小川洋子のレビュー一覧

  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    5年ぐらい読みたいリストに入れていた1冊

    これが小川洋子ワールドか…!
    しっとりして繊細な世界観だ!
    解説にあった『読み手にも相当のエネルギーを要する』は読みながら私も感じていて、睡眠不足の時や退勤後の疲れた時に読むとすぐ眠ってしまった…

    ボックスベッドや海底チェス倶楽部など、使われる単語のひとつひとつがお洒落だなと思った
    タイトルのセンスもすごくいいなあと思う

    チェスに興味がなくてルールも全く知らなかったけど、チェスの面白さを知れたのも良かったな
    読書で広がる世界である
    スマホにチェスのアプリ入れてみようかな

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    2025年07月19日
  • 貴婦人Aの蘇生 新装版

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    ネタバレ

    お金に糸目をつけずたくさんの動物の剥製を収集する伯父は北極グマの剥製に頭を突っ込んで死に、弁護士の父親は法律書に生き埋めになって死に。

    未亡人となった伯母は残った大量の剥製たちにAの刺繍を施していく。Aとは、伯母の別名”アナスタシア”のイニシャルであり、剥製マニアのオハラが伯母とやりとりした結果、伯母はロマノフ王朝の生き残りであるアナスタシアなのではないか?と雑誌に掲載される。

    オハラの、伯母の瞳に対する描写が面白い。剥製マニアゆえに行ったものの、伯母に興味を持っていかれたと雑誌に書き、〈私〉曰く伯母の話そっちのけでジャガーを眺めていたくせにと言っているが、どっちも半々といったところだろう

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    2025年07月19日
  • いつも彼らはどこかに

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    動物に関する8編

    ビーバーの話が好きだった。
    小川洋子さんの物語はいい意味で少し世間ズレしているというか、浮世離れしている感じがする。

    サスペンスものやリアリティとかの実際的な出来事に対して深掘りしていくというよりは、小川さんの世界に引き込まれていって、現実的ではなくてもこういう世界、見方もあるんだよと感じる。

    いろんな物語の中で、世間一般の言い方をすると落ちこぼれ、低所得者、フリーター、ホームレス、と一括りにされる人たちに目を向けてひそやかで穏やかな世界を見せてくれることもある。
    この人独自の書き方を無視できない。

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    2025年07月04日
  • 密やかな結晶 新装版

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    ネタバレ

    島の物が消えていく段階はなぜか普通に受け入れることができた。体が消え始めた段階でぞくっとした。
    その不自由さが恐ろしかった。でもわたしや島の人はすぐにその状況に慣れてしまう。いずれおさまるべきところにおさまると言って。
    R氏は何度もわたしの記憶のカケラに明かりを灯そうとするが、わたしは消滅を受け入れていく。なぜ危機感を抱かないのか抵抗しないのかどんどん不安になった。
    何かが消滅したところで結局生きていられるという部分が、安心感と静かな恐ろしさを与えていく。
    現代人もそうかもしれない。私たちはどんどん暗い未来に足を踏み入れているにも関わらず、見て見ぬ振りをして受け入れている。何か大変なことが起こ

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    2025年07月03日
  • そこに工場があるかぎり

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    ネタバレ

    小川洋子と工場という組み合わせは、あまりにギャップがあるだろう。
    小川洋子の作品は、静けさのイメージが強くて、まるで水中に深く潜っていくような、徐々に周りの音が聞こえなくなって、少し不可思議で、あやういバランスを保つ世界にどっぷり浸かるような読書、と思っていた。
    対して工場はというと、少し騒々しくて、大規模にきっちりと整えられた、不可思議とは縁のない、すべて合理性に則った場所、という気がしてしまう。

    その両者がこんなにすっきりとマッチするものなのか、というよりも、自分の認識が浅かったというか。

    取り上げられている工場は、大規模なところもあるけれども、どちらかというとかなり小規模にやっている

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    2025年06月29日
  • 薬指の標本

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    小川洋子さんの文章が大好きです。
    小川洋子さんの作品で登場人物が亡くなっても、ただ悲しいだけではなくその情景が印象的に美しく描かれていると思います。
    薬指の先を無くす場面も、火傷の場面も、少しもグロテスクではなくむしろ綺麗な情景として描かれていると思います。

