【感想・ネタバレ】水は動かず芹の中のレビュー

あらすじ

長いスランプに陥った小説家はやけっぱちになり、唐津を旅することに。陶芸体験をした窯元の夫婦から、水神にまつわる不思議な伝承を聞く。今でいう「難民」であったという流浪の水神は、戦国時代、いかにして秀吉の朝鮮出兵を止めようとしたのか……。『かたづの!』の著者が、かつてないスケールで歴史と現代を深く結びつける長篇小説。

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Posted by ブクログ

中島京子の突拍子もない(褒め言葉)歴史小説です。

主人公はスランプの作家で、スランプ脱出のための旅先で不思議な窯元に出会う。その窯元が語るのは、水神=河童一族で伝わる水神夜話。そしてそれは、ウンビの器と、水神、秀吉朝鮮出兵にまつわる壮大な歴史物語だった。

水神たちは、戦争を止めようとする。戦いを好まない水神たちはどこかおっとりとしていて、戦をしたり、平気で嘘をついたりするヒトのことがいまいち理解できない。
水神さんたちがせっかくおっとりして、良い感じのお話になっているのに、史実のおかげで語られる物語は凄惨である。

史実とファンタジーの境目で、ふわふわした世界観のなか、ラストはけっこう重たいなあと思った。なんで人間ってずっと戦してるんだろうね。なんでだろうね。

斉藤洋の「白狐魔記」のようだな。
あれも、狐は長い日本の中で、戦をするヒトのことが理解できないんだ。

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2026年03月31日

Posted by ブクログ

僕は、先の併合植民地化と大震災での虐殺とそれに続く大戦で、その国の人々に大変な災いをもたらしたことを非常に恥じていて、大きな借りを負っていると思って生きてるけど、そのもっと前の出征とその時の振舞いの話しを小説とはいえ改めて読み、さらにもう一つ大きな借りを負ってしまったと感じた
まずは借りを少しずつでも返すことから始めなければいけない

小説はとても悲しかった
上に書いたことを感じたながらよんだからだと思うし、たまたまこの前に読んだ不屈の人とひと続きになってると感じたからというのもありそう

この作家の小説の終わらせ方はいつもとても好きで、でも今回はなぞかけも含めて理解が追いつかなかったと思う

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2026年01月07日

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ネタバレ

スランプに陥った作家「わたし」は唐津に旅をする。
そこで陶芸家の夫婦と知り合い、不思議な茶碗と、朝鮮の娘と、水神にまつわる話を聞かせてもらうことになった。
サワタローさんの語る『水神夜話』は、家に伝わる長い話で、水神とは河童のことらしい。

ファンタジーなのか、ファンタジーを装った歴史小説なのか。それとも反戦小説なのか。
ここでの水神の祖先は天竺からモンゴルを経て中国へ、半島から泳いで日本に渡り、九州に住み着いた。
水神は、人間社会に絡みつつも、人間の生態を観察し、一歩距離を置く。

『水神夜話』では秀吉の朝鮮出兵を止めようとする水神について語られる。読みごたえがあった。
ある日、朝鮮の名陶工の娘・銀緋(ウンビ)の焼いた不思議な茶碗が、カタカタと震え出す。
聚楽第の茶室での会話を聞いた茶碗が、猿が朝鮮半島を侵略するという情報を伝えたのだ。
戦が始まる。
インドから中国を経て日本に渡る間、各地に住み着いた水神の仲間がたくさんいる。
戦が起これば、仲間がたくさん殺される。川が血で汚れ、水が飲めなくなる。
水神たちは何とかして、猿の朝鮮出兵と、その先の明への侵略を止めなくてはと思う。
しかし、戦はヒトが行うもの。水神が直接手を下して止めることはできないのである。
そこで、水神たちは彼らの特性を生かして情報を収集する。
茶人と親交を持った者、島津義久の元にいる明人の医師の周辺を探る者、小西行長について回る者・・・
その過程で、猿以外の誰も明との戦いを望んでいないという状況に気づいていく。
しかし、中小の大名たちはもちろん、島津や徳川のような力のある武将も、猿の戦は愚かで無謀と分かっているのに、楯突くことが出来ないでいる。
どうやら、ヒトをあてにはできないらしい。
水神たちは、猿の野望を打ち砕くことができるのか!?

水神の一人、対馬の仁田川(にたがわ)にすむニタと小西行長のやりとりが面白い。
ニタは小西のつく「嘘」に驚き、興味を持つ。シンプルに生きる水神には、人の嘘が理解し難いようだ。
どうしてそんな嘘をつくのだとニタが問うと、その度に小西は「嘘ではなく駆け引きだ」とか、方便だとか、建前だとか言い返すのがちょっと漫才のようである。
そして、二人の腐れ縁。
人間に興味を持ちすぎた河童はヒト化するというが、大丈夫か?

