鷲田清一のレビュー一覧

  • 死なないでいる理由

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    鷲田清一のエッセイは感情的に好きなので時々読む。そして泣く。彼の言っていることが一般に確からしく感じるということではなく、何か出口が見えてくるものでもない。でも「思いの宛先」の無い私は「さみしいね」「そうだね」という宛はないけど、何となく通じる他者とやりとりをしているような気になる。まあとにかく腹が立たない綺麗な文章を求めると鉄板定番って感じ。

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    2019年03月21日
  • 京都の平熱 哲学者の都市案内

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    よく知っている京都の街並みを思い浮かべながら、京都という街の構造についての話を聞いている感じで面白かった。鷲田清一氏の文章は、大学受験の頃よく読まされて苦手意識があったが、今回は思ったより内容がすっと頭に入ってきた。

    奇人の話、歌舞伎における「しるし」の話、服装のリミットの話では、なんとなく実感はしていたものの言及されることで改めて気づいた点も多く、とても興味深かった。それから、おしゃれな猥雑さが京都には似合う、というのには激しく同意。

    私は2013年から京都に住んでいるけれど、ここ2〜3年で京都の街は「観光客が想像する京都」に近づこうとしている気がする。最後の方に書いてあった「京都らしさ」の追求が、こうした違和感のある街づくりに誘っているのかな。

    内容とは関係ないが、自分の好きな店が本で紹介されていたので少し嬉しかった。

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    2019年02月08日
  • 都市と野生の思考(インターナショナル新書)

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    模試の文章で使われていたのが面白くて原典を見つけたので読んでみた。

    鷲田さんも山極さんも現代日本でもトップクラスの知の巨人だが、お互い違うジャンルなことを生かして色々な視点から現代社会を見ていく。対談形式で文章も非常に読みやすかった。

    ・教育(特に大学教育)が向かうべき方向性について
    ・人間そして都市の成熟について(京都について)
    ・人類学的な家族形成について
    ・アートについて(アートは唯一目的を持たない人間の行動だ!)
    ・食と性の比較(動物は食を隠し性交は公に見せるが、人はなぜ食を人に見せ性交を隠すように進化したのか)
    ・教養とは何か(人が考えるということの意味と効用、これからの未来について)

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    2019年02月07日
  • 「自由」のすきま

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    綻びだらけの生き方のなかにしか、思いやりというものは生まれないと思うから。思いやりがなくなったとき、人の世は崩れると思うから。

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    2019年01月06日
  • 都市と野生の思考(インターナショナル新書)

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    様々な知識と広い見識を持つ2人の多岐にわたるテーマの対談はどの話題を取っても好奇心が擽られ読みながらワクワクする。

    ミーティングでは相手を役職名ではなく必ず「さん」付けで呼ぶ。呼び方一つでその場の空気が明らかに変わる。

    リーダーとは自分がいなくても周りがうまく動くようにセッティングする人の事。getting things done by others.
    リーダーは周りの人の適性や能力を的確に判断し、チームワークを先導して目的に向かってみんなをまとめる。リーダー自身は目立たなくていい。
    本当は強いんだけど、それを抑えている事が出来る。これが愛嬌。ゴリラのリーダー。

    ロビン・ダンバー「人間の会話のほとんどはゴシップでできている」

    明治9年までは妻は実家の姓を名乗らなければならなかった。夫の姓を名乗るようになったのは明治31年(1898)とは案外日本の家族の歴史の概念は近年大きく変わったんだな。それまでは養子をよくとるし、そこに外から妻を迎えるなどしたら、〇〇家という完全に血縁はなくなる事があった。

    そもそも人間の子供は共同で保育する様に生まれついている。これが他の霊長類との決定的な違い。人間の赤ちゃんのみ泣く。ゴリラ、チンパンジー、猿も赤ちゃんは泣かない。なぜ泣くか?母親が赤ん坊を離すから。他の霊長類は生まれてから1年間は赤ん坊を胸に抱いて離さない。しかし人間の赤ん坊は重いので母親が抱え続ける事ができない。赤ん坊はひ弱なので自分の不具合を訴えるために泣く。ひ弱なのに抱き続けられないのは脳が急速に発達するために体脂肪率がゴリラの5倍あるから。脳を成長させるには脂肪が必要。ゴリラの4倍近く人間の脳は大きくなる。

