【感想・ネタバレ】余白の愛のレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年05月16日

静かな空気感と清潔感がずっと漂ったお話。
耳を病んだ主人公の記憶と現実をめぐって物語は進んでいきます。

どこか、何かが狂っているけれども淡々としている。登場人物たちもそれらには気に留めることはない。

穏やかな愛がとても心地よかったです。

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Posted by ブクログ 2019年11月11日

素晴らしかったです。
本書はフォロアーさんからのおすすめだったのですが。
はい。大好きです。もう、大満足でした。

小川洋子さんの本はまだ4冊目ですが、もう大ファンになってしまいました。

この儚げな描写。全てがごくごく薄い鶯色のベールに包まれたような静寂。一人称の「わたし」で綴られる出来事のかずか...続きを読むず。


耳を病み、夫の不義を知って夫との別れを決意した「わたし」。そんな「わたし」の前に現れた速記者Y。Yの紡ぎ出す暗号の様な速記字とその独特の指に惹かれた「わたし」は…。


読むにつれ、『現実』と『過去』と『妄想』と『想像』が少しずつ区別できなくなっていく浮遊感。

どこかでこの感触は感じたことがあるな・・・と思ったら、何となくこの世界観は村上春樹的な世界観に似ているのですね。

村上春樹ほどファンタジーの世界には足を踏み込ませないし、村上春樹お約束のセックスの描写もないし、あの特徴的な比喩の使い方もないのですけれど、小川洋子さんの小説を読んでいると、なんとなく感じるこの心地よさは村上春樹作品に通じるところがあるのです。

こういう言い方をしたら小川洋子さんには失礼なのかもしれないですけど、僕的には小川洋子さんの作品は「女性版村上春樹作品」といってもいいのではないかとも思います。

それにしても小川洋子さんの小説に登場する主人公の「わたし」は可愛い人ばかりです。
小川洋子さんはあまり主人公の「わたし」の外見の描写をしないので、外見的には「美人」なのか「可愛い」のかは分かりませんが、彼女達の心の中身がみな「素敵」なのです。

ああ、好きすぎるこの小川洋子さんの描く「わたし」。

本書は、1991年発表で小川洋子さんの初期の作品と言ってもよいのですが、ものすごく完成度が高いですね。
『純文学』とはなにかと言われたら、代表作として僕は本書を挙げたいくらいです。

今後もさらに小川洋子さんにのめり込んでいきそうです。

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Posted by ブクログ 2017年01月03日

静かで、なのにすごく自身に向き合う困難な物語だった。最後は解決したようになるのだが。。。耳で聞こえることの根源的な意味と記憶の関係を問い直している。Yの速記術がことのほか、魅力的で、その消え去り方がなんとも残念だったが、バイオリンの音や香水、建物、博物館、紙を保存しておく特別な場所ななどいとおしくな...続きを読むる場面がいくつもあった。

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Posted by ブクログ 2016年03月08日

とある出来事がきっかけで突発性難聴を患った主人公が、この病気の経験者の座談会に参加したときに出逢った速記者のY。主人公は彼の特別な指に惹かれ、独特な耳鳴りとともに怠惰に過ごしながらも、Yとの関係を密なものにしていく。

終始小川洋子さんの不思議な世界観。日本なのか外国なのかも分からない、主人公の名前...続きを読むさえ最後まで出てこない、幻想的で童話のなかにいるようなふわふわしていて透明感に包まれた世界が読んでいて心地よかった。
なんとなく気分が上がらないときはこういう時間がゆるやかな物語が合う。

人間にはいろいろな器官があるけれど、耳というのはとりわけ不思議な器官だ。顔の横にくっついているから普段は何も思わないけれど、耳だけをじっと見てみると、とても精巧で入り組んだ独特なかたちをしている。
視覚、嗅覚、触覚…と様々ある感覚のなかでも、聴覚はとりわけ“逃れられない”感覚だと思う。音によるトラブルで殺人事件に発展することもあるくらいなのだから。
バイオリンの音色のような耳鳴りに苛まれた主人公の過去の記憶。Yはそれを呼び覚まし、そして…。

