鷲田清一のレビュー一覧

  • だれのための仕事 労働vs余暇を超えて

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    労働、勤勉が、資本主義の中で神聖化されていく。マルクス主義の観点でも、実は「労働者の提供する資源」という形で神聖化される。余暇や快楽までが消費の対象になる。
    ついには「たえず変化していなければならないという強迫的な意識が、(逆説的にも)惰性的に反復されてきたのが、二十世紀社会なのであった」(P86)と喝破する。

    さすが鷲田清一氏の論考でこの辺りまでぐいぐい読ませるが、では、それに対置されるべき「遊び」とは何か、というあたりからやや論旨が迷走している感あり。
    氏が肯定的にとらえようとしている「深い遊び」という概念が、前段で批判的に検討していた「レクリエーション(再生産の準備としての余暇)」とど

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    2019年03月10日
  • 戦後日本の大衆文化史 1945~1980年

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    ネタバレ

    戦後日本を代表する知識人の一人である鶴見俊輔による講義録。大衆文化というカタチを通じて戦後日本のへりを見渡そうとする。1980年に書かれたものだから、あたりまえだが今読むと少し古く感じる。漫才、漫画、この当時は先鋭な感覚を持って迎えられていたのか。いまでは陳腐なものも多くなってしまったよう。。。

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    2019年02月09日
  • てつがくを着て、まちを歩こう ――ファッション考現学

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    ファッションとは、自己の表現であるとともに、他人へのホスピタリティの表出であるとの考え方に激しく同意した。

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    2019年01月08日
  • じぶん・この不思議な存在

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    この本を理解できるほど頭が良くなかった。
    背景となる考え方・知識のレベルが違うので言葉を辿ることができずふるい落とされてしまう。
    読者の立場としてはもう少し歩み寄って来てくれたほうがありがたい。
    話のまとまりが見えず、話すために話しているようだった。

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    2018年12月25日
  • 都市と野生の思考(インターナショナル新書)

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    二人の対談は話が深く理解が難しい。京都に対する理解もないので、なかなかなるほど、とはならなかった。求められる学者についても、専門的な狭い視野しかないものではダメで、話を聞ける広い視野を持った学者が必要だと言った矢先にバカな学者、ただ知ることを楽しむためだけに研究に励む学者は大事だという。なかなか理解ができなかった。日をまたいで読んだので、理解が浅いのかも。ゴリラの性質は興味ぶかい。また機会を設けてチャレンジしたい一冊。

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    2018年12月04日
  • 死なないでいる理由

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    期待して開いただけに、最後まで読んでも「死なないでいる理由」の大した理由を得られなかったのが残念。新聞の掲載分を継ぎ接ぎしてある文章が多く、タイトルの壮大なテーマに対し、その回答である内容は小題が矢継ぎ早に変わり、とりとめなくようやく核心に迫ったかと思うと今度はまた別の話題へと移っていってしまう。もう少しテーマを絞り、深化させて欲しかった。

    孤独について、h.アレントさんのprivacyとは「他人によって見られ聴かれることから生じるリアリティを奪われる事」という言葉を引用しているのがおもしろい。その後、社会を織物に喩え、織物の組成の一要素であった筈の個々が途絶し浮遊した時孤立してどうしようも

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    2018年07月03日
  • 京都の平熱 哲学者の都市案内

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    京都に生まれ京大で哲学を学んだ著者が親しんだ京都の日常について語ったエッセイです。京都駅から東山を北上する206系統の市バスのコースに沿って案内しています。

    京都の街と人について温かいまなざしが注がれています。本書を京都案内として京都の街を歩いてみる、というのは少し難しいように思いますが、観光客としての視点から、あるいは学生の視点からかいま見た京都とは違う、京都という濃密な空間の雰囲気を、ほんのすこし味わうことができたような気になりました。

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    2018年03月25日
  • 〈弱さ〉のちから ホスピタブルな光景

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    様々なケアの現場の方への取材と、その後の考察が紹介されています。

    人と人とが接する場面について、一冊の本の中でこれほど多角的に考察されたものとの出会いは私自身初めてで、興味深く読みました。

    模擬患者と医師との面談についての部分については、対人援助職に就く身として、ひやりとするような、はっとするようなものがありました。

    相互性を常に意識して携わっていくことの重要性を、この本から学びました。
    読む度に気にかかる場所が変化していく、私にとってそんな一冊になりそうです。

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    2018年01月04日
  • だれのための仕事 労働vs余暇を超えて

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    近代において成立した労働と余暇の二項対立を乗り越え、他者とのつながりのなかで生きる自己のあり方に注目しながら、「働くこと」の意義について考察している本です。

    フランクリンに代表される近代人は、勤勉・勤労に何よりも大きな価値を認めました。一方、1960年代以降に青年たちを中心に広がったカウンター・カルチャーのムーヴメントでは、「モーレツからビューティフルへ」ということばに象徴されるように、「労働」よりも「余暇」に大きな価値を見ようとしました。しかし著者は、こうした「労働」と「余暇」の二項対立そのものが問題だと考えます。

    勤勉・勤労に価値を置く近代においては、つねに前方を見つづける「前のめり」

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    2017年11月30日
  • わかりやすいはわかりにくい? ――臨床哲学講座

