【感想・ネタバレ】トリップのレビュー

あらすじ

普通の人々が平凡に暮らす東京近郊の街。駆け落ちしそびれた高校生、クスリにはまる日常を送る主婦、パッとしない肉屋に嫁(とつ)いだ主婦――。何となくそこに暮らし続ける何者でもないそれらの人々がみな、日常とはズレた奥底、秘密を抱えている。小さな不幸と小さな幸福を抱きしめながら生きる人々を、透明感のある文体で描く珠玉の連作小説。直木賞作家の真骨頂。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

10篇のそれぞれの登場人物は、
それぞれの居場所にずっと違和感を持っている。
こんなはずじゃなかった。
でも、あっという間にここまで来てしまった。
そもそも、自分にここ以外の選択肢なんて
なんにもなかったんじゃないか。

こないだ読んだ荻原浩さんの「あの日にドライブ」では
主人公は銀行を不本意に辞めて、
タクシー運転手になった。
あの人も、こんなはずじゃなかったと思いながら、
最後にはこの場所で頑張ろう、と希望の兆しを見せて終わった。

トリップの登場人物には、そんな希望はない。
長く長く続く絶望。
でも、現実はこんなものじゃないだろうか。
絶望の中で希望を見いだせる人は、たくましいけれど。

短編集 10篇
光文社文庫 270ページ

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2025年10月25日

Posted by ブクログ

どうしようもなく へこんで ずしーんとなった日に 立ち寄った本屋で手にした文庫本。こんなところにいていいんだろうか?私の選択は間違っているんじゃないか?今やらなきゃならないこと、あるかなぁ…みたいな 自分の中身と登場人物がシンクロしながら ページが進んだ。結局のところ 幸せはとても小さくて 同じだけ不幸も小さいんだなぁ〜ということかな。へこんでずしーんとなってた私は 中島精肉店のコロッケで救われた。ちょっと泣けた 秋のひまわり じーんときた。日々は ゆっくり過ぎていくんだなぁ。

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2024年11月27日

Posted by ブクログ

トリップはそんな前からの作品だったのね。名前だけインプットしてたけど、アウトプットしてみたよ。それぞれ登場する人物に思い入れがないけど、辛い経験してる小学生にただただLSDの主婦に冴えない肉屋に腹の中真っ黒な喫茶店中年女に、あーそうか同じ時期同じ時間に同時に起こっているのが重要なのかなぁ。ホント大量に出ていたけど、消化する前に次の小説に移るのかな自分。交差する訳じゃないし、続く訳じゃないし でも1人のお題が丁度いい長さだった。

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2023年08月21日

Posted by ブクログ

東京郊外のどこにでもあるような街の中で暮らす
どこにでもいそうな人々の葛藤、挫折、日常の閉塞感を見事に描いた天才!角田光代の秀逸な連作短編作品です!

角田光代作品はどれも面白いのですが
特に連作短編はめちゃくちゃ面白いので
読み初めから期待感が高まりました。

一話目で女子高生が河川敷で大声で叫ぶシーンがとても印象的で、この作品に出てくる人達のもやもや感や
閉塞感を象徴してるような感じがしました。

「百合と探偵」という話の中で
「今がものすごく充実、とか、満足、とかって気持ちじゃない。だからあたしはいつも、
ここを目指していたのかもしれないという思いに
とらわれるとき、本当に、唖然とするんだ。
こんなところだったのかって。
必死になって手に入れて、大事に握りしめてたものを
すべて手放して、代わりに今手のひらにあるものは、
これっぽっちなのかって。

この言葉はかなり胸に突き刺さる言葉でした…
ある程度年齢のいってる方ならば、
自分の人生を振り返ってみて、現在の自分の位置を見つめ直して、失望感やあきらめを抱いたこともあるんではないでしょうか。

この平凡な街の平凡な人々の人生を自分と重ね合わせて、思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
天才!角田光代 万歳!!

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2022年06月14日

Posted by ブクログ

さくさく飽きずに読める良い小説。共感する部分も多く、自分の過去の感情を言語化してくれた。自己理解につながったと思う。

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2024年10月28日

Posted by ブクログ

日常の中の心の動いた瞬間を切り取っていて、それがこの短編集のアクセントになっている。
なんだかそのアクセントがとてもいい感じ。
カシミール工場がいちばん好きな話。
人の優しさに気付けた時って心が温かくなる。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

昔誰かが、日記の書き方について話しいていた。その日一日のことを何時に起きて、とのんべんだらりと書くのではなく、その日のほんの20秒ほどのことを書き尽くしない、というようなことを言っていた。

この作品を読んでいて、それを思い出した。日々は些細な決断の連続であることはよく言われるが、ほんの20秒、あるいは10秒ほどの思考や、意識の流れ、感情によってその日は成り立っている。