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    2025年06月26日
  • 妊娠カレンダー

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    小川洋子さんは初読みだった。
    なるほどこういう作家さんかと今さらながら知った。
    本の後ろを読んで、買ってみたが表題作である妊娠カレンダーはほのぼのした、妊婦の日記ではなく、なんとも言えない鬱屈した気持ちというか、妊婦が全員朗らかな気持ちでいるわけではないとか、なかなか鋭い切れ味のお話で好みだった。
    他の2作も良かったが、これは私の解釈が追い付かない部分もあった。これが小川洋子さんという作家という事が分かり、読んで良かったと思う。

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    2025年06月24日
  • ミーナの行進

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    小川洋子さんらしい逸品 丁寧に小さなエピソードが重ねられ やがて、全体像がとても暖かな感動を引き起こしてくれる 2024年に読むべき百冊にTime誌が入れた唯一の日本の小説

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    2025年06月23日
  • 遠慮深いうたた寝

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    小川洋子さんの思い出話や本の感想、妄想や半分小説のようなお話をまとめたエッセイ。
    小川さんの魅力が詰まった作品でした。
    特に『答えのない問い』という作品で、小説を読んで、わけがわからない、面白くないと自分の狭い価値観で作品を否定してしまうことがあるけれど、分かる分からないにこだわるのは実にもったいないということ。分からない自分の未熟さを認めると、一気に視界が広がるという小川さんの言葉が心に響きました。
    また読み返したくなるエッセイです。

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    2025年06月21日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    相変わらず美しい文章でいらっしゃる…(ほんまに好き)こういう、文字でしか表せない幻想的な本でしか味わえない物語がほんとに大好きなんですよ!!!!!!!!!(大声)
    個人的には序盤のバスの中でチェス打ってるシーンが凄い好きだったなぁ。私もその場にいるような、居させてくれるような温かい感じ。誰も置いていかないくらい繊細な描写………。
    もうちょっとチェスに詳しかったらさらに面白く読めたかな…歳をとった時にもう一度読みたい!
    ラストの物悲しさも含め残り香がほのかに香る感じがいいですね。

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    2025年06月17日
  • 博士の本棚

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    敬愛する作家にして、読書好きにとっての憧れでもある小川洋子の、本にまつわるエッセイ集や、あとがき寄稿文を収録した一冊。

    物語、それを生み出す作家、彼らにまつわる物事。本を形作るあらゆる要素に、深い敬意と、誠実でひたむきなまなざしが注がれている。

    『偏愛短編箱』、『陶酔短編箱』等のアンソロジーもそうだけれど、小川さんの書評は単なる作品紹介や解説の枠にとどまらない。物語の世界に思いを寄せ、丹念な言葉でそれを紡ぐ、どこか祈りにも似た静かな熱意が感じられる。

    その祈りに、もっと深く身を浸してみたい。心震わせてみたい。
    私もそう願って、本書で紹介されている作品をひとつずつ読み進めているところ。

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    2025年06月08日
  • ミーナの行進

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    小川洋子さんらしい作品、と言いながらそんなにたくさん読んでるわけではないが・・ゴメン

    物語は二人の少女を中心に静かに進んでいく。静謐な中に少しだけ不穏な空気を漂わせて。いかにも小川洋子さんらしい作品だと感じた。

    クライマックスはあっけないと言えばあっけないが、男の私には二人の少女の関係性がなんとも言えずに細やかに描かれていて、心の襞に入り込んでくる。いい物語を読んだという気になりました。

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    2025年05月29日
  • 貴婦人Aの蘇生 新装版

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    ネタバレ

    小川さんの初期作品、1999年から2001年まで連載された作品の新装版。

    伯母がロマノフ王朝の皇女かも?という謎があっても淡々とした主人公はいつもの小川作品だけど剥製マニアのブローカー小原はちょっと珍しいタイプ。伯母とこの小原のやり取りがシュールでクスっと笑えて面白かった。胡散臭いけどいいやつじゃん?って感じ。

