中島京子のレビュー一覧

  • FUTON

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    これがデビュー作だとは!中島京子恐るべし。
    花袋の「蒲団」と対をなす「蒲団の打ち直し」(デイブ・マッコーリー)が実に秀逸である。作中作と主人公をめぐるよしなしごとをラップさせての進行が良い。何より,複層構造とした本作の中で核となる東京大空襲や第二次世界大戦にまつわるウメキチの話が何ともせつなくって,良いね。文句なし!

    0
    2011年12月07日
  • ココ・マッカリーナの机

    Posted by ブクログ

    シアトルの近くの小さな街で臨時講師をした日本人女性のエッセイ。小学校(?)を中心にしたローカルな世界が舞台ですが、全編を通じて'90年代末らしい感じがそこはかとなくとなく出ています。
    軽やかな文体で数ページずつのエピソードが続き、読みやすかったです。観念的な描写がなく、大人も子供も生き生きとした形で描かれていました。

    0
    2011年08月20日
  • ツアー1989

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた」

    そんな一文に惹かれて購入。
    あまりにもど真ん中のストーリー展開に心臓を打ち抜かれてしまった。
    あああ、何でこんなに惹き込まれるんだろう……!
    どの章のどの登場人物にも奥行きがあって、妄想が止まらない!
    そんなはずはないのに、まるで自分が伝え聞いたことのように思えて、すでに自分があやふやになっておる。

    まだ余韻に浸っていてうまく書けないが、一応以下覚え書き。

    始め、「迷子つきツアー」自体がミステリー要素を含んでいたから、「吉田超人」章にて迎えた解決に、ちょっと物足りなさを感じた。
    けれど、すぐに吉田氏の話を反芻して、この小説にとって謎解きはさ

    0
    2011年06月12日
  • FUTON

    Posted by ブクログ

    花袋の『蒲団』では脇役として影を潜めていた主人公の妻視点で『蒲団』の打ち直しを行うアメリカ人日本文学研究者とその周辺の人々の物語。
    誰が語るかによって世界がこんなにも変わってしまうというのがすごくおもしろい。

    主人公のひとり語りで進む『蒲団』で存在していたたくさんの壁、例えば年齢、性別、価値観など、そういう隔たりに橋がかけられたような印象を受けた。

    『蒲団』で主人公が抱いていた人生に対する圧倒的なさみしさを思い出す。

    そのさみしさは『蒲団』を打ち直す研究者にもおじいさんにも絵描きにも共通していて、誰か何かがその空白を埋めてくれるんじゃないか、自分が誰かのさみしさに寄り添えるんじゃ

    0
    2011年04月24日
  • イトウの恋

    Posted by ブクログ

    明治初頭に北海道を旅した40代後半の英国人女性と、通訳兼ガイドとして彼女に同行した横浜出身の17歳の日本人少年の間の「恋」を描いたフィクション。日本人少年通訳が晩年になって記した手記をたまたま発見した高校教師が現代語訳した手記を、その通訳の子孫である女性(元モデルの劇画原作者)が読んでいくという重層的な物語構造。漫画原作者の女性と高校教師が段々親密になっていくプロセスも同時進行する。複雑な時間構造・プロットを、ややこしい背景設定がされた登場人物が謎解きをしていくにもかかわらず、飽きさせない。個々のキャラクター描写も細かくて良い。

    0
    2011年01月13日
  • FUTON

    Posted by ブクログ

    日系の女学生エミに翻弄される中年のアメリカ人教授デイブの葛藤を軸に、挿入される作中作『蒲団の打ち直し』、そこにエミの曾祖父ウメキチの回想も入り、どのひとつをとってもひとつの小説でいけそうな物語。
    『蒲団の打ち直し』は田山花袋の『蒲団』のremixで、細君の視点から描かれている。デイブとエミの話はデイブ側からの視点なので、この異なった視点の当て方が物語に深みを与えている。
    すごい面白い。

    0
    2010年12月20日
  • FUTON

    Posted by ブクログ

    田山花袋の「蒲団」を読んで準備万端です。

    アメリカ人の日本文学者デイブを主人公に
    「蒲団」の物語を妻の立場からリライト。「蒲団の打ち直し」
    さらにデイブとその教え子の日系人エミを主人公に現代版「蒲団」、
    エミのおじいちゃんの記憶(ボケ?)の話の3本柱に描かれてます。
    3つも絡まってるのに、ごちゃごちゃになることもなかった。
    おもしろかったです。
    それにしても「蒲団」の主人公は好かん。

    0
    2010年11月14日
  • FUTON

    Posted by ブクログ

    おもしろかった!田山花袋の『蒲団』の打ち直し、ってだけで、もうおもしろい。花袋の時代と今の時代では恋愛における価値観はずいぶん違うけれど、恋に振り回される男の狼狽ぶりは同じ。そして、女はさっさと違うステージへ行ってしまう。中島京子の文章は軽妙で、ぐいぐい読ませる。

    0
    2010年10月26日
  • 冠・婚・葬・祭

    Posted by ブクログ

    すてきな短編集! 冠、婚、葬、祭をテーマにした4つの物語が、どれもピリッとしていて、鮮やか。とっても巧みで、ウム、と唸ること請け合い。わたしたちが日常で出くわす冠婚葬祭。関わり方は多々あれど、人の本質って案外そういう場面でうっかり見えてしまうもの。明るくて皮肉、そしてあたたかい。おすすめ。

    0
    2010年09月29日
  • ココ・マッカリーナの机

    Posted by ブクログ

    この体験記を、どこかで「人生変えなきゃ」と思っている、悩める友人たちに贈る。
    と、「はじめに」に書いてあるように、前向きな気持ちになれるエッセイ集だった!
    実際に暮らしてみないと知ることのできない、ブレマートンの人々の文化や日常が興味深くて、読んで楽しい。
    中島京子さんについては、今まで小説を二冊だけ読んでいて、どちらもスキッとする読後が気に入ってたけど、このエッセイを読んでもっと好きになった。

    解説が豊崎由美さん。「今後の作家人生は開運一途間違いなしである」とまで仰られてる。すごい!