そのような些細な描写の連続だった。
だからこそ、映像は地味だけど、彼らの寄るべのなさがありありと迫ってきた。私が普段見て見ぬふりをしている心もとなさを見せられた。

ただ、物語はどれも悲観的に終わるわけではなく、寄る辺なくもそれを受け入れる人々の泣き笑いのような顔につられるようで、妙に安堵する部分もある。

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2024年08月09日

Posted by ブクログ

なんてことのない郊外のよくありそうな町。
商店街があってなんだか下町のような付き合いもあるような風景が、描写がうまいのでリアルに想像できる。
それぞれ少しずつ繋がっている連作短編集のようになっていて、登場人物がそれぞれ癖のある人達でなんか良かった。

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2024年05月31日

Posted by ブクログ

角田光代さんの短編集です。各話に出てくる主人公は皆、何かが欠如しているように感じました。足りないものを埋めるように必死で過ごしているけれど、埋まらない、満ち足りない。そんな感じ。でも各主人公にどこか共感を覚えるのは全て悲観的に捉えて投げ出すことはしなくて、泥臭くも這いつくばりそして他者への優しさが垣間見えるからです。

読み終えた今、どんな感情でいるのか正直説明がつきません。

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2023年05月28日

Posted by ブクログ

連作短編、意外な形で微妙に繋がっていくのが面白かった。いつも思うが、普通の人の暗い部分を描くのがすごく上手い。とてもリアルで、そういうことあるな、という気持ちになる。でもやはり普通の人を描いてるから、特段すごいことが起こるのでもない。みんなそんなもんだよなあと思う。

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2023年01月15日

Posted by ブクログ

10編の短編集、最後の2編がどことなく結びつく。それそれが晴れ晴れとした感じでは無く重い感じ現実的な内容に近いのでは…
(角田さんは好きな作家さんの1人
久しぶりに手に取りました。)

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2022年10月25日

Posted by ブクログ

連作というんですね、次のお話の主人公が絡んでて、その人なら私も知ってるという噂話に参加しているみたいないな感じで、楽しく?読み進めてしまいました。登場人物を自分と重ねたり、反論したり。毎日が充実している人が読んだら、退屈なお話となるのでしょうが、私レベルでは、本質は登場人物と大差ないのかな、という閉塞感を共有してしまい、ちょっと暗くなってしまいますが、おもしろかったです。

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2022年08月21日

Posted by ブクログ

感想に困ってしまう小説。
救いはあるのかな。
短編集の中でもぐさりときたのが離婚した初老の女性の話。彼女が見た現実と彼女の娘の見る現実とが全く違う。どちらが合っているのかは分からない。分かるのは二人は合わないのだろう。
けれども他の短編小説に書かれていたようにその瞬間だけは相手を思う気持ちはあったのだと思う。ただそれは永続的ではなく相手の気持ちを汲めなかったのかもしれない。誰にも答えなんて分からない。
すっきりしないまま終わってしまうけれどきっとまた読む日はくると思う。

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2022年08月18日

Posted by ブクログ

何というか、言葉で表現しづらい日常のもやもやした感覚を、うまく表現できるのだなぁ角田さんは、と思う。
私は面白かったです。

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2022年02月15日

Posted by ブクログ

ちょっと可哀想で、ちょっと繊細な、その場所に馴染めていないような登場人物たちが愛おしくなる。短編集で、色んな主人公たちが出てくるが、性格も境遇も立場も違うのに全員が生き生きとしていて、さすが角田光代さんだと思った。自分と性格の違う人間をリアルに描けることがまずすごい!角田小説、また読みたい。

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2022年01月17日

Posted by ブクログ

なんとなく生きてるような人たちの短編集

日常のなんとなくの色褪せたような感覚をかなりリアルな描写で書いてて上手いなーと読んでて何度も思った
もっと読んでいたいと思うような感じばかりの短編集だけど、全部の終わり方がふわっと、だけどかなり意味があるような感じでよくわからずもやっと。
文学的な色んな意味と取れるような、何も意味がないような文で終わる
まぁオチがあるような話なわけじゃないからそれが正解なんだろうけど。

薬物摂取してる主婦の話ですLSDだけで依存みたいないつもボーッとしてるような症状になる人っているんだって思った

処女とか童貞とか何も楽しみがないような人生とかなんとなく結婚して35年経っちゃってる人とか割とあるんだろうなー
みんな周りの人は幸せそうだけど、そういう人もまぁいるよねえ

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2021年12月18日

Posted by ブクログ

普通の人々が平凡に暮らす東京近郊の街。
そんな街の一人ひとりにも別の人生があって、幸福があって、不満や秘密、非日常もある。
著者の毒の部分やビールの描写が好きだ。
うまくいくことのない人生の何かを、勘違いさせたり正気に戻したりして生きていく。

