あらすじ
じいさんが死んだ夏のある日、孫の良嗣(よしつぐ)は、初めて家族のルーツに興味を持った。出入り自由の寄り合い所帯、親戚もいなければ、墓の在り処もわからない。一体うちってなんなんだ? この際、祖父母が出会ったという満州へ行ってみようか──。かくして、ばあさんとひきこもりの叔父さんを連れた珍道中が始まる。満州、そして新宿。熱く胸に迫る、小さな中華料理屋「翡翠飯店」三代記。伊藤整文学賞受賞作。
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今のZ世代は何不自由なく生活出来ている人が多いように感じる。その何気ない生活が、どんな想いで紡がれてきたものか垣間見ることができた。正直、先祖にたいしてなんとなくの敬いはあったが、具体的に敬うことはしていなかった。今の幸せを作ってくれた先祖、そして両親にもっと感謝して過ごしていきたい。
また、逃げることの大切について。
そのときは確かに恥ずかしさを伴う行為かもしれない。しかし、疑問を感じることに対して命がなくなるまで戦い続けるのもどうかと思う。だから、一旦逃げ、そして未来を頑張って生きて、逃げた過去に意味を持たせる。そうすることが重要なのかな。
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「帰りたいよぅ」
祖父が死んだあと、祖母が子供のような声で言った。ここから、中華料理店を営む親子三代の“根っこ”を探す旅が始まる。
祖父母は自分が生まれた時から“おじいちゃん、おばあちゃん”であり、両親は“父さん母さん”で、性の意識すら無い。
でも、間違いなく男女であり、自分と同じ年齢を経て今に至る。
人生は“簡易宿泊所”のようだ。
なぜここにいるのか、いつまでいるのか、ここを出てどこへいくのか……
「だってあんた、もし、なんてないんだよ。後悔したってそれ以外にないんだよ、なにも……」
その言葉は妙に重い。
「翡翠飯店」は世紀を超えて紡いでいく。
根など無くても紡ぎ続けることはできる。
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壮大な家族の物語で、ずっと読んでいたかった。満州に新天地を求めた二人が出会い、敗戦で生きるか死ぬかの思いをして帰国。子も孫も一筋縄では行かない日々が描かれる。
当時の満州では、軍が絡んでくると日本人(一般市民)も中国人も悲惨なことばかりで、戦争は本当に嫌だなと思った。
昭和&平成の様々な出来事が懐かしかった(カンカンランラン見に行った!平成になった時のこと、オウム事件など)。宮本輝と似てるかも。
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477ページの長編を久しぶりに読んだ。読む前は、途中で放置してしまうんじゃないかと思ってけど、物語に引き込まれて、みんなの人生が知りたくて、どんどん読み進めてしまった。
私には物心ついたころにおじいちゃんおばあちゃんは亡くなってたから、貴重な祖父母の人生を聞くことはできひんかった。ヤエたちは現代では普通の老人に見えるけど、壮大な人生を送ってきて、今では考えられへん人生の教訓を持っていた。逃げることはここ最近、よしとされているけど、現代の逃げるとヤエたちの逃げるは違う。命懸けで生きるために逃げ続けてきた。
それぐらいの危うさ、熱意は現代にはない気がする。
もっともっと昔の話が知りたかった。
なんの変哲もない家庭にみえるけど、ここまで深掘りできること、それぞれの気持ちが表せること、すごいの一言です。
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祖父母の代から三世代の壮大なお話だった。
生きるために逃げることも必要だと、私も思うけれども、泰造とヤエはそのことを恥じていた。
それでも、生きるために逃げて逃げて、そして生き延びるために作った翡翠飯店は、家族みんなの居場所であり逃げ込む場所であったと思う。誰もがいても良い場所。バラバラのような家族だけど、この翡翠飯店を起点につながっていると感じた。そして、その翡翠飯店を作った泰造とヤエは、それを誇りに思って良いのだと思った。
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面白かった。
満州から、戦争から逃げてきた泰造の
「そこにいるのがしんどいと思ったら逃げろ。逃げるのは悪いことじゃない。逃げたことを自分でわかっていれば、そう悪いことじゃない。闘うばっかりがえらいんじゃない。」
という言葉が印象的だった。重かった。
同じく逃げて生き延びたヤエの、
抗うために逃げた、生きるために逃げた、
そんなだったから、子どもたちに逃げること以外教えられなかった。
というような言葉。
逃げてきたことを恥じて、苦しんだ二人の言葉。
