あらすじ
30年ぶりにアメリカから帰国し、武蔵野の一角・うらはぐさ地区の伯父の家にひとり住むことになった大学教員の沙希。
そこで出会ったのは、伯父の友人で庭仕事に詳しい秋葉原さんをはじめとする、一風変わった多様な人々だった。
コロナ下で紡がれる人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。
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(紹介文より)
30年ぶりにアメリカから帰国し、武蔵野の一角・うらはぐさ地区の伯父の家にひとり住むことになった大学教員の沙希。そこで出会ったのは、伯父の友人で庭仕事に詳しい秋葉原さんをはじめとする、一風変わった多様な人々だった。
コロナ下で紡がれる人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。
良い本だったなあ。
離婚して日本に帰ってきてからの日々、沙希の心境、読んでいて心が落ち着くような…登場人物も作品のテンポも。
今の自分に合っていたみたいです。
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アメリカ人の夫の浮気をきっかけに八年半の結婚生活を終えて日本に帰ってきたサキは、認知症で施設にいる伯父の家に一人で住み始める。土地の呼び名「うらはぐさ」は、イネ科の植物の名前で花言葉は「未来」だそうだ。小さな庭の実りに喜び、伯父が置いていったお酒を楽しむ姿は幸せそう。母校である女子大の先生として働き、時々生徒たちが遊びに来る。伯父の囲碁仲間で、今でも庭の手入れに来てくれる老人は三年前に超高齢結婚をしていて、小学校の「野菜の先生」をしてくれるよう校長先生に声をかけられたと嬉しそうに報告する。商店街には再開発などの問題もあるが、若い人々も混ざり合い、あちこちで人と人の繋がりができて、変化しながら柔軟に進んでいく明るい「未来」が見える良い物語だった。
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初読みの作者さんでしたが、この人のゆったり流れる文章が心地よくって、感性がキラキラしてて、知的好奇心もくすぐるし良質のギャグにも癒さるしエピソードがてんこ盛りで久しぶりに充実した読後感を味わえました。
8歳年下のアメリカ人と離婚して30年ぶりに帰国した日本。今もなお当時の面影が残る商店街を歩きながら2年前まで叔父が暮らしていた一軒家に引越して出身大学の非常勤講師としての生活が始まる。「うらはぐさ」とうイネ科の固有種が生息した台地に人々の歴史を追う物語、トリビアも秀逸です。
主人公、紗季52歳の周りの人々も個性的。庭木の手入れをしてくれる秋葉原の爺さんは植物や鳥の生態に詳しく野菜作りなど教えてくれる高等ユーミン。大学生のマーシーは敬語のお使い方が駄目駄目の不思議っ娘。弁論大会でうらはぐさシティの歴史を熱く語りだす。
土地に根付いた話は結構好きなんです。食卓には自家製野菜が彩を添え、語られる会話もワクワクします。
寝る前にスティルトンチーズを食べると明晰夢を見るとか、復員兵のPTSDの話で戦後は狼男が結構いたとかも興味深くて、そういった小ネタを投入されるとメラメラきます。
馴染みの居酒屋も代が替わってたり、少しづつ新陳代謝をくり返し未来へとつながっていく「うらはぐさシティ」。パーツを全とっかえしたテセウスの船は、はたしてテセウスの船と呼べるのかとかゆう哲学まで出てきちゃって好奇心ギラギラで、まったり沁みるコミュニケーションに憧れてしまいます。
すごく好感度上がってしまいましたので、中島京子さんの過去の作品も追っかけてみたくなりました。
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久しぶりの中島京子
やっぱいいですね~、この方の小説は
マーシーの敬語が最高
何故かお酒が飲みたくなる(医師に減らせと言われて実行してるけど、誘われて飲んでしまった)