夢かうつつか。この言葉がぴったりの物語。
最後に事実がつながっているのが明かされるあたりは、ミステリ的でもあった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年10月30日

主人公の心の中で、
いつのまにか傷ついてしまった耳をいたわりながら、
自身が癒されていくお話でした。

耳鳴りを嫌がらず、受け入れる。
そこから何かが始まっていく。
自分を深く知る助けになる
体からの合図なのだなあと思いました。

病の原因を無理に探しても仕方がないし、
ただただ受けとめる、それしか...続きを読むないのだろうなあ。

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Posted by ブクログ 2013年12月10日

突発性難聴を患ったわたしは、速記者Yの指に執着していく。夫との離婚、甥のヒロの助け、Yとの日々――。余白は閉じた世界を形成し、わたしを癒していく。

というような内容でしたが、うん。まったく意味が分かりませんね。小川洋子さんの初期作品らしいのですが、イッツヨーコオガワワールドがかなり出来上がっていた...続きを読むのかな、と思ってしまう本です。
今回も「喪失」がたびたび繰り返されています。好きなんですねえ、喪失。余白も似たようなニュアンスがあると思いますが、何よりもそれらは、他のものが存在する故に、ないけれど存在する……ってなんだかインドな思考。言い換えると、現実的な意味で余白を小説の余白とすれば、それは紙という限られた閉じた世界の中で、さらに文字の連なりがある程度のまとまりで存在しているからこそ、余白は認識される。で、今回のYの指の喪失は、わたしの指がYの指を握って閉じてしまうからこそ生まれるんですよね。
それにしても、この「Y」という速記者が厄介でして、まあ、ネタバレになってしまいますが……わたしの記憶なんだそうですよ。……ネタバレしても意味が分からないでしょうから、あんまり気にしなくていいと思います。
ただ、この「わたしの記憶」=「Y」というのは他のエピソードと絡められると、アレとコレは繋げられる要素なのかしらん、とたくさん気になってくる。Yが妙に詳しかったジャスミンに眠る少年のお話。もちろん、後半でわたしが見せてもらった家具屋の写真やわたしの夢と記憶とクロスしている。その結果、たぶん……Yはわたしの中に残る13歳の少年にわりあい近い存在なのではないかと推察されます。わりあい近いというのは、あくまでわたしの記憶だから、わたしのうしろに蓄積されていった見えない記憶や思い返される記憶のないまぜ=Yということでして、決してわたしの13歳の少年=Yではない。多くの消えて行った記憶たちも含めて立ち現われたYは、指以外どうにもぼんやりしていることもそれを表しているのだと思われます。
補聴器というのも妙なパーツですよね。補聴器は失われた音を取り戻すわけですから、もしもわたしがベートーベンの補聴器をケース破って自分の耳に装着していたら、もっと早く現実を取り戻していたかもしれません。嘘です。そんな展開はヨーコオガワワールド的にNGですね。しかし、F病院にも耳と鼻と喉のレリーフがあったり、バイオリンに耳貼り付けてたりするので、わりあいそんな的外れでも……いや、外れてますね。すみません。いずれにせよ、「あらかじめ失われた場所」である耳の代打が補聴器です。その補聴器は目に見える存在。補聴器には補聴器ごとの世界があるのでしょうし、自分以外の人間の耳に音がどのように聞こえているのかは分かりませんもんね。つまり、やっぱり多種多様な閉じた世界を持つ耳は喪失した存在になり得るし、補聴器は補聴器で失われた存在をうずまき管のごとく閉鎖的な空間によって作られているから、これも小川洋子さんが好きなものなのでしょう。

余談ですが、わたしは耳の世界から言葉をこぼすことが多々あります。病気ではありません。静かな環境であれば吐息まで聞こえる程、耳の感度は宜しい方です。ただ、言葉が聞き取れないことが多いんですね。単純に相手の日本語が早すぎて、足りない脳みそが理解を追い付かせていないだけかもしれませんが、何度も聞き直して会話を成立させます。気になる頻度ではありません。居眠りしていることもあります。でも、聞き逃した瞬間ふと思うのです。ああ、わたしいま何も無い状態に近かったなあ、と。

