小川洋子のレビュー一覧

  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    ネタバレ

     人と人の思わぬ交流を描いた短編集。
     最初の「曲芸と野球」は無茶な練習を繰り返す曲芸師のお姉さんとヒットの打てない少年が他の人なら気にしないような合図でお互いを励まし合うという話だった。心温まる人生の妙味を味わえるような個人的には好きな短編で、この短編集はこういう方向性の物語が多いのかなって思っていたが、以降「パラソルチョコレート」を除き、全てがファンタジーの作品であったため拍子抜けした(「ラ・ヴェール嬢の秘密」はどちらかと言えばファンタジーではないが)。
     「曲芸と野球」以外では「パラソルチョコレート」が好きだった。シッターに預けられた二人の姉弟が毎週カフェに連れて行かれるのだが、シッター

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    2026年03月19日
  • サイレントシンガー

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    まさに著者の小説世界観がいかんなく発揮された作品。まるで陽当たりのよい部屋をレース越しに眺めている、そんな雰囲気を最初から最後まで貫き通した一冊だ。唯一名前が明示されている主人公と、その生の一筋に触れたり交わったりする登場人物達のなんと儚げなことか。自己の存在を主張することが称揚される今日、その対極にあるかのような主人の生きざまをどのように受け止めるべきか、一寸悩んでしまう。主人公がそれと意識せず”声”を使って人々の援けになっていたこととと、彼女の”生”が外界に一切引き摺られなかったことがとても心に残る不思議な一作だ。

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    2026年03月18日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    チェス自動人形となってチェスを指す少年のお話。
    絵本を読んでるような気分になった。

    総婦長さんを北斗の拳に出てくる「デカいババア」に脳内変換して読んでた。

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    2026年03月18日
  • 薬指の標本

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    ネタバレ

    薬指の標本。わたしは、工場での事故で薬指の先を失くし、退職。偶然見かけた標本室で事務員をすることに。
    標本技術師の弟子丸はどんなものでも標本にできる。
    きのこ、文鳥の骨、楽譜の音、少女の頬の火傷跡まで。
    弟子丸から革靴をプレゼントしてもらった辺りから、
    怖さを感じ始めた。古い靴を握り潰したり、浴槽の底を
    歩かせたり、硬いタイルに寝転んで抱き合ったり、狂気を感じた。一番恐怖だったのは、活字板を運ぶわたしを
    転ばせて、散らばった活字を朝まで1人で拾わせた場面。「君は一晩中、僕のために働いたんだ」
    「二人で朝を迎えたのね」
    なぜだかわたしも嬉しそうにしている。
    靴磨きおじさんとの会話、「彼とはどうし

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    2026年03月18日
  • ことり

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    久々に本というメディアでしか体現できない物語を読みました。日常の生活の中で、一瞬で通り過ぎてしまいそうなことに目線を合わせて、丁寧に紡いでいったものがたりでした。
    他の作品も追ってみます。

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    2026年03月16日
  • 遠慮深いうたた寝

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    陶器に絵付けしたような表紙が合っている。

    日々の生活で心が乱れそうになっていたけれど、
    この本があって、落ち着けた。

    エッセイだけど、小説家の思考に触れられる、小説の源泉みたいなものも感じた。
    日常や、自分の感情をもっと、丁寧に扱おうと思えた作品。

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    2026年03月15日
  • 凍りついた香り

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    恋人の突然の死をきっかけに、彼が遺した香りの記憶を手がかりに過去をたどっていく物語。調香師だった彼の人生を追うほど、愛していたはずの相手の知らない面が静かに浮かび上がる。香りという目に見えない感覚を軸に、人の記憶や孤独が丁寧に描かれているのが印象的で、他者を完全には理解できない距離の切なさが胸に残った。

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    2026年03月14日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    小川洋子さんの目で見た世界、感じた事はありふれた出来事すら特別な物語みたいで心が躍る。そして私もこんなふうに言葉にできたら、毎日生まれたてで新鮮で、ハッピーだなと思わずにはいられない。

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    2026年03月12日
  • サイレントシンガー

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    現実の世界があまりにもうるさく汚いので、このような静かで美しい世界に入り込める時間は本当に幸せだった。静かに心落ち着けたい時には、また読みたいと思った。
    少し矛盾するが、山の有料道路が私の中で芦有道路にしか思えず、そうなると"アカシアの野辺"もあのあたりにあることになり、私には全く静かな別世界ではなくなるので困った。
    料金係さんとの恋も素敵だったのに、転勤の話からグッと現実感が増してきて辛かった。

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    2026年03月12日
  • 世にも美しい数学入門

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    もともと数学好きだしなんかかっこいいから読んでみた。
    知識乏しくても調べながらなんとか読めた。
    対話形式だから読みやすいし説明も分かりやすい。
    今の時代、効率とか合理的とかも大事だけど、人は感動して生きててよかったって思えるらしい。そのための文学であり数学であり芸術であるとのこと。
    たしかに美しいなと思った。

