小川洋子のレビュー一覧
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ネタバレ島の物が消えていく段階はなぜか普通に受け入れることができた。体が消え始めた段階でぞくっとした。
その不自由さが恐ろしかった。でもわたしや島の人はすぐにその状況に慣れてしまう。いずれおさまるべきところにおさまると言って。
R氏は何度もわたしの記憶のカケラに明かりを灯そうとするが、わたしは消滅を受け入れていく。なぜ危機感を抱かないのか抵抗しないのかどんどん不安になった。
何かが消滅したところで結局生きていられるという部分が、安心感と静かな恐ろしさを与えていく。
現代人もそうかもしれない。私たちはどんどん暗い未来に足を踏み入れているにも関わらず、見て見ぬ振りをして受け入れている。何か大変なことが起こ -
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ネタバレ小川洋子と工場という組み合わせは、あまりにギャップがあるだろう。
小川洋子の作品は、静けさのイメージが強くて、まるで水中に深く潜っていくような、徐々に周りの音が聞こえなくなって、少し不可思議で、あやういバランスを保つ世界にどっぷり浸かるような読書、と思っていた。
対して工場はというと、少し騒々しくて、大規模にきっちりと整えられた、不可思議とは縁のない、すべて合理性に則った場所、という気がしてしまう。
その両者がこんなにすっきりとマッチするものなのか、というよりも、自分の認識が浅かったというか。
取り上げられている工場は、大規模なところもあるけれども、どちらかというとかなり小規模にやっている -
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敬愛する作家にして、読書好きにとっての憧れでもある小川洋子の、本にまつわるエッセイ集や、あとがき寄稿文を収録した一冊。
物語、それを生み出す作家、彼らにまつわる物事。本を形作るあらゆる要素に、深い敬意と、誠実でひたむきなまなざしが注がれている。
『偏愛短編箱』、『陶酔短編箱』等のアンソロジーもそうだけれど、小川さんの書評は単なる作品紹介や解説の枠にとどまらない。物語の世界に思いを寄せ、丹念な言葉でそれを紡ぐ、どこか祈りにも似た静かな熱意が感じられる。
その祈りに、もっと深く身を浸してみたい。心震わせてみたい。
私もそう願って、本書で紹介されている作品をひとつずつ読み進めているところ。 -
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ネタバレ博物館技師は、田舎に新しい博物館を建てる依頼を受ける。依頼主の老婆は、犯罪ギリギリの方法で手に入れてきた、亡くなった村人たちの形見を展示する博物館を建てようとしていた。
いいな、私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。(p49)
老婆の言っていることは、恐ろしくもあるように思う。彼女は、亡くなった人々の形見を保存することで、「死の完結を永遠に阻止」しようとしているのである。
なぜ、彼女はそんなことをする -
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みんな少しずつ偏っていてそれはある意味孤独なんだけど、寂しさよりも静かな強さ、したたかな美しさを感じる短編集。
物語たちそのものもとても素敵。特にそれぞれの余韻たっぷりな終わり方がいい。
ただ何より、心情や状況の描写、比喩のひとつひとつがときめく程美しくてたまらなかった。
「亡き王女のための刺繍」と「一つの歌を分け合う」が特に好き。でも選べないくらいどれも良かった。
色々な方が小川洋子さんの文章はうつくしいと言っている意味が、読み始めてすぐに理解出来た。
淀みなく流れるようで、でも確実にひとつひとつがきらめいていて虜になってしまう。
博士の愛した数式をかなり昔に読んだはずだけど、それ以 -
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自分にとって、こういう読書案内を読む楽しみは2種類ある。1つは、次に読みたい本を見つけること、自分が読んだことがない本で、面白そうな本を見つけること、それが1つ。もう1つは、自分がかつて読んだ本が、どのように紹介されているか、小川洋子さんのような書き手が、それをどのように読んだのかを確かめること、これが2つ目の楽しみだ。
この読書案内で、前者、すなわち、これから読んでみたいな、と思ったのは、大岡昇平の一連の著作、カズオ・イシグロの「日の名残り」、「おくのほそ道」、宮本輝の「錦繍」、島尾敏雄の「死の棘」、アリステア・マクラウドの「冬の犬」、中上健次の一連の著作といったところ。
後者、すなわち、自 -
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ネタバレ確かインスタグラムで紹介されていた本。
小川洋子さんの文体が本当に好き。柔らかで優しくて丁寧に読まないと壊れてしまいそうな文体。
そこから紡ぎ出される物語もやはり柔らかで誰かを包み込むような作品。
あるアーケードの配達員さんのお話。不思議な店ばかりでそこにやってくるお客さんもなかなか癖がある。
でもさも普通ですよ、というように商売をしている店主たちと当たり前ですよ、というような顔をしてやってくるお客さんたちには違和感を覚えつつも優しい気持ちにさせられる。小川洋子マジック。
一番好きだったのはラビト夫人。
一番理解できなくて一番幸せになってほしいお客さんだった。