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ゆったりと繰り広げられる人びとの出会いと会話が心地よく、全部をかき集めて抱きしめたいほどこの住んだことも訪れたこともないうらはぐさが愛おしい場所になった。
読み終わった後もうらはぐさの今、昔、未来に思いを馳せてじんわりと胸がいっぱいになった。
今年読んだ好きな本の上位に入る作品。
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出てくる人たちがみな可愛らしい。
とくに認知症の叔父さんの言葉が好き。
ところどころクスクス笑いながら読めて
ずっとこの世界に浸っていられる感じが良い。
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東京都心にありながら未だ昔の風情が漂う町、うらはぐさ地区。
30年ぶりにアメリカから帰国し、古きよき時代の人情が残るこのうらはぐさの古家でひとり暮らしをはじめた熟年女性の日々を描くヒューマンドラマ。
◇
玄関脇の50㌢四方ほどの土の部分から蔓性の植物が伸びているのに気がついた。河童の手のひらのような葉を広げ、黄色いつぼみもつけている。
伯父が植えたものか尋ねると、従兄の博満は即座に否定した。伯父は認知症が進み、2年前から施設に入っているからだ。
私の伯父は博満にとっては祖父に当たる。その伯父が住まなくなった家の管理に困っていた博満は、30年ぶりにアメリカから帰国し住まいを探していた私に格安で貸すことにしたのだった。
家の中の説明から地域のゴミ出しのルールまで細々と語る博満は、記憶の中の伯父にそっくりだ。そんな博満は私より5歳上だからもう還暦が近い。
月日の流れをぼんやり考えているうちにひと通りの説明を終えた博満は、家賃の振込口座はメールで知らせる旨を告げ、そそくさと帰っていった。
1人になった私は6畳間にぺたんと座り、ガラス戸の向こうにあるこじんまりした庭を見る。昔からこんなふうだったかなとぼんやり眺めていると、柿の木の葉先からポツンポツンと水滴が落ち始め、すぐにザァーッと激しい雨に変わった。
久しぶりに見る日本の夕立。東京でのひとり暮らしの始まりを私は実感していた。
( 第1話「しのびよる胡瓜」) ※全9話。
* * * * *
大学卒業後アメリカに渡り、カリフォルニアの大学で職を得た田ノ岡沙希。年下のパートナーと結ばれて幸せな日々を送っていました。
風向きが変わったのが勤務先の大学で沙希の担当する学部の閉鎖が決まったこと。夫との間も上手く行かなくなっていた時期でもあり、離婚に踏み切った沙希はアメリカでの生活にピリオドを打つことにしたのでした。
30年ぶりに帰国した沙希ですが、両親はすでになく当然実家もありません。でも幸運なことに母校の女子大から特任教授として迎えられ、住まいも大学近くで空き家になっていた伯父宅を借りられることになりました。
こうして始まった日本での沙希の生活の様子が淡々と描かれます。
大きな事件が起こるわけでもドラマチックな展開が待っているわけでもないのですが、不思議と読まされる作品です。理由はいくつもあります。
まず1話ごとの分量がちょうどいいこと。読んでいてきれいに頭の中でまとまります。
それに各話のタイトルもなかなかシャレていていい。「しのびよる胡瓜」。何と素敵なタイトルでしょうか。調べてみたらホントにそんな胡瓜があるので感動しました。 ( メロスリア ペンデュラという種類だそうです。)
次に、登場人物が実に魅力的な好人物揃いであること。特に伯父の友人で庭の植栽の世話をしてくれている秋葉原さんとその妻の真弓さんは、何となく安らぎを感じさせるような味のある人たちです。
また、教え子学生のマーシーこと亀田マサミもなかなかいい。おかしな敬語を操り行動も少し変なのですが、本人は至って大真面目で一生懸命なところにしみじみ癒されます。
そして何より、中島さんの描写が心にしっくりくること。大発展を続ける東京都心にあって、取り残されたように昔の姿を保っているうらはぐさ地区。ここで沙希の目にする天気なり植物なり街並みなり料理なりのイメージや風情が、頭の中でふわぁーと広がるのです。