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    2026年03月12日
  • 妊娠カレンダー

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    ネタバレ

    3編とも静かだけど少し不穏な物語で好みだった。
    「妊娠カレンダー」
    グレープフルーツの皮に農薬が付着していることを意識しながら妊娠中の姉ためにグレープフルーツのジャムをせっせと作る妹。神経質な姉に対する嫌悪感な気もするけど、ただ農薬が付着しているんだろうという事実だけを見つめている感じがした。
    「ドミトリイ」
    まさか先生が黒幕⁉︎と思っけど違った。浮世離れした寮が魅力的。手足が不自由な先生の動きの描写が細かくてすごかった。
    「夕暮れの給食室と雨のプール」
    電報っていいなぁと思った。「誰でも一度は、集団の中に自分をうまく溶け込ませるための、ある種の通過儀礼を経験すると思うけど、僕はたまたまそれに

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    2026年03月12日
  • 劇場という名の星座

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    ネタバレ

    一発目の「ほたるさん」からこれはいいですねえとなる、連作短編。
    国立劇場の周囲の人々のお話。
    小川洋子の賛美節が非常に光っている。無菌的な表現と仄かな明かりを美しく丁寧に表現することにかけて非常に長けている作家さんという印象で、本作では無菌的な表現よりも血の通った温かい表現が多かった。言い換えれば、やさしさ。

    というか、出版ペース早くないすか??ありがたい

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    2026年03月10日
  • 密やかな結晶 新装版

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    どんどん記憶を失っていき人々と失わない人びとの話。
    静かで綺麗な物語だった。
    とにかく、一文一文の言葉がとても綺麗。
    そしてメッセージ性も強いと思った。
    読んでよかったが、買おうとは思わない本。

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    2026年03月10日
  • 博士の愛した数式

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    博士の不器用さや純粋さが愛らしく、接していくうちに自然と惹かれていく感覚があった。
    数学を通して築かれる関係性が静かに温かく、その意味をより深く理解するためにも知識を得てから再読したくなる作品だった。

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    2026年04月01日
  • 劇場という名の星座

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    ネタバレ

    今まで、帝国劇場についてほとんど知らなかった。この本の中には、様々な立場から見る帝国劇場の姿がある。そこには、多種多様な、一つひとつが生きている作品が、数えきれないほどたくさんの人によって作り上げられ、支えられ、愛されてきた歴史があった。そこにしかない暗闇を味わいたい。人生で一度でも、そこの一席に座ってみたいと思った。

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    2026年03月09日
  • 海

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    好きな話は、「バタフライ和文タイプ事務所」、「風薫るウィーンの旅」 他の短編も好き。架空の職業があったり、思い出に馳せる気持ちとか、分かりやすく書いていて気持ちのいい文章。

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    2026年03月06日
  • 海

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    聞いたことない楽器、風変わりな職業、異世界感漂う町。独特の発想から広がる小さな世界。囁かな交流をひっそりと見守る穏やかな時間だった。

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    2026年03月03日
  • 薬指の標本

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    ネタバレ

    短編集2作品の詰め合わせである。まず最初はタイトルにもなっている「薬指の標本」標本を作る店で働く20代の女性の視点で紡がれる幻想的な物語だ。現実にはない世界観だと読んでいるだけで夢か現かに迷い込んだような感覚と詳細な描写はないのに色っぽい話だと感じ取った。途中で今まで働いていた女性たちはこつ然と消えることが多かった、アパートに住む老婆の発言だと特徴的な靴の音を鳴らし地下室の標本室に降りて行ったと書かれた時は主人公は標本を作る店主と肉体関係にあったしいずれ足と一体化し足から外れなくなる靴を貰っていて本人もどんどん靴を脱ぐ気がなくなっていくから主人公は何かを標本にして消えるだろうなと思った。結果タ

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    2026年03月03日
  • 薬指の標本

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    表題作がとにかく素晴らしかった。
    静謐で澄んだ空気が伝わってくる文章、非現実的な描写はないのにどこか浮世離れした世界観。
    標本室で起きたこれまでのことも、これからのことも、ほとんど何も明かされない余白でいっぱいの短編で、でもだからこそ、読み終わった後の余韻がとても心地よかった。
    心地よくて、少し不穏で、美しかった。

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    2026年02月28日
  • 遠慮深いうたた寝

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    1つ1つはごく短いエッセイだけど1冊を通すとかなり読み応えがあった。些細な日常の切り取り方、そこからの世界観の広げ方が独特ですごい。なんの変哲もない事柄が突然、小川洋子ワールドに置き換わって感動する。小説の裏話も面白かった。

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    2026年02月28日