あらすじ
昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない、上質の恋愛小説。第143回直木賞受賞作。山田洋次監督で映画化。
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昭和初期の中流家庭で女中として働いていた、タキの回想録という形で進む物語。
時代設定は太平洋戦争直前の東京の郊外。戦前、戦中を描いた作品は、多かれ少なかれ戦争の悲惨さ、民衆の苦しい日常、軍の愚かさなどが目立つ内容になる事が多いが、本作の面白いところはそういったものが物語の後半になってほんの少し出てくるものの、ほとんど描かれていないことだ。
逆に、「南京陥落記念セール」とか、「アメリカと戦争が始まって、なにがよかったって、世の中がぱっと明るくなったことだ」などという記述があり、教科書で戦争を学んだ現代人からは到底想像もつかない日常があったことを思い知らされる。
かと言って、決して戦争を礼賛するような話ではない。それは当時の一般市民のなんの飾りっ気もない、日常の風景だったのだろう。そこに「戦争」が当たり前のようにあった、というだけなのだ。
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タキさんの女中時代と今が書かれていて
読んでいてその時代の時間が感じられました。
女中に大雪な掃除や炊事の家事だけでなく《ある種の頭の良さ》が伝わる文章でスラスラ読めました!
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早々に映画を見なくては!
暗いイメージが強い、日本が戦争へと足を踏み入れていく時代を、一般の庶民がどのように感じ、考え生活していたのか雰囲気がとてもよく分かる作品。
辛い事もある時代でも楽しくしっかり生活していたタキ。時子奥様を中心に生き生きと書かれていて良かった。
お友達の睦子さんはタキ本人も気づかない気持ちを同類として、早々と悟り、重要な部分は言わずに励ます場面良かったな。
多分、タキ自身も恋がどういったものなのか分からなかったのか…。
時子奥様、すごく素敵な人だったのね。
板倉さんが最後時子に会いに来た時のタキの気持ちが全く書かれていないことが興味深い。
とてもきれいな物語。
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黒木華さん主演のこの映画が大好きで、何度も観ています。今更ではありますが、恥ずかしながら原作は未読でした。
平井家で働いたこと、これがタキちゃんの青春だったのだなぁ。
原作を読んでさらにタキちゃんの奥様に対する思いの強さを感じ、タキちゃん、タキおばあちゃんが大好きになった。
戦前戦中戦後の当時の人々のリアルな暮らしや思いは、歴史の授業などではわからないけれど、この作品を読んで、当時の人々の思いや暮らしを知ることができた。
大切な家族、恋人、友だちが徴兵されたり、空から爆弾が降ってくるとか、亡くなるとか、想像しただけで恐ろしいし、そんなことがこの日本で起こっていたことを決して忘れてはならないと改めて感じた。
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戦前から戦中の時代にも、等身大の日常と生活が存在していたのだと改めて思い起こされる作品。
女中と、奥様と、旦那様と、少年と、青年と、戦争の時代を生き、大きなうねりに巻き込まれたけれど、戦争そのものを動かす当事者ではなかった人々の物語です。じんわり心に響く。
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最後の最後に書かれた対談
「戦争の時代の人」がいたんだと思った
でもみんな私たちと同じように楽しく暮らしていたのに、いつの間にか戦争に向かっていったんだと
今の時代にたくさんの人に読まれていい本だと思う
そしてすごく読みやすい本だった
毎日少しずつ楽しんで読むことができてよかった
