中島京子のレビュー一覧
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ネタバレなんとまぁ。素敵な物語を読んでしまったんでしょう。私ってば。
タイトルも、なんだかとてもダイレクトな感じがして、いいですよね。
男子校の新米教師が、実家の屋根裏で見つけた「イトウ」という人物の手記に興味をもち、調べていくという物語。
もう、ほんと、「イトウ」若くて一途な気持ちが、とても心に響くんだなー。
若さゆえの暴走だったり、若さゆえの悩みだったり、それがとてもせつなくて、しかも、国も年齢も身分さえも全く違う二人の距離感が、なんともはがゆくて、お互い素直になれないその感じ。
誰かを好きになる。って、なんだかとても素敵なことなんだな。なんて胸がキュンとしたりしました。
「イトウ」の手記を -
Posted by ブクログ
ネタバレ50歳を迎える主婦宇垣聖子の日常を、1950年代に大流行した伊藤整のエッセイ「女性に関する十二章」を照らして描く日常小説。
夫婦のなんということもない雑談が知的でいい。大滝迎える主婦宇垣聖子の日常を、1950年代に大流行した伊藤整のエッセイ「女性に関する十二章」を照らして描く日常小説。
夫婦のなんということもない雑談が知的でいい。何気ない会話に出てくる比喩や発展する話が、大瀧詠一だったり明治文学だったり詩集だったりシュトーレンだったり…。やっぱり教養は日常を刺激的に色をつけてくれるんだなぁと思う。
主婦の目を通してみる世の中が面白く描けていて、これって俺みたいな読者よりそれなりの年齢を経 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最悪な結婚について書かれた短編が4つと、最高な結婚について書かれた短編3つ。
黒い結婚の方は、「かっぱーん」と「愛の結晶」はイマイチ。あとは黒も白もとても良かった。黒い結婚の「水際の金魚」と「家猫」は、わかりやすく結婚に向かない人を描いている。自分が一番可愛い、みたいな。
白い結婚の方は、「シュークリーム」は婚約者の彼に不信感を抱き始めるけど、大どんでん返しで安心する素敵な話。こういう人いるよね、と思った。周りからは「要領のいい奴」とちょと誤解されるんだけど、実は見えないところでけっこう努力している。けな気というか。「あいつは要領がいい、ずるい」などと妬む人は、そういうことに想像が及ばず、自分 -
Posted by ブクログ
ネタバレとても良かった。
読後少ししんみりした気分。
7つの短編のどれも良かった。
三十年近く前原宿の一軒家で愛し合った女の話。
ゴーストライターの新米がバーで誰にも知られないまま死んでいく人の話を聞く話。
中でも好きなのは、ミシンの履歴。戦前に作られたミシンは戦争により持ち主が代わっていく。戦後徐々に使われる機会は減り押入れで忘れられたかと思ったが…
余談だが昔テレビで見た古い映画を思い出した。戦争で生死が分からない夫の帰りを待っていた妻は戦後何年も力になってくれた夫の友人と結婚する。そこに捕虜になっていた夫が帰って来る。複雑な思いで夫と暮らすが、心に深いキズをおった夫との暮らしは辛いものだった。生 -