【感想・ネタバレ】水は動かず芹の中のレビュー

あらすじ

長いスランプに陥った小説家はやけっぱちになり、唐津を旅することに。陶芸体験をした窯元の夫婦から、水神にまつわる不思議な伝承を聞く。今でいう「難民」であったという流浪の水神は、戦国時代、いかにして秀吉の朝鮮出兵を止めようとしたのか……。『かたづの!』の著者が、かつてないスケールで歴史と現代を深く結びつける長篇小説。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

僕は、先の併合植民地化と大震災での虐殺とそれに続く大戦で、その国の人々に大変な災いをもたらしたことを非常に恥じていて、大きな借りを負っていると思って生きてるけど、そのもっと前の出征とその時の振舞いの話しを小説とはいえ改めて読み、さらにもう一つ大きな借りを負ってしまったと感じた
まずは借りを少しずつでも返すことから始めなければいけない

小説はとても悲しかった
上に書いたことを感じたながらよんだからだと思うし、たまたまこの前に読んだ不屈の人とひと続きになってると感じたからというのもありそう

この作家の小説の終わらせ方はいつもとても好きで、でも今回はなぞかけも含めて理解が追いつかなかったと思う

0
2026年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

スランプに陥った作家「わたし」は唐津に旅をする。
そこで陶芸家の夫婦と知り合い、不思議な茶碗と、朝鮮の娘と、水神にまつわる話を聞かせてもらうことになった。
サワタローさんの語る『水神夜話』は、家に伝わる長い話で、水神とは河童のことらしい。

ファンタジーなのか、ファンタジーを装った歴史小説なのか。それとも反戦小説なのか。
ここでの水神の祖先は天竺からモンゴルを経て中国へ、半島から泳いで日本に渡り、九州に住み着いた。
水神は、人間社会に絡みつつも、人間の生態を観察し、一歩距離を置く。

『水神夜話』では秀吉の朝鮮出兵を止めようとする水神について語られる。読みごたえがあった。
ある日、朝鮮の名陶工の娘・銀緋(ウンビ)の焼いた不思議な茶碗が、カタカタと震え出す。
聚楽第の茶室での会話を聞いた茶碗が、猿が朝鮮半島を侵略するという情報を伝えたのだ。
戦が始まる。
インドから中国を経て日本に渡る間、各地に住み着いた水神の仲間がたくさんいる。
戦が起これば、仲間がたくさん殺される。川が血で汚れ、水が飲めなくなる。
水神たちは何とかして、猿の朝鮮出兵と、その先の明への侵略を止めなくてはと思う。
しかし、戦はヒトが行うもの。水神が直接手を下して止めることはできないのである。
そこで、水神たちは彼らの特性を生かして情報を収集する。
茶人と親交を持った者、島津義久の元にいる明人の医師の周辺を探る者、小西行長について回る者・・・
その過程で、猿以外の誰も明との戦いを望んでいないという状況に気づいていく。
しかし、中小の大名たちはもちろん、島津や徳川のような力のある武将も、猿の戦は愚かで無謀と分かっているのに、楯突くことが出来ないでいる。
どうやら、ヒトをあてにはできないらしい。
水神たちは、猿の野望を打ち砕くことができるのか!?

水神の一人、対馬の仁田川(にたがわ)にすむニタと小西行長のやりとりが面白い。
ニタは小西のつく「嘘」に驚き、興味を持つ。シンプルに生きる水神には、人の嘘が理解し難いようだ。
どうしてそんな嘘をつくのだとニタが問うと、その度に小西は「嘘ではなく駆け引きだ」とか、方便だとか、建前だとか言い返すのがちょっと漫才のようである。
そして、二人の腐れ縁。
人間に興味を持ちすぎた河童はヒト化するというが、大丈夫か?

銀緋(ウンビ)の茶碗はどんなものなのかと想像する。
こんこんと水が湧いてきたり、不吉なことを知らせたり。
きっと美しいのだろうな。

半島や大陸に出兵するのはとても愚かなこと。
隣人は大切にしないといけない。

0
2026年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これは好みが分かれる作品のようだ。
私は『かたづの』のような作品が好きなので、中島さんの妖なるものと歴史との絡みは面白いジャンルだと思っている。
今回は「水神」から見た、秀吉の朝鮮出兵の時代。
現代と、水神が記録した歴史を行き来して物語は進むが、水神から見た人間は、なんとも理解し難いほどの野蛮と支配欲を持った生き物だ。実際の歴史ではなく、水神から見た歴史というところが面白い。
水神は戦を止めることはできないが、できるだけ役に立ちそうなヒトに近いて、なんとか種族を守ろうとする。
歴史は事実なのだが、そこに水神が絡むことによって、より歴史の悲しさや虚しさが表れる。
本当にスランプなのかわからないけれど、中島京子さんの次回作にも期待!

