米澤穂信のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ天才ミステリー作家米澤穂信の人気小説シリーズ。
小市民を目指す、から小市民になりすますへ
小鳩くんと小山内さんは小市民になることなどできず、自分自身を受け入れていく…だとしても冬期以降も二人の人生は続く、二人は今度は小市民になりすまして生きていくだろう。
冬期ボンボンショコラ事件→ヒッチコックの「汚名」とフィンチャーの「ゾディアック」。
事件を通して小鳩くんの「知りたい好奇心」の倫理と感情の核心へ
「知りたい好奇心」を突き詰めることの暴力と害悪についてのこれ以上ないエンタメ的考察?
米澤穂信は「知る好奇心」を誰よりも追求してきたミステリー作家。この人には天地がひっくり返ってもこのテーマで競い合 -
Posted by ブクログ
最近になってすっかりハマってしまった米澤穂信のノンシリーズ作品の一つが、本作『Iの悲劇』だ。往年の本格もののような雰囲気を匂わせるタイトルだが、このタイトルの”I”は「Iターン」のIである。過疎に悩む地方が、都会に住んでいる人間を呼び寄せる取り組みを行う……という、地方活性化施策の一つだ。
本作は、限界集落となってしまい現在は無人となっている山間地域である蓑石への移住希望を推進する、「南はさま市Iターン支援推進プロジェクト」を舞台に、主人公たちの悲喜こもごもを描く短編集だ。このプロジェクトを推進するのは、通称「甦り課」に所属する主人公・万願寺と、彼の同僚・観山(かんざん)、そして上司の西野で -
Posted by ブクログ
──あんたはこれから、長い休日に入るのね。そうするといい。休みなさい。大丈夫、あんたが、休んでいるうちに心の底から変わってしまわなければ……。
──きっと誰かが、あんたの休日を終わらせるはずだから。
とうとう読み終えてしまった〈古典部〉シリーズ。今作は全6篇の短編集からなる作品でしたが、どの作品も〈古典部〉のメンバーに焦点を当てた、いや、各メンバーのそれぞれを主人公として描いたような短編集だったように思います。
特に奉太郎の代名詞『やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に』の誕生秘話が描かれていた物語【長い休日】はかなり好きでした。
そして表題 -
Posted by ブクログ
第28回このミステリーがすごい!第1位
なかなかおもしろい!
人がうっすら自覚しているけど考えないようにしている問題に切り込んでミステリーに仕上た唸る作品。
フリーのジャーナリストとして訪れたネパールで、大刀洗万智が報道することの意義を問われる。
改めて、世の中に報道されるニュースについて、自分が知ることの意味はあるのかを考えた。
他人の不幸について、当事者とその近しい人達に不快な思いをさせてまでそれは世間に発表される必要はあるのか。
「娯楽として悲しみを消費するだけ」というフレーズに衝撃を喰らった。
疑問に感じたことは何度もあるのに、結局「へー!」とか「うわ〜」とか言いながらなんとなくそ -
Posted by ブクログ
ネパール王族殺害事件をベースに、ジャーナリズムとは何か。
ミステリーを融合させて読みやすさがありながら、読後の抉られた胸の痛みが収まらない。
情報は娯楽なのだろうか。
受け取る側として『知る』ということはこんなに重いものだったとは。
私は知らずに多くの事件や歴史をサーカスとしてみていたかもしれない。
今、この社会では情報に重みはなく、知ることは簡単過ぎる。
恥じない選択をするしかない。
伝えないことも選択していると思うと恐ろしいものもあるが、『俺達はもう絶対に、タクシーの運転手まで巻き込んではいけない』
そして悲しみをサーカスにしない。
これは記者の方々に忘れないで欲しいところですね。