あらすじ
ふらりと旅に出たまま帰らない内田均の家に泥棒が入り、この家に出入りしていた元妻の高校美術教師と重役秘書と雑誌編集者という年代の違う女たちが警察で鉢合わせ。均ちゃんへのそれぞれの思いを胸に、ひょんなことから三人そろって箱根の高級温泉旅館に行くことになり……。切なくも軽やかな恋愛小説。
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Posted by ブクログ
均ちゃんはやっぱ「平均」の「均」なのかな。このふわふわした「均」ちゃんに振り回されているんだか、振り回しているんだか、4人の女性の物語。みんな似ているようで似ていない。一番一般的な感じは片桐さんかな。恋したらそういう感情に悩まされるのはごくごく普通だ。突然消えたと思ったら、実は他にも女がいることが分かってとかさ。混乱するわ。ただ他の女性が一風変わっているのでどろ沼にならず、逆に親睦を深めていくのがいい。こんな出会いは面白い。空穂さんがキャラとしては好み。最後、均ちゃん一人になっちゃった。味わい深い、実に。
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「均ちゃん」をめぐる3人(正確には4人?いや5人?)の女性がそれぞれ新しい道を切り開いていく過程が描かれていておもしろい。ありそうでなさそうな設定や、落ち着いた感じの文体も好み。
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一見どうしようもない女たらしの均ちゃんだけど、借金しまくったことにも訳があり・・・。
元妻は教師、現恋人は大企業の重役秘書、売れてる雑誌の編集者。一見しっかりした女性ばかりだが、均ちゃんのゆるさに、緊張が解け、癒しを感じて惹かれたのかもしれない。
3人はなぜか旅行する仲間となり、それぞれの話を始める。そして、それぞれが人生の結論を出す時、均ちゃんは・・・。うん、女の人って、たくましい。
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p.44
あの人はね、こう言うたら何やけど、通過地点のようなものなんやわ。女にとっては。うまく言えへんけど、あの人は大人になれへんからね。そこがあの人の、かわいそなとこやね。
突然いなくなった中年男性(イケメンではない女たらし)を巡る女性の話。わけわからないながらも3人が結束を深めて友情が微妙に芽生えてくるのがいい。
均ちゃんをきっかけに、それぞれの女性の背景や心情が明らかになる、その気質の違いであったり生い立ちであったり、その書き分けが上手だと思う。
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初めて読んだ中島京子さんの小説。
読んでいておかしいんだけど、滑稽なんだけど、そこに人間の真理がある…と気づけばとても深い。
ふらりと家を出たまま失踪した内田均(通称均ちゃん)。
彼が不在の間に家に泥棒が入り、この家に出入りしていた元妻(50代高校美術教師)と現恋人の2人(30代重役秘書と20代雑誌編集者)が警察署で鉢合わせ。
均ちゃんへのそれぞれの思いを胸に、ひょんなことから3人揃って箱根の高級温泉旅館に行くことになり…。
殊に恋愛で人が一生懸命になっているときって、どうして他人のことはよく見えるのに自分のことは見えなくなってしまうんだろう。
他人のことなら冷静に観察して馬鹿だなぁと思ったりするのに、自分も似たような馬鹿なことをしてしまっていることに全然気づかなかったりする。
そういうおかしみとか滑稽さを表現するのが本当に巧いなぁと思いながら読んだ。
均ちゃんはちっとも格好良くないし、お金持ちでもないけれど、なぜか女からモテる。それというのもおそらく、人の懐にすいっと入っていくのが上手いからだ。
何となく気づいたら隣にいる、みたいな。淋しいときなぜか連絡してしまう相手、みたいな。
そんなわけで女たちはそれぞれの立場で均ちゃんとの関係を築いているわけだけど、均ちゃんがいない間に女たちがちょっと仲良くなったりわちゃわちゃして、結果的に均ちゃんがいない状況で新たな恋を掴んだり新たな道に踏み出すあたり、女の強かさを感じずにはいられなかった。
女たちはちゃんと人を愛して向き合って苦しんで泣いて、そして吹っ切って新たな切符を手に進んでいく。
でも均ちゃんは誰のことも愛していないのかもしれないから(誰にでも優しい男って結果的に誰にも優しくないのよね)そういう人って何も手に残らなかったりして…ということを思ったりした。
面白いのにちゃんと残る作風。押しつけがましくなく、ふっと気づかされるような。
