中島京子のレビュー一覧

  • 桐畑家の縁談

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    正反対の性格、性質の姉妹。地味な妹が先に結婚。お相手は台湾人。この縁談に右往左往する桐畑氏と夫人(つまり両親)が面白い。父がとか母がじゃなくて、氏と夫人って。この当事者のようなそうでないような表現が、物語の面白さを際立たせている。こっそりと。露子さんが過去の失恋で大泣きした時、ウーミンゾン以下外国人大勢がいろいろ慰めるシーンは良かったな。そういう温かさってすてき。佳子さんはいい人と巡り会えたと思う。露ちゃんはあまり考えすぎないでどーんと行けばいいよ。十条の叔父さんの健在ぷりもなかなか。桐畑家は不滅だ。

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    2017年06月01日
  • 東京観光

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    『シンガポールでタクシーを拾うのは難しい』、『東京観光』が面白かった。前者、倦怠期の夫婦の様子が生々しくて、そうなんだよね、相手をちょっと気遣えば問題にすらならないことが、気遣えないばっかりに大問題になるんだよね、あるある。と思いながら読んだ。夫婦間だけでなく、恋人同士でも家族でもあること。おもいやりは大切。お互いに。で、結局くだらないことで笑い合ってなんとなく仲直りして、というのも気の置けない同士ではあること。上手だなあ。後者はちょっと不思議な話。一度は遭遇してみたいな私も。夢か現実か分からない体験に。

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    2017年05月28日
  • のろのろ歩け

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    初中島さん。文体がドライでとても読みやすかった。舞台は台湾、北京、上海。北京編での一文。「さよならの代わりに「慢慢走」って言うんだよ、まあ、ゆっくり行けよって感じかな」とてもいい言葉だなあと心底思った。お別れの時、「ゆっくり行ってね」ってとても優しくてなんとも温かい。よし早速使ってみようと中国人男子に得意げに「慢慢走」と言ったら、まずきょとん、とされ、続いて「慢走」か、と言われ、「それとても古い言葉。もう使わない」と一蹴。儚く終了。現代語じゃないかもしれないけどさ、わたしは使おう。だって美しいんだもん!

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    2017年05月24日
  • 眺望絶佳

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    ゴミ屋敷に住まう高齢姉妹の話に魅かれて。『金粉』なぜこのタイトルなのか。もちろんすぐには分からない。姉妹はふたり仲良く暮らしている。気心分かり合えるのはこの二人だけだから。家を出れば敵ばかり。元は薔薇屋敷、今はごみ屋敷。嫌われる理由は正当にある。でも姉妹にも理由はある。誰も分かってくれないけれど。生活を守るため他者は寄せ付けない。それでも来訪者あればおもてなしの心は忘れない。それが「金粉」。余韻がたまらない一編。東京タワーとスカイツリーの往復書簡、東京タワーが感じる哀愁。これはまさに残された昭和の悲哀。

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    2017年05月24日
  • FUTON

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    電子書籍、巻末特典本家花袋の『蒲団』付。なんとお得な。とりあえず中島さんの方から読む。ウメキチはじめ個性的な男性盛りだくさん。どれも妻の他に恋心を抱く女性を持つ。ウメキチの場合は遥か昔の記憶のため、それが現なのか夢なのか誰も判断ができないのが一興。デイヴ教授の蒲団アレンジ、妻視点からの夫の酔狂。子を三人もなしている故、どっしりしていて極めて正論で清々しい。中年夫がプラトニックラブで終った女弟子の蒲団で見悶えた後に妻がとった行動。これぞ本妻というものか。天晴。男は新しい玩具を求めるばかりで。しょーもな。笑

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    2017年05月24日
  • 均ちゃんの失踪

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    均ちゃんはやっぱ「平均」の「均」なのかな。このふわふわした「均」ちゃんに振り回されているんだか、振り回しているんだか、4人の女性の物語。みんな似ているようで似ていない。一番一般的な感じは片桐さんかな。恋したらそういう感情に悩まされるのはごくごく普通だ。突然消えたと思ったら、実は他にも女がいることが分かってとかさ。混乱するわ。ただ他の女性が一風変わっているのでどろ沼にならず、逆に親睦を深めていくのがいい。こんな出会いは面白い。空穂さんがキャラとしては好み。最後、均ちゃん一人になっちゃった。味わい深い、実に。

