あらすじ
【本書の英訳『Mina’s Matchbox』が、
米『TIME』誌発表の「2024年の必読書100冊」
(THE 100 MUST-READ BOOKS OF 2024)に選出】
美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。
あなたとの思い出は、損なわれることがない――
ミュンヘンオリンピックの年に芦屋の洋館で育まれた、
ふたりの少女と、家族の物語。
あたたかなイラストとともに小川洋子が贈る傑作長編小説。
第42回谷崎潤一郎賞受賞作。
挿画:寺田順三
感情タグBEST3
昭和のあの頃…
小川洋子さんと同時代に生きた読者にとっては、昭和のあの頃を思いだし、とてもエモーショナルな気分になると思います。
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小川洋子さん特有の、品のある美しい表現と、淡々と描かれる情景の中にある優しさや温かさが、沁みました。
私は、小川洋子さんの、冷たくて少し怖いくらいの描写や物語が好きだったし、その毛色の小説しか読んでなく、どことなく末恐ろしい結末を予想していたので、それが覆されて嬉しい発見だった。
Posted by ブクログ
『博士の愛した数式』『猫を抱いて象と泳ぐ』『ブラフマンの埋葬』を過去に読んだことあり。ブラフマンがかなり純文系で、以降あまり手に取らず。久々に手に取った。
いい本だった。やはり作家の書く文章に限る。半端な訳者の文とは読みやすさが違う。
西の魔女よろしく、田舎での素敵な思い出が綴られた形式の作品。日常のちょっとした所作や会話に光を当てて、美しさを感じさせる文章だった。
ちょっと自分でもやってみる。
好きな季節というものが決まっていなかったのだが、今年で明確に「秋」になった。
仕事から逃げるように、金曜日の午前中に、メトロにのって江戸川の汽水域に。太陽光をキラキラと跳ね返す川面を眺めながら、ハゼ釣りを満喫。途中、天気雨に降られたが、日差しを反射して、はっきりと視認できる雨粒が、星のようだった。
今年は秋刀魚が豊作。ラグビー選手みたいなイカつい上背をしているのが、250円くらいで買える。IHコンロに乗せたフライパンで塩焼きに。小さい一人暮らしの部屋、グリルがないのが残念。何回も食ったが、最初に食ったやつが一番美味かった。
海産物のコーナーにいくと、1,000円もあれば贅沢できることがわかる。白子を1パック買って、まるごと白子ポン酢に。臭みがでないように、丁寧に下処理をしてから、九条ネギとポン酢に浸して、缶ビールと。調理の儀式を経ると、自然と食べる頃には、感謝の気持ちが湧いてくる。
サザエも丸ごと2個買って、壷焼きにして食ってやった。友達と行った居酒屋、「時価」と書かれたサザエが、1個2500円。2人でそれだけで5,000円もぼったくられたことを、俺はまだ忘れていない。正しい値段を確かめるように食ってやった。そうだ、お前は2個で700円だ。
ラフランスと柿がスーパーに出始めた。季節が早いから、自宅で追熟。段ボールの中に、まだ色が青いやつらと、リンゴ・バナナを同封しておくと、追熟が促されて甘みが増してくる。毎日箱を覗きながら、今日で10日くらい。ラフランスを一つ頂戴。手間のかかるやつだが、熟したときの甘さと香りはやはり格別。
「日常のちょっとした所作や会話に光を当て」るつもりが、会話など存在しておらず、飯しか出てこない件。
友達と会って、旅行にでも行って、酒を飲みながら、こういう話をしたい、こういう体験をしたい。なぁ。
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主人公の朋子が従妹・ミーナとその家族とカバ・ポチ子と過ごした1年間。裕福でおばあさんがドイツ人で、少し変わった家族たちとカバのポチ子。何が起きるわけでもない家族たちの日常ひとつひとつが宝物のように大切に描かれていてなんだか懐かしい気持ちになる。歪んだ心の持ち主などが一切でてこない本当に美しい物語。読んでよかった。
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朋子が過ごした立派なお屋敷ではないけれど、子どものころ、一時期祖母の家で過ごした日々が、今でも色濃い思い出となっていることを、改めて感じました。
朋子にもミーナにも、伯父や伯母、ローザおばあさん、米田さんに小林さんにも、朋子の母にも、そしてポチ子にも心のどこかに影はあって、それでも、温かく過ごした日々を想像すると涙が滲みます。
そして、いつか来るお別れも、すべてが消え去ってしまうわけではなくて形をかえるだけなのだと思うと、私自身にも必ずいつかは訪れる様々な人との別れ、自分自身との別れ(本作を読んだあとでは、別れという表現は違う気がしますが)が、恐ろしいものではないのかも知れないなと思うことができました。
寂しい気持ちになったとき、また読み返したいと思います。
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宝塚の祖母の家には、暖炉や三角天井の屋根裏部屋や網戸にできる裏口や裸足で駆け回れるフカフカ芝生の広い庭があって大好きだった。庭には大きな桃の木と柑橘の木が植えられていて、夏休みに遊びに行くと桃の実には新聞紙を折った袋がかけてあり、柑橘の木にはアゲハの幼虫がいた。
父と母が離婚して、その家に行くことは許されなくなってしまったので、そんなことももうずっと忘れていた。でもこの本を読んで、その家で過ごした夏休みのことを鮮明に思い出した。
ミーナがベッドの下に書き溜めて隠したお話が、存外に暗いものだったことで、彼女が身近に死を感じていたのだと分かる。
朋子は「完璧な家」に「全員が揃う」ことが何より大切で、子供心に叔父さんの行動にストレスを感じている。
おばあさんは独りで日本に来たことで、家族が皆ナチスによって失われ自分だけ生き残った悲しみを抱えている。