設定として均ちゃんは津軽地方出身なので、弟と津軽弁で罵り合うシーンなんか、私は分かったけど津軽以外の人は分からなそうだな、と思った。
唐突なそういうシーンもまた滑稽さがあって良かったのであった。
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肝心の「均ちゃん」は失踪しているので、登場シーンが少なめで、それがかえってこの作品を、男ひとりと3人の女という設定ながら、ベタベタどろどろした恋愛小説とは一味違ったものにしている。
会えない時間が愛育てるのさ~という昭和の歌謡曲があったが、会えない時間の中で女性達が変わっていく様が、心地よい。
振られ上手な男は、もてるだろうけど、本人はやはり悲しいのかもしれないな。
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「今ここ」にいない人物である、情報で形作られていく「均ちゃん」。均ちゃんが縁で集められた「今ここ」から「その先」を見つめる三人の女性たち。
もどかしさやままならないところから、ちょっとばかし抜ける三者のエピソードが気持ちいい。
岡目八目、自分も端から見たら滑稽なんだろうと思うと、ちょっと楽になる。
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失踪した均(きん)ちゃんの家に泥棒が入る。
本人不在のため、
関係者が集められるがそこに居合わせたのは。
元妻と彼女を含めた3人の女たち。
均ちゃんという共通点を持った3人が
箱根に不思議な旅行に出かける。
3人それぞれ、
そして均ちゃんからの視点から物語が出発する短編集。
放浪癖があって、
だらしがなくて、
お金もなくて、
自由奔放で、
でも憎めなくて、
妙な才能を持ってて、
タイミングが抜群なのに、
かわいそうな均ちゃん。
こーゆー人にきっと女性は弱いはず。苦笑
ってか、私が弱い!笑
本当に勝手な男なのにね、均ちゃん。苦笑
本当はもっと深くキャラクターを掘り下げてほしかったけど、
さっぱり読むにはこのくらいが丁度良いかも。
「信じられないわけでも、信じたくないわけでもないが、
信じて待つのはエネルギーがいる。
信じさせるにもエネルギーがいるだろう。」
きっと私は、薫に近いけど空穂が好きだし憧れる。
女は強い、と信じたくなる本!
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年齢も境遇も違う女子3人それぞれの視点から語られる「均ちゃん」。均ちゃんよりも女たちの生々しい気持ちにウンウンうなずいて、何か泣けてくる。それぞれの結末、それぞれにちゃんと前向き。元気をもらえました!
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均ちゃんの家に泥棒が入った。
ところが当の住人の均ちゃんが行方知れず。
そこで、均ちゃんの家に出入りしていた3人の女性が事情を聞かれるため警察に呼ばれ、顔を合わせる。
世代も職業も違う3人の女性の均ちゃんとの係わりと、彼女たちのそれぞれの事情や想いが描かれたお話。
面白いのは、中心人物の均ちゃんがなかなか登場しないこと。
女性たちのストーリーがどんどん進んで行く中で「それで、均ちゃんは?」と思いながら読み進め、やっとこさ均ちゃん登場!
3人(いや、実は4人?5人?)の心を揺さぶる均ちゃんのキャラクターも、なぜか憎めない。
偶然出会ってしまった3人の女性の係わり方も面白かったです。
さあ、均ちゃんは、あの家に帰ってくるのでしょうか?
ミステリーでもないし、かといって恋愛小説でもないし…。
スルスルと読めました。
私が好きなかんじの作風です。
中島さんの本、もっと読んでみたいなと思いました。
Posted by ブクログ
さらさらさーと書いてるけどリアルだぞ。
留守中の均ちゃんの家に泥棒が入った。
事情聴取をしたい警察は、均ちゃんと関係のある3人の女にたどりつく。
・女子高の美術教師をする女(均ちゃん家の大家であり元妻/50前後)
・重役秘書の女(不倫相手が本命で均ちゃんは2番目/30代後半)
・ティーン向け雑誌編集者の女(均ちゃんの年下の彼女/20代)
女3人初顔合わせの第一話から、均ちゃんが帰ってくるところまで
ざっと4ヵ月間の物語。
4ヵ月の間に動く女たちの、そして均ちゃんのお話。
均ちゃんのようにだらしのない男が世界で一番嫌いな私に、
嫌悪感を抱かせなかったのは作者の才の極みですね。
あっぱれです。
Posted by ブクログ
均ちゃんをとりまく3人の女性は、それぞれにリアリティがあって、それぞれにユニークでおもしろい。会話とか設定がうまいなあ・・・
均ちゃんも憎めなくて、こういう感じの男って確かにいます
