角田光代のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
女三の宮の登場によって、一番愛されてはいても、よるべない立場なのだと自覚してしまった紫の上の動揺が不憫だった。
親もなく、幼い頃から光源氏にグルーミングされてひたすら光源氏の理想の女性として生きざるを得なかったのに、正妻は別の人になり、自分は結局何者でもないんだ、なんなんだこれは?と足元が崩れるような感覚に陥った紫の上の心情がこれでもかと描かれていて、居た堪れなくなる。
そして女三の宮も不幸な女性だ。玉鬘の強さ、聡明さのあとで対極にいるような、少々発達的な何かをお持ちのような女性として登場する。
幾度も出てくる幼さ、あどけなさの表現。自我がなく、ふわふわしているうちに陥ってしまった事態も不憫。
何度も出てくる厭わしい、という表現は、光源氏から女三の宮に、女三の宮から柏木に向いて、愛されない禍々しい子を残し、誰も幸福になれずやりきれない終わり方をする。
光源氏の老い、翳りの見えた人生の後半戦を紫式部先生はシビアに描いてゆく。 -
Posted by ブクログ
ちょっとここ数年家計簿をつけてみている。
その影響でおそらくこの本をとったのだと自分で思う。
なので不勉強で申し訳ないが角田さんのことは全く存じ上げなかったし、この本が平成17年(2005年)に出版された結構古めな本だということは知らなかったが、面白かった。
印象的なのは「鞄59,000円」
僕は今年クラッチバッグをメルカリで売った。
そのファッション性から社会人になって1年目に買ったものだ。
当時はスラックスにドレスシャツにジャケットのジャケパンスタイルを完成させるために絶対に欲しいものの一つだった。(スーツじゃなくて上下違うもの。もっと言えば当時の僕はグレーのジャケットにネイビーのスラックスにクラッチバッグを合わせることになぜか異様にこだわっていた。)
そんな思い入れがあるクラッチバッグをメルカリで売った。
もともと大人っぽく見られたい欲から前述のようなファッションをしたかったのだが、もう年を取るにつれてそういった欲もどこかに消え失せてしまったし、そうなってくると物は入らないし、手で持たないといけない。もはやクラッチバッグに財布を入れて持ち運んでいると、革の財布を革の鞄にいれて持ち運んでいることに意味があるのかわからなくなる。
クラッチバッグを売って以来鞄を買っていない。
そんな次第でクラッチバッグを処分したからこそ「鞄59,000円」にはめちゃくちゃ共感したし声を出して笑った。
そして読んだ後にまたなにか鞄を買いたくなったから不思議である。
あとがきにあるように僕たちの一部は何にお金を払ったかでできているしあのクラッチバッグも自分の一部になっているからなのかもしれない。
やはりときめく鞄は手に入れたいなと思った。 -
Posted by ブクログ
角田源氏2巻です。「紅葉賀」、「花宴」、「葵」、「賢木」、「花散里」、「須磨」、「明石」の7帖を収録。
藤壺が光君そっくりの子を出産、光君と年配の典侍との逢瀬中に頭中将が突入、有明の君(朧月夜)との出会い、桐壺帝が譲位し朱雀帝即位、新斎院の御禊の儀式で六条御息所と葵の上の「車争い」、葵の上の出産と死、紫の姫君と結婚、桐壺院の死、藤壺出家、尚侍(朧月夜)との密会が発覚、麗景殿女御の妹三の君(花散里)を訪ねる、京を離れ須磨へ、明石へ移り明石の入道の娘と会うようになる、朱雀帝の眼病が悪化し京への帰還を命じられる、入道の娘懐妊、光君帰京。
おもしろいぞ『源氏物語』! ていうかおもしろくなってきた。とくに「明石」がめちゃくちゃおもしろかった。ストーリーとしてうまくできてるし、こんなに笑いの要素もあったのかとちょっと意外な驚きもあり。スルスルと楽しく読めて、やっぱり角田訳が私には合っているようです。
「文庫版あとがき」がまたすごく良い。物語を読んできた者として、「そうそう、そうなの!」とうれしくなります。六条御息所のことなんかもう共感の嵐で涙出た。私も胸を締めつけられた、六条御息所の哀しさ。歌舞伎でも「六条御息所の巻」として上演されるほど、印象深い人物です(この歌舞伎、2025年9月に映画館で見られるそうで、見るか迷い中)。
さぁ、3年ぶりに京へ帰ってきた光君に何が起こるのか。次のお話が楽しみ!
明石の入道がもう、ほんと笑える。あたしこの人好きですわ。頭中将もすっっごくいいヤツで好きです。
-
Posted by ブクログ
玉鬘編、面白い。
玉鬘、美貌によってあらゆる男が寄ってくるが、本人はあまり恋愛体質じゃないらしく常に鬱陶しがっていて気の毒に思える。
言い寄る光る君もすっかり中年なのではっきり言ってキモい。紫式部もおっさんの懸想にちゃんと見えるように描いているので、キモく思えても仕方ない。
玉鬘にすっかり入れ上げた髭黒に嫌々ながら嫁ぎ、嫌々ながら子をなす。
多分玉鬘は、その生まれ育ちから心が落ち着いた生活を送れたことがなく、とにかく心の平穏がほしかっただけなのだろう。
だけど美しいうえに高貴な生まれなので、誰も放って置いてくれない。
他におんなの生き方がなかったからしょうがないのだが、そんなふうに仕方なしに結婚するおんなも描いている。
みんながみんな恋愛して好きな男と結ばれることが最高なわけじゃない。ってことも千年前に式部先生はわかっておられた。
恋愛的に淡白な玉鬘とバランスを取るように、玉鬘編のあとに宰相の君の成就が描かれていて、わかっとるなー式部先生…という気持ちになった。 -
Posted by ブクログ
『八日目の蝉』『対岸の彼女』『紙の月』など、少し屈折した女性心理を書かせたら、めちゃくちゃ深い描写にいつも驚かされる角田光代さん。この小説もかなり重かった…
主人公は裁判員裁判の補充裁判員になった女性。担当する事件は、育児に疲れた母親が幼い赤子を風呂の浴槽に落とし、殺してしまったというもの。イヤイヤ期の娘がいる主人公は、年齢も性別も家庭環境も近い被告人に自分を重ね合わせてしまい、だんだんとネガティブな感情に支配されてしまう…。裁判員もいろいろな立場…中年男性、年配の女性から中年男性、主婦、若い二十代男性など、様々な人がいるから色々な意見がでる。自分がおかしいのか…悩む主人公。
我が家ではもう成人した息子らの育児に、僕もしっかりと協力(この言葉にも問題?)したかと聞かれたら、自信が無い。カミさんが育児ノイローゼや鬱になるほどまで追い込まれたかなあ…たぶんそこまでにはならなかったような気がする。(気が付かなかっただけかな…)
主人公のご主人の挙動を見ても、僕には決して問題があったとは思えない。しかし主人公はモラハラと捉え、病んでしまう…。
『いい旦那してるじゃん』…僕は人からそう言われたことも多いが、カミさんからするとデリカシーない発言だったり、イヤミに聞こえて傷つくとか、ひょっとしたらあったのかもしれない。
女性心理はやはり男には計り知れないもの。それは決してどの女性にも共通に正解では無いのだろう。しかし相手を見極め、言葉を選ばなければいけないとしたら、これは本当難しいよね…
WOWOWのドラマでは主人公は柴崎コウが演じたようだ。ネトフリにもあるから、今度見てみよう。