小川洋子のレビュー一覧

  • 劇場という名の星座

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    やっぱり小川洋子さんが描く世界観、好きだ。
    普段から観劇ということをしないので、もちろん帝国劇場に足を踏み入れたことがない。
    帝国劇場を知っていたらもっと楽しめた作品だったんだろうな。
    「幸運の椅子」座ってみたい。

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    2026年09月02日
  • 博士の愛した数式

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    御涙頂戴じゃない、でもじんわりと目頭が熱くなる。
    名作ってこういうことか。
    悲しいだけの終わりじゃない。
    読んで良かった。

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    2026年09月01日
  • 博士の愛した数式

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    数学のような明確な解が得られるような話ではない。
    博士の愛した数式が意味することは一体何だったのか。未亡人と博士の関係性は?
    肝心なシーンで読者の解釈に委ねられる箇所もあり、正直なところ腑に落ちない部分もあった。
    ただ博士と"私"、ルートの心の交流が実に丁寧に描かれている。"私"がまるで関心のなかった数学に魅了されていき、ルートが50も歳の離れた博士を、かけがえのない友人のように大切に想う姿に違和感を覚えない。「80分しか記憶が持たない」という突飛な設定の上でも、読者をストーリーに引き込んで最後まで離さないのは作者の筆力の妙に尽きるだろう。

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    2026年09月06日
  • 世にも美しい数学入門

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    ​サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』を読んでいる途中、ふと本棚の隅にある本書を思い出して手に取った。『博士の愛した数式』はかつて映画で観たはずだが、内容はほとんど覚えていない。しかし、対談形式で進む本書の面白さには引き込まれ、一気に読み終えてしまった。
    最近、仕事を通じて数学に触れる機会が増え、関心が高まっていたタイミングだったこともあり、この美しい世界への「入門」に胸が躍った。
    数学者という人種はきっと世間一般から見れば風変わりなのだろうが、一度直接会って、その思考や情熱に触れてみたいと思わせる一冊だった。

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    2026年08月30日
  • 遠慮深いうたた寝

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    小川洋子の推し活の様子が読めると聞いて購入したのだけれど、読み終わってみれば印象に残ったのはむしろ、芥川賞授賞式の二次会に行こうとする時の心と身体が離れてゆくような様を描いたどこか幻想的な一編だったり、私も敬愛する内田百閒について書いている文章だったりした。短編のエッセイってたくさんの文章の中に幾つか物凄く印象に残るものがあるとあとかや何度も読み返すことになるものだけど、この作品も私にとってそういうものになりそう。

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    2026年08月30日
  • 耳に棲むもの

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    ネタバレ

    5つの短編集。
    読みやすいのだけれど物語は独特の奇妙さがあっておもしろい。
    特におもしろかったのは最後の「選鉱場とラッパ」だった。
    輪投げの景品に置かれていたラッパ。それがどうしてもほしい少年の気持ち。誰もラッパを選ばないようにと願いながら、キーホルダーや鉛筆などを選んでいく成功者たちをホッとしつつも「なぜそんなつまらない景品を選ぶのか」と不思議がる感じがよくて、わたしは少年になった。だから最後の方はとても辛くなった。蹴り上げた野良犬と盗んだラッパ。たっぷりの罪悪感が辛かった。

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    2026年08月28日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    小川さんが読んできた本がたくさん紹介されて(全く知らなかった作家も)いて興味深かった。読みたいリストが増えました。