翡翠飯店の人たちは、だらしなく逃げてばかりのように見えるけど、何も考えていないわけではないし、むしろ色々考えていて、でもうまくいかなくて、そんなところが憎めない。図太さや強さも感じられる。
家族はバラバラのように見えるけど、誰かのことを話し合ったり涙したり後悔したり、強い絆があるように思える。
賑やかで羨ましいと思う場面もたくさんあった。
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家族に無関心であった主人公が祖母との中国旅行を通じて家族のルーツについて知る内容。歴史的背景が細かく描かれており、祖母の生きた戦時中、子どもたちの生きる戦後、孫である主人公が生きる現代が、交互に描かれて読みやすかった。
戦争という自分ではどうしようもない状況から逃げることを選択した祖父母は、自分の子供たちにも逃げることしか教えられなかった故、子供達も逃げてばかりの人生に。しかし時代が違うと。今の世の中にもいろんな問題があるにせよ、そのせいにして逃げ続けるだけでは生きていけない、と言われているような気がした。改めて戦争について考えさせられるし、今の生き方についても考えさせられる話だった。
普段何を考えてるかわからない祖母との旅をきっかけに、だんだんと祖母の言葉の意味を主人公が理解してくるところが良かった。人となりや人の人生を知るって大事だと思った。
祖母が祖父となんで結婚したのか孫に聞かれたとき『そうさ、あのとき、春で、花が咲いていて、そりゃきれいで、だいじょうぶって思ったんだ、私でもだいじょうぶだって、できるって』と言ったセリフがとても好きだった。なんだかキラキラして見えた。根っこのない家族だけどいろんな希望を見出して生きてきたのがこのセリフに詰まってる気がした。
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・戦争時代の描写が生々しかった
・浩一が亡くなったのが悲しすぎた
・人が歴史の中で生きるていうのは、なすすべもなく翻弄されるようにその場にいて、事件そのものに関われないし、良い悪いの評価もよほど頭のいい人出ない限り、できないのではないか
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ある日、爺さんが死んだ。中華料理屋を営む藤代一家は、8人の大家族。孫の良嗣はふと思う。「そういえば、自分は先祖の墓を知らない。うちの家族って一体何なんだ」。再読だが、始めはこんな話だっけ?というくらい藤代一家にイライラ。揃いもそろってまぁいいか精神・先の事が考えられない・嫌なことからすぐ逃げる。しかし読み進めるうちに、雪解けのようにゆっくりと家族一人ひとりに理解が深まっていく。最後は泣きたくなるような笑いたくなるような、不思議な感情に包まれる。淡々としていて熱中するような話ではないが、名台詞多く、良本。
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戦争を生きた祖父母、生きるために逃げ、人生を生きる。何にも希望のない人生。
何不自由ない現代、何のために逃げてるのだろうか。その先に希望がないのは同じなのに。
祖父母の人生は逃げながらも、結局は誰かに支えられ生きている、その場しのぎでも。
『祖母たちの生きた時代のように戦争があるわけではない。赤紙が来るわけではない。今は平和で平坦で、先が見通せると錯覚しそうなほど平和で不気味で退屈で、でもそんな時代に飲み込まれるな』
嫌なら逃げていい、が許される今、
平和という平坦な日常が続くと信じている人たちは、この先の人生も結局逃げることになり、その人生は結果として帳尻合わせになるのかも知れない。
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登場人物みんな嫌いだなぁと思って読み進めてたけど、途中からなんか少しずつ好きになって来たかも、、って思ってしまった。
ものすごいドラマチックなことがあるわけではなく、戦後と現代に向かっての時間軸を家族の誰かの目線で淡々と綴る大河のような話。でもそんないいもんじゃない。
そういうのが、なんか最後には心に残った。いい話でなんでもないけど、繋いでいくとはこういうことかと。
面白くないと思ってたんだけどなぁ、結果、面白く読み終えた。不思議な小説。作者の筆力かな。
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時間のない中、電車の中で読む本が欲しくて、表紙に惹かれて手に取った。
初めは何の話かわからなかったが、あっという間に引き込まれ、あっという間に読み終わってしまった。
ちょうど、私自身も自分の来し方を振り返って、いつのまにか、私も「人に歴史あり」の歴史ある人になってきたなあとか、それにしても普通の人として私は生まれたんだなぁとかそんなことを考えていたときだったので、とてもフィットしてた。
いつのまに、角田光代さんはこんな本を書くようになったんだろう。
すごく面白かった!
