中島京子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた」
そんな一文に惹かれて購入。
あまりにもど真ん中のストーリー展開に心臓を打ち抜かれてしまった。
あああ、何でこんなに惹き込まれるんだろう……!
どの章のどの登場人物にも奥行きがあって、妄想が止まらない!
そんなはずはないのに、まるで自分が伝え聞いたことのように思えて、すでに自分があやふやになっておる。
まだ余韻に浸っていてうまく書けないが、一応以下覚え書き。
始め、「迷子つきツアー」自体がミステリー要素を含んでいたから、「吉田超人」章にて迎えた解決に、ちょっと物足りなさを感じた。
けれど、すぐに吉田氏の話を反芻して、この小説にとって謎解きはさ -
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花袋の『蒲団』では脇役として影を潜めていた主人公の妻視点で『蒲団』の打ち直しを行うアメリカ人日本文学研究者とその周辺の人々の物語。
誰が語るかによって世界がこんなにも変わってしまうというのがすごくおもしろい。
主人公のひとり語りで進む『蒲団』で存在していたたくさんの壁、例えば年齢、性別、価値観など、そういう隔たりに橋がかけられたような印象を受けた。
『蒲団』で主人公が抱いていた人生に対する圧倒的なさみしさを思い出す。
そのさみしさは『蒲団』を打ち直す研究者にもおじいさんにも絵描きにも共通していて、誰か何かがその空白を埋めてくれるんじゃないか、自分が誰かのさみしさに寄り添えるんじゃ -
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ネタバレちょっとは知ってる地域だね小日向~真智は富山からO女子大に進学が決まり大学から徒歩15分祖母の親友の家に住まうことになったが、その久世志桜里こそが実の祖母で、坂マニアであった。教室の隣に座り友となった鹿児島出身の「よしんば」ちゃんに誘われたインターカレッジのサークルに出掛けて遅刻して知り合ったエイフクさんと知り合い、二重暗号で告白され恋人に発展した。新型コロナの蔓延で危機に瀕したが、神戸の大学の助手になったエイフクと一緒にアパートを探す真智は京都に本社がある文具メーカーに就職が決まった~幽霊や憑依者、作中人物、恋のライバルまで出てきて終わってしまい、どうなの?と考えていたら、書き下ろしのエピロ
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Posted by ブクログ
ネタバレ認知症を介護する大変さが伝わり、これからそれに関わっていかなければいけないのだと思い気持ちに。
その「忘れる」という言葉には、どんな意味がこめられているのだろう。夫は妻の名前を忘れた。結婚記念日も、三人の娘を一緒に育てたこともどうやら忘れた。二十数年前に二人が初めて買い、それ以来暮らし続けている家の住所も、それが自分の家であることも忘れた。妻、という言葉も、家族、という言葉も忘れてしまった。
それでも夫は妻が近くにいないと不安そうに探す。不愉快なことがあれば、目で訴えてくる。何が変わってしまったというのだろう。言葉は失われた。記憶も。知性の大部分も。けれど、長い結婚生活の中で二人の間に常に、 -