この街で生活することにより、失職や離婚のダメージから少しずつ回復していく沙希の姿が物語の中心ですが、もう1つ物語の核となるのがうらはぐさ地区再開発の話が持ち上がっていることです。
沙希はうらはぐさが近代的な街に姿を変えることについて、やむを得ないとは思いつつも受け入れ難い気持ちが拭えません。
けれど街の商店街で丸秋足袋店を営む秋葉原さん夫妻や、布袋という3代続く焼き鳥屋の店主である田中さんは、もっと恬淡として受けとめています。
その感覚は、施設に面会に訪れた沙希に伯父が口にしたことば、「いいもんにあれしなさい」によく表れていて、ほのぼのした希望が見えた気がしました。
中島京子さんの作品世界や文章の持つリズムを私がもともと好きなせいもあるのでしょうが、ずっとつかっていたいぬるめのお風呂のような心地よさが堪能できる作品でした。
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うらはぐさがどこだろうとか考えずに読んだ方がいいだろうと思いながら読む。なんとなくイメージが勝手に浮かんで、いやいやそうじゃないから、と思いながら読み終わる。マロイさんが首くくってなくてよかったよ。
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読んでいくとタイトルの意味がわかってきた。ウラハグサは地域の名前で中身は風土記の要素が濃い。
登場人物がいい人ばかりなのはちょっと妬けるが、ストーリーは温かい。
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東京の西の方だと思われるうらはぐさ。
アメリカから離婚して帰ってきてうらはぐさの伯父の家に住むことになった沙希。
そこは学生時代にも馴染みのある場所。
そこで様々な人々と出会い、その人々と関わっていくことになる。
その中でうらはぐさの歴史に触れたり、再開発に心を痛めたりしていく。
沙希が出会う人は年齢も、バックグラウンドも多種多様、まさに現在。
うらはぐさに大きな何かが起こるわけではないけど、時代が変わっていくと共にうらはぐさも変わっていく。
何処にでもある都心からちょっと離れた街、そこに暮らす人々の日常、そしてちょっぴり、沙希の海外での生活も顔をのぞかせる。
大学の非常勤講師である沙希と学生との関わりも楽しい。
うらはぐさが良い方向に変わっていくといいなあ。
ついでに、うらはぐさを調べてみた、よく見る草だった、初めて名前を知った。
中島京子さんの作品は面白い、今回も期待を裏切らなかった。
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ずっと読みたかった本。
といっても、読むまで内容とかも知らず、表紙とタイトルがとにかくかわいくて。
なんだか体験記のような、
よ見始めてからもこれが小説なのかノンフィクションなのか、
なんだろう、
時に詳しすぎてなんの話、みたいな、
とにかく語り手に生活にとても密着していくような、
とても具体的で現実的で、親しみ深い、
これからも追い続けたくなるような、
生活のストーリーでした。
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家族にも勧めたい。
心温まる物語なんだけど、自分が今、荒んでいるせいか、とんとん拍子にうまくいく様子が、なんとも羨ましくて、星四つ。
半年でそんなにたくさん知り合いができるなんていいなあ。
戦争はよくないということを再度再度思った。
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さりげなく社外問題が取り上げられているね、嫌味なく、でもちゃんとリアルに。
それにしても沙希さん、次々と人脈ができていくけどそこはちょっと出来過ぎな感じがした。
もっと孤独を感じるんじゃないかなぁ普通は。
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初めての中島京子作品