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そういえば、ボクの母も満州帰りだったようだ
詳しく話してくれたことはないが、
小さいとき、いろんな家をたらい回しにされたと
よく愚痴っていた
自身が満州帰りであることを恥じていたんだと思う
昔は、そうゆう風潮があった
本と同じように
ボクも両親のことを聞いたことはなく
その満州話も、馴れ初めも知らない
聞くのが恥ずかしいという感情だ
これも本と一緒
淡々と朴訥とした染み渡ってくるような物語
Posted by ブクログ
無計画は嫌いなたちだけど、
不思議と藤代家の人たちに対してはその感情が湧かなかった。
目の前のことに流されて、受け入れて、
努力して力や富や立場を得た人の足を引っ張ったりはせず
弱い人や調子の悪い人をそのまんま受け入れる感じが
相互共助みたいな感じでよく見えたのかな。
この人の小説、好きだな。
Posted by ブクログ
人が集まり互いに干渉し合わない翡翠飯店。
祖父が亡くなり、祖母と中国へ旅行を提案した孫の良嗣。
現在と祖母と祖父がどのようにして、飯店をきづいたか過去を織り交ぜながら、あまり語られなかった過去が明らかになる。
祖父母の教えは、逃げていいということ、他人に干渉することなく、各人が根無草のように流されて生きる。
そんな暮らしも悪くない。大きな展開はないけど何か温かくなるような作品。
自分も流されて日々を過ごしていると振り返る。
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新宿の翡翠飯店という一軒の定食屋の家族を描いたファミリーヒストリー。
祖母と祖父が出会った満州から、叔父、叔母、父、母、そして主人公である良嗣の時代まで、根無し草のように来るもの拒まず、漂うように生きてきた家族達。
確固たる脈々とした系譜などないけど、それでも引き継がれてきた家族の歴史に、何か特別な意味をもたなくても、必死で生きてきたその積み重ねに、重みのような、年輪のような、深みを感じた。
そういえば、自分の祖父や祖母がどんな風に生きてきたか、よく知らないなぁ。
聞いておけば良かったな。
Posted by ブクログ
私は自分のルーツを知らない。
「結婚失敗した」と喚き続ける不幸せそうな母を長年見続けたいせいか嫌でも知りたくないのだ。
なので、一族のルーツを知りたいと思った良嗣は、なんだかんだ言って健全に育ったんだなと思う。笑
異国の地で敗戦を知らされ、苦労し続けた祖父母。
今日の一日を生き延びることに必死なあまり子どもを飢えで死なせてしまうところや、お世話になった食堂の家族との別れはとても悲しかった。
そんな親の苦労を知らず平和ボケした子供たち。
必死に働き続けてる両親を見て育ったのに、みんな親不孝だ。
そしてさらに平和ボケした孫達。
特に基樹と早苗、お前らなんなん?
命を産んで繫げていくってそういうものなのかもしれない。上手くいかないのが当たり前なんだろうな。
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家族でもどんなルーツがあってここまで来たのなんてやっぱり知らないから、私自身も聞いてこなかったって気づく事もあった。
きっと色んな過去があって今ある思考が形成されたり、自分にも受け継いできた事もあるんだなぁ
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中華料理店を営む家族の話だが、4代に渡り様々な人が登場するなかで、強かに生き抜いた泥臭いながら共感の持てる読後感を得た.藤代良嗣が祖父泰造、祖父ヤエの過去を調べる過程を中心に話が展開するが、戦前の満州、敗戦に伴う引き揚げの苦労、生きる糧を得るための出店、高度成長期のどさくさ、学生運動など昭和の世相を織り込みながら、家族が成長していく過程が楽しめた.得体の知れない人が住み着くルーズな家風も、物語を面白くしている.弟太二郎と母文江の存在が家族の中で中心的な役割を果たしてと感じた.野崎さんの解説が物語の全体像を的確に表現していると思う.