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    2017年05月24日
  • イトウの恋

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    イザベラ・バードの紀行文はまだ読んだことがない。少し読んでみたくなった。伊藤はどのように描かれているのだろう。確かにかの時代、通訳は必要だ。イザベラの通訳として淡い恋心、慕情を抱く伊藤鶴吉視線の話。手記、日記、書いている当時はなんてことないただの雑文でも50年、100年経つと価値が出てくる。その重要性がよく分かる。記録というのは面白いものだ。歴史の隙間に埋もれている事柄を掘り起こし、未来の直接関わりのない人間に感動やら勇気を与える。言葉、文字がある限り続く現象であり時間が持つ雄大なロマンでもある。

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    2017年05月24日
  • 冠・婚・葬・祭

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    どのお話しもよかったけれど、心に残ったのは「婚」かなあ。いまはあまり出会えなくなったお見合い斡旋おばさん。ちょっと前までは確かにあった。適齢期の男女は必ず1回は「お見合いしてみない」って聞かれたと思う。それが少なくなったってことはやっぱり人間関係が希薄にはなっているんだろうな。都会は特に。このマサ枝のようにしっかりしなさい!と叱ってくれる人もなかなかいないし。恋愛結婚と違って、お見合い結婚は短期決戦!というのがなるほどと思った。グズグズしてる暇はないんだな。決定力に欠ける現代若者には難しいのかもな。

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    2017年05月24日
  • さようなら、コタツ

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    部屋とそこの住人にまつわる短編集。短編集は読みやすいからやっぱり好き。表題『さようなら、コタツ』の主人公女性の心の動き。自分を励ましてみたりつっこんでみたり。よく表現できている。恋をしてるとさ、どんなに強い人間でもフラフラ動いてしまうんだよね。周りの意見も妙に耳に入ってくるし。でも結局は自分で決めて、自分で行動していかないと変わらないしさ。この女性、ほんとよくがんばった。そして温かみのある結末でほっとした。よかった。ハッピーエンドは嬉しい。たとえ虚構の世界でも。絵に描いたような幸福、味わってみたい!

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    2017年05月24日
  • ツアー1989

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    なかなかミステリアスで面白かった。「迷子ツアー」を巡る人間関係とその背後。だんだん真相が明らかになっていく過程、充分に楽しめた。バブル全盛期、たしかに何が合ってもおかしくなかったんだろうなあ。あの時代を生きた人たちの話を聞くとほんと面白いし。これが日本なの?って思う。そんな時代に一風変わった旅行をとのことで企画された「迷子ツアー」、最終日一緒にいた参加者が消える。他のツアー客の心には不思議な思い出が残る。それが売り。舞台は香港、文字を追ってるだけでも雑多。パワフル。魑魅魍魎。迷子になったら最後、消される。

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    2017年05月24日
  • 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記

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    竹取物語(森見登美彦)
    伊勢物語(川上弘美)
    堤中納言物語(中島京子)
    土左日記(堀江敏幸)
    更級日記(江國香織)
    月報:小川洋子・津島祐子

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    2017年04月05日
  • FUTON

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    p116
    いろんな人に声をかけてる。その声を聞きとるかどうかが、まず最初の関門になる。同じ声を聞いても、それを形にする人間によって、どんな形になるのかはまったく違う。

    別のテクストを暗示しながら進む文章に私はひかれてしまうらしい。タイトルでもしかしてとは思ったけど、田山花袋『布団』のスピンオフみたいな作中作。あと布団のストーリーをなぞるような恋愛をしているアメリカ人教授と、花袋の時代を生きていた老人。この微妙な接点を作り込まれた設定が良い。
    小説として面白いかはオススメできる自信がないけど、技巧的だと思う。

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    2017年02月14日
  • 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記

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    好きな作家さん目白押しで、これは読むしかないなと。

    伊勢物語おもしれえええってなっている。
    川上弘美の作品かと思うくらいどんぴしゃの訳にうっとり。余韻。
    竹取物語はポエム調の和歌がたまらん。これも森見作品かのよう。すばらしいテンポ感。
    堤中納言物語はおもわずニヤリ。
    土左日記は前段と括弧書きの注釈に痺れるし、更級日記は瑞々しくて女の日記感がさすが江國。

    この全集、ほんとぴったりな人に訳を頼みますよね。さいこう。

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    2017年01月04日
  • 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記

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    自分がいかに古典にいい加減に接してきたかを思い知らされることになった。
    かぐや姫の話は誤解が多かった。もっとも、絵本の印象が強くて、かなり違訳を信じていたのかもしれないけれど、それも原典をきちんと読んでいない証拠。
    伊勢物語では、こんな太古から微妙な男女の機微があったのだと感銘を受けた。