    絵画などは学問と同じですでに基礎技術が確立されていて、その技術を使えば感じたものを巧みに表現できる。しかしそれだけだといずれ壁にぶつかる。だから近代の画家は例えば右利きの人が左手で描いたり、ピカソなんかもわざと稚拙に描いた。器用さをあえて封印することで逆にセンサーをフルに機動させようとしたのではないか。

    一般市民にとっていい専門家とは何か?→一緒に考えてくれる人。専門家が寄り添っていく事。

    人間が生きる為に1番重要なのは関係性。関係性を知る手がかりは、相手が何を考えているのか、自分に対して何を望んでいるか知る事。それこそがセンサー。直感力。その上で仲間の意向について自分がどう考えるか。察知しながら行動を規制し、それを前提として自分の行動も規制する。AIにはできない事。

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    2018年11月30日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    このレベルの本が一番わかりやすい。厭世的な世の中で、誰も意思決定をしない状態が続いている。日本を正常な形に戻すべきだね。その方法論は今国会で審議されている改憲論ではないことだけはわかってる。頑張れるかな、戦争も安保も知らない世代が。問われてるね。この世代の役割が。

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    2018年07月25日
  • 京都の平熱 哲学者の都市案内

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    京都生まれの哲学者による京都案内。京都をぐるりと回る206系統のバスに沿って、その場所場所について生活目線で語られています。京都育ちの大学の先生と一緒にバスに乗り、いろんな蘊蓄を「へぇ」と気軽に聞きながら楽しむ。そういう気楽に読んで楽しめる内容になっています。
    それに加えて、観光としての京都とは違った、そこに住んで感じる地元としての京都を、そこで育った哲学者ならではの感じ方で知ることができます。外からと内からでは、全く違うということは一般的にもありうることですが、それがどう違うのかということを体で感じることができるのが本書の魅力なのかと思います。
    まず、一般の京都の観光をし、京都の歴史について学んだのち、本書でそれとはまた違った「平熱」を知ることで、京都に深く入って行くことができたような気にもなれます。私が「気にもなれます」と書かされる理由についても、読めばわかっていただけると思います。

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    2018年05月30日
  • 悲鳴をあげる身体

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    最終的には、『現代は身体に遊びの部分かま少ない』ということで、力みすぎ(拒食・過食等の摂食障害やストレス等)と、ゆるみすぎ(うつ病等)の、極端な身体状態が問題で、もっとバランスが取れないとまずいですよ~、ということが言いたかったんだと思います。
    まあそれにしてもダラダラ文章が進んで、イマイチ分かりづらかったです。
    僕の評価はAにします。

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    2018年05月24日
  • 都市と野生の思考(インターナショナル新書)

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    二人ともめちゃくちゃすごい人なのに、
    仲良しのおっちゃん二人が話しているような温かさ。
    内容もバラエティに富んで、
    考えさせられる場面がたくさんあるのに、
    居酒屋で先輩の話を隣で聞いてるような気楽さ。

    面白かったー。

    特に、最後のほうで、
    学生は大学を離れて社会人になった時、
    自分が学生時代にどういう期待を受けて育ったのかを
    自覚してほしいと書かれていたのが心に残った。
    いい言葉だな。
    まさに教育者のお言葉だわ。

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    2018年03月30日
  • てつがくを着て、まちを歩こう ――ファッション考現学

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    2000年前半に書かれている本なので
    今現在と比較するとあーそうそうあったわ、そうゆうことも。とか
    懐かしいような
    それでいて、ごもっともと思うこともしばしば。
    自分に一番遠い自分とか。
    鏡越しで見ないと自分を見れない自分がいて
    でも自分以外の人からは自分がよく見えるって。
    当り前なんだけどごもっとも。
    化粧もファッションもなんだかんだでそうゆうことよね、って。
    誰かに承認されたいし自分はこうです!っていう理想とか。

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    2018年08月30日
  • 死なないでいる理由

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    タイトルがすごいし、結構好きな哲学者なので買ってみた。
    どうして、生きている理由ではなく、死なないでいる理由なんだろう?

