辻村深月のレビュー一覧
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日常のすぐそばにある不安や迷いが、少しずつ重さを増していく短編集。
どこにでもいそうな女性たちの悩みを描いた短編集で、最初はそれでも小さな問題から始まるのに、読み進めるほど静かに重さが積み重なっていきます。4編目に入る頃には「最後はどうなるんだろう」と自然と身構えてしまうほどでした。
特に、育児に悩む若い母親の話は、最近受けた研修で聞いたワークライフバランスの実例と重なる部分が多く、個人的にかなり響きました。夫婦間の温度差や、言葉の選び方ひとつで積み重なる負担の描写がとてもリアルで、読んでいると自分も子どもの夜泣きに苦労した経験を思い出しました。
当時、自分にとってはとても大変だと感じたのですが、振り返ると奥さんの方がずっと大きな負荷を抱えていたはずで、読み終えて改めて「母は強い」と感じました。日常の中で見過ごしがちな気持ちにそっと光を当ててくれる一冊で、読後に家族への感謝が静かに増していくような読書体験でした。 -
Posted by ブクログ
ミステリーのアンソロジー。色んな作家をお試しで読めるな、と思って古本屋で買った。たまに思い出したように行く小さな店。今回は、店主のマダムがしばらく留守にしていて、代わりにお客さんが「ちょっとそこまで出かけてらっしゃいます」と店番代わり。どうしよう買おうかなぁ、今日はやめようかなぁと思いながら、いつもは店主の背中側にあってなかなか手が出せない棚をじっくり見たりしていると、掘り出し物を見つけたり。やっぱ待つことに。おかげで買い過ぎず、少な過ぎず、良い本を買えた。
さて、いきなり1話目からどんでん返し。これはやられた。短いこともあり、読み終わってすぐにまた冒頭から読み直した。乾くるみ『夫の余命』。2話目は凶器が何なのかがずっと分からない、と話が進んでいく。えー、絶対あれでしょー簡単簡単、と思ってたら、全然違った。米澤穂信『崖の下』。3話目、コロナ絡みの将棋の話。将棋の投了の時の作法のようなもの、初めて知った。この本は2021年発行。まだコロナ禍だなぁ。芹沢央『投了図』。4話目は詐欺と殺人。これがいちばん純粋に推理小説だ。大山誠一郎『孤独な容疑者』。5話目、あぁぁ私パズルとかクイズとか苦手なんよー。だからなかなか理解できなくて何度も読み直した。苦手だった数学の文章問題なんて思い出してしまった。けど、ただのパズル問題に奥深いストーリーをくっつけるの、けっこう好き。有栖川有栖『推理研VSパズル研』。トリは辻村深月『2020年のロマンス詐欺』。振り込め詐欺に巻き込まれていく大学生(田舎からでてきたばっかり)のシーンはちょっと読んでてイヤだった。絶対ダメなやつだ、と読者としては分かりきってる深みに落ちていく主人公を見てられないというか、そう言うシーンは嫌いなのだ。でも意外とラストは爽やかな、後味の良い、読後感の良い話です。こんなオチもあるのね。 -
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表紙もタイトルもいかにもホラーで怖いものみたさで読み進めたけれど、やっぱり怖かった。
何が怖いって、人間が怖い。
高校生、ママ友、会社の同僚、小学生、章ごとに場面が変わるので飽きない。
優しくて頼りがいがあり憧れていた先輩に心を許して相談しているうちに、だんだん先輩が本性をあらわして、一方的な考えを押し付けてきたり行動を指図してくるようになった。
何でも愚痴を聞いてくれて悩みも丸ごと受け入れてくれて、常に肯定され同僚に気持ちよく話を聞いてもらっているうちに、自分は間違っていない、自分は正しいと思い込み、暴走していく。
洗脳にもいろいろなやり方があるのだなと思ったし、洗脳されているときは自分がおかしくなっていることに気づけない。
身近にもありそうなお話だからこそ、こんなに怖いと感じるのだろうな。
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ネタバレー坂崎あすなについて、いつかが知っていることはそう多くない。ー上巻
ー坂崎あすなについて、いつかが知っていることはそう多くない。だけど、決して少なくもなかった。ー下巻
「ぼくのメジャースプーン」→「名前探しの放課後」の順で読んでほしい。ぼくのメジャースプーンの登場人物が次から次へと出てくるし、なんなら「ぼく」と「ふみちゃん」の姿がまた見れて本当に嬉しいし。
そしてたぶん、
実際はいつかはタイムスリップしていない。秀人の「条件ゲーム提示能力」にかかっただけ。
「たとえばさ、今から3ヶ月後、自分が本当に気になってる女の子が死ぬと仮定してみてよ=A、そういうのがないならいつか君の人生はすごい寂しいよ=B」
当然誰が死ぬのかはわかっていた。というより いつかの頭の中にしか存在していなかった。
あすなの「私死ななかったと思う」は本当にそのとおりだったのだっと思う。 -
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ネタバレ寝る間も惜しんで読んでしまった。
僕のメジャースプーンの後書きに引き寄せられて。
メジャースプーンの後書きで読んで欲しいと添えられて、誰が関連しているのだろう?と
先入観入りまくって読んで。
ああ!って。
ただ、まだわからないのが、あの子の彼女が果たして
ふみちゃんなのかはまだわからない。
そして、改めてメジャースプーンを読んで思ったのが、主人公の「ぼく」が名前かでて無かったことに!!
気にならなかったのがびっくりした。
ぼくが「ぼく」でしかなく、ぼくのことを名前で誰も読んでいなかったこと。
からの、「ぼく」だった彼の名前が今作で分かった事。
メジャースプーンの後書きに書いてなかったら、多分気付かなかった。初めから先入観なしで読んでたらおそらく気付かなかった。
辻村作品はちょいちょい読んでいるが、こんなにハマった作家は伊坂幸太郎以外では久しぶりかも。
でも、作品によって合う合わないは結構ある。 -
Posted by ブクログ
読み始めは、ストーカーやモラハラの話かと思った。しかし読み進めるうちに、人の心に巣食う「闇」を祓う物語だという輪郭が見えてきた。
章ごとに視点や舞台は変わり、学校、職場、家庭など、それぞれ異なる人間関係の中で現代社会の闇が描かれる。一見バラバラだった出来事が少しずつ繋がり、「神原」という存在の役割も見え方を変えながら一本の物語へ収束していく構成が印象的だった。
読みながら感じたのは、怪異そのものよりも、パワハラやセクハラ、モラハラなど、人が生み出す悪意や歪みのほうがよほど恐ろしいということ。だからこそ、この作品はホラーでありながら、人間の闇を極端な形で描いた虚構空間ホラーという読後感だった。
何を書いても核心に触れてしまいそうなので多くは語れない。
伏線回収はさすが。
その一言だけ残しておきたい。