中島京子のレビュー一覧
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ネタバレキリスト教と社会という大学の講義で、難民問題について、在留ビザについて学んだ。学問として知ったことが現実で起きていると、肌で感じることが出来たのはこの本のおかげだ。
クマさんが受けてきた差別は、とてもリアルで、差別する側の人たちの気持ちも日本人としてよく分かるからこそ、私はやさしい猫、覚醒した猫にならなければならないと思う。
外国人を人とも思わない入館管理局の行いは、「追い出してやるぜ」というメンタリティに貫かれた行動は、裏返すと私たち日本人の、マジョリティの考えの現れとも言える。それを正しく理解するべきだと強く迫られる気分になる本だった。
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児童文学の中から18作を選んで書かれたエッセイ。読みながら、そうだったよねーと共感するのと同じくらいに、そんな話だったっけと自分が気がついていなかった読み方に驚くことも多かった。子どもが楽しめるというだけでなく、大人になったからこそ見えてくるものがきちんと描かれている作品であり、子どもの頃の私は心地良さは感じていてもそこまで読み取れてはいなかったからだろう。まえがきに、著者がこの18作を選んだ理由は、読み直してみたときに「子どもの時間を思い出しただけではなくて、大人になったいま、書いてみようという気持ちを起こさせた」作品だからとあった。大人になったいま、読み返してみたいと思う作品がいくつもあっ
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Posted by ブクログ
東京の西の方だと思われるうらはぐさ。
アメリカから離婚して帰ってきてうらはぐさの伯父の家に住むことになった沙希。
そこは学生時代にも馴染みのある場所。
そこで様々な人々と出会い、その人々と関わっていくことになる。
その中でうらはぐさの歴史に触れたり、再開発に心を痛めたりしていく。
沙希が出会う人は年齢も、バックグラウンドも多種多様、まさに現在。
うらはぐさに大きな何かが起こるわけではないけど、時代が変わっていくと共にうらはぐさも変わっていく。
何処にでもある都心からちょっと離れた街、そこに暮らす人々の日常、そしてちょっぴり、沙希の海外での生活も顔をのぞかせる。
大学の非常勤講師である沙希と学生 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大家族小説と言えば「東京バンドワゴン」を連想するのだが、この小説はあれほどにぎやかで幸せに満ちた一家ではない…いや、静かではないし、とんでもない不幸というのはないし、起こっている事件もあのシリーズでとりあげてもいいようなことばかりなのだが…。
東京バンドワゴンが昭和の良き日のテレビドラマをリスペクトしているなら、こっちはサザエさん、それもアニメじゃなく、長谷川町子が新聞連載した4コマを平成(コロナ以前と言い換えればよいか)に再現した感じ。
どこの家族にもある、下手すると大きな事件につながりかねない火種、そういうものを家族が時にはそろって、時には単独や数名のチームで消していく。そういう雰囲気 -
Posted by ブクログ
ネタバレするするっと読める本。
「幼い頃タタンと呼ばれていた私」のお話し。
タタンの実体験としての記憶だから自然に流れていくのに、「タタンとは呼ばれなくなった大人の私」が思い出して語るには矛盾や違和感があって、その違和感が読者の中でも膨れたところで、ここはもしかしたら曖昧かも、というような一文が入る。
最初の方は、そうか昔の記憶だと思い出補正も確かにあるよね、と何も思わなかったのに、特に最後の一編は序盤からとても警戒しながら、疑いながら読み進めた。途中からミステリ小説になったのかと思った。
ただひたすら最後の一文に向けて書かれたのだなという印象。面白かった。