小川洋子のレビュー一覧
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鳥と島 学生時代は猛勉強したら、追いつけない人などいないと思っていました。でも、だんだんと世界の広さを知り、才能を持っている人がいることに気づき、努力や練習では辿り着けない場所があることが分かったのです。それなのにそのことを肯定できない時間が続き、藻掻き苦しみました。その結果、こんなポンコツな人間が出来上がったのだと思います。
世界が認めるこの小説を身体に浸み込むように読めたらなと思いながら読みました。
ある島から色々なものの記憶が消えていくというお話です。その中で「島」で「鳥」が消えるくだりが出てきます。漢字が似ていて「島」を「鳥」と読んだり、「鳥」を「島」と読んだりしてしまいま -
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とあるアーケードを軸にした短編集。それぞれの話が絡み合って短編集全体として一つの作品となっている。何かをテーマにした短編集は小川洋子さんのよくあるパターンだが、それぞれの話が関連し合うというのは意外と珍しいかも。こういう個別の話はそれぞれで完結するものの全体として大きな話が流れてる、というのは連続もののTVドラマとかでよくある手法と思うが、1話ずつの長さがちょっと読むのにちょうどいい分量なのもあり、TVドラマを見ているような趣もある。
内容は小川洋子さん特有の現代のファンタジー。レースの切れ端、使われた絵葉書、義眼など、何だか美しくて儚い雰囲気がいい。特に以前読んだ『猫を抱いて象と泳ぐ』の空 -
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ネタバレ小川洋子さんによる動物がテーマの短編集。2013年発行ですからちょい前のものです。
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作りとしては短編集となっています。相変わらず不思議な物語を綴ります。
タイトルに動物が絡みますが、物語は時として重層的に進みます。
あらすじを書こうと思ったのですが、上記の重層性の関係で説明しきれんと思い、このようにバッサリやりました。
帯同馬・・・タイトルは『フランスの凱旋門賞で優勝が期待されるディープ・インパクト。慣れない土地への移動のストレスを緩和するためにピカレスクコートが帯同場として出国した。』という点より。主人公は(おそらく)大阪モノレール間のみ移動できる電車恐怖症の女性(職業;実演 -
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場所は日本なのか?登場人物は日本人なのか?それとも外国の話なのか?ブラフマンと名付けられた動物は猫なのか、野生動物なのか?最初から最後まで想像力をあちらへこちらへと働かせながら読書する絵のない絵本のような小説でした。
人生経験を総動員して小説中の情景を想像する。その情景をこれまで見聞きした人物、生き物、映像に当てはめる。あまりいい読書の仕方ではないなーと思いつつ、情景にあった映像パズル探しが覚醒しました。たぶん作者の意図に沿った映像を半分も見つけられなかったと思いますが、勝手に想い描いた映像を構成すると立派な映画が自分の中で出来上がっていました!
読書をする際に自分の感性を信じて読みひたること -
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ネタバレ『やさしい訴え』
ラモー作曲のチェンバロの曲だ。
『やさしい訴え』は新田氏と薫さんを静かに結びつける。瑠璃子さんがいくら新田氏と物理的に近づいたとしても。
三人とも傷を負っていた。演奏恐怖に陥ってしまったピアニスト。婚約者を結婚直前に亡くした女性。夫の不倫で居場所をなくした女性。
瑠璃子さんの発する嫉妬にまみれた言葉が、宙を舞う。その訴えは当たり前の感情だと思うけど、発すれば発するほど新田氏との距離が遠ざかっていくように思える。
やはりきっぱりと瑠璃子さんは失恋した。
瑠璃子さんに居場所は見つかるのだろうか。
薫さんの純粋な真っ直ぐさがドロドロを消していく。
かなわないんだな。
瑠璃子さんが -
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小川洋子さんの優しい痛みを伴うお話が好きで、よく読むんだけど。こちらは、お友達にお勧めしてもらったエッセイ。人間の体の部位をこんなにも美しく語れるなんて、さすが小川洋子さん。その中でも、「声」についてのエッセイが良かった。ここだけ、体の部位じゃないんだもんな。考えてみると、「声」って不思議。臓器で空気を振動させて音を作り出す。その空気の震えがあなたの鼓膜を揺らす…。なんか、すごくない?(語彙力!)私の妹が沖縄三線の新人賞コンテスト?に出た時のこと。古典だから、歌詞なんて全くわからない。にもかかわらず、まったくの門外漢の私にも良い歌はわかる。声って楽器なんだな、と思った。ヨガのYouTubeも見
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短編集。人間らしいというか、人間も一つのただの生き物として生々しく描かれるお話と、
一つの生き物としてとにかく美しくこの世のものでは無いくらい神秘的に描かれるお話もあり、
それらが小さな箱にぎゅっと詰まっている、感覚。
この感覚何かに似てると思いながら、なかなか思い出せなかった。とにかく繊細に微細に作り込まれたすぐに壊れてしまうような美しい芸術品のような、
それぞれの個性が際立つ小さなチョコレートとか、クッキーと、そんなお菓子たちが詰まってる箱をゆっくり味わっているような感覚かも、と、一つ一つをいただきながらたどり着いた。
この手の短編は一つ一つがとにかく心に残りながら読み進めるのに、あまり