小川洋子のレビュー一覧

  • 密やかな結晶 新装版

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    鳥と島 学生時代は猛勉強したら、追いつけない人などいないと思っていました。でも、だんだんと世界の広さを知り、才能を持っている人がいることに気づき、努力や練習では辿り着けない場所があることが分かったのです。それなのにそのことを肯定できない時間が続き、藻掻き苦しみました。その結果、こんなポンコツな人間が出来上がったのだと思います。

    世界が認めるこの小説を身体に浸み込むように読めたらなと思いながら読みました。

    ある島から色々なものの記憶が消えていくというお話です。その中で「島」で「鳥」が消えるくだりが出てきます。漢字が似ていて「島」を「鳥」と読んだり、「鳥」を「島」と読んだりしてしまいま

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    2025年12月03日
  • ブラフマンの埋葬

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    タイトルからも、どこかでこの愛すべきブラフマンとの別れがあるのか、と推測しながら、その美しい自然に囲まれた世界の中での、ブラフマンとの愛おしい生活を、爽やかな文体と共にドキドキしながら味わった。

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    2024年04月21日
  • 最果てアーケード

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    とあるアーケードを軸にした短編集。それぞれの話が絡み合って短編集全体として一つの作品となっている。何かをテーマにした短編集は小川洋子さんのよくあるパターンだが、それぞれの話が関連し合うというのは意外と珍しいかも。こういう個別の話はそれぞれで完結するものの全体として大きな話が流れてる、というのは連続もののTVドラマとかでよくある手法と思うが、1話ずつの長さがちょっと読むのにちょうどいい分量なのもあり、TVドラマを見ているような趣もある。

    内容は小川洋子さん特有の現代のファンタジー。レースの切れ端、使われた絵葉書、義眼など、何だか美しくて儚い雰囲気がいい。特に以前読んだ『猫を抱いて象と泳ぐ』の空

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    2024年04月21日
  • 完璧な病室

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    目に見えないものを見て
    外から見えようがない物を抱えて生きていく
    抱きしめられて、包まれないと慰められないのかしら

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    2024年04月20日
  • 沈黙博物館

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    形見を収蔵する博物館で、それぞれの人生を象徴するものの文脈を紡ぐ物語。事件の犯人が誰なのか、途中の展開の仕方が絶妙でスリリングだった

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    2024年04月18日
  • いつも彼らはどこかに

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    ネタバレ

    小川洋子さんによる動物がテーマの短編集。2013年発行ですからちょい前のものです。

    ・・・
    作りとしては短編集となっています。相変わらず不思議な物語を綴ります。

    タイトルに動物が絡みますが、物語は時として重層的に進みます。

    あらすじを書こうと思ったのですが、上記の重層性の関係で説明しきれんと思い、このようにバッサリやりました。

    帯同馬・・・タイトルは『フランスの凱旋門賞で優勝が期待されるディープ・インパクト。慣れない土地への移動のストレスを緩和するためにピカレスクコートが帯同場として出国した。』という点より。主人公は(おそらく)大阪モノレール間のみ移動できる電車恐怖症の女性(職業;実演

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    2024年04月14日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    奇妙で微笑ましくも少し怖い9つの短編。

    狭い。小さい。無くなる。
    待ってましたと言わんばかりの小川ワールド。

    野球や甲子園の描写が魅力的。
    生き生きとした人や風景と匂いが伝わる。

    「夜明けの縁」とは何か。
    しばらく思いにふける。

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    2024年04月12日
  • やさしい訴え

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    ネタバレ

    花巻空港が出てきたので、
    主人公が逃げ込んだ別荘は
    春子谷地や安比高原あたりの別荘地やペンション街を勝手に思い浮かべて読んだ。

    でも物語を読んでいる最中は
    外国にいるような不思議な空気感に包まれる。

    チェンバロ、
    カリグラフィー、
    なんとも幻想的な湖や森。

    夫に裏切られたり、暴力を振るわれたわけだから
    本来なら暗くなりそうな内容なのに、
    その世界が癒やしてくれるような気がした。

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    2024年04月09日
  • ブラフマンの埋葬

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    場所は日本なのか?登場人物は日本人なのか?それとも外国の話なのか?ブラフマンと名付けられた動物は猫なのか、野生動物なのか?最初から最後まで想像力をあちらへこちらへと働かせながら読書する絵のない絵本のような小説でした。
    人生経験を総動員して小説中の情景を想像する。その情景をこれまで見聞きした人物、生き物、映像に当てはめる。あまりいい読書の仕方ではないなーと思いつつ、情景にあった映像パズル探しが覚醒しました。たぶん作者の意図に沿った映像を半分も見つけられなかったと思いますが、勝手に想い描いた映像を構成すると立派な映画が自分の中で出来上がっていました!
    読書をする際に自分の感性を信じて読みひたること