    胸をぎゅっとつかまれる、家族のエピソードがいくつもあった。死を見つめる小川さんの独特な視点は美しく、憧れてしまう。

    エッセイを読んでいると、どうしてこんな優しい方があんな残酷な小説を書けるんだろう?と不思議に思う。それがまた魅力的。

    アンネ・フランクについての思いの深さも共有できてうれしい。

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    2026年08月27日
  • 洋子さんの本棚

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    本の中で特に印象的だったのが、藤沢周平さんの『海鳴り』について語られた、平松洋子さんのこの一文です。
    「自分が相手に対して無垢であれば、相手も鏡のように何かを返してくる」
    大人の恋愛や男性の哀愁を描いた物語の奥にある、人と人が向き合うときの誠実さや「無垢さ」をすくい取ったこの言葉に、ハッとさせられました。
    他にも、西原理恵子さんの『パーマネント野ばら』をはじめ、『いやいやえん』や『アンネの日記』など、普段の自分なら通り過ぎていたかもしれない本がたくさん紹介されています。今まで小説を中心に読んできた私ですが、この本をきっかけに全く違う「新しい読書のセカイ」が開けていく感覚にワクワクしました。

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    2026年08月27日
  • 人質の朗読会

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    人質たちの“人生の思い出”を朗読していく形で、まとめられた短編集。それぞれの人生の何気ない瞬間が綴られ、そしてそれが全て不慮の死へと向かっている運命を読者だけに知らされながら読むという、非常に練られた設定で展開していきます。それぞれの物語の中の、ほんのちょっとのきっかけで涙腺が緩んでしまうような感じでした。
    小川さんの作品は、心の奥底にある、言葉になっていない感情の部分を的確にツボ押する施術を受けているような印象的を受けます。「あぁ、そこそこ、くぅ〜、痛いけど、心地よい」といった感じです。人生のコリがほぐれそうです。
    とりあえず、10冊ほど積読したので、全ての作品に触れてみたいと思います。

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    2026年08月24日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    私自身拙いものではあるけれど、文章を書くことが好きなので手に取った本。
    タイトルの通り、物語は生きていく上で大きな支えとなる。
    思い悩むことは、自分なりに納得できる物語を探す作業なのかもしれない。
    そして、書くことで奥底に眠っていた思いがけない自分に気がついたり、そうして丁寧に掬い取ってあげることが、ひいては自分を大切に扱うことに繋がる気がした。
    それは地球とそして宇宙と繋がっている…

    長いあとがきに、小川洋子さんの切なくも温かい思いが伝わってくる。

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    2026年08月22日
  • まぶた

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    短編集。小川洋子氏ってこんなの書くんだと思ってびっくり。普通の話だなと読んでいたら突然、くる。エッてなってそのまま終わったりとかね。バックストローク、秀逸すぎる。今後も忘れられないんだろうな。

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    2026年08月22日
  • 人質の朗読会

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    とある場所で人質となってしまい、偶然その場に居合わせた人たちとの不安で退屈な監禁生活の中で、粛々と開かれた朗読会で語られた物語。特に目立ったところもなく、平凡な、どちらかというと地味な生活を送ってきた人々のお話。派手なところがなく、日常のワンシーンが静かに語られていて心地よい。実際にこのような朗読会があったら、ターニングポイントや不思議な体験、1番嬉しかったこと、悲しかったことなど、ドギツく色を加えたものを話してしまう気がする。それをせずに語れるのは、ただ黙ってどんな内容にも静かに耳を傾けてくれる優しい人たちの中にいるという安心感がなければならない。現実では、そのような人たちや環境にいられる事は稀だ。(あなたがそれをもっているなら、とてもラッキーなことだと思う。)
    だから私は人と会話をするよりも、本を読む方が落ち着いていられるし、好きなのかもしれないと気がつく。

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    2026年08月22日
  • 妊娠カレンダー

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    掴みどころのなさが夢に似てるけど、
    狭いところの描写が深すぎて一生覚めない気がするので、本でよかった。

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    2026年08月21日
  • 人質の朗読会

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    物語1つ1つはそこまでドラマチックという訳ではない。
    ただ、これが語られた状況や顛末を考えると、物語の深みは増す。
    物語は特別な人にしかない訳ではない。
    物語は誰のなかにもある。