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一家のルーツを辿る行為を通して、“逃げる”ことをテーマにした小説。同じ“逃げる”でも、生きるための“逃げる”と受け入れるための“逃げる”は違う。戦うばっかりが偉いんじゃない。でも、“逃げる”この平和な時代に飲み込まれてしまってはいけない。そういうメッセージを受け取りました。
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祖父の死から、家族のルーツを知りたいと思った3男が祖母と叔父と一家ルーツの満州に行くと共に、謎の多い家族の歴史が明らかになっていく話。
こうした戦前の時代まで遡ったり、謎が少しずつ明らかになっていく感じの小説って面白いなって思った。
印象に残った祖母のセリフ。「闘うことも逃げることもせず、やすやすと時代にのみこまれんな」
なんだかんだ、自分も家族のルーツとかを詳しく知らない。ここまで色々なドラマがあったような家庭ではないと思うけど、気になったきっかけに話を聞いてみるのもいいなと思った。
Posted by ブクログ
三世代に渡る話。
子から見た両親、祖父母がどういう時代をどうやって生きてきたかは知りようもない。
祖母が若い頃に住んでた場所を探しに行く現在の時間軸と、祖父母の時代、両親の時代がそれぞれの視点で語られるのが面白い。
スカッとする話でもないし、好感が持てる登場人物でもないけど、時代に流されながらたくさん後悔や葛藤を抱えて生きてくのが人生なんだなと思った。
Posted by ブクログ
何に関しても無関心で親戚がおらず墓も持たない家族に祖父が亡くなったことで違和感を感じた良嗣サイドのストーリーと
良嗣の祖父母、両親、叔父叔母、兄姉たちサイドのストーリーが交差しながら進んでく
まず昭和15年まで遡り祖父が満洲開拓団に参加して女装しながら逃走して祖母と出会うところから始まる
そこから平成までだから結構分厚いけど最後まで飽きずに楽しく読めた
登場人物の祖父とか深く物事を考えようとしたりすると靄がかかったようになり考えるのをやめて楽な方に逃げようとするとか自分みたいだなぁって思った
その息子で良嗣の父も面倒なことから逃げたり難しい感情は言語化できないっていうのを文章で細かい気持ちの変化まで書かれててすごいなと思った
感情として浮き出たりはするけどそれを誰かにアウトプットしたり頭の中で整理して納得したりってもともと得意とかもあるし勉強をしたからできるようになったとかもあるんだろうなぁ
そういうのをできない人がこの本の中に多く出てきてて苦しそうにしてたから私はできる人でありたいなと思った
Posted by ブクログ
翡翠飯店三世代家族
時代を一緒に駆け抜けました。面白かった。
自分も子供たちには
自分のような失敗は回避してほしいと思う。
でも
親子はやっぱり同じ轍を踏んでしまう。
キッパリと自分の子供を全肯定することの大切さを感じ入りました。
Posted by ブクログ
自分の両親や祖父母も自分と同じように若いころ色々なことにもがき、苦しんで歳を重ねたということに気がついた。物語の中で語り手が変わる。その度に家族の見え方が変わってくるのが面白い。
Posted by ブクログ
戦中、戦後、昭和から平成へと三代にわたる物語。祖母と孫が祖母の思い出の土地をめぐりながら、過去の出来事が語られるが、それは読者だけが知っている。
Posted by ブクログ
な、長かった、、、
途中から話にグッと入れたけど、自分の仕事の疲れとかもあってなかなか進まなかった。
ただ、話は面白いし、こんな話だとは思わなかった。
家族の歴史を紐解いていくお話。終始淡々と書いているのがまた良かった。
どこにでもありそうな中華料理屋の藤代家。ただ、そのどこにでもいそうな家族にも、歴史があって。
言われてみれば自分の両親、祖父母の若い頃の話はよく知らないよなぁ。
きっとどこの家にもこういう、物語になるような話があるんだと思う。(藤代家はちょっと不真面目というか、変わった人が多い気はするけどね、、)
元気な時にイッキに読むのをオススメします!