中島京子のレビュー一覧
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ネタバレ読み初めには想像もしなかった、圧巻の読みごたえ。
ドラマティックな物語展開。
知らなかったことを知り、知らなかったことを恥じる。
けれども少女の視点で語られる口調は、読者を決して拒むものではない。
小4のマヤはお母さんと二人暮らし。
ある時お母さんが連れてきた恋人のクマさんは、スリランカ人。
変わった料理を作ってくれたり、面白い話を聞かせてくれたりするクマさんを、マヤはすぐに好きになった。
お母さんが倒れて入院したとき、クマさんが泊まりに来てくれたから、マヤは一人の恐怖と戦わなくてすんだ。
いろんなことがあったけど、ようやく二人が結婚しようとしたとき、クマさんが逮捕された。
普通に就労ビ -
Posted by ブクログ
昭和初期の中流家庭で女中として働いていた、タキの回想録という形で進む物語。
時代設定は太平洋戦争直前の東京の郊外。戦前、戦中を描いた作品は、多かれ少なかれ戦争の悲惨さ、民衆の苦しい日常、軍の愚かさなどが目立つ内容になる事が多いが、本作の面白いところはそういったものが物語の後半になってほんの少し出てくるものの、ほとんど描かれていないことだ。
逆に、「南京陥落記念セール」とか、「アメリカと戦争が始まって、なにがよかったって、世の中がぱっと明るくなったことだ」などという記述があり、教科書で戦争を学んだ現代人からは到底想像もつかない日常があったことを思い知らされる。
かと言って、決して戦争を礼賛 -
Posted by ブクログ
とにかく勉強になります。
小説として満足させてくれる上で、勉強もさせてくれるのがこの本のポイント。
私にとって外国の方は道ですれ違うだけの存在。なかなか問題に向き合うきっかけが作れない。
何年か前にスリランカの女性が収容中に亡くなった件や、"クルド人"や"難民"などのワードがニュースで出るたびに、そろそろ自分も知識をつけなければいけないのでは?と思っていた。が、恥ずかしいことに、何も調べられていなかったのが現状。
この小説は登場人物の描写が細かく、みな生き生きとしているので、描かれている出来事が自分のすぐ目の前で起こっているように感じることができる -
Posted by ブクログ
ネタバレ早々に映画を見なくては!
暗いイメージが強い、日本が戦争へと足を踏み入れていく時代を、一般の庶民がどのように感じ、考え生活していたのか雰囲気がとてもよく分かる作品。
辛い事もある時代でも楽しくしっかり生活していたタキ。時子奥様を中心に生き生きと書かれていて良かった。
お友達の睦子さんはタキ本人も気づかない気持ちを同類として、早々と悟り、重要な部分は言わずに励ます場面良かったな。
多分、タキ自身も恋がどういったものなのか分からなかったのか…。
時子奥様、すごく素敵な人だったのね。
板倉さんが最後時子に会いに来た時のタキの気持ちが全く書かれていないことが興味深い。
とてもきれいな物語。
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なんて尊い家族! なんて優しく温かい物語! でも、なんて酷いこの国の差別と偏見! 本書を読みながら、ずーっとそんなことを考えてました。
震災ボランティアで出会い惹かれ合った2人、スマトラ出身のクマさん(24歳)とシングルマザーのミユキさん(32歳)、そしてミユキさんのひとり娘・マヤ(8歳)。物語は、一貫してマヤから"きみ"へ語りかける形式で綴られていきます。
諸々の困難を乗り越え3人は家族となるも、クマさんの在留資格が切れ、不法残留で東京入国管理局に収容されてしまいます。そこからクマさん返還のため、ミユキさんとマヤの闘いが始まります。
入管制度がこれほど重く理 -
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ある人物がどういう人だったかという「評価」は、その人が生涯を終えた後にしかできません。
なぜなら、生き続けている限り、評価すべきその人の「全体」が決まらないからです。
人は「一生」という単位が定まった後に「あの人は〇〇な人だったねえ。」と評価されます。
では、この小説のように、ばりばりと活躍していた中学校の校長だった人が、生きている途中から認知症になって家族のことさえ分からなくなっていく10年間を過ごしてから生涯を終えた場合、彼の「一生」を評価する時には、その10年間を「一生」に含めて評価するのが適切なのでしょうか、それとも適用除外して評価するのが適切なのでしょうか?
それは、人生 -
Posted by ブクログ
黒木華さん主演のこの映画が大好きで、何度も観ています。今更ではありますが、恥ずかしながら原作は未読でした。
平井家で働いたこと、これがタキちゃんの青春だったのだなぁ。
原作を読んでさらにタキちゃんの奥様に対する思いの強さを感じ、タキちゃん、タキおばあちゃんが大好きになった。
戦前戦中戦後の当時の人々のリアルな暮らしや思いは、歴史の授業などではわからないけれど、この作品を読んで、当時の人々の思いや暮らしを知ることができた。
大切な家族、恋人、友だちが徴兵されたり、空から爆弾が降ってくるとか、亡くなるとか、想像しただけで恐ろしいし、そんなことがこの日本で起こっていたことを決して忘れてはならな