    胡散臭いと感じる登場人物がいるというのが初期作品だと感じました、最近だとどんな胡散臭さも納得させられる気がします。

    剥製だらけの家とロシアって絶妙な取り合わせでときめきました。

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    2025年05月27日
  • 妊娠カレンダー

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    妊娠した姉への歪んだ愛情が毒入りジャムとなり胎児へ届く__不穏な空気を纏った短編集
    美しい描写に引き込まれながら読み進めると、どろりとしたものが喉元を通るような不快感がやってくる。これは悪夢か現実か?曖昧で朧な結末が私たちを話の中に閉じ込めてしまうようだった。

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    2025年05月25日
  • 最果てアーケード

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    小川洋子さん初読みです。
    静かで不思議な世界観と、小川さんの美しい文章がとても心地よい作品でした。
    使用済みの絵葉書や義眼、ドアノブなど、その物から持ち主の思いが感じられ、その思いを大切にしている店主たちのまなざしに心があたたかくなりました。主人公の「私」の存在が少しずつ明らかになり、読み終えると『最果てアーケード』の意味がわかります。
    また読み返したくなる作品でした。

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    2025年05月25日
  • 耳に棲むもの

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    閉じられた静かな孤独で満たされている世界をひたすらにたゆたえる味わい深い本。小川洋子さんはこれまで何冊か読んで来たものの私個人の好みとは微妙にズレていることが多かったのですが、これは一瞬で恋に堕ちてしまった。心と身体に染み渡る静けさを深く堪能出来た。

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    2025年05月23日
  • 沈黙博物館

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    ネタバレ

    博物館技師は、田舎に新しい博物館を建てる依頼を受ける。依頼主の老婆は、犯罪ギリギリの方法で手に入れてきた、亡くなった村人たちの形見を展示する博物館を建てようとしていた。

    いいな、私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。(p49)

    老婆の言っていることは、恐ろしくもあるように思う。彼女は、亡くなった人々の形見を保存することで、「死の完結を永遠に阻止」しようとしているのである。
    なぜ、彼女はそんなことをする

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    2025年05月20日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    みんな少しずつ偏っていてそれはある意味孤独なんだけど、寂しさよりも静かな強さ、したたかな美しさを感じる短編集。

    物語たちそのものもとても素敵。特にそれぞれの余韻たっぷりな終わり方がいい。
    ただ何より、心情や状況の描写、比喩のひとつひとつがときめく程美しくてたまらなかった。

    「亡き王女のための刺繍」と「一つの歌を分け合う」が特に好き。でも選べないくらいどれも良かった。

    色々な方が小川洋子さんの文章はうつくしいと言っている意味が、読み始めてすぐに理解出来た。
    淀みなく流れるようで、でも確実にひとつひとつがきらめいていて虜になってしまう。

    博士の愛した数式をかなり昔に読んだはずだけど、それ以

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    2025年05月16日
  • 妊娠カレンダー

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    女性ならではの感性が、女性の私でも驚くほど鋭く反映されていて、もうそれだけで大変恐ろしく感じた。結婚して妊娠している姉と、姉の夫と、自分というなんとも居心地の悪い同居は行き場のない、名前のない悪意を生み出しているように見えた。『妊娠』という行為や母親という役割は時に女性の足枷となるが、本作や湊かなえの「蚤取り」においては独り身でいる身近な女性の劣等感を引き起こすものとして描かれる。女性としてこれまで求められてきた役割を、出来るけどやらない、と、出来ない、では大きな違いがある。そうした心の柔らかく弱い部分に触れる作品は、自分の隠してきた部分や見ないようにしてきた部分がそのまま映し出されるようで、

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    2025年05月13日
  • 耳に棲むもの

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    ある意味、童話的でメルヘンでもあり残酷でもあり、時代や地域(国)を超えた普遍性がある作品だと思う。ある補聴器販売員を軸とした物語。

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    2025年05月11日