小川洋子のレビュー一覧

  • そこに工場があるかぎり

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    ふと気づくと、金属に穴があきはじめている。そもそもの目的がこれなのだから、驚く必要もないのに、なぜかとても不思議な現象を目にしている気分になる。一点の窪みが少しずつ、慌てず慎重に、奥へ奥へと潜り込んでゆく。電極と金属は一定の距離を保ち、決して触れ合わない。電極の回転も、穴の形成も、想像よりずっとゆっくりしたスピードで行われる。金属はまるでそれが自らの意思であるかのように、穴を受け入れている。この密やかな営みを、火花が祝福している。(第1章 株式会社エストロラボ〈細穴屋〉より)

    凡ゆる仕事には、たとえ文化勲章受賞者ではなくとも、匠の技が隠れている。と、私は思う。
    例えば、封筒詰めの単純作業であ

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    2025年12月17日
  • ことり

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    物語の中心にあるのは大きな事件ではなく、淡々とした暮らしの日々である。庭に現れる鳥の動きや、その鳥がどのような感情を持っているように見えるのかといった観察が繰り返され、静かな世界観が積み重なっていく。鳥は、一見すると小さくて守られる存在のように見えるが、渡り鳥の描写が示すように、遠くへ飛び続ける強さや目的を持った生き物としても描かれる。作品の中で常に“小鳥”と書かれているにもかかわらず、実際には主体性をもって迷わず進む存在として浮かび上がる点が印象深い。この“弱さと強さの同居”は、兄の生き方とも静かに共鳴している。

    兄弟の関係は、「依存」「相互関係」「相互不干渉」のどれにも読める曖昧さを持っ

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    2025年12月16日
  • まぶた

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    小川洋子さんならではの素敵な言葉選びと不穏な雰囲気が漂う短編集。。
    バックストロークは強烈。まぶたは流浪の月みたいだと思った(まぶたが先です)。2001年にこの物語が存在したんだと思うと不思議な感覚。

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    2025年12月14日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    静謐な朗読を聞いているような作品だった。
    時に熱く語られているのにどこまでも客観的で、静かで穏やか。冬の午後にぴったりだった。
    時折差し込まれる夢か現か分からないお話にエッセイと創作の境目がなくなる感覚が小川洋子作品、という感じがして心地良かった。
    まさに「優れた文学に出会うとそれがエッセイか小説か分からなく」なった。

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    2025年12月12日
  • ミーナの行進

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    海外のお話し⁉️って何度も思った作品!

    何十年も前に観た“赤毛のアン”とか“フランダースの犬”な世界観を感じました✨♡

    小川洋子さんの作品にまた触れてみたい^_^

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    2025年12月10日
  • ことり

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    ネタバレ

    静かな作品だった。
    最終章にあった、メジロで「鳴き合わせ」を行なっていた団体との話でははじめていつになく感情的な小鳥の小父さんを見ることができた。ここで小鳥の小父さんを感情的にさせたのはこの作品の肝である「小鳥は愛を歌っている」ということから激しく逸脱した行為だったためだった。
    小鳥を通じた兄への愛情と、小鳥との触れ合いを兄とつながる唯一の手段だとでもいうように社会と断絶し独りになっていく様がなんとも哀しく切ない話だった。

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    2025年12月07日
  • サイレントシンガー

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    小川洋子、なんかもうほんとうに唯一無二の作家だなあ…。静けさというものをこんなにも言葉にして、物語の雰囲気に漂わせることができる作家なんて小川洋子しかいねえだろという気がしてくる。不完全なものの良いところに目を向けたり、すてきなものにしたりするってとてもやさしい。物語が終わったあとも、この静けさがずっと守られることを祈ってしまう。

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    2025年12月07日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    ネタバレ

    リトル・アリョーヒンには、チェスがあってよかった。

    彼にとってチェスは、単なるゲームではなく、人生そのものだった。勝ち負けが存在するのはもちろんだけれど、彼が本当に大切にしていたのは、どんな「棋譜」が生まれるかということ、そしてそれを通じて誰かと交わされる「会話」だったのだと思う。

    チェスは人生のように、対峙する相手や盤を挟む場所によって、まったく違う表情を見せる。汚い手を使ってでも勝ちを急ぐ者もいれば、報酬のために勝ち方にはこだわらない者もいる。そこには、その人がどんな人生を生きてきたかが、そのまま染み出している。

    象徴的なのが、マスターがアリョーヒンを叱る場面だ。橋のたもとで賭けチェ

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    2025年12月07日
  • 密やかな結晶 新装版