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    2017年08月11日
  • だれのための仕事 労働vs余暇を超えて

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    本書では、自らが行う「仕事」について、労働と余暇といった二項対立の議論では収まらず、双方が相互に「入りくんでいる」様相であり、現実的に対処できないことを示している。この説明にあたっては、例えば、「目的の有無、価値の生産と消費、効率と非効率、規律と自由、まじめとあそび、つらさとたのしさ」(p.11)や自由と自律というように対比させ、これらを軸としている言説は、巷のエッセイやSNS上でもよく目にする。著者はそうした背景には、多くの人々が《労働社会》に生きていることが生活の基盤となっているためと指摘する。その背景には仕事を含めた日常生活における様々な過程で求められる「前のめり」の意識と姿勢があるという。自分自身も、労働時間以外の余暇という時間に対して、更なる意義・意味・目的・充実感を求めることは多々ある。そのプロセスが楽しい瞬間もあるが、著者に言わせれば〈インダストリー〉というエートスにとらわれている、という状況にある。さらに社会という段階でみれば、常に前のめりで変化し続けることが標準となり、他方、安定を求めればそれは後退と揶揄される時代が今日といえそうだ。とはいえ、私のクラスターには、こうした時代に見事に適応した人々がわりと多い。

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    2017年05月29日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    2016年夏は執筆活動に大忙しだったらしいウチダ先生が解き放つ憂国のオムニバス。『街場の憂国会議』『日本の反知性主義』に続く第三弾。中でも、岡田憲治の「空気」に関する一筆は必読。あるのにない、とはこういうことか。

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    2017年03月21日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    中高生ではないが読んだ。
    白井聡さんが書かれていたが、もう今の私たち大人はダメなので、若い人たちに頑張って欲しい。
    この本をどれだけの中高生が読んでくれるのか、自分の中高時代を考えると疑問だが、私たちが読んで、若い人にできるだけ伝えるということはできるかも。

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    2017年02月28日
  • しんがりの思想 反リーダーシップ論

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    昭和から平成へと時代が移り変わり、様々な生活スタイルが変わって行く。将来子供達の時代はどうなって行くのか?

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    2017年02月12日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    今後の参考に。

    「職に就くことは自己実現のためでも夢をかなえるためのものでもない。」

    という一言には、なるほど。とちょっとカタルシスでした。

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    2017年01月14日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    副題「中高生に伝えておきたいたいせつなこと」とあるように、中高生へのメッセージとして書かれた本。
    難しい内容でも平易な文章で書かれていて、著者が読者に伝えようという真摯な姿勢を感じた。
    高校生ごろに出会うととてもいい本のように思う。
    未来の日本を憂いて、どうにかしたいと真面目に思っている大人もいるんだよ。

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    2016年12月28日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    高校生が文章を読むに当たり、基本的な考え方をあたえてくれる、良本。
    平川克美「人口減少社会について根源的に考えてみる」ではグラフの見方とともに、当たり前のようにように言われている言説について批判的な見方を示唆する。
    仲野徹「科学者の考え方-生命科学からの私見」ではパラダイムシフト、疑う、シンプルに考えるなど科学を発展させている考えが書かれている。
    白井聡「消費社会とは何か-『お買い物』の論理を超えて」ではボードリヤールの考えを援用し、いわゆる「消費」的な感覚が政治や教育にも適用させようとする現在の社会のゆがみと弊害を述べる。
    山崎雅弘「『国を愛する』ってなんだろう」では、政治的無関心が生む危険と愛国の意味の多義性について分かりやすく述べている。

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    2016年12月15日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    【読書メモ】

    p185
    ・何のために勉強するのですか?
    自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を言う。ただそのためだけに勉強するのです。山本義隆

    p190
    ・同じことを、違った側面から考える視点を与えてもらうためにディスカッションをするのです。当たり前のことですが、自分は自分の考えに染まりきっています。そこへ、違う刺激を与えてもらって、自分の考えを方向転換させたり、バージョンアップさせたりすることが重要なのです。

    p103
    ・科学がグローバルである最大の理由は、真実をあつかうからということです。

    …科学的な視点は予測できない社会を生きるうえでの全員にとってマストなものの見方なのかもしれない。情緒的に考えたとしても、それを相手に理解できる自分の言葉で伝えて、ブラッシュアップしていかなきゃいけない。誰かが先に答えを用意してくれている時代でないのであれば、自分の考え、意思を言語化して、まず自分を納得させることができなければ、何も頼りにするものがなくなってしまうから。自分を納得させるために、何故自分がそう考え、思ったのか、その前に何が頭に浮かんだのかを自分自身に伝えなければならない。
    科学的なものの見方とは、パラダイムが人間の思考をいかに制限・固定・維持しているかを理解したうえで①まず疑う、②データに基づいて具体的に説明する③合理的に考える④いっしょに考えてグロ−バルに展開してくという流れ。