    0
    2010年02月28日
  • FUTON

    Posted by ブクログ

    何気なくタイトルに惹かれて手にした本だったのだけれど、予想以上に深く面白い小説だった。
    中島京子という人も初めて知ったのだけれど他にも幾つか書いているようなので是非読んでみたい。

    0
    2009年10月04日
  • 平成大家族

    Posted by ブクログ

    東京バンドワゴンと似たような雰囲気かなとおもいきや,わりと暗めな雰囲気でリアルな世界観だった.各家族メンバー視点が切り替わりながら描写されてて,自分とその他の視野や見えてるものに対しての捉え方が違ってて,そうだよなあと思いながら読んでた
    出てくる単語で,ああ平成だなあ..って思えた.なつかしい.

    0
    2025年12月12日
  • 小さいおうち

    Posted by ブクログ

    生活と地続きの戦争をあまり想像したことが無かったので、じりじり変わっていく様子がとても怖かった。戦争の無い今読めてよかった。

    0
    2025年12月08日
  • 長いお別れ

    Posted by ブクログ

    今はこの立場でこれを読んだ。後10年、20年すれば今度は当事者として問題に対峙しなければならないのだろう。そうなった時に私は夫の面倒を曜子のように見れるのだろうか?反対に私が認知症になったら夫は私の面倒を見てくれるのだろうか?早めに介護体制の整った施設に終の住処を求めるか?

    0
    2025年12月01日
  • 小さいおうち

    Posted by ブクログ

    内容は映画とほぼ同じ。
    だけど、ラストの持っていき方が違った。その点では、こちらのほうが好み。

    なぜタキがあのような行動を取ったのか?
    人によって解釈が異なると思うので、読んだ人と語り合いたい。

    0
    2025年11月19日
  • 坂の中のまち

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ちょっとは知ってる地域だね小日向~真智は富山からO女子大に進学が決まり大学から徒歩15分祖母の親友の家に住まうことになったが、その久世志桜里こそが実の祖母で、坂マニアであった。教室の隣に座り友となった鹿児島出身の「よしんば」ちゃんに誘われたインターカレッジのサークルに出掛けて遅刻して知り合ったエイフクさんと知り合い、二重暗号で告白され恋人に発展した。新型コロナの蔓延で危機に瀕したが、神戸の大学の助手になったエイフクと一緒にアパートを探す真智は京都に本社がある文具メーカーに就職が決まった~幽霊や憑依者、作中人物、恋のライバルまで出てきて終わってしまい、どうなの?と考えていたら、書き下ろしのエピロ

    0
    2025年11月16日
  • 坂の中のまち

    Posted by ブクログ

    東京の坂にとっても詳しい祖母の親友の志桜里さんと一緒暮らすことになった真智。
    東京には志桜里さんの話を聞いているととにかく坂が多いことがわかる。
    志桜里さんの坂の話に引き込まれ、そのせいでか文京区辺りが舞台だったり、住んでいた作家の作品などの世界に迷い込んでしまう真智。
    読んでいる方も話の中に引き込まれていく。
    志桜里さんと真智親子関係、祖母の関係も面白い。
    この話に出てくる坂に行ってみたくなった。
    行ってみたら小説の世界に入り込めるかなぁ。

    0
    2025年11月10日
  • 長いお別れ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    認知症を介護する大変さが伝わり、これからそれに関わっていかなければいけないのだと思い気持ちに。

    その「忘れる」という言葉には、どんな意味がこめられているのだろう。夫は妻の名前を忘れた。結婚記念日も、三人の娘を一緒に育てたこともどうやら忘れた。二十数年前に二人が初めて買い、それ以来暮らし続けている家の住所も、それが自分の家であることも忘れた。妻、という言葉も、家族、という言葉も忘れてしまった。
    それでも夫は妻が近くにいないと不安そうに探す。不愉快なことがあれば、目で訴えてくる。何が変わってしまったというのだろう。言葉は失われた。記憶も。知性の大部分も。けれど、長い結婚生活の中で二人の間に常に、

    0
    2025年11月03日
  • ゴースト

    Posted by ブクログ

    ハロウィンだからとかじゃないけど、たまたま好きな作家の短編集を読み出したら幽霊がテーマでした。
    しかも、戦争で傷ついた人たちに焦点を当てている。
    幽霊と言っても震えあがるほど怖くない。
    しみじみ。

    0
    2025年11月02日
  • 明日町こんぺいとう商店街 招きうさぎと七軒の物語【電子限定特典付】

    購入済み

    商店街を舞台にした七軒の店のお話。作品達が直接関連しているわけではなく、同じ商店街の空気感で繋がっていてどれも印象的でした。

    0
    2025年10月28日