鷲田清一のレビュー一覧

  • 転換期を生きるきみたちへ

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    目もくらむようなスーパー秀才エリートだった人たちが、声をそろえてもはや反対することができない空気があったと言っている。ドイツ語で日記を書けるような、言葉を自由自在にあやつることができるエリートたちが、一億人の運命を左右するような決めごとを、最後には言葉でなく空気を読んで身を委ねたと語っている。

    福島の原発事故直後の危機を回避するための政府首脳の重大会議、40年以上も続いた政府の憲法解釈を内閣の形式的合議だけで大きく変えてしまった経緯、いずれも議事録が残っていない。それが僕たちの国の致命的な欠陥だ。これはもう病気と呼んでもさしつかえないと思う。かつて有名な政治学者はこれを壮大なる無責任体制と呼

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    2016年10月11日
  • 哲学の使い方

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    この本さえ読めば素人でも哲学の使い方、仕方がわかると
    いうようなハウツー本、マニュアル本ではないので要注意。

    この現代という時において哲学とはどのような役割を果たす
    べきか、どのようにあるべきか、そもそも哲学は意味ある
    ものとして存在しうるのかどうか。哲学者が哲学者として
    哲学と向き合う上で発せざるを得ない「悲痛な叫び」として
    私はこの本を受け止めたのだが、さほど間違ってはいないと
    思っている。

    日本の教育には宗教教育(ある一つの宗教の教義を教え込む
    のではなく、人間として宗教というものとどう向き合うか
    を教える教育)が欠けているのが大問題であるのと同様、
    哲学教育も欠けているのは大問題で

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    2016年06月08日
  • 京都の平熱 哲学者の都市案内

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    京都に住んで6年、あと2ヶ月弱で離れる。やはり京都は自分の地元だとは思えず、わからないことが多い。この本を読めば、それも当然かなと思う。

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    2016年02月08日
  • しんがりの思想 反リーダーシップ論

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    縁の下の力持ちの重要性について論じた本。誰もがその役割を担うことを心がけるべきだというのが本書の主張。
    この主張には納得できる部分もあるが、フォロワーシップとリーダーシップはバランスをとることが重要だと個人的には思う。どっちが消えてもダメ。

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    2015年07月17日
  • 大人のいない国

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    ともに柔軟な哲学的思考の実践者として有名な、内田樹と鷲田清一の対談と、二人の論考を収録している本です。

    内田も鷲田も、身体感覚と他者感覚を重視する点では同じような立場に立っていると言えるでしょうが、内田に比べると鷲田の議論には制度論的な視角が目立たないような気がします。その意味では、「大人のいない国」という表題は、どちらかと言えば内田がこれまであつかってきたテーマに寄っている印象を受けます。

    ただそのことは、内田の立場の優れているところであると同時に、他者感覚の重視が共同体論へとスムーズにつながってしまう彼の議論の危うさを含んでいるのではないかという気がしないでもありません。

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    2015年04月22日
  • 臨床とことば

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    河合先生の対談本は何冊か読んでますけど、だいたい対談の相手がカウンセリングを受けてるみたいになってるんですよね(笑)。
    ついつい話が弾んでいく様子がよくわかります。

    で、今回のお相手の鷲田先生の提唱されている臨床哲学の考え方は日々臨床に携わる上での参考になります。

    エビデンスの重要性が盛んに言われますが、実際のところは諸問題を未然に防ぐための方便の要素の方が強いのが実情ではないですかね。
    現代人は因果律で考えることが大好きなので、原因と結果で説明された方が納得しやすい。
    しかし現実は偶然の積み重ねや、様々なめぐり合わせで事態が好転することが多いのは臨床家なら経験していることでしょう。

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    2015年07月11日
  • 老いの空白

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    「社会」に分類されていますが・・・・「哲学」です。
    鷲田清一氏の哲学は好きです。
    ただ、この書物についてはまだまだ迷走されているようで、正直、あまりよくわからなかった。

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    2015年03月01日
  • 哲学の使い方

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    読むのに凄く時間がかかりました。内容を飲み込めた自信は全くないですが、エッセンスはなんとなくわかったかなぁと…。

    忙しい暮らしをしていると早急に結論を求めがちというか、結論がなきゃダメという雰囲気に流されてしまいがちですが、問いを考えて考え抜くことで問題を解体するということも大切だと再認識させられました。本当の意味で「聴く」というのとも、やっぱり大事。
    哲学は学者や大学のものではなくて、みんなのものです。

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    2015年01月07日
  • 哲学の使い方

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    臨床哲学と名付けられた哲学を知る必要はある。
    哲学とはモノローグではなく、ダイアローグなんですね。
    哲学をわかりやすく解説してくれる鷲田清一。それほどに哲学を愛されている雰囲気が伝わってきます。

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    2014年10月19日
  • 京都の平熱 哲学者の都市案内

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    私にとっては京都は“ハレ”の場所だけど、この本に描かれているのは旅行では知りえない京都の裏側。あこがれの芸能人の暴露本みたいに読みました。でも、素を知ってますます好きになっちゃった。ここまで奥深い土地って京都しか思い当たりません。いつか住んでみたい、との思いを強くしました。

