中島京子のレビュー一覧
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ネタバレ友人に勧められて。ゼミで『蒲団』を扱ったのでパロディを十分味わえた。
「蒲団の打ち直し」というタイトル付けが見事。ストーリーの改変、時雄が焦がれた蒲団の再利用、二つを掛け合わせるプロット構成に思わずニヤリ。ウメキチの若い頃のエピソードでは『白痴』も意識してると思えてさらにニヤリ。主人公の戸惑いぶりも読んでいて微笑ましい。
原作の『蒲団』では妻目線での語りがない。だから、妻からの視点で『蒲団』というテクストを読めるのは新鮮。さらに『蒲団』のあらすじも分かってしまう。なので、一粒で二度美味しい作品になってる。
『蒲団』と現代とのリンクが感じられて、「文学史が今に続いてる!」と謎の感動。作品は -
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大学生の時に、作者である中島さんとのうれしいつながりを発見し、手にした本が、文庫化されているのを知って再び手に取る。
実在の人物をモチーフにした物語。イザベラ・バードことI・Bとその通訳をしていたイトウの恋の物語。ありえないとは思っても、つい想像してしまう。そんなお話を見事に実現したのがこの本だと思う。
イトウの手記をとおして、「日本人」の視点で、東北への旅を追体験したような感覚。だから、フィクションとはいえ、イザベラ・バードは、当時の日本を、日本人を、東北という地をどう見ていたのだろうか。そんなことが気になり、『日本奥地紀行』も読んだのだけれど、面白かったという記憶しか残っていないという -
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4編がそれぞれ冠婚葬祭、成人式、結婚、葬式、お盆にまつわる物語です。
中島さんは日常に存在する物を描きます。でも、そこに有る物をそのまま描いてもつまらない。正面から描くのなら、多少はレントゲン的視点で、あるいは正面から視点をズラすことで、普通の人である読者が面白く感じる物語になります。
中島さんの面白さは、その視点のズレ方のようです。普通なら少し上から鳥瞰的にとか、斜め横から斜に構えてとか、いっそ裏面から・・なんて予想します。でも中島さんのズレ方は、角度は大きくは無いのだけ、どこか予期せぬ方向にズレていて、それが何とも言えないユーモアに繋がっているようです。
面白いですね。 -
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4つの作品の連作。他の作品の端役が他で主役になる、という構成と、作中でかつてのある時代をかなり精緻に思い起こさせるという得意な手腕を発揮して、さりげないのに、凝ったつくりだなあ、と感じさせる。
この人は、物語内に、別の時代を流すのがうまい。今やそれが特徴と言えるかもしれない。
「この方と、この方」には、かつていい若いモンがプラプラしていると世話焼きおばさんや世話焼き親戚が現れて見合いを設定し、結婚へと片付けていくことが有効だった時代、「どこかできちんとなにかをあきらめて、おさまるべきところへおさま」っていた時代を流し込む。
「最後のお盆」では、近所の人が大した用もなくフラリとやってきて縁 -
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ネタバレ均ちゃんの家に泥棒が入った。
ところが当の住人の均ちゃんが行方知れず。
そこで、均ちゃんの家に出入りしていた3人の女性が事情を聞かれるため警察に呼ばれ、顔を合わせる。
世代も職業も違う3人の女性の均ちゃんとの係わりと、彼女たちのそれぞれの事情や想いが描かれたお話。
面白いのは、中心人物の均ちゃんがなかなか登場しないこと。
女性たちのストーリーがどんどん進んで行く中で「それで、均ちゃんは?」と思いながら読み進め、やっとこさ均ちゃん登場!
3人(いや、実は4人?5人?)の心を揺さぶる均ちゃんのキャラクターも、なぜか憎めない。
偶然出会ってしまった3人の女性の係わり方も面白かったです。
さあ、均 -
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ネタバレさらさらさーと書いてるけどリアルだぞ。
留守中の均ちゃんの家に泥棒が入った。
事情聴取をしたい警察は、均ちゃんと関係のある3人の女にたどりつく。
・女子高の美術教師をする女(均ちゃん家の大家であり元妻/50前後)
・重役秘書の女(不倫相手が本命で均ちゃんは2番目/30代後半)
・ティーン向け雑誌編集者の女(均ちゃんの年下の彼女/20代)
女3人初顔合わせの第一話から、均ちゃんが帰ってくるところまで
ざっと4ヵ月間の物語。
4ヵ月の間に動く女たちの、そして均ちゃんのお話。
均ちゃんのようにだらしのない男が世界で一番嫌いな私に、
嫌悪感を抱かせなかったのは作者の才の極みで