中島京子のレビュー一覧
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このタイトルが気になって読まずにはいられませんでした。5篇の短編集ですが、どれも面白かったです。
『妻が椎茸だったころ』は妻を亡くした夫が妻が生前予約していた料理教室に代わりに参加するお話ですが、これは想像力を掻き立てられますね。私は昔何だったのだろう?
そして一時期「石」に興味を持っていた時があったので『蔵篠猿宿パラサイト』のお話はとても楽しく読めました。猿宿温泉も鍾乳洞も実在してないようですが、『宇宙からの色』という小説はあるようなので読んでみたくなりました。
どの短編も不思議な世界観と最後のオチも良く楽しめました。これまで中島京子さんの作品は長編を2冊読んでいますが、私の好みは断然こちらの短編集。興味を引くタイトルの付け方にもセンスを感じました。 -
Posted by ブクログ
東京都心にありながら未だ昔の風情が漂う町、うらはぐさ地区。
30年ぶりにアメリカから帰国し、古きよき時代の人情が残るこのうらはぐさの古家で、ひとり暮らしをはじめた熟年女性の日々を描くヒューマンドラマ。
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玄関脇の50㌢四方ほどの土の部分から、蔓性の植物が伸びているのに気がついた。河童の手のひらのような葉を広げ、黄色いつぼみもつけている。
伯父が植えたものか尋ねると、従兄の博満は即座に否定した。伯父は認知症が進み、2年前から施設に入っているからだ。
私の伯父は博満にとっては祖父に当たる。その伯父が住まなくなった家の管理に困っていた博満は、30年ぶりにアメリカから帰国し住まいを探していた私に、格安で貸すことにしたのだった。
家の中の説明から地域のゴミ出しのルールまで細々と語る博満は、記憶の中の伯父にそっくりだ。そんな博満は私より5歳上だからもう還暦が近い。
月日の流れをぼんやり考えているうちに、ひと通りの説明を終えた博満は、家賃の振込口座はメールで知らせる旨を告げ、そそくさと帰っていった。
1人になった私は6畳間にぺたんと座り、ガラス戸の向こうにあるこじんまりした庭を見る。昔からこんなふうだったかなとぼんやり眺めていると、柿の木の葉先からポツンポツンと水滴が落ち始め、すぐにザァーッと激しい雨に変わった。
久しぶりに見る日本の夕立。東京でのひとり暮らしの始まりを私は実感していた。
( 第1話「しのびよる胡瓜」) ※全9話。
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大学卒業後アメリカに渡り、カリフォルニアの大学で職を得た田ノ岡沙希。年下のパートナーと結ばれて幸せな日々を送っていました。
風向きが変わったのが、勤務先の大学で沙希の担当する学部の閉鎖が決まったこと。
夫との間も上手く行かなくなっていた時期でもあり、離婚に踏み切った沙希は、アメリカでの生活にピリオドを打つことにしたのでした。
30年ぶりに帰国した沙希ですが、両親はすでになく当然実家もありません。でも幸運なことに母校の女子大から特任教授として迎えられ、住まいも大学近くで空き家になっていた伯父宅を借りられることになりました。
こうして始まった日本での沙希の生活の様子が淡々と描かれます。
大きな事件が起こるわけでもドラマチックな展開が待っているわけでもないのですが、不思議と読まされる作品です。理由はいくつもあります。
まず1話ごとの分量がちょうどいいこと。読んでいてきれいに頭の中でまとまります。
それに各話のタイトルもなかなかシャレていていい。
「しのびよる胡瓜」。何と素敵なタイトルでしょうか。調べてみたらホントにそんな胡瓜があるので感動しました。 ( メロスリア ペンデュラという種類だそうです。)
次に、登場人物が実に魅力的な好人物揃いであること。
特に伯父の友人で庭の植栽の世話をしてくれている秋葉原さんとその妻の真弓さんは、何となく安らぎを感じさせるような味のある人たちです。
また、教え子学生のマーシーこと亀田マサミもなかなかいい。おかしな敬語を操り行動も少し変なのですが、本人は至って大真面目で一生懸命なところにしみじみ癒されます。