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    ネタバレ

    『密やかな結晶』の世界では、社会から一つひとつ、何かが静かに消滅していく。その中で「密やかな結晶」とは何なのだろうか、と読みながらずっと考えていた。

    小川洋子作品を通底するテーマに、「記憶の継承」「存在が滅びても、その記憶は残り続ける」というものがある。本作もまた、その系譜の上にある物語だと感じた。

    この世界におけるささやかな救いは、消滅に囚われた人々の中で、なおも消えたものたちの記憶を抱き続ける編集者の存在だ。
    彼は、すべてが消滅したあとの世界で、「わたし」が書き残した小説=物語の記憶をその身に宿したまま、歩き出していく。物語はその場面で終わるが、彼の中に残ったそれらの記憶は、なおも続い

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    2025年12月07日
  • ことり

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    賑やかな世の中でも、この話を読んでいる時は静かな世界で読むことができた。
    初めて小川洋子さんの作品を読みましたが、無駄な情報をカットしているからこそ、より想像力が掻き立てられて、読む人それぞれの物語ができたと思う。

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    2025年12月05日
  • 薬指の標本

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    勝手に登場人物を外人にして読んでしまうくらい現実離れしていて、でも普通に読めてしまっていて
    自分もこの話の中に取り込まれているような気がして変な感じになった

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    2025年12月04日
  • ことり

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    文体が美しく、読んでいると心が整います。鳥を愛する兄弟の日常を描いていますが、その変わらぬ静かな生活の中に、大切なものがあるのだと思います。

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    2025年12月06日
  • 遠慮深いうたた寝

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    小川洋子さんの言葉に触れるたび、私の心を守ってくれた物語たちを思い出す。小川洋子さんの作品もその一つだし、このエッセイもその一つになった。
    心が頑なになって、みんなが敵に見えてしまったときに、また読み返したい本。私は弱いし何もできないけど、そんな私を守ってくれる物語が世界にはあふれていると気づかせてくれる、お守りのような本。

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    2025年12月01日
  • 密やかな結晶 新装版

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    小川洋子さんで記憶の消滅といえば『博士の愛した数式』が有名だが、本書は個人的な消失にとどまらない。島の人々の記憶から森羅万象が徐々になくなっていく、というとんでもない話である。

    何かを失うということは人間にとってどういうことなのか。人を人として成立させているものは何だろうか、ということを考えさせられる。

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    2025年11月30日
  • 刺繍する少女

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    ネタバレ

    どうしてなのか分からないんだけど、急に胸をつかんでくる文章や、短編に出会う。
    そういう文章には五感も鮮明に立ち表れてきて、その物語が心に住み着く、そんな感じがする。

    これは〇〇をモチーフにしてるのか?と疑問符がついたまま終わる作品がいくつかあるけど、何度も読み返してわかったりするんだろうな〜
    小川洋子先生の本もっと読ませてもらいます

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    2025年11月29日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    素晴らしかった。大切に、大切に読み進めた小川さんのエッセイ集。エッセイ集と言っていいのかわからなくなるほど、短めの深い思いで唯一無二。いろいろなところで書かれたエッセイを章に分けて載せている。1、2章あたりのエッセイがたまらなかった。日常や、家族の幸せが美しく切なく心に響くエッセイがたくさんあった。亡き両親との思い出。よその子や赤ちゃんとふと、些細なきっかけで顔見知りでないその子たちと触れる中で思い出す、自分の子供との思い出。想像するということ、読書ということとは何か。と思えば、少し抜けた感じのクスッと笑えるエッセイもあり…ということで絶妙なバランス。小説も美しく、エッセイも美しく、すごい、小

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    2025年11月28日
  • ボタンちゃん

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    成長とともに消えゆくもの。
    それは見える物であったり、見えない価値観や感情ではありますが
    たち帰れる場所を作るのもありかなと思いました。
    すぐに使わなくなった物や価値観は少しだけ残して(記して)見返せるようにしてみようと少し思えました。

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    2025年11月26日
  • 海

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    風に吹かれるように心地良くうつらうつらと読んでいたら「バタフライ和文タイプ事務所」が始まり目が覚めました。

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    2025年11月25日
  • 妊娠カレンダー

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    ネタバレ

    話に出てくる人たちの行動が人間らしくなくて、ずっと不穏な空気が流れてるけど、すごく心に残る。
    とくに妹が、妊娠した姉のためにグレープフルーツのジャムを煮るシーンが印象的。
    とても従順にみえて、農薬が使われているかもしれないグレープフルーツを淡々と調理する妹の姿に寒気がしてくる。わたしには悪意とともに行為に及んでいるように見えて、それは自分の姿ともすこし重なるような気がした。

    色んなことがはっきり書かれていないからこそ、いろいろな読み方ができそう。
    わたしは面白かった。

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    2025年11月22日
  • 海

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    少し不思議な話が詰まった短編集で、小川洋子さんならではの美しい文体によって、切なさを感じたり、ほっこりしたりととても良い読後感を味わえました。

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    2025年11月21日