小川洋子のレビュー一覧
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1990年代、著者がアンネゆかりの地を歩いて綴ったもの。アンネの日記については、「良書」として読み、アンネの記号化されたシンボルが残っていく読み手、そういう記号化されたイメージを敬遠する読者などさまざまある中で、著者は自分と同じ一人の少女に親近感を感じながら魅了され、その歩んだ道をたどる旅に出るまでに至ったようだ。アムステルダムのアンネの家(隠れ家)からフランクフルトの生家、アウシュヴィッツ、ビルケナウ、そしてウィーンと回り、ジャクリーヌさんやミープさんに会い、他の支援者たちに思いを馳せ、生き延びた2人のユダヤ人に会っている。
去年、アムスのアンネの家を訪ねる前にアンネの日記を読んだ。多感な -
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自分が妊娠したのをきっかけに手に取った。
「妊娠カレンダー」
妹目線で、姉の妊娠について書かれた作品。妊娠の、得体の知れなさが表現されていた。自分自身、これからの身体の変化をどこか恐ろしく感じていたので、その感情とリンクして面白かった。ちょっと不気味に書かれているのがまたいい。女性ならではの作品だと思った。
「ドミトリィ」
もう妊娠の話ではないのだなと、最初はあまり興味がなかった。でも、読み進めていくと、止まらなかった。先生の身体と、寮の存在が、どんどん悪い方向へ進んでいく。どうなってしまうのだろう、と怖かった。結局、怖さは消えたものの、なんとも言えない気味悪さが残った。後味は決して良くな -
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小川洋子さんの最新刊で、帝国劇場に関わる人々と観客にまつわる8編の連作短編集です。劇場に関わる人たちとは言え、描かれるのは華やかさと縁遠い名もない裏方の人たちです。各編とも小川さん特有の不穏な空気感がなく、温かく優しい物語でした。
徹底した取材に基づいた、帝国劇場のリアルで緻密な描写に惹き込まれます。小川さんの透徹した目は劇場の内外を俯瞰し、時にズームし環境の細部を浮き上がらせ、人物像を引き立たせます。そして、各編で複数の人物を交差させ、劇場特有の空気感を巧みに表現し、読み手へ劇場の記憶を伝えます。
建替えのため昨年2月に休館した帝国劇場。訪問経験がない残念な想いは、辻村深月さんの『 -
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小川洋子さんらしい、やさしい切ない話でした。
ことりの小父さんの生活から、まず両親がいなくなり、次に小鳥の言葉を話すお兄さんが、そして小鳥にこだわる小父さんにやさしい思いを寄せる司書さんがいなくなり、更に長年鳥小屋の掃除に通った幼稚園からも閉め出されて、少しづつ色々なものがなくなっていきます。そんな、ひとり残された年老いた小父さんに傷付いたメジロが飛び込んできます。お互いを必要とする小さな存在同士の愛情に満ちた最後の日々。とても幸福な気持ちで読め終えることができました。
それともうひとつ、あとがきを日美に出ていた小野正嗣さんが書いていて、それも私的にはとても良かったです。小野さんが小川さんをイ -
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彼女の小説を読んでいると、村上春樹の小説を早回しで読んでいる感覚に陥る。似たような花が咲く短い道を散歩しているような。
年老いた叔母や母親、収容所を経験して後に亡くなったユダヤ系の祖父など、この本には家族との関係を描いた短編が多い。肉親との微妙な距離感、距離があるのに心の片隅に確固たる場所を持つ人々。読み手の無意識の感覚を言葉でなぞっていくような文章。
後ろの解説で、著者の言葉が紹介されている。「小説の中に輪郭を持った主題、しかもまやかしの主題が、くっきりと見えてくるような小説は信用できない」。まさにこの輪郭が掴めない自然な成り行きの中に、ふと読み手の無意識を目覚めさせるような何かが埋め込まれ -
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河合隼雄さん、小川洋子さん、お二人の作品は読んだことがあり、どちらも好きだったので、二人の対談ということで楽しみに読んだ。
この本を読んで強く感じたのは、物語とは単なる娯楽ではなく、人が死や別れ、後悔や矛盾といった、理屈だけでは受け止めきれないものと折り合いをつけるために必要なものなのだ、ということだった。
特に印象に残ったことは大きく三つある。
一つ目は、現代では「死」が日常から遠ざかりすぎているということだ。
本の中で語られる「やさしさの根本は死ぬ自覚だ」という言葉が強く心に残った。医療の発展や生活の便利さによって、私たちは普段、死をあまり意識せずに生きている。特に、親しい人が死ぬこ -
