自然を切り崩し、ロックフェスを誘致する以外に取柄もない山村。田舎特有の、窒息しそうな閉塞感に苛立つ高校生の広海は、突然村に戻ってきた地元出身の有名モデル・由貴美と出会い、囚われてゆく。ある晩彼女から「村への復讐に協力してほしい」と持ちかけられ、広海は求めに応じるが、実は由貴美には“真の目的”があった。そしてフェスの夜、取り返しのつかない事件が二人を襲う──。新直木賞作家による傑作長篇。息を呑むラストまでページを繰る手が止まらない!
Posted by ブクログ 2020年07月08日
最初はロックフェスの話かと思って読み進めた。つまり、サブカル愛の話かなと。ところがどっこい、重くねっとりと裏切られた。昭和の地方のムラ社会をこんなミステリー仕立てで描ける30歳代の辻村深月って何者?!信じたものに裏切られ、そこで歪むこともできた高校生の主人公。彼の最後の選択は、この物語の救いになって...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年09月04日
ダム湖は翡翠色に淀み、水面しか見えない。
集落が一つ丸ごと沈んでいるくらい深く、落ちたら藻に呑み込まれると、言い伝えがある。
陸ツ代村の町おこし事業として作られたダムだが、10年前から開催されているロックフェスで村は潤っている。
主人公の湧谷広海:高校2年男子。
閉鎖的な村のルールを少しずつ知る...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年07月11日
山間の閉鎖的な村で生活する少年が、年上の女性とのめくるめく官能的な恋をきっかけに家族のドロドロとした因縁に満ちた秘密を知ってしまう
後半、父親の訳の分からない存在感か顕になってくる感じが不気味だった
ツルゲーネフの「初恋」を思い出す
ピュアで自意識過剰な青春は、自ら軽蔑していた大人の世界の深さと...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年11月01日
辻村深月さんってこんな物語も書けるのかと驚いた。これまで青春やミステリといった取っ付きやすさがある中で、ザワリとするサスペンスのような読み心地の本作は挑戦さを感じた。これから先、さらに様々な題材を描くことになるわけだが、これまでの作風との違いに度肝を抜かれた作品だった。
それにしても、やっぱりうまい...続きを読む