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Posted by ブクログ 2020年02月25日

すごく静か。文章の美しさと、物語全体に漂う静けさを楽しめた。
読んでいる途中で、読み終わって欲しくないと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年06月28日

「君の耳は病気なんかじゃない。それは一つの世界なんだ。君の耳のためだけに用意された、風景や植物や楽器や食べ物や時間や記憶に彩られた、大切な世界なんだよ」
突発性難聴に苦しむ「わたし」を救ったのはYの優しくて甘い言葉。
自信なさげに恐る恐る喋る声を一つ残らず書き留めるYの繊細な指。

人は思いもよらな...続きを読むい災難に遭遇して心細い思いをした時、自分の殻に閉じ籠ることが多い。
そして棘のない痛みの伴わない記憶を頼りに癒しを求める。
記憶の捻れがもたらした安らぎは「わたし」をゆっくりと浮上させる。

小川さん特有の甘美な幻想的な世界にゾクゾクした。
無駄な音のない静かな物語。
一度読んだだけでは理解できず、何度も読み直す…小川さんの文章にはいつも惑わされてしまう。

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Posted by ブクログ 2018年09月01日

突発性難聴を患ったわたしが、ある座談会に出席したときに速記者のYに出会い、彼の指に惹かれていく。音がなく、静謐という言葉が似合う小説だった。不思議な世界観で、場所の設定も、主人公の名前も、何もかもが明かされずに、辺り一面真っ白で、まっさらな新雪に足を踏み入れるような感覚がどこまでも続いていく。小説と...続きを読むいうよりは詩を読んでいるような、心地よい言葉の羅列がすっと耳に流れ込んでくるのが好きだ。

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Posted by ブクログ 2018年01月26日

とてもひっそりとふわふわ読みました。
主人公が耳を病んだことも、速記者のYとの密やかな時間も、幻だったのかも、と思ってしまいます。
Yの指の描写が官能的で濃密でした。
そっと始まって、そっと終わった物語でした。

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Posted by ブクログ 2015年10月01日

とてもとても繊細なお話し。
現実と幻想のつなぎ目がこの上なく曖昧で、その曖昧さは柔らかいカーテンのような。どこまでも真っ白で途中からほんの少しづつ色づいていく。そんな印象。

口頭で放たれる言葉というものの不確かさを感じさせられる。放たれた言葉は中に浮かび、消えてしまう。

おそらく主人公は耳を病む...続きを読む事で、いやそれ以前から自分自身の不確かさ、あやふやさ、離人感のようなものを感じ取っているなかで、耳を病んでしまう。徐々に自分自身がその不確かさを感じていることを自覚していく。Yとの関係ー放たれた言葉を速記、書き留めていく中で、それをつなぎ止めようと、確かめようとしていったのではないか。そこから徐々に再生していく。それは自身の記憶の中からの再生だった。

そんなことはおそらくどうでもよく、やはり小川洋子独特の世界感、繊細すぎて消えてしまいそうな言葉の世界をストレートに堪能できる1冊。

2004年 中公文庫 カバーイラスト:ハシモトミカ

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Posted by ブクログ 2015年03月04日

途中からどこが現実で、どこが過去の幻想なのか、わからなくなった。でもその世界に惹きこまれます。速記する手を通して繋がっていく思い、そして再生・・・あ~面白かった。

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Posted by ブクログ 2015年01月03日

 小川洋子の本は好きなのだが、いつも少し過剰さや違和感を感じながら読み終える。
 現実と幻想が折り重なる作風は好きなはずなのに、言葉がすんなりと入ってこない。一言一言は素敵だなと思うのに、読み進めるうちに息苦しくなり、読むのを中断したくなる。
 神経がみっちりと毛細血管のように張り巡らされ、わずかな...続きを読む風にもふるふると震えるような繊細さに、終いには疲れ切ってしまう。陶酔しきれない。自分が小川洋子でなくて良かったと、よく分からない安堵をして本を閉じる。
 二回読みたいとは思わないことが多い。