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だめなんだけど(だから?)女に困らない均ちゃんとその前妻、彼女、セフレ(?)、それぞれの女性を主人公にして綴る短編集。悪気なく女の人を二股、三股かけたり、ふらっと失踪しちゃっても、最後は女性の背中を押してあげる均ちゃんはやっぱりいい男なのかもしれない。
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突然、いなくなった均ちゃん。その均ちゃんに置いてきぼりにされた現在進行形の彼女2人と元妻1人の、ふっきりものがたり。だらだら続けてきたものを、えいやっ、と断ち切るにはそれなりの決意が必要。均ちゃんの失踪は3人の女性にとって人生の分岐点となるのだけど、そこんところがおもしろい。女って、たくましいんですよ。
Posted by ブクログ
たとえば本を読むとき、
ストーリー至上主義の私は、はじめて読む設定や展開ならば、
気にならないことがたくさんある。
よくある設定の場合、その本を楽しむために
登場人物のキャラクターや、文章のよしあしにこだわっていくようになる。
些細なことに、文句をつけたくなっちゃったり、がっかりしたり、
なかなか先に読み進められなかったり。
そこでこの作品。
読後感がすごく良い。
あまり自分の喜怒哀楽の感情を呼び覚まさない、
リラックス効果があるように思う。
言葉の選び方のおかげなんじゃないかな、と思う。
ほかの作品とかでもそれを感じるけど、これはとくにそう思った。
Posted by ブクログ
とんでもない男だけど、なんとなく憎めない均ちゃんと、彼を取り巻く女性たちのお話。
元妻である40代の美術教師、30代の重役秘書、20代の編集者を、同時にこよなく愛する均ちゃんですが、根が優柔不断でいくつになっても放浪癖が抜けきりません。
それぞれに事情を抱える3人の女性たちが、均ちゃんのある日突然の失踪を機に、自らを見つめ直し、新たな一歩を踏み出します。
男も女も誰だって、ほんとはみんな寂しいのです。愛とは、優しさとは、いったいなんなのでしょうネ。面白くて、ちょっぴり切ない恋愛ドラマです。
Posted by ブクログ
キョンキョンの推薦文を読んだことがあって気になり読んだ。軽やかな恋愛小説とあったけれど恋愛というより情愛のような人間愛のような感じだった。憎めないタイプの均ちゃんみたいな人は近くにいると厄介だな。
Posted by ブクログ
気軽に読める小説は必要だと思う。この本もその類であり、無性に本を読みたくなった時の始まりにふさわしい作品だった。人生で1番大事なことの一つ、人間関係にまつわる縮図を見ていたようだ。人ってこんなに簡単に出会った人とその関係がなんだかんだ続くのかと思えば、長かった関係をあっさりと解消できるものなのかと認識させられた。気持ち次第とはいえ、何か大きな出来事が起こって、それを軸にしてようやく重い腰が上がって次の新しい事に進むのだなぁ、と自分のことのように作品を読んでいった。
Posted by ブクログ
どうしようもない男は
優しさとダメさを抱えながら変わらない。変われない。
一方、女たちは苦しさと対峙して変わってゆく。
愛情ゆえにその失踪、喪失に悩み、苦しみ、
もがきながらも自らの想いと闘う。
ラストに哀しみのなかにスカッとする思い。
読後に前向きになれたのは、私も女だからかな。
Posted by ブクログ
14/12/02
この世の憂さを忘れるには、目をつぶって寝てしまうのがいちばんいいと思っている均ちゃん。なんて掴み所のないだらしない適当な男なんだと思いつつ、なぜかきらいになれない。均ちゃんは優しくてかわいそうなひとだから。
景子先生の“筋金入りの楽天的思考”はいいなあ。すごくいい。
「みんな、いなくなる」
と、情けない声を出した。
「均ちゃんが悪いのよ」
空穂は均ちゃんの頭を抱き寄せ、自分の頬をくっつけて目をつぶった。
「均ちゃん、四ヵ月もほっぽっとくから、女はみんないろんなこと決めちゃったのよ」(P227 出発ロビー)
Posted by ブクログ
初めての作家さんでしたが、なかなか面白くて一気読みしました。均ちゃんと関わりのある3人の女性が、均ちゃん失踪中に急接近。ありそうでなさそうなお話に先の展開が気になってしまい、読む手を休められなかった。均ちゃんはダメ人間だけどなんだか憎めないなぁ~。最後はちょっとかわいそうだったけど、自業自得ということで。
Posted by ブクログ
均ちゃんという、ろくでもないけどにくめない、中年お子様な男性に関わりのある3人の女性の物語。スルスルと読みやすく、あっさり淡白な読後感。おそうめんみたいな小説でした。