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    2024年03月25日
  • やさしい訴え

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    ネタバレ

    『やさしい訴え』
    ラモー作曲のチェンバロの曲だ。

    『やさしい訴え』は新田氏と薫さんを静かに結びつける。瑠璃子さんがいくら新田氏と物理的に近づいたとしても。
    三人とも傷を負っていた。演奏恐怖に陥ってしまったピアニスト。婚約者を結婚直前に亡くした女性。夫の不倫で居場所をなくした女性。
    瑠璃子さんの発する嫉妬にまみれた言葉が、宙を舞う。その訴えは当たり前の感情だと思うけど、発すれば発するほど新田氏との距離が遠ざかっていくように思える。
    やはりきっぱりと瑠璃子さんは失恋した。
    瑠璃子さんに居場所は見つかるのだろうか。
    薫さんの純粋な真っ直ぐさがドロドロを消していく。
    かなわないんだな。
    瑠璃子さんが

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    2024年03月24日
  • からだの美

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    小川洋子さんの優しい痛みを伴うお話が好きで、よく読むんだけど。こちらは、お友達にお勧めしてもらったエッセイ。人間の体の部位をこんなにも美しく語れるなんて、さすが小川洋子さん。その中でも、「声」についてのエッセイが良かった。ここだけ、体の部位じゃないんだもんな。考えてみると、「声」って不思議。臓器で空気を振動させて音を作り出す。その空気の震えがあなたの鼓膜を揺らす…。なんか、すごくない?(語彙力!)私の妹が沖縄三線の新人賞コンテスト?に出た時のこと。古典だから、歌詞なんて全くわからない。にもかかわらず、まったくの門外漢の私にも良い歌はわかる。声って楽器なんだな、と思った。ヨガのYouTubeも見

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    2024年03月24日
  • からだの美

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    小川洋子さんの書く、何気ない物事の細部に目を凝らすようなエッセイがとても好き。今回は色々な分野のプロの方々や動物たちのからだの動きや思考についての考察で、やっぱり好きだった。高橋大輔選手のプログラムを見返したくなった。

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    2024年02月20日
  • からだの美

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    小川さんの描写はさすがに細かく、鋭い観察眼というのがよくわかる。そうなのだが、それぞれに写真が添えられていて、その写真がみんな素晴らしい。

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    2024年02月18日
  • 約束された移動

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    「移動する」物語6篇。
    それぞれ主人公の秘密をこっそり教えてくれているような感覚になる。
    秘密という言葉は尊厳という言葉に置き換えてもいいという解説も印象深い。
    そして毎回作者の人や動物の表現が緻密で驚かされる。

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    2024年02月17日
  • ブラフマンの埋葬

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    作者の動物の描写には脱帽。ワールド全開。
    章の終わりのブラフマンの取説が微笑ましい。
    ラストは唐突でありながら埋葬品の中身で救われる。
    いつまでも読んでいたいと思わせてくれる作品。

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    2024年02月17日
  • いつも彼らはどこかに

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    「彼ら」とは動物。
    8篇とも人の傍に寄り添い重要な役割をする。
    静かで温かい。
    中年女性が主人公の「帯同馬」と「竜の子幼稚園」が特に良い。
    自然と小川洋子本人が主人公のように想像してしまい不思議な感覚になる。

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    2024年02月17日
  • 海

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    静かで奇妙な7つの短編。
    他の作品同様小さな世界や特殊な人たちの描き方が独特。
    知らない世界でも実は既に知っていたんじゃないかと思うほど目に浮かんでくる。
    著者へのインタビューも充実。
    過去の作品の話も知ることができうれしい。

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    2024年02月17日
  • 最果てアーケード

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    特殊で個性的な店が集まる世界で一番小さなアーケード。
    配達係の女の子の視点でアーケードの出来事が語られる。
    お客さんも個性的で面白く引き込まれる。
    微笑ましさと物哀しさが同居した著者ならではの世界を堪能する。

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    2024年02月17日
  • いつも彼らはどこかに

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    短編集。人間らしいというか、人間も一つのただの生き物として生々しく描かれるお話と、
    一つの生き物としてとにかく美しくこの世のものでは無いくらい神秘的に描かれるお話もあり、
    それらが小さな箱にぎゅっと詰まっている、感覚。
    この感覚何かに似てると思いながら、なかなか思い出せなかった。とにかく繊細に微細に作り込まれたすぐに壊れてしまうような美しい芸術品のような、
    それぞれの個性が際立つ小さなチョコレートとか、クッキーと、そんなお菓子たちが詰まってる箱をゆっくり味わっているような感覚かも、と、一つ一つをいただきながらたどり着いた。

    この手の短編は一つ一つがとにかく心に残りながら読み進めるのに、あまり

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    2024年02月15日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    小川洋子さんの拠り所のような本である「アンネの日記」
    「アンネの日記」はまだ人生で完読してないので、こちらを読んでみた。アンネが日記を書くことを通して自分を客観的に捉えていたり、過酷な状況下でもユーモアを交えて文章を書いている早熟さを感じた。

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    2024年02月12日