穏やかに時が流れ、時々クスッと笑わされ、その土地の空気が感じられる…素敵な物語だった
美味しそうな食べ物や季節の草花や鳥、街の歴史と未来、個性的だけど自然体の登場人物達
表題と共に各章のタイトルも秀逸でした
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うらはぐさという植物が風知草と同じだと
この作品のレビューを読んで知った。
わたしは風知草という言葉だけを知っていて、
(亡くなった母が書を習っていて、額縁に入れられたこの風知草という言葉をしょっちゅう見ていた)
これがどんな植物であるとか、
花言葉がなんなのか、とかは全く知らなかったけれど、
うらはぐさと風知草がつながった時、
あ、これは読まねば!と感じて手に取った。
それはさておき、ほんわかとした表紙と共に、
中身もびっくりするようなショッキングな出来事は全く起こらず、東京西部の架空の町、うらはぐさに住む人々のコロナ明けの日々のあれこれが描かれたこの作品。
年の初めに読むのにちょうどよい
力の抜けた読み心地と読後感だった。
架空の町とはいえ、日本のどこか、
どこにでもありそうなその雰囲気がなんだか懐かしく、
幼い頃に住んでいた場所を思い出させ、
優しい気持ちになれた。
もう長いことマンション暮らしだけど、
一戸建て、しかもこんな感じの年月を経た家や庭、
いいなぁ〜、と思った。
物語のラストも
このうらはぐさの花言葉にふさわしい。
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初読みの作家さん。風土記というくらいだから土地に根差した物語なのかなぁ、よくある田舎暮らしのほっこりものかなと、軽い気持ちで読み始めた。びっくりするくらいにするすると文章が入ってきていつしか自分も武蔵野のうらはぐさの一員になっていた(笑)エナガの巣を検索してみたり、ユニークなニックネームのチョイスに笑ったり、登場人物のキャラ立ちには舌を巻いているうちに、後半は怒涛の展開。序盤からちょいちょいとまかれた伏線がしっかりと回収されて、とっても満足のお話。すっかりファンになりました‼️
もう少し中島さんの作品を極めてみたい。
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しみじみいい話だった。
東京は土地に歴史があっていいよね。
実在のモデルになる地域(や人もかな)があって、リアルだし、読んでて楽しい。
土地に歴史あり。人に歴史あり、て感じ。
小説での食べ物の描写は食傷気味だけど、(おいしそうな描写や、食べ物小説を全面に出されるとまたか、という気になる)梅醤は今度作ってみようと思った。
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武蔵野のうらはぐさ地区で生活をするようになった50代の沙希。
この地区は昔ながらの商店街があり、緑があり鳥が囀る。この土地で出会った個性豊かな人々やこの町の歴史を知れば知るほどこの町を大切に守っていきたいと思うようになる。
ほのぼのとした雰囲気で話が進み、読みやすい。
居心地がいい人々や環境に囲まれて、50代にもなればこういう生き方も悪くないなと感じながら読みました。人と人との良い付き合いが歳を重ねると大切なんだなと思わせてくれる作品でした。
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読書中から、今自分が住んでいる場所、土地、風土に愛着が湧いてきた。
都会や便利、お洒落という文脈の中にはない土地「うらはぐさ」。
そこで育まれる人たちの生活が伝わってくる。
少し昔ぽさ、昭和の香りも残しつつ、現在の生活が日々僅かに変化しながら過ぎていく。
『こういうのは、あれだろうか。
「残るものは形を変えて残っていく」、その「形」だろうか。』(p193)
誰かに、何かのきっかけで自分が経験した「大したことない話」をすると驚かれたり、重宝がられたりした経験があると思う。
他人から見ればドラマチックだったりする。
「うらはぐさ風土記」でも度々、ちょっとしたエピソードを読んでいて、へぇーと思ったり驚いたりした。