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2025年07月13日

Posted by ブクログ

理解しがたい感情から始まり読んでいくうちに引き込まれ、共感する感情がうまれ、最後まで読んでよかったとおもいました。
秋のひまわりの12歳の少年のたくましさ、ビジョンの肉屋のお嫁さんの人生こんなもん。勇気をもらえます。

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

商店街に住む様々な人達の視点で描かれるストーリー集です。

☆3をつけましたが、実際は☆2.5くらいですかね…。
良い意味でも悪い意味でも、心に響くことは特にありませんでした。

あくまでわたしの感覚なので、人によっては違うかもしれません。

ただ、『紙の月』『八日目の蝉』のような物語を期待している方は、他の作品を読んだほうがいいと思います。

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2025年03月01日

Posted by ブクログ

東京近郊の町で、お互い何の関係もないが、知らないところで繋がっているという10のストーリー。読み進めていくうちに文面に引き込まれ、最後まで一気に読めた。

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2025年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

百合と探偵

私も何だかんだと順調ではない気がするけど、今が一番だから、頑張ってきたのに満たされない状況が本当にあるのであれば、やるせないと思った。報われなくても、満たされてほしい。
最後、大切に育てた娘を醜い女と認識したけれど、怒るでもなく、自分と重ねるのがまた、切ないと思った。そんなものなのだろうか。

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2024年08月08日

Posted by ブクログ

東京郊外にあるどこかぱっとしない商店街の小さな町が舞台となり、そこで暮らす人々の心模様を描いた連作短編。
一話一話がかなり短いのでサクッと読める。


『空の底』次の一瞬、わたしはあーとかぎゃーとか叫び出して(中略)暴れるかもしれない、
という描写があるが、自分も日常のふとした瞬間に、ここで急に暴れたら、どうなるのか?と考えることがある。実際はそんなことすることもなく杞憂に終わるのだけれども。ただ、こんなことを考えるのは自分だけだと思っていたのでとてもびっくりした。
角田さんは、形容しがたい心の内を表現するのが上手だなと思う。

『橋の向こうの墓地』の黒田はインパクトが強く、すごく印象に残った。


どの話もリアルで、それでいて非現実的のような、読んでいると夢と現実の狭間にいるような感覚になる。

誰もが生きづらさを抱えながら、その中でささやかな幸せを見つけて生きているんだろうな。

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2024年05月07日

Posted by ブクログ

東京近郊の街に暮らす凡庸な人々が、日常に心の中でどこか違和感やズレを持ちながら毎日を淡々と生きるのを描いた連作小説。

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2024年01月04日

Posted by ブクログ

少しづつ繋がっている人々の日常的な短編集。
その繋がり方がなんともいい具合になってる。
普通にありそうで なさそうで テンポ良く描かれている。面白いリレー小説でした。

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2023年09月06日

Posted by ブクログ

どの登場人物も、どこか思い通りにいかない人生を生きている。そして、何か不満や不安を抱えている。もしかしたら、この人物は、私だったかもしれない、と感じてしまう何とも言えない親近感がある。時々、手にとって読みたい連作集だ。

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2023年02月11日

Posted by ブクログ

読みやすい小説
曖昧だけど声優〜フラワー〜喫茶などなど毎回「私が本当にやりたかったのは」と言いながら学び続ける女の子(私じゃん)を肯定とも否定ともつかない文章で書いていて角田光代やさしー…

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2023年01月18日

Posted by ブクログ

『百合と探偵』という話は離婚した中年の女が魅力的で面白かったが、その他はあまり響かず。
全体的に毒気のある作品で、それはそれで良いのだが、人の容姿に関する描写が少々キツすぎるように感じた。

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2022年11月28日

Posted by ブクログ

とある町で暮らす人たちの連作短編集

1つのテーマの絵をいろんな角度から
切り取ったみたいに感じた
読み終えるとすごーくじっくり観察した気分

性別も年齢も職業も多様な人たちなのに
彼ら(彼女ら)の日常がありありと描かれていてすごい
このすごさは解説で気付かされた

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2022年05月20日

Posted by ブクログ

角田光代さんらしいー!
周りから見れば、何の変哲もない「普通の町」に
生きる、「普通の人」。だけどみんな抱えていて。
狭い世界で、抱えて生きている。変わり映えのない
毎日の中でふとした時に感じる虚しさも、
自分でも何故かわからない孤独感も、
それと共に思い出される自分だけがわかる情景も。
少しの感情の揺れや澱み。
出てくる登場人物一人ひとりが、抱えた問題に向き合ったり寄り添ったり、共存しながら、生きていけますようにと願ってしまうような。

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2022年05月18日

Posted by ブクログ

アンダーグラウンドな感じと言っていいのかわからないけど、それでも最後には光を見させてくれる作品だった。映画館を出た後に、自分が今見ている世界が特別に思えるようなあの感覚をなんとなく思い出した。

いまいち入り込めなさがあったから、時間経ってからもう一度読み返したい。

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2022年02月24日

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