米澤穂信のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ2025/07/04
p.239
車椅子のタイヤの固定が甘かったのだろうか。ぼくが座ろうとした瞬間、車椅子はわずかに後ろに下がった。
椅子に座るつもりで腰を下ろし、寸前で椅子を引かれれば、誰でもろくに受身も取れずに倒れ込む。声にならない悲鳴が、喉の奥でくぐもる。心拍数が跳ねあがる。
瞬間的な恐怖という尺度で言えば、車にはねられた時よりも怖かったかもしれない。けれど幸い、車椅子が動いたのはほんの少しだった。看護師さんがハンドルを握り、車椅子は止まって、ぼくは無事に座面に腰を下ろす。
2025/07/21
p.231
見つめていてもサンデーが復活したりはしないという現実を受け入れたのか、 -
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因果は巡り始める。
歴史フィクションの中でも群を抜いて面白い、と思う(なんせ比較対象が少ない...)
いや、すんごい面白い。はず。
最初、日本歴史ものを読み慣れてないせいもあり、人の名前が入ってこない、漢字読めない、進まないと三重苦だったが、ご安心を、不思議と物語に吸い込まれるタイミングがやってくる。不思議ー
戦国推理小説よろしく、章ごとにミステリーが展開され天才軍師の助言とも戯言とも取れない一言で大きく解決に繋がる。が、それは全て、一つの結果に繋がっていく。
村重のリーダーシップ、嫌いじゃなかったよ。
最後には全ての繋がりをしっかり回収し、代名詞の「戦わずして勝つ」を綺麗にまとめ上 -
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ネタバレ春から始まり、別れを経験し互いを再確認した彼らにしか辿り着けない結末。
最後の一文まで、小鳩と小佐内らしさ全開の世界観に魅了されました。
小市民を志すきっかけになった中学時代に関しては、以前の巻から少し触れられてはいたが、彼らにはまだ解き明かしきっていない、日坂くんの事情があったとは。
てっきり暴いてはいけないことの事情まで理解しているのかと思っていたが、中学時代に完全に解けきれなかったことが現在と交差していくのもとても面白かった。
この2人にしかない空気感が大好きなので、季節が周り物語が閉じられてしまったことが非常に悲しい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ天才ミステリー作家米澤穂信の人気小説シリーズ。
小市民を目指す、から小市民になりすますへ
小鳩くんと小山内さんは小市民になることなどできず、自分自身を受け入れていく…だとしても冬期以降も二人の人生は続く、二人は今度は小市民になりすまして生きていくだろう。
冬期ボンボンショコラ事件→ヒッチコックの「汚名」とフィンチャーの「ゾディアック」。
事件を通して小鳩くんの「知りたい好奇心」の倫理と感情の核心へ
「知りたい好奇心」を突き詰めることの暴力と害悪についてのこれ以上ないエンタメ的考察?
米澤穂信は「知る好奇心」を誰よりも追求してきたミステリー作家。この人には天地がひっくり返ってもこのテーマで競い合 -
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最近になってすっかりハマってしまった米澤穂信のノンシリーズ作品の一つが、本作『Iの悲劇』だ。往年の本格もののような雰囲気を匂わせるタイトルだが、このタイトルの”I”は「Iターン」のIである。過疎に悩む地方が、都会に住んでいる人間を呼び寄せる取り組みを行う……という、地方活性化施策の一つだ。
本作は、限界集落となってしまい現在は無人となっている山間地域である蓑石への移住希望を推進する、「南はさま市Iターン支援推進プロジェクト」を舞台に、主人公たちの悲喜こもごもを描く短編集だ。このプロジェクトを推進するのは、通称「甦り課」に所属する主人公・万願寺と、彼の同僚・観山(かんざん)、そして上司の西野で -
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──あんたはこれから、長い休日に入るのね。そうするといい。休みなさい。大丈夫、あんたが、休んでいるうちに心の底から変わってしまわなければ……。
──きっと誰かが、あんたの休日を終わらせるはずだから。
とうとう読み終えてしまった〈古典部〉シリーズ。今作は全6篇の短編集からなる作品でしたが、どの作品も〈古典部〉のメンバーに焦点を当てた、いや、各メンバーのそれぞれを主人公として描いたような短編集だったように思います。
特に奉太郎の代名詞『やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に』の誕生秘話が描かれていた物語【長い休日】はかなり好きでした。
そして表題