 耳の病気になった主人公と、魅力的な指を持つ速記者の微妙な関係を描く。指フェチの人はより深く共感できるかもしれない作品。

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Posted by ブクログ 2014年05月02日

やわらかい耳鳴りが、かすかに聞こえてきそうな雰囲気。
プールの底に仰向けに沈んで、自分の鼓動を意識しながら、水面を見上げているような感じ(?)
『猫を抱いて象と泳ぐ』や『博士の愛した数式』よりは完成度が低い気がするけど、らしさがでてていい感じ^^
甥っ子のヒロは、記憶の世界と現実をを行き来してる感じ...続きを読む。13才(だっけ?)の特権かな・・・
なかなか不思議な気分にしてもらえました。

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Posted by ブクログ 2013年10月13日

小川さんの作品はどれも選ぶ言葉が繊細でいい。日常こんな表現はつかわないとわかっていてもそれは小説の中、綺麗な表現を愉しませてもらう。淡い恋愛物語で速記者を選ぶなど誰が思いつくだろうか。

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Posted by ブクログ 2012年10月12日

耳鳴りと速記をする指、しずく型のあざ、十三歳の少年、ヴァイオリン、ベートーヴェンの補聴器、ジャスミンの香り

きっとまた登場人物の正体が暴かれることなどないのだろうと思い、そのつもりで読んでいたので、終盤の展開はかなり意外だったというか、なにも考えずに読んでたなあというか。

読み終えた後、『余白の...続きを読む愛』というタイトルにしばし呆然となります。
速記の紙の余白が無くなるまでの、主人公の耳とYの指の静かな交歓、あるいは主人公の閉じられた記憶こそが余白なのかな、等々。いずれにせよ素敵な余韻をもたらしてくれます。

ただ主人公を受け止めるだけのYの、心の内が窺えたあの手紙がとても印象的でした。Yの指ではなく、彼の存在そのものについて考えると、また悲しくなってきてしまう。

最後の速記はどんなふうだったんでしょうね。

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Posted by ブクログ 2019年09月05日

ふわふわした気分で読み進め、ふわふわした気分で読み終えた。
静かで綺麗、そして独特な世界観に引き込まれた。
しかし良くも悪くも言葉の言い回しや表現に癖があって高度なため、なかなか初見では理解するのが難しいところもあり、読んでいて少し疲れてしまった。
また時間のあるときにゆっくり読み返したいと思う。

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Posted by ブクログ 2019年04月23日

小川洋子さんの本はほぼ初めてだったけど、言葉選びが詩的で斬新で、感性の豊かさがお話全体に染み渡っている感じだった
「余白の愛」はたまに言い回しが高度すぎてちょっと分かりづらいというか、ずっと夢の中をふわふわ歩いてるみたいな読み心地だった

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年12月28日

小川洋子さんのお話は雪が降り積もった冬の日のような、心地よい静寂が流れていて、まるで童話を読んでいるような気持になります。唯一名前が出てくる甥っ子の「ヒロ」だけが主人公を現実に引き留めてくれる存在でありますが、それ以外の登場人物は名前は一切出てこないためより曖昧な世界観となっています。ゆっくりと時間...続きを読むがあるときにていねいに読み味わいたいお話です。

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Posted by ブクログ 2017年07月14日

小川洋子氏、初読みの小説です。
耳を病んだわたしの前にある日現れた速記者Yと
その指の話。

途中で中弛みもあったが、文体が柔らかく
安心して読めた。

主人公の幻想は、
主人公にとって、耳鳴りがする頃は現実だった。

最後は耳が完治した事で、
現実が幻想に戻り、記憶として閉じていった。

人は、外...続きを読むの世界から自分を守るため、
何処かに大切な世界を作るを作るのだと思う。

その世界が彼女にとっては耳で、
開ける鍵はYの指だった。

果たして、鍵が見つかった彼女は幸せの方向へ向かう事になったのだろうか。

「道はどこかでつながっているものだよ。」

「みみずくの涙」

「あなたと一緒に過ごす時間も、
いつかは閉じてゆくのでしょうか。」

「戻りたくても、戻れないのよ。」

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