小川洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ妊娠カレンダー。姉と義兄と一緒に暮らす私。
妊娠した姉の要求に、文句も言わずに答えている。
いつも料理に文句をつけられたり、つわりが酷くて
キッチンで料理ができないからと、庭に調理器具を
持ち出して地面にござを敷いて食べる。
(庭でご飯というのはとても楽しそうだけど)
つわり後、食欲が増した姉にグレープフルーツジャムを
毎日作るようになった。店員にわざわざアメリカ産かどうか確認して、防カビ剤が塗布されたものを買ってくる。
発がん性があり、染色体を破壊する、という話を知りつつ皮を刻んでジャムにする。姉が食べたいというから?
悪意とも親切とも取れる行動だけど、やっぱり悪意が
勝っていると思う。最後 -
Posted by ブクログ
第104回芥川賞受賞作、ということで。
受賞作と、他2篇。
91年に受賞、この文庫が94年に1刷ということで、35年の時を経ているというのは不思議に思えた。所々にその時代性は少しだけ顔を出すものの、全く古びていない。
3篇の短編集の共通して根底にあるものは、何とも言いがたい淡々とした不穏、不気味さと、観察者としての「わたし」、そして高く一貫した描写力だと思った。
個人的には「ドミトリイ」と、著者の文庫版あとがきの中の、新鮮な玉ねぎと猫の死体の話が一番面白かった。
「ドミトリイ」は特に途中からミステリーのような急展開になり、真の小説が生まれるのはそういうところにあるものかと、短いあとがき -
Posted by ブクログ
小川洋子さんのかく文章は本当に読んでて心地良いです。静かだけどその静かかさの中には深淵が広がっているような。とてもいろんな色の絵の具を幾重にも重ねて描いた絵画のようです。パッと見は青に見える。でも近寄って覗き込むようによーく見るとその中には黄色も緑も灰色も茶色もあらゆる色が隠れていてびっくりする、そんな感じです。(←我ながらわかりにくい 笑)
全体的に感じる空気感はファンタジーのような神秘的な夢物語のような印象を受けますが、実は窮屈な生きにくさを描いたダークファンタジーでした。リトル・アリョーヒンにとってチェス盤の下以外の世界は何と生きにくかったことか。リトル・アリョーヒンが悪いわけじゃない -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ人と人の思わぬ交流を描いた短編集。
最初の「曲芸と野球」は無茶な練習を繰り返す曲芸師のお姉さんとヒットの打てない少年が他の人なら気にしないような合図でお互いを励まし合うという話だった。心温まる人生の妙味を味わえるような個人的には好きな短編で、この短編集はこういう方向性の物語が多いのかなって思っていたが、以降「パラソルチョコレート」を除き、全てがファンタジーの作品であったため拍子抜けした(「ラ・ヴェール嬢の秘密」はどちらかと言えばファンタジーではないが)。
「曲芸と野球」以外では「パラソルチョコレート」が好きだった。シッターに預けられた二人の姉弟が毎週カフェに連れて行かれるのだが、シッター -
Posted by ブクログ
ネタバレ薬指の標本。わたしは、工場での事故で薬指の先を失くし、退職。偶然見かけた標本室で事務員をすることに。
標本技術師の弟子丸はどんなものでも標本にできる。
きのこ、文鳥の骨、楽譜の音、少女の頬の火傷跡まで。
弟子丸から革靴をプレゼントしてもらった辺りから、
怖さを感じ始めた。古い靴を握り潰したり、浴槽の底を
歩かせたり、硬いタイルに寝転んで抱き合ったり、狂気を感じた。一番恐怖だったのは、活字板を運ぶわたしを
転ばせて、散らばった活字を朝まで1人で拾わせた場面。「君は一晩中、僕のために働いたんだ」
「二人で朝を迎えたのね」
なぜだかわたしも嬉しそうにしている。
靴磨きおじさんとの会話、「彼とはどうし