小川洋子のレビュー一覧

  • いつも彼らはどこかに

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    動物に関する8編

    ビーバーの話が好きだった。
    小川洋子さんの物語はいい意味で少し世間ズレしているというか、浮世離れしている感じがする。

    サスペンスものやリアリティとかの実際的な出来事に対して深掘りしていくというよりは、小川さんの世界に引き込まれていって、現実的ではなくてもこういう世界、見方もあるんだよと感じる。

    いろんな物語の中で、世間一般の言い方をすると落ちこぼれ、低所得者、フリーター、ホームレス、と一括りにされる人たちに目を向けてひそやかで穏やかな世界を見せてくれることもある。
    この人独自の書き方を無視できない。

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    2025年07月04日
  • 密やかな結晶 新装版

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    ネタバレ

    島の物が消えていく段階はなぜか普通に受け入れることができた。体が消え始めた段階でぞくっとした。
    その不自由さが恐ろしかった。でもわたしや島の人はすぐにその状況に慣れてしまう。いずれおさまるべきところにおさまると言って。
    R氏は何度もわたしの記憶のカケラに明かりを灯そうとするが、わたしは消滅を受け入れていく。なぜ危機感を抱かないのか抵抗しないのかどんどん不安になった。
    何かが消滅したところで結局生きていられるという部分が、安心感と静かな恐ろしさを与えていく。
    現代人もそうかもしれない。私たちはどんどん暗い未来に足を踏み入れているにも関わらず、見て見ぬ振りをして受け入れている。何か大変なことが起こ

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    2025年07月03日
  • そこに工場があるかぎり

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    ネタバレ

    小川洋子と工場という組み合わせは、あまりにギャップがあるだろう。
    小川洋子の作品は、静けさのイメージが強くて、まるで水中に深く潜っていくような、徐々に周りの音が聞こえなくなって、少し不可思議で、あやういバランスを保つ世界にどっぷり浸かるような読書、と思っていた。
    対して工場はというと、少し騒々しくて、大規模にきっちりと整えられた、不可思議とは縁のない、すべて合理性に則った場所、という気がしてしまう。

    その両者がこんなにすっきりとマッチするものなのか、というよりも、自分の認識が浅かったというか。

    取り上げられている工場は、大規模なところもあるけれども、どちらかというとかなり小規模にやっている

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    2025年06月29日
  • 薬指の標本

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    小川洋子さんの文章が大好きです。
    小川洋子さんの作品で登場人物が亡くなっても、ただ悲しいだけではなくその情景が印象的に美しく描かれていると思います。
    薬指の先を無くす場面も、火傷の場面も、少しもグロテスクではなくむしろ綺麗な情景として描かれていると思います。

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    2025年06月26日
  • 妊娠カレンダー

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    小川洋子さんは初読みだった。
    なるほどこういう作家さんかと今さらながら知った。
    本の後ろを読んで、買ってみたが表題作である妊娠カレンダーはほのぼのした、妊婦の日記ではなく、なんとも言えない鬱屈した気持ちというか、妊婦が全員朗らかな気持ちでいるわけではないとか、なかなか鋭い切れ味のお話で好みだった。
    他の2作も良かったが、これは私の解釈が追い付かない部分もあった。これが小川洋子さんという作家という事が分かり、読んで良かったと思う。

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    2025年06月24日
  • ミーナの行進

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    小川洋子さんらしい逸品 丁寧に小さなエピソードが重ねられ やがて、全体像がとても暖かな感動を引き起こしてくれる 2024年に読むべき百冊にTime誌が入れた唯一の日本の小説

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    2025年06月23日
  • 遠慮深いうたた寝

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    小川洋子さんの思い出話や本の感想、妄想や半分小説のようなお話をまとめたエッセイ。
    小川さんの魅力が詰まった作品でした。
    特に『答えのない問い』という作品で、小説を読んで、わけがわからない、面白くないと自分の狭い価値観で作品を否定してしまうことがあるけれど、分かる分からないにこだわるのは実にもったいないということ。分からない自分の未熟さを認めると、一気に視界が広がるという小川さんの言葉が心に響きました。
    また読み返したくなるエッセイです。