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    旅のお供の一冊。
    さくさく読める本でした。
    「ネガティブ・ケイパビリティ」につながる内容だったので、今の私にぴったりでした。

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    2017年09月16日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    もうこういった言説にほとんど共感を感じなくなってしまったなー。「現状は危機的だ」「政府はこんなにあくどい」みたいなのって、「ほんとにそうなの?それを示す証拠は?」とまず思ってしまう。

    まあ内田センセイの七色のロジックを楽しめるという点では面白い。

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    2017年09月08日
  • 大人のいない国

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    大人のいない国

    内田樹22冊目(鷲田清一との共著)
    ・教養についての考察が面白かった。なぜ自分はこのことを知らずにきたのか、知ることを拒んできたのかという、自分の無知の構造に目を向けられた瞬間に教養が起動するということや、教養とは自分のわかっていないことについてわかるということということがうなずけた。自分の経験から照らしてみても、さらに、この人ならこのことについて知っているかもしれないという風なセンサーが働いて、お願いできれば、たいていのことは何とかなるとも思う。
    ・人がそのかけがえのなさに気づかず、ないがしろにしているものに対して注意を促して、その隠された価値を再認識させる言葉の働きを「祝

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    2017年09月09日
  • 「自由」のすきま

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    同時期に読んだ本とけっこう内容がかぶる。
    基本的には面白い論考が並んでいる印象。キャッチ―な表現たちも健在。

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    2017年08月29日
  • しんがりの思想 反リーダーシップ論

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    各論には反対、というかとうていついていけないようなところがあるけれど、現在の市民はあらゆることに「おまかせ」になっているという批判については同意。
    最近の著者は、だから草の根でも何かやろうよ、という立場で、実際にそれを実践していたりするのね。

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    2017年08月15日
  • 哲学の使い方

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    うーん、まあ、「エンゲージド・ブッディズム」みたいなもんかなあと思いながら読んだ。
    世代を超えた人たちが、ある問題について真剣に話し合うことは素晴らしいことだと思うけれど、一方で、過去の議論の積み重ねを知らずに、単に自分(たち)の中だけでの思いつきを思考することと勘違いする危険性も感じる。
    いや基本的にはいいことだと思うんだよ。

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    2017年08月15日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    ネタバレ

    これからを生きていく人へ贈るメッセージ。

    日本の現状に危機感を抱いた内田樹が,中高生へとメッセージを送るために様々な人へ文章を書いてくれるよう依頼をした。統一感はあるような,ないような。しかし,皆,日本の現状に(というか,現政権に)危機感を覚えている人たちである。出版されたのは2016年7月なので,書かれたのはその少し前とすると,その後,イギリスEU離脱が国民投票で決まり,トランプ大統領が誕生し,また日本は重要法案を急いで通そうとしている。危機は加速しているのでは。

    戦後の,戦後すぐの平和主義がそろそろ機能しなくなっている,そう感じる。軍隊を持たない,平和を守る国でありたい,でも,他国に攻

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    2017年05月28日
  • 悲鳴をあげる身体

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    現代において、身体を自分のものとして、コントロールしようとする行き過ぎたダイエットや整形といった問題の構造を分析したり、身体に対しての考え方、命に対しての考え方の変化がなぜ起きてきたのかといったことに関して筆者なりの分析で記されている。全てが納得いくものではなかったが、これを元に、自分で考えてみるのもよいと思う。

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    2017年05月24日
  • 素手のふるまい アートがさぐる<未知の社会性>

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    私にとっては、少々難解であった。
    社会性。人間性とアート。技術としてのアート。
    社会にとってのアート。
    ここに書かれている、所謂アーティスト達の考え方
    生きざまについては、非常にあこがれる部分が多くあります。
    昔はこういう人間になりたかったなあという思いがあります。
    いまになって、現実として社会からはぐれること。斜めに
    なることはなかなか困難であります。

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    2017年02月28日
  • 語りきれないこと 危機と傷みの哲学

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    「臨床哲学」を提唱する著者が、震災以後の問題について論じた本です。

    ところどころに著者らしい繊細な精神のきらめきが見られますが、意外にも紋切り型の意見が多く目につくように感じました。とりわけコミュニティの崩壊について論じている個所は、少なくとも表面的には、保守派の懐旧と重なってしまいます。

    確かに、「語りきれないこと」というタイトルが表わしている問題は、どこまでも重く受けとられるべきでしょう。著者自身、震災からの復興のプランを声高に語るメディアや評論家を批判しながら、みずからの言葉が「語ることができない者に代わって語る」という身振りを反復していることを自覚していないはずはないと思います。そ

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    2017年11月29日
  • わかりやすいはわかりにくい? ――臨床哲学講座

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    NHKラジオ『こころをよむ』の講義テキストを加筆訂正した本です。「意味について」「ふるまいについて」「人格について」など、13のテーマをめぐって議論がなされています。

    「臨床哲学講座」というサブタイトルが示すように、われわれの生活に密着したところから著者らしいしなやかな知性が静かに歩みを進めていきます。哲学的エッセイですが、池田晶子のような力みは感じられません。そこに、少しもの足りなさを覚えてしまうこともあります。

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    2017年11月29日