中島京子のレビュー一覧

  • 均ちゃんの失踪

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    「均ちゃん」をめぐる3人(正確には4人?いや5人?)の女性がそれぞれ新しい道を切り開いていく過程が描かれていておもしろい。ありそうでなさそうな設定や、落ち着いた感じの文体も好み。

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    2012年05月17日
  • ツアー1989

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    ネタバレ

    1989年の香港への「迷子ツアー」
    旅客の中の目立たない誰かがひっそりと「迷子」になるという奇妙なツアー。他の客は、ぼんやりとした喪失感を覚えながら帰途につく。
    何かを置いてきたような気がする…。だけど、それが何か分からない…。
    時間が流れ、さらにその記憶は失われていく。
    すっかり忘れていた香港での時間を、日記を通して思い出す男女。かつて迷子ツアーがあったことを、思いがけず知り、そのなぞを解き明かそうとする一人の少年。3人のそれぞれの、1989年のあの日に向けられた物語。

    他の人の記憶と経験と、自分のそれの区別がつかない。
    自分の輪郭になるはずの記憶と経験が、多くの人に共有されるものであったならば…。バブルまっただ中のこの頃に、集団の記憶を見ようとしているのだと思う。80年代の村上春樹が区別の付かない双子の姉妹を描いていたのを思い出した。ああいう感じが、ここでは、“記憶”として描きだされていると思う。

    歴史へと物語を接続していく中島京子の小説に、最近ハマッてる。

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    2012年05月16日
  • FUTON

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    ネタバレ

    これがデビュー作だとは!中島京子恐るべし。
    花袋の「蒲団」と対をなす「蒲団の打ち直し」(デイブ・マッコーリー)が実に秀逸である。作中作と主人公をめぐるよしなしごとをラップさせての進行が良い。何より,複層構造とした本作の中で核となる東京大空襲や第二次世界大戦にまつわるウメキチの話が何ともせつなくって,良いね。文句なし!

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    2011年12月07日
  • ココ・マッカリーナの机

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    シアトルの近くの小さな街で臨時講師をした日本人女性のエッセイ。小学校(?)を中心にしたローカルな世界が舞台ですが、全編を通じて'90年代末らしい感じがそこはかとなくとなく出ています。
    軽やかな文体で数ページずつのエピソードが続き、読みやすかったです。観念的な描写がなく、大人も子供も生き生きとした形で描かれていました。

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    2011年08月20日
  • ツアー1989

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    ネタバレ

    「1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた」

    そんな一文に惹かれて購入。
    あまりにもど真ん中のストーリー展開に心臓を打ち抜かれてしまった。
    あああ、何でこんなに惹き込まれるんだろう……!
    どの章のどの登場人物にも奥行きがあって、妄想が止まらない!
    そんなはずはないのに、まるで自分が伝え聞いたことのように思えて、すでに自分があやふやになっておる。

    まだ余韻に浸っていてうまく書けないが、一応以下覚え書き。

    始め、「迷子つきツアー」自体がミステリー要素を含んでいたから、「吉田超人」章にて迎えた解決に、ちょっと物足りなさを感じた。
    けれど、すぐに吉田氏の話を反芻して、この小説にとって謎解きはさほど重要な要素ではない、と思った。
    それよりも日常生活の中に浮かび上がる他者との希薄さ、アイデンティティの脆さ、だからこそ他者に勝手に己を作りこまれ、そしてそれに飲み込まれてしまうという一見ミステリーのような現実感を楽しむべきなのだ、と。

    そういうものを香港という場所設定が、とても引き立てていたと思う。
    九龍城とか、迷い込んでる感じにぴったりだ。
    あんな、都市全体が生き物みたいな場所で、人いきれの中に突っ立っていたら、私だって自分が何だか分からなくなりそうだ、などと思ってしまう。

    うーん、書きたいことはまだあるのに、上手く書けない。

    ぶっとんだ設定だとも思ったけれど、技量があるから最後まで書ききれるんだろうなあ。
    これ以上設定をがちがちにしてしまったら、矛盾なんかが増えるし、それを消化するためだけの説明なんかが増えてつまらなくなってしまうだろう。
    中島さんはそういった取捨選択の駆け引きがとても上手いなあ、と思う。
    また解説でも語られていたけれど、中島さんの発想は、思わず「ルーツにあたりたくなる」感じが楽しい。
    「迷子つきツアー」は私の中でたぶんずっと”余韻”を伴って残るだろうなあ。