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    2025年06月21日
  • 博士の本棚

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    敬愛する作家にして、読書好きにとっての憧れでもある小川洋子の、本にまつわるエッセイ集や、あとがき寄稿文を収録した一冊。

    物語、それを生み出す作家、彼らにまつわる物事。本を形作るあらゆる要素に、深い敬意と、誠実でひたむきなまなざしが注がれている。

    『偏愛短編箱』、『陶酔短編箱』等のアンソロジーもそうだけれど、小川さんの書評は単なる作品紹介や解説の枠にとどまらない。物語の世界に思いを寄せ、丹念な言葉でそれを紡ぐ、どこか祈りにも似た静かな熱意が感じられる。

    その祈りに、もっと深く身を浸してみたい。心震わせてみたい。
    私もそう願って、本書で紹介されている作品をひとつずつ読み進めているところ。

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    2025年06月08日
  • まぶた

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    どの物語も、清々しく美しくて、清潔感が有る。前半は、その清潔感の裏に潜む、捉えようの無い不穏な空気や、どこまで深いか分からない闇、恐怖に似た冷たい感覚が際立って押し寄せてくる様な物語。
    後半は逆に、その清潔感を使い古されたモノや老いた人間の中にも写し込み、決して新品や綺麗で皺一つないものからは醸し出せない奥行きを表現していて、温かみを感じる物語だった。

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    2025年05月30日
  • ミーナの行進

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    小川洋子さんらしい作品、と言いながらそんなにたくさん読んでるわけではないが・・ゴメン

    物語は二人の少女を中心に静かに進んでいく。静謐な中に少しだけ不穏な空気を漂わせて。いかにも小川洋子さんらしい作品だと感じた。

    クライマックスはあっけないと言えばあっけないが、男の私には二人の少女の関係性がなんとも言えずに細やかに描かれていて、心の襞に入り込んでくる。いい物語を読んだという気になりました。

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    2025年05月29日
  • 貴婦人Aの蘇生 新装版

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    ネタバレ

    小川さんの初期作品、1999年から2001年まで連載された作品の新装版。

    伯母がロマノフ王朝の皇女かも?という謎があっても淡々とした主人公はいつもの小川作品だけど剥製マニアのブローカー小原はちょっと珍しいタイプ。伯母とこの小原のやり取りがシュールでクスっと笑えて面白かった。胡散臭いけどいいやつじゃん?って感じ。

    胡散臭いと感じる登場人物がいるというのが初期作品だと感じました、最近だとどんな胡散臭さも納得させられる気がします。

    剥製だらけの家とロシアって絶妙な取り合わせでときめきました。

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    2025年05月27日
  • 最果てアーケード

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    小川洋子さん初読みです。
    静かで不思議な世界観と、小川さんの美しい文章がとても心地よい作品でした。
    使用済みの絵葉書や義眼、ドアノブなど、その物から持ち主の思いが感じられ、その思いを大切にしている店主たちのまなざしに心があたたかくなりました。主人公の「私」の存在が少しずつ明らかになり、読み終えると『最果てアーケード』の意味がわかります。
    また読み返したくなる作品でした。

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    2025年05月25日
  • 耳に棲むもの

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    閉じられた静かな孤独で満たされている世界をひたすらにたゆたえる味わい深い本。小川洋子さんはこれまで何冊か読んで来たものの私個人の好みとは微妙にズレていることが多かったのですが、これは一瞬で恋に堕ちてしまった。心と身体に染み渡る静けさを深く堪能出来た。

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    2025年05月23日
  • 沈黙博物館

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    ネタバレ

    博物館技師は、田舎に新しい博物館を建てる依頼を受ける。依頼主の老婆は、犯罪ギリギリの方法で手に入れてきた、亡くなった村人たちの形見を展示する博物館を建てようとしていた。