0
2026年02月26日

Posted by ブクログ

『かたづの』を想わせる、私の好きな中島京子小説。
しかも舞台は名護屋城のある唐津というんだから、
そりゃ好き好き大好き。

スランプの女性小説家・わたしが
ひょんなことから唐津の陶芸家と親しくなり
水神(河童)の史書「水神夜話」について聞かされる・・・

加藤清正による水神ホロコーストから
朝鮮出兵の悲劇、
そして秀吉の死・・・

摩訶不思議な夢とうつつを行き来するような
世界が良い。
そして、「戦争は始めたら止められない」ことが
切々と伝わるのは今だからこそ。

0
2025年12月25日

Posted by ブクログ

唐津の作陶家から聞く水神(河童)の言い伝え「水神夜話」。
時代の大きなうねり、朝鮮出兵に河童が関わっていたなんて。
そして河童はあくまで平和主義。
力を持たない者たちに河童たちが奮闘するも、出兵は止まらない。

0
2025年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

秀吉の朝鮮出兵を止めるべく、水神(河童)が奔走した話を語り継ぐ「水神夜話」を、著者が陶工から聴いてしたためた本。という体をとっている。
水神と人間が目に見えて共存する世界を、史実を背景にして書いている。このよくわからない設定を最後まで読ませるのは、著者の筆力だろう。
ただ、途中で何を読まされているのか、よくわからなくなってくる。登場する河童たちは基本的に人間と似た思考回路を持っているので(「嘘」が理解できないことを除けば)、あまり面白みはなく、河童独特の世界に浸れるわけでもない。また史実がベースになっているが、あくまで河童とそのまわりの人々が主役なので、歴史のダイナミックさに没頭できるわけでもない。結果、どうしても中途半端感が否めない。
「戦争を止めようとする河童」という童話的な設定ではなく、もっと各地の河童伝説に絡めたような文化人類学(河童学?)的な話にしたら面白かったのでは?と思ったり。
著者と陶工のやりとりは血が通っていて温かかったが、途中からはほとんど出てこない。最後、芹摘みの老人に怒鳴られる?に至っては、なぜそうなるのかまるでわからなかった。
それでも、梨木香歩の家守綺譚を彷彿とさせる、現実と非現実の溶け合う感じは、良い読書体験だった。
中島京子さんの文章は好きなので、これからも読みます。

0
2026年03月06日

Posted by ブクログ

想定とタイトルからは想像つかない歴史小説

唐津の不思議な陶芸家夫婦がスランプ中の小説家に語るのは、あるひとつの器にまつわる伝承
ここから秀吉の朝鮮出兵に話が広がり、なんとか戦争を食い止めようと奔走するのは九州の殿様であったり、水神と呼ばれる河童であったり

口伝えなので、話は行ったり来たり
何が本当の歴史なのかを気にしすぎるのはきっと野暮で、人間の凄まじい欲望がこれだけの人を不幸にするんだと呆れながら苦しくなった

全体的に散漫な印象はあって、焦点が定まらないけど、口伝えの伝承物語の雰囲気のため敢えてなのかなと感じた

0
2026年01月28日

Posted by ブクログ

ちょっと不思議な歴史小説。
作家のわたしが焼き物体験をしようと訪れた唐津の窯で、陶芸家のサワタローさんとその妻のナミエさんから『水神夜話』という水神の伝承を聞くという話です。
『水神夜話』は、河童(物語の中では水神)の目線で、豊臣秀吉の朝鮮出兵である文禄・慶長の役が語られます。
装丁が美しくて手に取りましたが、この表紙で歴史物とはなかなか想像できないかと。
朝鮮出兵は本当に酷い戦争というかただの虐殺であり、教科書だと1行2行でまとめられていますが、豊臣軍のやったことを詳細に描写されると改めてあんまりの酷さに絶句します。河童たちは必死に戦争を止めようとするのですが、読者はこの戦争が止まらないことを歴史として知っているので、余計に辛い…。
河童たちの語り口はユーモラスでクスッと笑えるところもありますし、河童独自の戦国武将たちの呼び名なども面白く、辛い話ですが引き込まれました。

タイトルの元になっている芥川龍之介の「薄雲る水動かずよ芹の中」がとても素敵な俳句で印象に残りました。

0
2026年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現在と過去、歴史にファンタジー
水神&歴史パートは史実&カッパ要素で面白いが、現代パートは現実なのかファンタジーなのか、謎が謎のまま
あっちいってこっちいって、ケムに巻かれてさようならはチトつらい

0
2025年11月19日

Posted by ブクログ

キャリア20年の女性作家が、唐津の陶芸作家夫婦から聞いた「河童たちの間で言い伝えられてきた秀吉の朝鮮出兵の顛末」を記すという形式の作品です。さらに、正体不明の芹農家の老人が、時折ちらりと顔を見せたりします。
中島さんの作品でいえば、南部の女性大名・祢々の物語を一本角のカモシカの霊が語る『かたづの!』とほぼ同様の形式で、ファンタジーと歴史を融合させた作風です。
読後の感想も似たものでした。なぜ河童という伝奇的な要素を取り入れる必要があったのか。しかも、河童の中の伝承を陶芸作家が語り、それを聞いた女性作家が記すという「又聞きの又聞き」のような構造で、まどろっこしい。いっそ、登場人物の一人である日本に流れ着いた朝鮮の名陶工の娘・銀非あたりを語り部にした方が、物語としてすっきりしたのではないかと思います。

ちなみに、語り部である「キャリア20年の女性作家」は中島さん本人かとも思いましたが、本文ではここ2年ライターズブロックに陥っていたと書かれていますし、昨年も『うらはぐさ風土記』『坂の中のまち』を出版されているので、どうやら違うようです。

0
2025年11月02日

「小説」ランキング