    でも、テディ章のブログのところだけちょっと不可思議。
    あれは、彼女の他にも全く同じような人間(自分)が存在している、ということでいいのだろうか。

    そしてめちゃくちゃ余談だが、クレしんファンとしては、クレしんあたりでこんな話がありそうだし、また、観てみたいと思ってしまうほど本当に好きな設定だった。なんつて。

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    2011年06月12日
  • FUTON

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    花袋の『蒲団』では脇役として影を潜めていた主人公の妻視点で『蒲団』の打ち直しを行うアメリカ人日本文学研究者とその周辺の人々の物語。
    誰が語るかによって世界がこんなにも変わってしまうというのがすごくおもしろい。

    主人公のひとり語りで進む『蒲団』で存在していたたくさんの壁、例えば年齢、性別、価値観など、そういう隔たりに橋がかけられたような印象を受けた。

    『蒲団』で主人公が抱いていた人生に対する圧倒的なさみしさを思い出す。

    そのさみしさは『蒲団』を打ち直す研究者にもおじいさんにも絵描きにも共通していて、誰か何かがその空白を埋めてくれるんじゃないか、自分が誰かのさみしさに寄り添えるんじゃないか、どこかにきっとそれはあるはずなのにいるはずなのにと探し回るけれどそれはなかなか見つからず、見つかったと喜んだ途端それは幻に変わり、皆、途方にくれているようだった。

    物語のそのあとに『蒲団』の夫婦が思いっきりぶつかりあえてたらいいなー。

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    2011年04月24日
  • イトウの恋

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    明治初頭に北海道を旅した40代後半の英国人女性と、通訳兼ガイドとして彼女に同行した横浜出身の17歳の日本人少年の間の「恋」を描いたフィクション。日本人少年通訳が晩年になって記した手記をたまたま発見した高校教師が現代語訳した手記を、その通訳の子孫である女性(元モデルの劇画原作者)が読んでいくという重層的な物語構造。漫画原作者の女性と高校教師が段々親密になっていくプロセスも同時進行する。複雑な時間構造・プロットを、ややこしい背景設定がされた登場人物が謎解きをしていくにもかかわらず、飽きさせない。個々のキャラクター描写も細かくて良い。

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    2011年01月13日
  • FUTON

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    日系の女学生エミに翻弄される中年のアメリカ人教授デイブの葛藤を軸に、挿入される作中作『蒲団の打ち直し』、そこにエミの曾祖父ウメキチの回想も入り、どのひとつをとってもひとつの小説でいけそうな物語。
    『蒲団の打ち直し』は田山花袋の『蒲団』のremixで、細君の視点から描かれている。デイブとエミの話はデイブ側からの視点なので、この異なった視点の当て方が物語に深みを与えている。
    すごい面白い。

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    2010年12月20日
  • FUTON

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    田山花袋の「蒲団」を読んで準備万端です。

    アメリカ人の日本文学者デイブを主人公に
    「蒲団」の物語を妻の立場からリライト。「蒲団の打ち直し」
    さらにデイブとその教え子の日系人エミを主人公に現代版「蒲団」、
    エミのおじいちゃんの記憶(ボケ?)の話の3本柱に描かれてます。
    3つも絡まってるのに、ごちゃごちゃになることもなかった。
    おもしろかったです。
    それにしても「蒲団」の主人公は好かん。

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    2010年11月14日
  • FUTON

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    おもしろかった!田山花袋の『蒲団』の打ち直し、ってだけで、もうおもしろい。花袋の時代と今の時代では恋愛における価値観はずいぶん違うけれど、恋に振り回される男の狼狽ぶりは同じ。そして、女はさっさと違うステージへ行ってしまう。中島京子の文章は軽妙で、ぐいぐい読ませる。

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    2010年10月26日
  • 冠・婚・葬・祭

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    すてきな短編集! 冠、婚、葬、祭をテーマにした4つの物語が、どれもピリッとしていて、鮮やか。とっても巧みで、ウム、と唸ること請け合い。わたしたちが日常で出くわす冠婚葬祭。関わり方は多々あれど、人の本質って案外そういう場面でうっかり見えてしまうもの。明るくて皮肉、そしてあたたかい。おすすめ。

