小川洋子のレビュー一覧

  • 海

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    だいぶ古い本ですが、読んでいなかったので手に取りました。
    短編集です。
    私としては、タイピストを抱える会社の話が印象的でした。
    タイプライターのだめになった文字を管理する人、その管理人に恋心を抱くタイピスト、ダメになった文字を含んだ文章・・・
    ぎょっとするような文章も、タイピストはすました顔でタイプし続けるのです。
    仕事ですから。

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    2022年01月03日
  • ブラフマンの埋葬

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    小川洋子さんの作品は、生物の生と死を連続的なものとして、日常の延長線上に捉えているように感じることが多い。最後、ブラフマンは突然の死を迎えるような印象だが、生の次の形としての死として作者としては自然の成り行きと捉えているのかもしれない。また、ブラフマンの死の直前に青年と娘の関係性に変化が現れるような含みを持たせていて、ブラフマンの喪失が娘との関係性の発展を暗示しているのかも。穿ちすぎ?

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    2021年12月30日
  • 凍りついた香り

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    ★3.5、が相も変わらず全く覚えていない再読のおまけで★4。
    本作が発表された年を考えると、この作家の志向は既にこの時点でしっかり確立されていて、この空気を良しとするか否かで読者を選別しているようにも思われまする。
    この観点で小川洋子という独自性は唯一無二なんだろうと。

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    2021年12月30日
  • 琥珀のまたたき

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    壁の内側で暮らした3きょうだいの話。

    ため息が出るような美しさ、
    身動ぎひとつで台無しにしてしまうほどの静けさ、
    うすら寒い不気味さ、喪失後の生の残酷さ……
    彼らの全てになった閉じた世界は、
    どこか狂っている。

    壁の内側ではママの言いつけが法律だ。
    でも、彼らは少しずつ
    ママへの内緒事を作ってしまう。
    閉じた世界も少しずつ崩壊していく。

    内緒ごとと崩壊の理は、
    超個人的な経験を持って痛感していて、
    豊富ではない恋愛経験の中のひとつが
    そうだったなと思い出す。

    保身のための小さな嘘を守るために
    内緒ごとが増えて、
    そうなってからは長くは続かなかったんだっけ。
    嘘をついてまで守りたかった関

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    2021年12月24日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    似たような悩み、同じ病状、同じ類型であっても、そこに至るルートには独自性があって。

    その解決に一定のパターンがあっても、至る思考ルートには独自性がある。

    どこの視座に立つか。マクロに見ればどんなこともパターン化する。ミクロに見れば独自性はある。物語とはミクロなものです。「人間」が主語の物語が面白いだろうか? 必ず個別な物語を人は楽しむでしょう。そして個性というのはミクロに見れば誰にでも見つけられるものだから、価値が無いようで有るかもしれない矛盾とどう生きていくかが物語になるのでしょう。

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    2021年12月05日
  • 不時着する流星たち

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    実在する人物や事実から着想を得た短編集。
    その周りに、光の当たらない薄暗がりに、
    いたかもしれない人たちの密やかな話。

    穏やかな筆致で歪な世界を描き出し、
    切ない幸せと残酷な喪失に心を乱される、
    The 小川ワールドの真髄という感じだし、
    世界が1冊に10個もあるうえに、
    事実が絡んでるから、
    もしやこれは本当のことかも、
    案外自分のそばにあるかも、なんて思ってしまう。
    ファン大歓喜の作品なのでは。

    今作でも、ちょっと変わったこだわり、
    もしくは執着を礎にして構築された
    自分だけの世界を持っている人達が描かれている。
    そのこだわりが行動に制約をうんだり、
    世間とのズレをうんだりして、
    どこ

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    2021年12月04日
  • 原稿零枚日記

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    最初は小川洋子さん自身の日記なのかと思いながら読みました。途中で違うって気が付きました。タイトルから想像していたより哀しい話でした。いや、作家さんにとっては、このタイトルはとても哀しいのかな。私の夫に本のタイトルを見せたら、「一冊分の原稿が書けてるじゃん」と言われてしまいました。運動会や赤ちゃんのお相撲や新生児室に行く話は何だか本当にありそうだなあ。って感じました。

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    2021年12月03日
  • ブラフマンの埋葬

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    淡々と過ぎて行く孤独な日々で、いつも傍らにいたブラフマン。あまりにも唐突な事件に言葉を失ってしまった。読みながら涙が止まらなくなった。ずっと大事にしたい作品。

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    2021年12月03日
  • そこに工場があるかぎり

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    小川洋子流工場見学記、ですね。
    作家が工場見学記を書くと、工場の様子も文学的になりますね。
    扱っている工場は、いわゆる町工場が多く、自分好みでした。

    ちなみに、小川洋子の生家付近の様子も書かれていまして、岡山県出身の自分には、その光景がくっきりと目に浮かび、とっても懐かしさを感じました。
    そして実は、それだけでなく、全体的に懐かしさを感じる文体でした。
    だからといって、ノスタルジーに浸るだけでなく、工場としての矜持を感じる部分もたくさんあり、読んでいて身が引き締まる、そして心地よい本でした。