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    2014年08月08日
  • わかりやすいはわかりにくい? ――臨床哲学講座

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     「自由」、「家族」、「市民性」、「コミュニケーション」といった13のテーマについての考察。
     特に「時間」についての話で、時を流れていくものとして捉えたところで、どうしてその流れを自覚できるのか、自分もその流れの中にいるのに、というあたりが面白いと思った。時を区切ることで時が駆られる、というのが面白い。うちの親は空いている時間は常に旅行に芝居に映画にと忙しく過ごしているが、この忙しさを作るのは時を駆るためではないかと思う。仕事をしないと自分から区切らないといけなくなってしまう、という例を表しているようだ。また、「責任」についての部分で、「何にでもなれるということは、あらかじめ何も決まっていな

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    2014年06月29日
  • 「聴く」ことの力

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    聴き方テクニックのような本と勝手に思い込んで読んだところ、聴くということの大事さを臨床哲学の観点から紐解くという、かなり難解な内容で、読み進めるのに難儀しました。あとがきの内容が一番分かりやすかったような気がします。

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    2014年06月19日
  • 「自由」のすきま

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    哲学書らしく若干難解な部分もありますが、全体的には
    エッセーとしては読みやすくわかりやすいと思います。
    著者の本は数冊よみましたが、臨床哲学とはなんぞやと
    いうことはこの本が一番表しているかと思います。

    個人的に好みだということもありますが、一つ一つの
    エッセーを読むことで深い想いに触れる感じがして、
    また崇高な感じがしてよかったと思います。

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    2014年04月28日
  • 悲鳴をあげる身体

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    健康であることを強迫されているという感覚にははっとした。特に日本人は真面目で、集団心理が働きやすいためか。
    患者さんを看ていくうえで、自分の健康主義を押し付けないようにしたいと思った。
    人間の身体はその個人自身のものでありながら、社会的存在であるがゆえに社会のものでもある。

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    2014年05月06日
  • 京都の平熱 哲学者の都市案内

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    京都らしさ、とは何か。
    「◯◯のある街」などとひと言で言い表せないところだろう。

    『都市としての襞やチャネルが多く、奥行きと重層性をもっていて、どこからめくっても都市としてのそれなりの顔が見えてくる。そのことで京都は、都市としての圧倒的な存在感をもってきた…』

    「隙間」や表のきわで別の世界へとつづく「孔」がそこかしこにあり、聖と俗が隣り合わせる街。きわものを受け入れる街。

    『必死で勉強して、きつい恋愛して、はんなりと遊んで、ときおり「まんまちゃんあん」。人生行路みたい』

    世界への口がぽっかりと空いている、そこにたまらない魅力があるのかも知れない。

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    2014年03月20日
  • 大人のいない国

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    たしかに世の中”子ども”だらけですね。
    僕も含めてですけど。
    それでも機能する社会システムというのは確かに素晴らしい、
    しかし、単一の価値観で階層化された社会というのはつまらんですよね。

    と、どうせなら上の階層から言った方が説得力ありますかね。
    著者のお二人は上の階層の住人ですからね。

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    2013年12月06日
  • まなざしの記憶――だれかの傍らで

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    鷲田先生の文章は、一つ一つの言葉がとても大切にされている。
    だから、じっくり噛みしめていると、心の奥深いところで共感されてくような気がする。

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    2013年11月16日
  • 大人のいない国

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    内田:格差論や、ロストジェネレーション論の類を読むと、僕はちょっと悲しくなってくるんですよ。書いているのは三十代や四十代の人なんだけど、それだけ生きているということは、立派にこのシステムのインサイダーですよね。この世の中のシステムがうまく機能していないことについては、彼らにもすでに当事者責任があると思うんです。だから、そんなに簡単に「こんな日本に誰がした」みたいな言い方はできないと思うんですよ。でも、彼らの議論はいつも「自分は純然たる被害者である」という不可疑の前提から出発している。自分たちの社会システムが不調であることに対しては、自分にはまったく責任がないと思っている。「責任者は誰だ?」とい

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    2013年10月30日
  • 大人のいない国

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    本書は単行本でも読んだのだけど、やっぱりむずかしい。
    このお二人なら、すごくおもしろい対談ができると思うのですが…。
    他の著作を読んでいるので、あ、あのことを言っているんだなという風に思うことはあるのですが、なかなか、ピンとくる内容ではない。
    文庫版あとがきはおもしろかった。お二人のお互いに対する愛を感じた。

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    2013年10月04日
  • 大人のいない国

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    言葉の定義付けを明確化しないうちに持論を展開していく違和感があった。
    様々な比喩・例示をするが、それは持論を強化するための道具に過ぎず、こうと決めてあった型にぎゅうぎゅう押し込めていったもののように感じた。
    「非科学的な」という批判を軽蔑しながら例示に科学を持ち出し論拠の一つとする手法はズルい。
    抽象化の美学を信じて疑わない人たち。

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    2013年10月03日