小川洋子のレビュー一覧
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意外とスルメ本だった
寝る前に気が向いたら1話2話読もうかなという風にちょろちょろ読んでたけどなかなかちょうど良かった(短編が10話入ってる作品です)
短編を結構書いてる作家さんだと「またお決まりのこのパターンね」みたいな手癖がどうしても出てくる。例えば本作に入ってる「ケーキのかけら」は「いつもかれらはどこかに」に入ってる「帯同馬」と似たテイストだ。このふたつの作品は特別好きな手癖なのでもっと味がしなくなるまでこすってほしいと内心思ってたりする(一方で他作品はちょっとパンチが弱かった気がして内容あんまり覚えてないのは内緒だよ)。
「ケーキのかけら」と「帯同馬」のどちらの話も、ものすごく見栄を -
Posted by ブクログ
この静かで、ガラス箱の中で幼い死者の魂が時を重ねて行くだけの世界の中で、こっそりと私だけが生命を膨らませている。
私の密やかな想いが、バリトンさんが暗い底のない透明な湖に沈んでゆくのを阻み、もう一度生命を吹き込む。
この町にあって、私とバリトンさんの二人だけが、自らの子供を亡くしていない登場人物だ。
二人だけが、過去を悼んで生きる人々に寄り添いながらも、現在と、もしかしたら未来の自分自身を生きている。生者の世界にある。
私が幼稚園の備品に自らのサイズを合わせるように奇妙に縮み歪んでいっても、私の中に息づく生命力はその奇形には収まりきらない。
最も死者が遠い夏至の日を選んでプール開きをする -
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細かい描写を読み進めていると、いつのまにか物語のなかに入り込んでいる感覚。そして、思わぬ方向に連れていかれている。『盗作』もまさにそんな感じだった。
『失踪者達の王国』の伯母さん、『キリコさんの失敗』のキリコさん、『エーデルワイス』の弟、それぞれが大切にしているものや事柄と、それに対する思いを、私はちゃんと感じとれたか、と思ってしまった。
『涙腺水晶結石症』は、一番好きだった。ひどい雨のなか、ベビーカーと40キロのラブラドールのアポロを連れ、歩く。孤独を感じながらも、大切なものを守りたい思いに後押しされ、頑張る気持ち、そして訪れる絶望、希望。小さな白い結晶がそれらの全てをもたらした。アポロ -
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昔、立花隆の「サル学の現在」を読んで、人類の先祖がチンパンジーのように残忍ではなく、ゴリラのように穏やかな性格だったら我々はもっと平和な歴史を刻んだだろうなと思っていた。どうやら、僕の考え違いだったようだ。山際先生は集団間の暴力の理由を言葉、死者の利用、共感性としている。ユヴァル・ノア・ハラリ「サンオピエンス全史」言う処の認知革命が原因なんだな。
山際先生の近親相姦のタブーの起原説に納得した。育てる経験が性的な関心を抑制する。そのインセスト・タブーがあるからこそ娘を他の家に差し出すことができる。また、類人猿のメスは親元を離れて繁殖するとある。
ここでレヴィ・ストロースの云う「女の交換」が発生 -
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河合さんの本を読むのは2冊目ですが、このおじさん好きだわ。大人が失った、子どものときに持っている力に着目されているところとか、深くお聞きしてみたい。それとか、相手の存在を受けとめる力も見習いたい。
この方のそういう人間力の根っこに、文学とか人文学的な関心とか経験が大いにあるんだなと実感する。まさに、生きることは、自分の物語をつくること であると、自分に対しても他人に対しても思いながら人と関わっておられるのだなと思った。
「博士の愛した数式」は映画で観たのみですが、そういう河合さん的な、子どもの力に着目するような読み方をしたら面白そうだと思った。 -
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鳥と島 学生時代は猛勉強したら、追いつけない人などいないと思っていました。でも、だんだんと世界の広さを知り、才能を持っている人がいることに気づき、努力や練習では辿り着けない場所があることが分かったのです。それなのにそのことを肯定できない時間が続き、藻掻き苦しみました。その結果、こんなポンコツな人間が出来上がったのだと思います。
世界が認めるこの小説を身体に浸み込むように読めたらなと思いながら読みました。
ある島から色々なものの記憶が消えていくというお話です。その中で「島」で「鳥」が消えるくだりが出てきます。漢字が似ていて「島」を「鳥」と読んだり、「鳥」を「島」と読んだりしてしまいま -
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とあるアーケードを軸にした短編集。それぞれの話が絡み合って短編集全体として一つの作品となっている。何かをテーマにした短編集は小川洋子さんのよくあるパターンだが、それぞれの話が関連し合うというのは意外と珍しいかも。こういう個別の話はそれぞれで完結するものの全体として大きな話が流れてる、というのは連続もののTVドラマとかでよくある手法と思うが、1話ずつの長さがちょっと読むのにちょうどいい分量なのもあり、TVドラマを見ているような趣もある。
内容は小川洋子さん特有の現代のファンタジー。レースの切れ端、使われた絵葉書、義眼など、何だか美しくて儚い雰囲気がいい。特に以前読んだ『猫を抱いて象と泳ぐ』の空