普通の人との茶飲み話が、1番面白かったりする。
「五 狼男と冬」ではぎゅっと心臓が掴まれた。
普通の人の中に起きていた、唯ならぬこと。
時代が進んだ今だからこそ、理解され消化されるであろうこと。
あ、これが「カタルシス」か、と思った。
(※ webより→カタルシスとは、哲学や心理学における「精神の浄化」のこと。 無意識の内に抑圧されている、過去の苦痛や恐怖、罪悪感をともなう体験、そのときの感情などを、言葉で外に出すことによって、不安や不快感などを浄化することを指します。)
道路拡張計画では、変化をどう受け入れる否かという場面が出てくる。
伝統芸能をみていても思うこと、変化や革新があるからこそ継続されている。
人間は今いる時点、場所が心地よければ変化を嫌う。けれどそれでは自分も社会が進まないということもわかっている。
住んでいる場所の愛着は保ちつつ、ちょっとの変化を受け入れる。
変わることもいいじゃないか、と背中をそっと押してくれる本でもある。
(p202)
「テセウスの船」と呼べると思う?」「全部のパーツが入れ替わっても?」
「すっかり新しいものになってしまっても」
マーシーはしばらく眼鏡を押さえて考えていて、それから大きく息を吐いた。
「感情的には呼べると思います」
「感情的に?」
「はい。みんながそれを「テセウスの船』だと思っていて、テセウスが船に乗ってどんな旅をしたかも語り継がれていて、それを大事にしたいという感情が継承されているなら」「ほほう。なるほど。傾聴すべき意見だな」
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たいしたことは起こらないんだけれど心が暖かくなって
ちょっとしたトリビアもあって
自分の住んでいる場所にも歴史があるんだろうなってまわりを見つめたくなる本。
登場人物もキャラがたっていて面白い。
やっぱり中島京子さんの文章は好き!
Posted by ブクログ
中島京子さんの著書は、女性の視点からふんわりと社会問題を捉えているものが多いなぁと思う。
この作品は、街の歴史と今に焦点をあてて、変わりゆく土地を守ろうとする人々の姿が描かれていて、これまたほっこりする。
古い伯父の家に住み、庭の植物を愛でつつ食すという暮らしが、私の大好きな梨木香歩さんの「からくりからくさ」の女子達の暮らしを思い出させて、心地よく読み進めた。
今までの中島京子さんの著書には植物や鳥の描写から情景を思い描かせるという表現があまりなくて、勝手に現実社会に真剣に向き合っているのかな…などと思っていた。
私自身、数年前までは子育てに必死で植物や鳥を愛でる心の余裕は全くなかったから…
社会問題に向き合う中島京子さんも素敵だけれど、自分の住む街、人、動植物を愛して街や人々と共に生きていらっしゃることを書き記している姿もとても素敵。
うらはぐさは、風になびいて葉が裏向きになることが前提で、普通の植物の葉とは裏表が逆。裏がツルツルとして風から身を守り表が起毛のようになって水分の蒸発を防いでいると雑草の本で読んだことがある。
武蔵野の地にはほんとうにうらはぐさがたくさん自生していて、細長い笹の様な葉は我が家の近所でもすぐに会える。ちょっと邪魔なくらい。
裏表が逆だからこそ、風に優雅にたなびかれながら、しっかりと大地に根をはりどんどんと増えていつの間にか主になっているのだ。
そして、寒くなるとすぐに枯れていなくなってしまう。
人生なんて、いつも何が起こるかわからない。
表が裏になり、裏が表になりながらその土地に根を張り、いつの間にか邪魔物扱いされながら、消えていく。
そんな風に生きられたらもうそれで満足だな…
などとしみじみと思う、日曜の朝なのでした。
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ホントにありそう。
「布袋」で呑むぞ。
屋上野菜買って。
梅園の時期に野鳥探しながらお散歩。
一軒家で、住む。
して、みたい。
沙希ちゃんとうらはぐさの面々との出逢い方がいいっ。
こーいうトコのこの作家さん。好き。
何より、秋葉原さんとの最初っ。