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映画が思い出されるけれど少し違うところや詳しいところがあって面白く読めました。女中としてあの手紙をどうするべきだったのか…そらを後悔していたタキさんはずっと苦しかったのだろうと思いました。
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教科書には書かれていない、あの頃人々がどう暮らし、どう生きていたのか。教科書で読む戦時中のことと、普通の人たちの感覚とのギャップが興味深かった。
タキさんの覚書で終わらず、最後の章につながっていくところもよかった。
そうやって、語りつないだり、想いをつないでいかなければならないことが、きっと身近にたくさんあるのだと思う。
映画も観てみたい。
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女中の話。昔の裕福な人とそのお仕えの人の話、最近好き。裕福な人はとことん裕福に煌びやかに、その世界観が好き。最後までしっかり読み応えのある1冊。ラストもいい感じでした。
Posted by ブクログ
おもしろい。昔の日本語の美しいこと。品があふれてる。言葉尻から人となりまで垣間見れ情景が目に浮かぶ。
コロナや戦争、現代と近しい部分も多く、なんだか似たような状況だと時代は繰り返し、もしやまたここに書かれてるような世界になるのでは!そうなったときのヒントなんかないだろうか。等
現代と照らし合わせながら楽しめたのも良かった。
戦争の描写がなんとも現実的というか、フィクションかもしれないけれど、わたしたちが歴史の教科書を見て知るのは極々一部分で、地震も一緒で同じ日本にいながら全く昨日と同じ生活が続く地域にいる人と被災地の方との認識の違いのように、感じ方や体験が天と地ほど違うということがよくわかった。
そういう当たり前だけど、目の前のことしか見えないという意識思い出させてもらえ、忘れないでいたいなぁと思わせてもらえた。
最後になるにつれ、様々な事柄、人物が複雑に繋がっている発見もよくこんな設定思いつけるな!と感心する。よくできた設定に、これは実在する人物なのでは?!と思わず調べたりしてなかなか前に読み進めれない程読み応えあった。
映画化もされたようで、キャストが抜群にぴったり合ってて是非一度観たいです。
Posted by ブクログ
内容は映画とほぼ同じ。
だけど、ラストの持っていき方が違った。その点では、こちらのほうが好み。
なぜタキがあのような行動を取ったのか?
人によって解釈が異なると思うので、読んだ人と語り合いたい。
Posted by ブクログ
教科書で習った戦争の時代、その時代を生きている人の言葉で日々を綴られた文章を読む機会はなかったのですごく新鮮だった(フィクションだが)
戦争中の辛い場面の映画は多いが、タキさんの一生なので小さな幸せやありふれた日常の方が多く書いてあったのがすごくリアルですごく怖くなった。
時子さんの戦争中だとしても心の豊かさはなくしたくない思いはとても大事だと思った。
Posted by ブクログ
「うらはぐさ風土記」で中島京子さんのファンになり2作目。昭和の女中さんのお話が面々と綴られて最初はうんざりしていて、挫折しかかった。
レビューを読んでいると評価も高く、後半からは物語が加速するらしいと知ると、勝手なものでどんどんと興味が湧いてくる。タキさんや時子さんの物言いに慣れてくると時代背景や生活そのものも面白く、何となく予測できたストーリーもラストでびっくりの結末。また違った解釈になりとても深かったし、映画化もされているとかで、さすが直木賞受賞作品は違うなぁと。もう少し中島京子さんの作品を極めてみようと思う。どんな世界が待ち受けているのか楽しみ。
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戦前から戦後にかけて、女中としてのタキの働きっぷりもおもしろかったけど、それ以上に世の中がどう変わっていったか、庶民はそのときなにを感じたか、が非常に興味深かった
Posted by ブクログ
中盤からラストにかけて本当に良かった…
初めのうちは、昔の話で想像がつかず読むのが難しかったけど、途中から面白くて一気読みした!!
途中で読むの諦めてしまった人勿体ない!!