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一つずつ何かが「消滅」するという不思議な島。ある時は鳥だったり、またある時は薔薇だったり。消滅するものが決まると、島の人たちは自らそれを処分しなければならないと同時に、記憶からも失ってしまう。中には記憶の消滅が起こらない特殊な人もいるのだが、そういった人たちは「秘密警察」に連行され、二度と戻って来ない。
現実には起こり得ないことなのに、消滅により徐々に悪くなる食糧事情、秘密警察の取り締まり、記憶を失わない知人の編集者R氏を匿う主人公といった設定は強烈に第二次世界大戦下を想起させる。
「モモ」のように失われたものを取り戻しに行くのかと思っていたら、小説家である主人公は小説が消滅しても、それを受け -
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ネタバレ表題作の「完璧な病室」は、大学の自主ゼミで集中ゼミの課題図書になった関係で、8人くらいのメンバーで一段落ずつ音読をして議論していく、というレベルの精読をしたこともあり、かなり思い出深い小説だった。当時は、コピーで読んだので、手元に小説を持っていなかったのだが、自分で小説を書いているときに、まったく書き進まなくなってしまい、何か参考にしたい小説があるかと思い返したとき、自分で買い直すことにしたのが、この本である。
初読の時から、文体と内容が合致しているというのは、こういうことを言うんだろうと思ったことを覚えている。ガラスや水、雪、真っ白な病室といった細かな描写が、常に白く、透明であることが、白血 -
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小川洋子さんらしい、とても優しい内容です。
8つの短編集ですが、どこかで短編の内容がつながっている構成が好きです。
東京會舘の話に似ているかな?
どの話も実話のような気がするくらい、そして、帝国劇場に行ったことのある人が羨ましい、と思える、そんな素敵な話でした。
帝国劇場はどんな人も幸せにさせてくれるんだな、と。
ワタシは帝国劇場の近くのビルで長年働いていましたが、帝国劇場での演目によって、丸の内仲通りを歩く人たちが纏う雰囲気が違っていて。
そんなふうに帝国劇場の魅力を感じていました。
また、生まれ変わる帝国劇場も私たちを幸せな気持ちにしてくれるんだろうな。と。
ホタルさんへの手紙、が一番グッ -
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ネタバレ島からさまざまな物が消滅していく。物だけでなく記憶までもが。
消滅の度にパニックが起こるのかと読み進めたら、島の人たちにとっては当たり前のことだからか恐ろしいほど簡単に受容して自ら物を消そうと行動を起こしていて戸惑った。
きっとR氏も、消滅しない側の人間として同じ思いを抱いていたんじゃないかなって思う。
主人公とおじいさんのシーンはほっこりする場面も多く、心があたたまった。
なんとなくおじいさんも消滅しない側の人間で、でも完璧に消滅する側を演じることで主人公に寄り添っていたのではないかと感じた。
主人公が書いた小説では声が一番に失われたけど、島では一番最後まで声は消滅せずに残っていたん -
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完璧な病室 生活感のない、完璧に清潔な弟の病室に惹かれる私。そこに完璧に溶け込む綺麗な弟と、いつまでも一緒にいたい。一方、食べるという行為や生活そのものに嫌悪感を抱いている。その不快さを、これでもかというくらい気持ちの悪い描写であらわしていて、こちらまで食欲が無くなりそうだった。
揚羽蝶が壊れる時 一緒に暮らしていた祖母(さえ)は痴呆症になり、今まで信じてきたものを一つずつ忘れて胎児に遡っている。わたしのお腹では、祖母の痴呆症が進むのと同じ速度で、わたしとは違う塊が密度を増していく。
揚羽蝶の標本を握り潰したあと、この人はベイビーをどうしたんだろう?カレンダーを破いたのは祖母とのお別れの意味 -
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途中までは物語がただ進んでいるかのように読んでしまったけれどラスト100ページぐらいは消失がどんどん進んでいってその中で主人公が自分の心迄を失わせないように必死になっている姿を見て、今の自分と重ね合わせてしまった。
自分が空気の存在の様に孤独感を感じているが、座っていれば給金が得られるので会社に行っている、、ぐらい仕事に行きたくないのが現状。元凶は上司。多分権力が蔓延っているからだと思う。駒使い、人を経営資源としか見做さず、人の心が分からない、エンゲージを下げるだけの役職者。誰が何を考えて仕事しているのか、考えようともしない。嫌味しか言わなくなる性格悪いオジサン。
多分一般的に嫌われるタイプ