中島京子のレビュー一覧
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スカイツリーが見える、東京の下町。
古くからのお店と新しいお店が混じり合う、明日町こんぺいとう商店街の、七軒のお店の物語を7人の作家が描くアンソロジー。
既読の作家さんは、大島真寿美さん、彩瀬まるさん、千早茜さん、中島京子さん。
それぞれの持ち味が出ていて、どれも面白かった。
大山淳子さんの『あずかりやさん』が、盲目の店主が一日百円で大切なものをあずかるというお店を舞台にしていて、にぎやかな商店街の中、しんとしずかな店という感じが良かった。
アンソロジーを手に取ると、こうして新しく好みに合いそうな作家さんが見つかるのが楽しみ。
こんぺいとう商店街シリーズとして続刊もあるらしいので、続きものんびり読みたい。
また違う作家さん、違うお店が登場するのか、それともまた同じお店も登場するのかな?
『カフェ スルス』がどんなお店になっていくのか、続きが読みたい。 -
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錚々たる方々の訳した古典文学!
竹取物語がモリミーの手にかかると、翁や貴公子たちの下心がスケスケで困惑するかぐや姫が目に浮かんでしまう。
和歌の訳がまたニヤニヤ。
むかし男ありけり、の伊勢物語はこんなに長いお話だったのかと驚いた。恋愛だけでなく友情や仕えた親王とのやり取りが印象的だった。
男としか出てこないので、これが業平のことなのか、時期はいつなのかとモヤモヤもするけれど、一遍の凝縮ぶりに愕然とする。
堤中納言物語はいろんなテイストの話が襲いかかってきて気が抜けない。
和歌の訳が絶妙!
有名な虫めづる姫君の女房たちの嫌らしさときたら、普通に和歌を訳しただけでは伝わってこないかも。
土佐日記、この本でいちばんツラかった。
たぶん元々の話がまどろっこしくて合わないんだろうなあ。
ひらがなばかりだとこんなにも読みにくいのかー。
学生の頃、何度も目にした更級日記。
物語に憧れた少女が田舎から出てきて、ようやく手に入れた物語を読みまくる…。
でも、今回読んで、その上京の旅の行程が楽しかった。現在の場所を思い、その過酷なこと!
そして京についてからもやたらと転居していて、それぞれの家の簡易さにも驚く。
平安の時代のリアルな日常を垣間見た感じ。
「学者ならぜったいにしない蛮行に及ぶのでなければ、小説家が仕事を引き受けた意味はない」と中島京子さんがあとがきに書いているけれど、厳密に言ったら解釈が違うところもあるのかもしれない。
それでも、とても楽しく古典が身近になった良い本だった!
ただ、持ち運びの出来る大きさ厚さにして欲しい…切実。 -
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中島京子さんは初。
こちらのインスタで何度も目にしたため、読みたいと思っていました!
主人公の茜は43歳、独身。亡くなった父の桃蔵が残した古アパート「花桃館」の管理人を、会社を辞め、思い切って引き受けることに。
失恋に悩むウクレレ奏者に、父親がべらぼうに情けない3人息子の父子家庭、万年整形を繰り返す神出鬼没の女性、猫と暮らす探偵、そして、父の元恋人。
そこに住んでる住民たちはみな、一癖ありへんてこりんだ。
茜は彼等に巻き込まれ、翻弄されながらも、少しずつ管理人業に親しみを覚えていく。
高校時代の同級生であり、またこれも一癖ある尾木くんとの距離感も良いよね。
もう、彼等のやりとりが最高に面白い!
茜の心の中のツッコミも秀逸だし、終始面白エッセンスが盛り込まれていて、飽きない。そして、少しほっこり。
一気に読んでしまった!
中島京子さんの筆力。この一冊だけでしっかり伝わってきた!
他の作品も読んでみよう! -
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亡くなった父からの相続でアパート経営をする事になった40代のいかず後家の茜さんのお話
一癖も二癖もある住人たちとのコミュニケーションが愉快
目次が部屋の号数で、それぞれの住人のお話になっている
101号室 茜さんが大家になる経緯
302号室 家賃を滞納している売れないウクレレミュージシャンの玉井ハルオ
201号室 生活能力の乏しいシングルファザー妙蓮寺大輔と子供の陸、海、空
202号室 知的で教養のある仲むつまじい谷川夫婦だけど実は……
203号室 整形マニアの高岡日名子
303号室 部屋に猫がいる、探偵の槌田直樹
301号室 クロアチアからやってきたポーエットイヴァンほろほろヴィッチ
103号室 父の元カノの李華ばあさん
102号室 近所でバーをしている同級生の尾木くんの娘さんの部屋探し
「淵に臨みて魚を羨むは退いて網を結ぶに如かず」
人のことを羨んでいるよりは自分で挑戦してみろという言葉だけど、確かになとは思える
まぁ、僕は今の生活にある程度は満足しているので、生活を変えようとは思わないけど
それにしても、茜さんの古文の読解のユニークさよ
「思ひあらば 干なましものをいかでかは 返す衣のたれも濡るらむ」
気遣いのある人なら、なまものは干してから送るのが普通なのに、
ひっくり返したこちらの服も濡れるほど、汁けのあるものを贈ってくるなんて!