銀緋(ウンビ)の茶碗はどんなものなのかと想像する。
こんこんと水が湧いてきたり、不吉なことを知らせたり。
きっと美しいのだろうな。

半島や大陸に出兵するのはとても愚かなこと。
隣人は大切にしないといけない。

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2026年03月07日

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ネタバレ

これは好みが分かれる作品のようだ。
私は『かたづの』のような作品が好きなので、中島さんの妖なるものと歴史との絡みは面白いジャンルだと思っている。
今回は「水神」から見た、秀吉の朝鮮出兵の時代。
現代と、水神が記録した歴史を行き来して物語は進むが、水神から見た人間は、なんとも理解し難いほどの野蛮と支配欲を持った生き物だ。実際の歴史ではなく、水神から見た歴史というところが面白い。
水神は戦を止めることはできないが、できるだけ役に立ちそうなヒトに近いて、なんとか種族を守ろうとする。
歴史は事実なのだが、そこに水神が絡むことによって、より歴史の悲しさや虚しさが表れる。
本当にスランプなのかわからないけれど、中島京子さんの次回作にも期待!

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2026年02月26日

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『かたづの』を想わせる、私の好きな中島京子小説。
しかも舞台は名護屋城のある唐津というんだから、
そりゃ好き好き大好き。

スランプの女性小説家・わたしが
ひょんなことから唐津の陶芸家と親しくなり
水神(河童)の史書「水神夜話」について聞かされる・・・

加藤清正による水神ホロコーストから
朝鮮出兵の悲劇、
そして秀吉の死・・・

摩訶不思議な夢とうつつを行き来するような
世界が良い。
そして、「戦争は始めたら止められない」ことが
切々と伝わるのは今だからこそ。

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2025年12月25日

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唐津の作陶家から聞く水神(河童)の言い伝え「水神夜話」。
時代の大きなうねり、朝鮮出兵に河童が関わっていたなんて。
そして河童はあくまで平和主義。
力を持たない者たちに河童たちが奮闘するも、出兵は止まらない。

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2025年12月21日

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何度も挫折しそうになりながらなんとか11日かけて読んだ。★ふたつかな?と思いながらも三つは中島京子さんへの敬愛を含めて。
 最初は面白いな、と思ったけど、その後なんだかページがちっとも進まなくなった。もっと言えば、苦痛で苦行のような読書。 
 秀吉の朝鮮出兵というテーマはとても興味があるのだけど、その興味にいくら読んでいっても乗っかれなかった。それにその人物(?)の設定にも不可解感がずっと付きまとって、よくわからないままに終わってしまったのでした。
 「利休にたずねよ」を読んだときでもそうだったけど、秀吉ってどんどん印象が悪くなってゆくなぁ。

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2026年04月11日

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「秀吉の朝鮮出兵」について、河童族(水神)が見聞きしたことを記録した文書「水神夜話」。その内容を、朝鮮出兵の拠点となった佐賀で、現代の作家が、水神と何か関係のありそうな?陶芸家夫妻から聞くという話。
「秀吉の朝鮮出兵」は遠い昔、歴史の授業で習ったけれど、「そういう事実があった」程度しか教わらなかったので、こんなに大勢が亡くなった、16世紀最大規模の国際戦争だったと初めて実感した。
河童の記録という体裁なので、本作には幻想的だったりユーモラスな雰囲気もあるのだけれど…
何故戦争をするのかよくわからないまま始まった戦争であることや、なかなか終わらせることができずに無駄に続けられたこと、トップ(秀吉)の権力が大きすぎて誰も止められない・意見を言えない等、今現在のアメリカの対イランの状況を思い起こさせる。
また、本作にも書かれているように、兵站(戦場における食料や燃料、医薬品等の補給・輸送)をちゃんと考慮せずに無暗に突き進んで多くの兵を飢餓で失った事実は、第二次世界大戦中の日本軍を思い起こさせた。現在の食料自給率37%にも私はたいへんな恐怖を覚えるのだけれど、日本人は昔から、食料確保についてはあまり考えないみたい。日本人は食べることが好きな人が多い気がするのに、なぜなんだろう?
九州に行くと、古代からの朝鮮半島・中国との交流の歴史や、物理的な距離の近さ、文化的な影響を肌で感じることがあって、九州(西日本)にルーツを持たない私としては物珍しいというか、面白い。佐賀の唐津や名護屋城跡なども行ってみたいなと思った。

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2026年04月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

