中島京子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた」
そんな一文に惹かれて購入。
あまりにもど真ん中のストーリー展開に心臓を打ち抜かれてしまった。
あああ、何でこんなに惹き込まれるんだろう……!
どの章のどの登場人物にも奥行きがあって、妄想が止まらない!
そんなはずはないのに、まるで自分が伝え聞いたことのように思えて、すでに自分があやふやになっておる。
まだ余韻に浸っていてうまく書けないが、一応以下覚え書き。
始め、「迷子つきツアー」自体がミステリー要素を含んでいたから、「吉田超人」章にて迎えた解決に、ちょっと物足りなさを感じた。
けれど、すぐに吉田氏の話を反芻して、この小説にとって謎解きはさ -
Posted by ブクログ
花袋の『蒲団』では脇役として影を潜めていた主人公の妻視点で『蒲団』の打ち直しを行うアメリカ人日本文学研究者とその周辺の人々の物語。
誰が語るかによって世界がこんなにも変わってしまうというのがすごくおもしろい。
主人公のひとり語りで進む『蒲団』で存在していたたくさんの壁、例えば年齢、性別、価値観など、そういう隔たりに橋がかけられたような印象を受けた。
『蒲団』で主人公が抱いていた人生に対する圧倒的なさみしさを思い出す。
そのさみしさは『蒲団』を打ち直す研究者にもおじいさんにも絵描きにも共通していて、誰か何かがその空白を埋めてくれるんじゃないか、自分が誰かのさみしさに寄り添えるんじゃ -
Posted by ブクログ
成人式、結婚、葬式、お盆。
日本の儀式をテーマに描かれる連作小説。
儀式そのものを舞台に展開される物語ではなく、主人公や作者の視点を少しずらして書かれていて、中島京子さんらしいユーモアも含まれていてとても面白かったです。
語り手は、成人式を取材に行った地方新聞の若手記者や、かつてお見合いおばさんだった六十代の女性、社命で老婦人の葬儀のお供をした青年、母の生家を手放すのを機に、田舎に集まって最後のお盆を迎える三姉妹。
今の時代、結婚式も葬式も簡素になってしまったけれど、ここに出てくるお見合いおばさんの存在が何とも微笑ましく、言うことが的を得ていて、中島さんの魅力が存分に感じられます。
そし -
Posted by ブクログ
ネタバレスランプに陥った作家「わたし」は唐津に旅をする。
そこで陶芸家の夫婦と知り合い、不思議な茶碗と、朝鮮の娘と、水神にまつわる話を聞かせてもらうことになった。
サワタローさんの語る『水神夜話』は、家に伝わる長い話で、水神とは河童のことらしい。
ファンタジーなのか、ファンタジーを装った歴史小説なのか。それとも反戦小説なのか。
ここでの水神の祖先は天竺からモンゴルを経て中国へ、半島から泳いで日本に渡り、九州に住み着いた。
水神は、人間社会に絡みつつも、人間の生態を観察し、一歩距離を置く。
『水神夜話』では秀吉の朝鮮出兵を止めようとする水神について語られる。読みごたえがあった。
ある日、朝鮮の名陶工 -
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ぼーっとしたい。
ということで、タイトル買い。
ぼーっとを目指し、あちこちへ。
紀行文としてもおもしろく、
さりげない描写、表現に
さすがだなぁ、と思うこともしばしば。
『ぼーっとする、ぼーっとすると書いてきたが、
本質は「よく生きる」ということだと思う。
理性を保ってよく生きるには、自分が
「ああ、これなら息がつける」と思える
ある程度のスペースと、ほどほどの人との
関わりが必要だ』
という一節。
あぁ、このぼーっとの時間が
作者の次の名作を紡ぎ出すエネルギーに
きっかけになるのだな、と思った。
紹介されたスポットを、ゆっくりと
訪れてみたい。 -
Posted by ブクログ
初読み作家。
ちょっと不思議な大人のおとぎ話みたいな短編集。
文章がシンプルなのに人間味があって、
スッと入ってくる感じがして読みやすく、面白かった!
個人的に好きな話は
1話目の
テレビから外国で起きたニュースが聞こえてきて
そういや昔あの辺りの地域に行ったことあるなぁって思い出す回想シーンが始まり、
そこでたまたま出会ったお婆さんが結構プレイボーイならぬプレイガールで、5人の男と結婚して別れてを繰り返してた人で、
あのお婆さんに助けてもらったのに恩返しできなかったなぁ、、、って友達に話して現実世界に話が戻ってくるんやけど、
このお話の最後の終わり方が世にも奇妙な物語っぽくて良かった!
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Posted by ブクログ
ネタバレこれは好みが分かれる作品のようだ。
私は『かたづの』のような作品が好きなので、中島さんの妖なるものと歴史との絡みは面白いジャンルだと思っている。
今回は「水神」から見た、秀吉の朝鮮出兵の時代。
現代と、水神が記録した歴史を行き来して物語は進むが、水神から見た人間は、なんとも理解し難いほどの野蛮と支配欲を持った生き物だ。実際の歴史ではなく、水神から見た歴史というところが面白い。
水神は戦を止めることはできないが、できるだけ役に立ちそうなヒトに近いて、なんとか種族を守ろうとする。
歴史は事実なのだが、そこに水神が絡むことによって、より歴史の悲しさや虚しさが表れる。
本当にスランプなのかわからないけ