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    2021年11月16日
  • アンネ・フランクの記憶

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    「アンネの日記」を教条的な読み物として捉えず、「友の日記」として寄り添い、その瑞々しい言葉と記憶を自らの胸に刻んだ時はじめて、あの時代に起きた夥しい死が、真に心に迫ってくる。

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    2021年11月14日
  • 余白の愛

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    静かな静かな物語。
    記憶が現実を癒していく美しい小説でした。
    耳と指が異世界へのコネクトとなる幻想的な話で、余白がなくなった愛が主人公を前に進ませたんだなと感じた。

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    2021年11月06日
  • 余白の愛

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    本屋B&Bの文庫本葉書をきっかけに読んだ。物語もだけど、言葉の紡ぎ方や表現も静かで繊細で緻密。自分の感覚も研ぎ澄まされていくような気持ちになる。全体を幻想的に写しているフィルターは、汚くて不都合なものを隠しているようだった。もう一回読んで、それがなんなのか確かめなければいけない。個人的に純喫茶との相性がいい小説(実証済)。
    やさしさってなんだろう。タイトルも含めて、読んだ人と意見交換したい。

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    2021年10月30日
  • まぶた

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    3.5
    博士の愛した数式の小川さんってこんな感じの作風なのか。。
    少し世間ずれした不思議な人たちのお話たち。
    でもどの人たちもありありと想像できる
    なぞの野菜売りのおばさんの話印象的だなぁ

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    2021年10月27日
  • そこに工場があるかぎり

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    見学する工場の選び方がさすが。お菓子はわかるのよ、みんなの憧れ(*˘︶˘*).。.:*♡鉛筆もまだわかる。行ったら楽しそう。でも穴って!初めて知ったよ、そういう専門の仕事があるって。この人が伝えてくれるとどんな仕事も尊いって思う不思議。大型ベビーカーと犬の車椅子は素敵だった。なんかどっちも見ている方が幸せになるの。

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    2021年10月20日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    9の短編、どれも良かったです。「世にも奇妙な物語」に出来そうな感じ。私は特に「涙売り」と「教授宅の留守番」が好きです。特に「涙売り」は愛する人の役に立てれば自分が痛い思いをしたって幸せなんだってことを短い話の中でも、すごく感じました。「涙売り」の彼女は実際にいたら変な人だけど、それぐらい人を愛することができたら素敵でしょうね。

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    2021年10月13日
  • ブラフマンの埋葬

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    ブラフマンの足音の描写が好きだった。ブラフマンがどういう生き物なのかわからない部分もあるけど、足音を思い浮かべるだけで愛おしい気持ちで胸がいっぱいになる。足音だけじゃなく、食事を催促するために尻尾で床を打つ音、ひまわりの種を両手で持って齧る音、彼が生きている音がまるで耳元で聞こえてくるかのような描写が多くて、ブラフマンの気配を感じる小説だった。

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    2021年10月01日
  • 妖精が舞い下りる夜

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    作家さんを等身大に感じるのに、エッセイを読みたくなりますよね。作家さんと自分との接点を見出して嬉しくなったり。小川洋子さん、本人も認めるように小説では少し昏い世界をお書きになりますが、阪神の熱烈なファンであるなど意外性たっぷりです。

    おこがましいようですが、小川さんは書きたい人なのだなぁ、天性の作家さんなんだなぁと思いました。どの言葉を掬いとるかということに専心しつつ、一方で言葉にできない空間に意識を払っている。金井美恵子さんらの小説について綴った箇所も、とても素敵でした。

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    2021年09月26日
  • 海

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    短編が7つ。どの話も好きだけど、私が一番、好きなのは「ガイド」です。働きながら子育てする全てのお母さんを応援しているようなお話ですね。「ひよこトラック」と「缶入りドロップ」も好き。心優しいおじさん?おじいさん?が世の中に増えるといいな。

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    2021年09月21日
  • 言葉の誕生を科学する

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    「言葉」を通して、コミュニケーションや自己意識、時間などについて考察する。
    読みやすくてあっという間に読んでしまったけど、もう一度あれこれ考えながら時間をかけて読み直したいとも思う。

    後半、小川さんが小説の意義について述べる部分が印象的だった。対談が進むにつれて小川さんの中で想いが広がっていく様子を感じた。「ことり」読み直したいなぁ。

    「言葉を解きほぐす技術がないといけない」という言葉は胸に留めておきたい。何事も一言で片付けない。こうして読んだ本も、「これよかったな〜」とラベリングして終わらせない。

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    2021年09月13日
  • 犬のしっぽを撫でながら

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    今まで読んだエッセイにもラブちゃんが登場するのですが、これを読むと何故、犬を飼おうと思ったかがわかります。その理由がまた親近感を感じてしまいました。それから、ラブちゃんと初めての散歩や、もし小川洋子さんがサッカー選手や水泳の選手だったらって話がとても面白くて、私の頭の中ではギャグマンガ風の動画が再生されているような気分でした。

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    2021年09月13日