秀吉の朝鮮出兵を止めるべく、水神(河童)が奔走した話を語り継ぐ「水神夜話」を、著者が陶工から聴いてしたためた本。という体をとっている。
水神と人間が目に見えて共存する世界を、史実を背景にして書いている。このよくわからない設定を最後まで読ませるのは、著者の筆力だろう。
ただ、途中で何を読まされているのか、よくわからなくなってくる。登場する河童たちは基本的に人間と似た思考回路を持っているので(「嘘」が理解できないことを除けば)、あまり面白みはなく、河童独特の世界に浸れるわけでもない。また史実がベースになっているが、あくまで河童とそのまわりの人々が主役なので、歴史のダイナミックさに没頭できるわけでもない。結果、どうしても中途半端感が否めない。
「戦争を止めようとする河童」という童話的な設定ではなく、もっと各地の河童伝説に絡めたような文化人類学(河童学?)的な話にしたら面白かったのでは?と思ったり。
著者と陶工のやりとりは血が通っていて温かかったが、途中からはほとんど出てこない。最後、芹摘みの老人に怒鳴られる?に至っては、なぜそうなるのかまるでわからなかった。
それでも、梨木香歩の家守綺譚を彷彿とさせる、現実と非現実の溶け合う感じは、良い読書体験だった。
中島京子さんの文章は好きなので、これからも読みます。

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2026年03月06日

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想定とタイトルからは想像つかない歴史小説

唐津の不思議な陶芸家夫婦がスランプ中の小説家に語るのは、あるひとつの器にまつわる伝承
ここから秀吉の朝鮮出兵に話が広がり、なんとか戦争を食い止めようと奔走するのは九州の殿様であったり、水神と呼ばれる河童であったり

口伝えなので、話は行ったり来たり
何が本当の歴史なのかを気にしすぎるのはきっと野暮で、人間の凄まじい欲望がこれだけの人を不幸にするんだと呆れながら苦しくなった

全体的に散漫な印象はあって、焦点が定まらないけど、口伝えの伝承物語の雰囲気のため敢えてなのかなと感じた

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2026年01月28日

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ちょっと不思議な歴史小説。
作家のわたしが焼き物体験をしようと訪れた唐津の窯で、陶芸家のサワタローさんとその妻のナミエさんから『水神夜話』という水神の伝承を聞くという話です。
『水神夜話』は、河童(物語の中では水神)の目線で、豊臣秀吉の朝鮮出兵である文禄・慶長の役が語られます。
装丁が美しくて手に取りましたが、この表紙で歴史物とはなかなか想像できないかと。
朝鮮出兵は本当に酷い戦争というかただの虐殺であり、教科書だと1行2行でまとめられていますが、豊臣軍のやったことを詳細に描写されると改めてあんまりの酷さに絶句します。河童たちは必死に戦争を止めようとするのですが、読者はこの戦争が止まらないことを歴史として知っているので、余計に辛い…。
河童たちの語り口はユーモラスでクスッと笑えるところもありますし、河童独自の戦国武将たちの呼び名なども面白く、辛い話ですが引き込まれました。

タイトルの元になっている芥川龍之介の「薄雲る水動かずよ芹の中」がとても素敵な俳句で印象に残りました。

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2026年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現在と過去、歴史にファンタジー
水神&歴史パートは史実&カッパ要素で面白いが、現代パートは現実なのかファンタジーなのか、謎が謎のまま
あっちいってこっちいって、ケムに巻かれてさようならはチトつらい

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2025年11月19日

Posted by ブクログ

キャリア20年の女性作家が、唐津の陶芸作家夫婦から聞いた「河童たちの間で言い伝えられてきた秀吉の朝鮮出兵の顛末」を記すという形式の作品です。さらに、正体不明の芹農家の老人が、時折ちらりと顔を見せたりします。
中島さんの作品でいえば、南部の女性大名・祢々の物語を一本角のカモシカの霊が語る『かたづの!』とほぼ同様の形式で、ファンタジーと歴史を融合させた作風です。
読後の感想も似たものでした。なぜ河童という伝奇的な要素を取り入れる必要があったのか。しかも、河童の中の伝承を陶芸作家が語り、それを聞いた女性作家が記すという「又聞きの又聞き」のような構造で、まどろっこしい。いっそ、登場人物の一人である日本に流れ着いた朝鮮の名陶工の娘・銀非あたりを語り部にした方が、物語としてすっきりしたのではないかと思います。

ちなみに、語り部である「キャリア20年の女性作家」は中島さん本人かとも思いましたが、本文ではここ2年ライターズブロックに陥っていたと書かれていますし、昨年も『うらはぐさ風土記』『坂の中のまち』を出版されているので、どうやら違うようです。

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2025年11月02日

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