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久しぶりに読む中島さんの作品。
やはりテンポや感覚が面白くて心地よい。
ただ楽しいだけではなく苦いことも厳しいことも織り交ぜてあるのが更にいい。
離婚を機に30年振りに帰国した沙希は、施設に入居している伯父の家を借り、近くにある母校でもある女子大で教えることになる。
『武蔵野の一角だった』『うらはぐさ』地区で暮らすことになった沙希がちょっと風変わりな人々と交わりながら暮らす日々。
今まで一度も定職に就いたことがなく、三年前に結婚した伯父の友人・秋葉原氏とその妻・刺し子姫(沙希が心の中で名付けた)。
沙希が働く大学の学生でおかしな敬語を使うマーシ―とその友人パティ、同じく大学で働く講師・くるりんとその彼氏さるちゃん。
彼らがどこか浮世離れした存在なのに対して、伯父の家を貸してくれた従兄の博満は現実的。
そして忘れてはいけない、沙希が何かと思い出す友人マロイ。消息不明となったマロイは生きているのかそれとも…。
伯父の庭に生えてきた不思議な植物があったり、伯父の部屋(密かに酒蔵と呼ぶ)で見つけた酒を美味しく飲むために料理を作ったり美味しいものを見つけたり、大学の学祭でマーシ―が発表するのを見守ったり、秋葉原さんが伯父との約束で勝手に庭の手入れをしてくれたり、ゆるくて楽しくて、でもきちんと暮らしている感じがある。
一方で沙希にも秋葉原さんにも刺し子姫にも事情があり、近所の〈あけびの商店街〉の再開発話が再浮上したり。
そして元夫・バートが突然日本へやって来たり。
出来すぎな感じもあるが、多分これからも色んなことがありつつも皆でわちゃわちゃしながら一緒に生きていくのだろうなというのが想像出来て良かった。
そして気になっていたマロイ。読まれてのお楽しみに。
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離婚を機に30年ぶりにアメリカから帰国して、武蔵野、うらはぐさ地区の叔父の家に住むことになった大学教員の沙希。
叔父の友人の秋葉原さん、大学の教え子、一風変わった人達に囲まれて、おひとり様生活を満喫している様は率直に羨ましいの一言。何か大きな事が起きるわけではないけど、日常を彩ってくれる様々な、ちょっとした出来事が、ユーモア溢れる筆致で書かれている。
まずは「しのびよるきゅうり」に心を持っていかれ、教え子の1人、通称マーシーの奇天烈な敬語は最初は腹立たしかったのに、そのうちクセになる。認知症の叔父との、微妙に噛み合わないけど、微妙に噛み合っている会話も面白い。
終盤で叔父は亡くなり、別れた元夫が会いにきたり、秋葉原さん夫妻は高齢者施設に入居、商店街がなくなるかも、という日常の延長ではあるけど、心騒ぐ出来事は起きる。
沙希は将来の事を考えつつ、商店街存続のために周りの人達と一歩踏み出すーというところで、物語は幕を閉じる。沙希の、うらはぐさの住人たちの話をもっと読みたい。
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風土記っていうよりか、花木やら野菜やらを通じた歳時記という感じ。胡瓜に山椒に柿に梅、秋葉原さんちの屋上にはゴーヤ、トマト、ナス、オクラ、枝豆も生る。そんな東京郊外にUターンして郷愁にひたる沙希だけど、地域の再開発計画を知る。老朽化した建物が並び、賑わいを失った商店街でも、様変わりとなると湧き上がるノスタルジア。かといって住みやすさを失ったまちに未来はなく、まして防災面を問われると抵抗できないか。巻末は駆け足のまとめになったけど、これだけ前向きに悩む人たちがいれば「いいもんにあれする」ことになるのでしょう。
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うらはぐさと呼ばれる地区にある叔父の家にアメリカ生活を終え離婚して引っ越してきた女性が周囲の人たちとゆるい接点を持ちながら過ごしていくお話。近所の人たちとの関わりって何でもないように見えて、いざとなれば深く強いものなんだろうなと思った。