文庫本284ページが特に泣けた…
やっと言えたんだね…
真実が語られあかされないところがなみなみならぬ小説なのです。
Posted by ブクログ
女中さんと奥様の、忠義より優しく友情より固い愛の話
睦子さんがしていた三つの道の話、タキさんの道は三つ目の道じゃなくて二つ目だったのかな
でも私は個人的には2人の愛は恋愛のそれじゃないと思いたいけど、どうなんだろう
これもまた、この世界の片隅に、な話だったな
タキさんのメモから甥っ子の息子視点に切り替わるのもとても面白かった
ストーリーも面白いし、その描き方も好き
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女中として働いていたタキおばあちゃんの現在から話は始まります。
過去の出来事を手記として残すタキ。
昭和の初め、まだ少女の女中がどのような人生を歩むのか…。
タキと時子の関係が一言で言い表せないですね。
使用人と主人ではありつつも、家族でもあり友人でもある。
なかなか親密な関係。
このまま時代は流れるのかと思いきや、後半の展開に驚かされます。
どこまでが真実で、どこからが現実なのか。
分かるのはタキの時子への愛情と、とてつもない後悔。
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子どもに読み聞かせた絵本とおなじタイトルだなと思ったのを思い出した。女中にあがったサキさんの生活が見えるようで昭和を懐かしんだ。
いえは成城あたりと見当つけて読んでた。
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<再登録>昭和初期に「小さいおうち」に奉公していた少女の回顧録。
戦争の気配が色濃くなっていく時代を描いているのに、あくまで平井家周辺は昭和モダンの華やかさを保っています。それだけに美しい光景が失われていく過程は読んでいて悲しくなりました。
途中で挿入される現代パートでは孫の健史の現代っ子視点にイラっとしましたが、その健史が最終章ではまさかの大活躍。残された人達のすべてを明らかにはしない優しさがよかった。過去は美しいままにしておくのがいいこともあるのでしょう。
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高校生の時、映画館で山田洋次監督の作品を観た思い出。松たか子はもちろん、黒木華が特にハマり役だった。割烹着がこんなに似合う女優さんはいないと思う。
久しぶりに作品に触れたら、上品さの中に大人の色気があって、頭が火照ってしまった…
余韻のある最終章も素敵。
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映画化された方を先に見ましたが、個人的にはそちらの方が内容が入ってきやすいと感じました。原作で読むと回想の物語の終わりが尻切れトンボになってしまったように感じ、終わりの流れに浸れなかったような後味でした。
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これまで読んだ小説とは少しちがう感じ。
戦時中の東京でのとある家族についての物語が、女中(お手伝いさん)の目線で語られていく。
自分のイメージの戦時中とは異なる風景が思い描かれていて新鮮に感じたのと、女中がとても賢くそこもまた面白かったなと。
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直木賞受賞作。
映画で観ましたが、主演の松たか子が綺麗で、赤いおうちがとても素敵に描かれていました。小説に想像力を掻き立てられ、映画の内容が更に深まりました。
戦争の話と結婚•恋愛が絡み合い、考えさせられたし、曖昧なラストで更に読み手の興味を掻き立てられます。
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昭和初期の世の中のイメージが変わりましたね。生活史は政治史や世界史とは違う。男の歴史ではなく市井の歴史、雰囲気が分かりました。ストーリー的には抑え気味で盛り上がりはそんなになく、淡々という感じ。
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先日、ようやく映画を見たので、原作も読んでみる。細かな違いはあるものの、概ね山田洋二監督が原作をそのまま映画に仕上げてるのに驚いた。甥の健史は小説の方がもっとポンコツだったけどね。まあ、最後にいい仕事するんでいいかな
Posted by ブクログ
戦争に向かっていく日本と、当時生きていた人たちの生活・認識がタキさんの手記という形で細かく描かれていて、とても面白かった。
最終的には現代に戻ってきて健史視点で描かれるように視点が切り替わった瞬間は驚きがあったものの、全体的にはそこまで複雑な物語ではなく、どちらかというと戦争当時の様子を感じられる読み物という面白さが強かったように感じる。
また、私がこれまで読んできた戦争ものとは違い、たとえば戦争に対してどこか他人事と思っている人たち、そんななかでもジワジワと戦争が生活に染み出してくる様子が描かれていて、なんだかとてもリアルに感じられた。
タキさんが女中として働いていた一家の奥様・時子さんはかなり魅力的な女性で、板倉さんだけではなく友人の睦子さんやタキさんまで魅了していたことが最終的にわかる。
実際、タキさんの手記に登場する時子さんは、とてもかわいらしい女性だった。
そして、板倉さんが戦後の作品「小さいおうち」で2人の親密な女性を「聖なるもの/守るべきもの」として描いていることがとても素敵だと思った。
思い出の家もなくなり、当事者もみんな亡くなった時代においても、2人の親密さが形として残っていることが非常に尊く、切ない気持ちになった。
Posted by ブクログ
戦前戦中の日常を描いたような作品で時代や表現方法は違えどノスタルジーを描くという点でなんとなく三丁目の夕日をイメージした。
女中とか奉公とか馴染みがないけれど殆ど違和感無く読めた