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    2016年12月14日
  • 眺望絶佳

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    東京の片隅でおきたエピソード8編をあつめたもの。冒頭スカイツリーの【往信】、巻末に東京タワーの【復信】が入っているけれど、スカイツリーは書き下ろし。
    東京タワーは東京に建ち、東京を眺めているけれど、「私」にできるのは「立つ」ことだけ。でも、それがなにより大事だと「彼女」は言う。この擬人化されたツリーたちのそれぞれの感覚が面白い。やはりスカイツリーはまだ若いから、なんて思ってしまう。
    物語は東京に起きた現実や、ファンタジー、ありそうなこと、なさそうなこと、ハッピーエンドもあるし、不安も。どれかひとつは、心に触れる話が見つかると思います。
    どの話も短いのに、描写の巧みさに感心しながら、物語の世界がどんどん広がっていく気持ちがしました。
    どの話もよかったけど、私は「よろず化けます」や、「亀のギデアと土偶のふとっちょくん」「おさななじみ」好きでした。

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    2016年12月08日
  • 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記

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    「こんな、おちゃらけの文学なんてあり得ない!」とも思うけど、50年後でも意味が通じる本として残せたので、これぞ文学なのかも知れない。
    全30巻の中で、この3巻だけを選んで読んでみたけど、結構当たりだったかも・・・!

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    2016年02月24日
  • 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記

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    森見登美彦訳『竹取物語』
    川上弘美訳『伊勢物語』
    中島京子訳『堤中納言物語』
    堀江敏幸訳『土左日記』
    江國香織訳『更級日記』

    こんな、宝石の詰め合わせがあって良いのか⁈
    発刊を待ちわびていたし、読むのもドキドキ。
    それぞれに訳者の持ち味があって、とにかくすごい。

    きちんと全文収録されているのも、嬉しい。

    中でも、川上弘美の『伊勢物語』は鳥肌モノ。
    歌物語の真骨頂というか、とにかく、和歌の訳し方が素敵すぎる。
    言葉の数を少なくしながらも、今の感覚を添えてくれて、色っぽいし切なくなりました。

    お気に入りは二段。


    起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめ暮らしつ


    起きるでもなく
    ねむるでもなく
    夜は明けてゆく
    春の長雨がふっている
    わたくしはただ見ている


    そして三十段。


    逢ふことは玉の緒ばかり思ほえてつらき心の長く見ゆらむ


    逢うのは
    一瞬
    恨みは
    永遠


    更に月報の小川洋子が、この川上弘美訳を上手く伝えてくれているので必見。
    そうそう!ですよね!ってなりました。

    あとは堀江敏幸の『土左日記』も、すごく考えられていて、参考文献を見ても納得のラインナップで、仕事の仕方に尊敬を覚える。
    江國香織の『更級日記』は、とにかく可愛い。そうして、姉や父の描写を通した家族としての作者がよく描かれていて楽しかった。

    紀貫之ではないけれど、言葉について、とても考えさせられる一冊だった。
    私たちは、その息吹に今尚こんなに鮮やかに触れられる。

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    2016年01月24日
  • さようなら、コタツ

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    ちょっとが永遠になりませんように、
    一人でいるときに嫌なことが起こりませんようにと、

    自分の人生をまだ
    自分の手では切り開けない
    年頃の女の子は、
    いつもいつも胸の中に抱えている不安を、
    小さくぽつんと口に出して、
    それから星のまばらな空を見上げる。

    (ハッピーアニバーサリー/さようなら、コタツ/インタビュー/陶器の靴の片割れ/ダイエットクイーン/八十畳/私は彼らのやさしい声を聞く)

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    2013年02月13日
  • さようなら、コタツ

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    色々な「部屋」に暮らす様々な人たちの人生を切り取って、時にユーモラスに、時にほろ苦く描いた短編集。

    相撲部屋の「かわいがり」、児童虐待・摂食障害など、重いテーマも淡々と織り込んである。

    個人的には昔の彼女との再会を描いた「陶器の黄色い靴」と隣室の子供の話である「ダイエット・クイーン」が興味深かった。

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    2012年09月22日
  • イトウの恋

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    イトウこと通訳伊藤亀吉、I.Bこと旅行家イザベラ・バード。
    年齢も国籍も文化的背景も違う2人の出会いと別れを綴った手記と、それを見つけた中学教師久保耕平と、イトウの曾孫田中シゲル。
    いくつもの平行した視点でもって進むストーリーだか、派手すぎず寄り添っているように読み進められる。
    余韻のある読後感も、童話のように穏やかで心地よい。

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    2012年07月30日