そして何より、中島さんの描写が心にしっくりくること。
大発展を続ける東京都心にあって、取り残されたように昔の姿を保っているうらはぐさ地区。ここで沙希の目にする天気なり植物なり街並みなり料理なりのイメージや風情が、頭の中でふわぁーと広がるのです。
この街で生活することにより、失職や離婚のダメージから少しずつ回復していく沙希の姿が物語の中心ですが、もう1つ物語の核となるのがうらはぐさ地区再開発の話が持ち上がっていることです。
沙希は、うらはぐさが近代的な街に姿を変えることについて、やむを得ないとは思いつつも受け入れ難い気持ちが拭えません。
けれど街の商店街で丸秋足袋店を営む秋葉原さん夫妻や、布袋という3代続く焼き鳥屋の店主である田中さんは、もっと恬淡として受けとめています。
その感覚は、施設に面会に訪れた沙希に伯父が口にしたことば、「いいもんにあれしなさい」によく表れていて、ほのぼのした希望が見えた気がしました。
中島京子さんの作品世界や文章の持つリズムを私がもともと好きなせいもあるのでしょうが、ずっとつかっていたいぬるめのお風呂のような心地よさが堪能できる作品でした。 -
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旅の途中、夜の高原の駅でいきなり雨に会った栗田拓海。
暴風雨の中、たどり着いた元ペンションには、年齢も国籍も違う謎めいた4人の男女が住んでいた。
語り手を変えながら、「ムーンライト・イン」に住む人たちの関係と、それぞれの過去が少しずつ明かされていきます。
ユーモアがたっぷり含まれていて、中島京子さんの描き方が本当に上手いんです。
ミステリーを読んでいるみたいに、物語にどんどん引きずりこまれていきます。
彼女たちは何から逃げて、ここで暮らしているのだろうか。
ここではお互いに助け合い、詮索もされず、夢みたいな生活ができる。
だけどどんなに深い事情があっても、いつまでもここにいるわけにはいかないとみんな思っている…。いつまでもこんな生活が続くわけがないと。
現在の日本が抱えている社会的な問題、日本人が考え直さなくてはいけないと思われる事柄がたくさん書かれていて、フィリピンから来たマリー・ジョイの言動がとても的を得ていて、胸に突き刺さります。
最後にそれぞれの選んだ道は、どこか安心させてくれるような、何とも言えない独特な面白さがあって、とても楽しめました。 -
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夜逃げ おどろおどろしい出だしの街並みにLNNと書かれた表札のムーンライト いやあ引き込まれた。どんな方向に向かって終わりを迎えるか、そして塔子さんの息子に対する愛情以外に今後の身の振り方も書いてないし しょーもない息子にしょーもない嫁に登場するタイミングが酷くて金の管理迄していて自分の都合で帰るのに同居を偉そうに言うとか、3人で帰る場面も驚きました。栗田の告白する遅さと焦ったさ、マリーの父親と同じ事をしている栗田、その後が書かれていない意味はあるんだろうね、色々想像してしまう。途中のそれぞれの不安な気持ちとか一年にもならないシェアハウスとか、決して全員上手く行かない方向幕で、ずーっとローテーションだったなあって感じ
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直木賞作家の中島京子さんが書く児童書入門のエッセイ。素晴らしくてするする読めて、ここから児童書を読む日々が始まったくらい。
プーさんも読んだことがなかった。どこがおもしろいのか、どんな部分がステキなのか、中島さんはどう感じたのか、そこがすごく伝わってきてワクワクしながら読んだ。
ナルニア国物語も不思議の国のアリスも読み直してみると素晴らしい。(中島さんが紹介してくれた鏡の国のアリスはなかなか難しいが)
それは子どもの時とは違い、人生経験がふえて、頭の中の映像を鮮明にすることができるようになったからだと思う。
ぜひ入門書として、ここから児童書沼にお入りください。僕はもうどっぷりつかっています。