英文を辞書で調べた単語の意味だけで和訳する中学生のような発想かな?
「国際日本東京江戸川大学」という、果たして国際的なのか?どこの大学だよ?とついツッコミをいれたくなるようなネーミングセンス
あと、バーテンダーの名前の由来は間違っているんだけど、その間違った知識を披露しているというところが逆にキャラクターの適当さを表現しているんだろうか?
全体的に、ドラマの『すいか』っぽいので、あんな雰囲気が好きな人は好きかも
中年って若くはないけど、老いてはいないんだよね
80歳まで生きるとして、まだ半分なんだよなーという思いもある -
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最初は何となく垣谷美雨さんのような作品かと思った。
特に思い入れを持ってこの本を読み始めたわけではないけれど、面白く、すっかりはまってしまった。
49歳、税理士事務所パートの主婦、宇藤聖子。
夫の守は大学の同級生で、ライター。
その夫が、ある企業のPR雑誌に、創業者から女性論を連載する注文を受ける。
その女性論とは、伊藤整の『女性に関する十二章』。
これがストーリーの要所要所で、聖子の読書に連れて作中に導入されていく。
時に登場人物がこの文章を批判したり、思わず同感したり。
その塩梅が絶妙で、伊藤整に引きずられることもない。
こういうところが、キャリアのある作家だなあ、と感心するところ。
しょっぱなから、そろそろ閉経か、とか、息子の勉にいつまでも彼女がいないことを憂えたりと、中年女性あるあるネタが連発。
どんな紋切り型の話なのかと思いきや、聖子の身の回りで起きていく出来事は、かなり特殊だ。
初恋の男性久世佑太の息子、穣との出会い。
若く見目もよい穣と一緒に過ごす快さを感じたりするのだが、佑太がアメリカで四度結婚と離婚を繰り返し、それぞれの妻、愛人との間に息子を儲けていることを知り、初恋のノスタルジーも一気に冷める。
出向先のNPOに出入りする「調整さん」、片瀬氏との出会い。
金に振り回された半生から、金を持たない、使わない生活をしようとしている、一風変わった人物である。
次々と現れる男性たちとどうかなってしまうのではないかと思われたけれど…。
割と流れに身を任せるタイプのように見える聖子が、意外に手堅く身を処するところに、大人の分別が見える。
それがちっとも「ご立派」な感じでないところがいい。
例えば、片瀬氏が自転車で最寄り駅まで聖子を送ろうとするとき、中年男女として『海街diary』みたいになり得ないと自覚してしまうような感じだ。
そんな大人も、揺れ動く。
勉の同棲相手が妊娠し、産むかどうか迷っている彼女に、聖子はこの世は生きるに値すると言いきってあげられず、それを気に病んでしまったりもする。
この作品は、そういうもやもやも含め、包容しているように見える。 -
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成人式を舞台にした大道芸人と新聞記者のお話「空に、ディアボロを高く」
結婚を斡旋するベテランの菊池マサエ。その相性を読む直感は冴え渡って来た。もう引退していたマサエが、請われて最後に世話したのは・・・「この方と、この方」
佐々木直之が命じられたのは、高齢女性を、葬式に連れて行くこと。何か訳ありの関係らしい。「葬式ドライブ」
田舎の山奥にある古い家で、最後のお盆をしようとする3姉妹。そこに現れたのは・・・「最後のお盆」
どれも、人生の妙を感じさせる、いいお話でした。
中島さんに、いろいろな人生や、人との出会いをさせてもらい、生きて行くことは、小さな運命の連続なのだと知らされているような気がしました。 -
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ネタバレ*15年ぶりに、しかも誕生日に、部屋に恋人未満の男を招くことになった36歳の由紀子。有休を取り、ベッドの到着を待ち、料理を作って待つが、肝心の山田伸夫が…来ない!表題作ほか、新入りが脱走した相撲部屋の一夜を描く「八十畳」。やもめ暮らしの大叔父が住む、木造平屋に残る家族の記憶をひもとく「私は彼らのやさしい声を聞く」など、“7つのへやのなか”を、卓越したユーモアで描く傑作短篇集*
この方は、こういう他愛もない日常の、さもない悲喜こもごもを描くのが本当に巧い。登場人物たちと一緒になって、悩んだり慌てたり喜んだり落ち込んだり、そんな体験が出来るのも、中島作品の醍醐味かも。
中でも、特に好きなのは、ハッピーアニバーサリー。
同性の恋人を伴って帰宅すると、なんと酔っ払った父親が上がりこんでいる(しかもイベント日!)、と一瞬不穏な幕開けのお話なのですが。
そのガーリッシュな空間に全く似合わない父・清三と、恋人が帰ると言い出さないか泣きそうになる娘・由香里。その横で、意外な感覚にとらわれ、ある決意を固める恋人・園子。この設定で、この展開か!巧い!って感じです。
そして、夢うつつの中でその二人の様子を見てしまい、混乱のあまり、母さん!と心のうちで叫ぶ父・清三がとにかくチャーミング。いいなあ、このさりげなさ。本当の温かさってこういう日常の中にあるんだと思う。秀作です。