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    2010年09月29日
  • ココ・マッカリーナの机

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    この体験記を、どこかで「人生変えなきゃ」と思っている、悩める友人たちに贈る。
    と、「はじめに」に書いてあるように、前向きな気持ちになれるエッセイ集だった!
    実際に暮らしてみないと知ることのできない、ブレマートンの人々の文化や日常が興味深くて、読んで楽しい。
    中島京子さんについては、今まで小説を二冊だけ読んでいて、どちらもスキッとする読後が気に入ってたけど、このエッセイを読んでもっと好きになった。

    解説が豊崎由美さん。「今後の作家人生は開運一途間違いなしである」とまで仰られてる。すごい!

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    2010年02月28日
  • FUTON

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    何気なくタイトルに惹かれて手にした本だったのだけれど、予想以上に深く面白い小説だった。
    中島京子という人も初めて知ったのだけれど他にも幾つか書いているようなので是非読んでみたい。

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    2009年10月04日
  • 彼女に関する十二章

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    中島京子さんの物語、やはりステキだなぁ。
    大好きです。

    主人公は50代の聖子(夫、独立したひとり息子)。
    同年代なので聖子さんの心の中のつぶやきにクスリと笑えて共感ポイントが多かった。
    息子さんは今までひとりも実家に彼女を連れてきたことがなく、聖子さんは「もしやゲイ?」と疑うも、夫の弟 小次郎くん(ゲイ)が否定するので違うのだろうと納得するw
    聖子さんの初恋のひとの息子がアメリカからやってきて、このひとが不思議なヤツ。
    お金を必要としない生活をしてるのですと言うかたせしも不思議。
    息子は突然彼女を連れて帰省して、思い切り戸惑う聖子さんw

    人生っていつ何が起こるかわからないもの。
    それを楽しみながら生きていこうと思う1冊。

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    2026年10月05日
  • やさしい猫

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    星4.2

    初読みの作家さんです。
    最初の出会いの所が面白くて、笑ってしまいました。
    この感じで進んで行くのかと思ったんですが、
    ちょっと違いましたね。
    途中から、段々辛い話になって行きます。
    辛い話がずっと続くので、もうちょっと笑えるって言うかホッとする所が欲しかったかな。
    まあ、好みの問題かな?

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    2026年10月01日
  • オリーブの実るころ

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    短編集、なんか読んだことないような不思議な感じだった。表紙の絵の感じでほっこり系かと思ってたが、なんか想像してた中身とはやや違ってたけどおもしろかった

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    2026年09月26日
  • うらはぐさ風土記

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    登場人物たちがどこかトボけていて、愛嬌があり、ユーモアを含んだ文体でストーリーが綴られていく。社会課題やシビアな問題が埋め込まれているけれど、重くならずに、読者は穏やかな気持ちで読み進めることが出来る。

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    2026年09月26日
  • 小さいおうち

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    面白かった!
    女中とその仕える家の話。
    でも過去を語る形だから、語らない部分もある…が最終章でまざまざと語られるので、面白い。

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    2026年09月09日
  • 妻が椎茸だったころ

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    題名が面白くて読んだ本。読みやすい短編が5つ。
    不思議系のお話が多かったです。
    「リズ・イェセンスカの許されざる新鮮な出会い」
    結末を知ってから2度読みで怖くなる話。題名も意味深。
    「ラフレシアナ」
    植物好きにちょっと刺さる。
    「妻が椎茸だったころ」
    男性の私としてはちょっと身につまされますが、この話が一番好きです。
    「藏篠猿宿パラサイト」
    これ絶対パラサイトだわ…。
    「ハクビシンを飼う」
    とある女性の不思議な話。おばさんは誰と暮らしていたのか?

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    2026年09月03日
  • 堤中納言物語

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    読みやすい訳で、和歌を五・七・五・七・七の短歌調で訳してあるのも良かった。根合や貝合といった遊びなど、当時の風俗が分かるのも面白い。

    特に気に入った話は「虫めづる姫君」。現代の漫画に出てきてもおかしくないようなマイペース姫君が主人公で、この時代の短編集にこういうキャラが登場していることに驚いた。続編がありそうな終わり方なのにないのか。相手役(?)の物怖じしないイケメン御曹司といい、ラブコメの第1話を読んだ気分になった。

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    2026年09月01日