    ・消費社会について

    …資本主義がすすみ、消費社会が到来した。最初は「必要だから」何かを求めていたものが、今では「これを持っていると周りから羨望の眼差しを向けられるから」といった“意味”に価値が置かれている。だって、物が溢れる時代に、物をほしがり続けてもらわないと資本主義は回らないのだから。
    しかし、そうした消費社会の高度化が人間精神の在り方に異常を来していると筆者は述べる。「お買い物」の論理を、その論理が当てはまらないもにまで当てはめようとしているからだ。

    選挙の投票や教育はその良い例。
    投票は、投票したい候補者がいないし行っても無駄、という合理的な考えで処理されることがあるが、その危険性はでかい。あなたがほしがるものをお膳立てしてくれるわけではない。あなたが何もしなかった行為そのものが、結局はあなたとあなた以外の人にふりかかることになる。だから、「もっともマシ」だと思う人に投票することが求められる。

    また、教育はお金を払えばすぐに分かりやすい商品価値が返されるものではない。つまり、商品として捉えるならば出来損ない。さらに教育が商品とみなされたが、教育は不可能になる。学ぶ主体が「消費者である」と自己認識している限り、最低限の支出で最大限の有用性を得ようとしている限り、教育は死ぬ。お客様→学ぶ主体


    ・「愛国心」について

    …そもそも「国」をどう捉えるかは3種類ある
    ①外国的に「独立国」として承認されている国家の領土
    ②その領土内に住む国民を特定の政府が統治する国家体制
    ③政府に統治される側の、一人一人の国民の命と生活環境

    時代的背景によって、上記の優先順位は前後する。
    第二次世界大戦で、ドイツ軍に攻め入れられたフランスは、わずか6週間で降伏を宣言した。③市民の命を最優先にし、①領土の半分を失い、③ドイツ寄りの中立の立場をとることになった。

    一方、太平洋戦争中の日本は、軍人や市民の命が犠牲になったとして、早く負けを認めて戦争をお渡せようという空気は起きなかった。なぜなら②天皇とその天皇が統治する国家体制が何よりの崇高なものであったわけで、③はそれを支えるために存在していると解釈されていたから。

    日本で「愛国心」というと、この戦時中のイメージが先行されてしまうきらいがある。なぜなら、平和な時代の③を優先する愛国心(いわゆる新バージョンの愛国心)の概念ができあがっていないから。

    反戦運動をする人に対して「裏切り者」や「売国奴」などど軽々しく言うひとにとっての愛国心は、②と③を最優先にさせたもので、指導者が決めた物事について疑いをかけずに従順に突き進んでくれる都合の良い存在。いわゆる「馬鹿」なのだけれど、そんな存在を刺激するには近隣諸国に敵をつくって、危機を煽れば良い。そういったかれらにとっての愛国心は、本当は国を破滅に導くとも知らずに、彼らはついてくるから。

    「もしかしたら、自分の国の指導者は間違った判断をするかもしれない」と考える市民、そして命を最優先に考える市民にとっての「愛国心」は上の人たちとは違うことを理解しておく必要がある。

    自国の黒歴史、つまり、戦争のために命を落とした人たちの死が無駄であったか、そうでなかったかは軽々しく結論付けられないが、それを決めるのは現在と将来の私達の行動にかかっている。

    P281
    ブレーズ・パスカル「われわれは絶望が見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶望のほうへ走っている」(パンセ)

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    2016年11月23日
  • 哲学の使い方

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    著者が「臨床哲学」を提唱していることは以前から聞き及んでいたのですが、本書を読んで、ようやくその概要を知ることができたような気がします。

    著者が主催する「哲学カフェ」の具体的なエピソードも紹介されており、〈現場〉から紡ぎ出される知恵に耳を傾けようとする繊細な知性の息吹を、ほんの少しですが、垣間見たように思いました。

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    2017年11月29日