてを繰り返してた人で、
あのお婆さんに助けてもらったのに恩返しできなかったなぁ、、、って友達に話して現実世界に話が戻ってくるんやけど、
このお話の最後の終わり方が世にも奇妙な物語っぽくて良かった!
最後のハクビシンの話もよかった!
お婆さんの恋人は実在する人間だったのか、それともハクビシンが化けたものだったのか、その判断は読者に委ねますといった感じの終わり方だった。
ハクビシンの化け物が恋人やったとしたら、ハクビシンのフェロモンすごすぎる!笑
これもまたすこし奇妙な感じのお話でおもしろかった! -
Posted by ブクログ
ネタバレこれは好みが分かれる作品のようだ。
私は『かたづの』のような作品が好きなので、中島さんの妖なるものと歴史との絡みは面白いジャンルだと思っている。
今回は「水神」から見た、秀吉の朝鮮出兵の時代。
現代と、水神が記録した歴史を行き来して物語は進むが、水神から見た人間は、なんとも理解し難いほどの野蛮と支配欲を持った生き物だ。実際の歴史ではなく、水神から見た歴史というところが面白い。
水神は戦を止めることはできないが、できるだけ役に立ちそうなヒトに近いて、なんとか種族を守ろうとする。
歴史は事実なのだが、そこに水神が絡むことによって、より歴史の悲しさや虚しさが表れる。
本当にスランプなのかわからないけれど、中島京子さんの次回作にも期待! -
Posted by ブクログ
ネタバレ何も考えずに読書をのんびり楽しめる一冊。中島京子さんの本は、たぶん4作目?だけど、いつも言葉選びが知的かつユニークで、それなのに文章にクセがなく、人の温かさが感じられて、すばらしい作家さんだと思う。
本書は閉経を迎えるか否か、という年齢の聖子さんを主人公に、人との出会いやちょっとした生活の変化にまつわる心の機微を描いている。あーそういう気持ちになることあるよね、という感情を上手に描くので、追体験ができる。印象的なのは、息子の彼女への感情の変化。愚鈍に見えて、なんでこんな子を、と思っていたのに、頼りにされた瞬間、全力で守ろうとする聖子さん。人と人が交われば、そこには何らかの関係と感情が生まれる、という当たり前のことを改めて温かく感じる。