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    2026年08月21日
  • ことり

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    ネタバレ

    コミュニケーションについてや、ケアについてを考えさせられる。それから、愛ってなんだろう、と考えさせられる。
    他者と関わるとはそもそも何をすることなのかを、静かな形で書いた小説だと思う。


    相手が自分には完全には分からない形のまま存在することを許し、それでも注意を向け続けること。
    他者との関わりは、本来そこから始まるはずなのに、会話や共感、社会的役割、利益を求められることがある。そしていつからか、要求が発生し、ケアと支配が境界不明瞭に立ち現れる。

    「ことり」は「愛の話」ではあるとしても、愛が孤独を救う話ではない。愛するからこそ相手へ声を届けようとし、愛するからこそ届いたと信じたくなり、そして最後には、その応答も自分が作ったものだったのではないかと知る。愛は孤独を埋めるものではなく、埋められない距離を最もはっきり測ってしまうものかもしれない。


    小父さんは、傷ついた小鳥を保護した。小父さんは、小鳥に歌を教えて一緒に歌った。解放しようと思いながら、解放の時期は訪れなかった。小父さんの死によって小鳥は解放されて、空に戻り、習得した求愛の歌を、本来向けるべき相手に向けることができるだろう。
    小父さんのそれは愛だったのか、私はまだわからずにいる。

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    2026年08月21日
  • 海

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    小川洋子らしい、日常や少し変わった日常の繰り返しの中の不思議さ美しさが伝わった。
    ウィーンの琴子さんの話が好きだなぁ

    あとがきに書かれていた、小説では職業があいまいな方がその人自身が引き立つ、という言葉が印象に残った。

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    2026年08月19日
  • 密やかな結晶 新装版

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    ネタバレ

    人々がひとつずつ記憶を失っていく架空の島の物語。あえて時代や土地、人種をぼかして、どんな人の記憶のはしにも引っかかる部分があるように描いているような気がする。恐らくその描き方によって、読む人に様々な受け取り方をゆるし、それぞれ違ったことを想起させる意図があると思うが、解説でもあったようにわたしもナチスによるホロコーストを思い浮かべた。無慈悲な為政者によって、当たり前の日常から奪われていき、そして自分自身の肉体、命、人としての尊厳を奪われていく。おじいさんは為政者により無惨にすべてを奪われる前に亡くなったが、それに対する「わたし」の思いは、つまりはそういうことだろう…R氏は、運良くホロコーストから生き延びた側のひとり。彼らもまた大切な存在を次々奪われていき、奪われた痛み、残された痛みを抱えながら、為政者が去った世界で生きていかなければならない。

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    2026年08月17日
  • 博士の愛した数式

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    日常が、ある博士との出会いに変化する。
    人は1人ではない
    出会いには意味があると思わせてくれる
    少し寂しさもあり暖かさもある話

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    2026年08月17日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    不思議でちょっと不気味な短編集。
    『パラソルチョコレート』が面白かった。
    もし裏側の人が居るとしたら、自分の裏側の人間は誰なんだろう…。

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    2026年08月16日
  • 劇場という名の星座

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    現在休館している帝国劇場への作者からの真摯なラブレターのような短編集でした。とても良かった。

    劇場に勤めるスタッフたちや観客にスポットを当て、さまざまな角度から劇場と行われる演劇の素晴らしさとかけがえのなさを謳いあげる。劇場の中で完璧に完結するからこそ、現実のすべてを放り投げて没頭できるあの時間の本来の良さを、改めて感じることができました。

    演劇は自分にとっても十年来の趣味ですが、昨今は色々と心の荒む事情を感じて足が遠のきがちだったのですが、あらためて演劇の本来持つ魅力を教えてもらった感覚がしました。

    短編には実在はしない職業や幽霊なんかもするりと作品に登場しているのですが、それが作者の作品ならではのおかしみにもなっていて、その風味がまた堪らなく好きだなあと思えました。

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    2026年08月12日