    いいな、私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。(p49)

    老婆の言っていることは、恐ろしくもあるように思う。彼女は、亡くなった人々の形見を保存することで、「死の完結を永遠に阻止」しようとしているのである。
    なぜ、彼女はそんなことをする

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    2025年05月20日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    みんな少しずつ偏っていてそれはある意味孤独なんだけど、寂しさよりも静かな強さ、したたかな美しさを感じる短編集。

    物語たちそのものもとても素敵。特にそれぞれの余韻たっぷりな終わり方がいい。
    ただ何より、心情や状況の描写、比喩のひとつひとつがときめく程美しくてたまらなかった。

    「亡き王女のための刺繍」と「一つの歌を分け合う」が特に好き。でも選べないくらいどれも良かった。

    色々な方が小川洋子さんの文章はうつくしいと言っている意味が、読み始めてすぐに理解出来た。
    淀みなく流れるようで、でも確実にひとつひとつがきらめいていて虜になってしまう。

    博士の愛した数式をかなり昔に読んだはずだけど、それ以

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    2025年05月16日
  • 耳に棲むもの

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    ある意味、童話的でメルヘンでもあり残酷でもあり、時代や地域(国)を超えた普遍性がある作品だと思う。ある補聴器販売員を軸とした物語。

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    2025年05月11日
  • 心と響き合う読書案内

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    自分にとって、こういう読書案内を読む楽しみは2種類ある。1つは、次に読みたい本を見つけること、自分が読んだことがない本で、面白そうな本を見つけること、それが1つ。もう1つは、自分がかつて読んだ本が、どのように紹介されているか、小川洋子さんのような書き手が、それをどのように読んだのかを確かめること、これが2つ目の楽しみだ。
    この読書案内で、前者、すなわち、これから読んでみたいな、と思ったのは、大岡昇平の一連の著作、カズオ・イシグロの「日の名残り」、「おくのほそ道」、宮本輝の「錦繍」、島尾敏雄の「死の棘」、アリステア・マクラウドの「冬の犬」、中上健次の一連の著作といったところ。
    後者、すなわち、自

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    2025年05月11日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    奇妙で怖さもあるけれど、どこか滑稽さも漂う短編集。野球の話2つとエレベーターに住む「イービー」の話が記憶に残る。文章と描写が美しくて小説なのに映像を見ているような感覚。全面帯を見て選んだ一冊、心に残る素敵な読書体験になりました。

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    2025年05月10日
  • やさしい訴え

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    小川さんの作品の中でも、ファンタジー要素がかなり少なく、ただ、そこには小川さんらしい透明感や静けさがきちんとあって、痛みを伴う男女関係の中にも澄んだせせらぎのような愛の流れを感じられるお話だった。

    チェンバロとカリグラフィー、目と耳、犬と猫、男と女。象徴的なもの達が作中で、自分の役割を行儀よく待っている。
    小川さんは誰よりも愛が失われていく様を美しく書く人だと思うので、この作品はそれがすごく表現されているように感じた。

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    2025年05月10日
  • 最果てアーケード

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    ネタバレ

    確かインスタグラムで紹介されていた本。
    小川洋子さんの文体が本当に好き。柔らかで優しくて丁寧に読まないと壊れてしまいそうな文体。
    そこから紡ぎ出される物語もやはり柔らかで誰かを包み込むような作品。
    あるアーケードの配達員さんのお話。不思議な店ばかりでそこにやってくるお客さんもなかなか癖がある。
    でもさも普通ですよ、というように商売をしている店主たちと当たり前ですよ、というような顔をしてやってくるお客さんたちには違和感を覚えつつも優しい気持ちにさせられる。小川洋子マジック。
    一番好きだったのはラビト夫人。
    一番理解できなくて一番幸せになってほしいお客さんだった。

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    2025年05月10日