叔母さんも、米田さんも、小林さんも、お兄さんも…
そういった各々の薄曇りを感じさせながらも、思春期の少女2人が1年間子供らしい伸びやかさで成長していくストーリー。一日が30時間くらいあったあの頃。
祖母の家を、大人になってストリートビューで覗いてみたら、平凡な家でささやかな庭だった。
それも何年か後には住宅地一帯が取り壊され、マンションになった。
でも朋子の記憶に鮮明に残るあの家のように、祖母の家とあの庭も、私の中に永遠に在り続ける…
何度も読み返したくなる一冊になりました。
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赤毛のアンを彷彿とさせるようなでも数十年前の芦屋での美しい世界の物語。とても好きなジャンルだった。
物語のどの登場人物も大好きになれたし、小川洋子さんの日常を美しく彩る文才のお陰でこの本を通じて心が綺麗に洗われた気がする。起承転結があるようなどんでん返しがあるようなタイプのお話ではないが、一気読みしてしまった。
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友達に誕生日プレゼントでもらった本
いつも読む続きが気になってドキドキとかどんでん返しとかではないけど、ミーナと朋子の思い出を読んでいると心が温まる感じがした。自分がしんどい時に読んだ部分でちょうどミーナが泣いていた。
仕事帰りの電車で少しずつ読んだから時間がかかったけど、どんなに仕事で嫌なことがあっても帰り道が楽しみでこの1ヶ月乗り切れた。
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ほっこりしました。誰でも子どもの時にあるような家族の経験なのに、小川さんの手にかかればまるで詩のような美しい物語になってしまう。素晴らしい話だった。ミーナがきちんと大人になれるかハラハラしたが、ドイツまで行進できて、無事に仕事にも就けて安心した。いつまでも仲の良い2人でいて欲しい。
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芦屋の洋館で育まれたふたりの少女と家族の物語。
自叙伝とファンタジーが融合したような不思議な感覚。
心温まる話の中で伯父さんや伯母さんなど謎めいた人たちが良いアクセントになっている。
大好きな映画「ドライビング MISS デイジー」を彷彿させる。
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楽しかった日々はもう今はないと思うと哀しく切ないけれど、その反面これからの人生を照らして心の支えにもなる…。
そんなことをしみじみ思いました。
小川洋子さんの切ないけど心に染み渡る文章が好きです。
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岡山県で暮らしていた13歳の朋子が、家庭の事情で、芦屋の伯母さん家族の家ですごした1年間の話。
この小説には「本」や「お話」が度々登場します。私のお気に入りは、ミーナ作「2匹のタツノオトシゴのお話」です。三日月に腰掛ける2匹のタツノオトシゴの話です。
従妹のミーナと朋子
ドイツ人のローザおばあさんとお手伝いの米田さん
性格も育った環境も違う2人が、お互いを認めあい信頼する関係で、そのような相手がいることもうらやましいし、心があたたかくなります。
朋子が芦屋ですごした1年間は、人生にとってはほんの一部かもしれません。
でも芦屋で大切にされたこと、ミーナと姉妹のように暮らしたこと、ポチ子をかわいがったこと、経験したことはとても貴重なことで、記憶の中で生き続け、その後の人生の支柱になったと思わせてくれる素敵な作品でした。
タイワンザルのサブロウ、コビトカバのポチ子、
おつかれさま、そしてありがとう。
Posted by ブクログ
幸せと、あたたかさと、切なさで胸いっぱいになりながら本を閉じました。
13歳の少女が芦屋の洋館で過ごした1年、彼女の見たもの、出会う人、嬉しいできごとや悲しいできごとが終始キラキラとした言葉で綴られています。
この日々が期間限定であると冒頭で語られているので、読み進めながら、終わってほしくないと心から願いました。
13歳の言葉では語られない、そこにあったであろう大人の複雑な事情や苦悩を想像すると、とても切なくてやりきれない気持ちになります。でもその大人たちが、彼女やミーナ、そしてポチ子に惜しみない愛を注いでくれたことが、この胸いっぱいの読後感を残してくれたのだと感じます。愛にあふれた1冊です。
Posted by ブクログ
遠い過去の思い出や記憶は、年を重ねる程に郷愁を帯び、優しく切なく脳裏に蘇ります。
でも、小川洋子さんの手にかかると、そんな過ぎ去ったかけがえのない日々が、単なる甘く愛おしいものに留まらず、喪失の哀しみを伴いながらも逆に輝きを増す印象があります。
1972年、主人公の朋子が岡山の小学校を卒業、芦屋の伯母夫婦宅から中学に通った1年間の話です。
芦屋の洋館は大邸宅で、住人は伯父、伯母、祖母(ドイツ人)、ミーナ(従妹)、米田さん(家事全般)、小林さん(庭園管理)、そしてポチ子(コビトカバ)。
本作は、30年後大人になった朋子が当時を回想し、一人称視点で描かれています。個性豊かな芦屋の家族の物語であり、病弱だけど聡明で本を愛したミーナとの友情の物語でもあります。
淡い恋心、夢中になったことの他に、不安や悩み、時に大人の世界の醜い部分も、物語の中に暗い影を落とします。これらが繊細かつ濃密に、そしてバランスよく描かれ見事です。
最もよかったのは、読み進めながら、登場する家族にいつ悲劇が訪れるのか…という不安が杞憂に終わったことです。回想には、温かさや優しさだけでなく、そんな危うさも秘めていて、文章表現に深みをもたらす小川さんの筆致に唸ります。結局、それらも含めて人生なのだと深読みしてしまいました。
今現在では、一緒に暮らした洋館は取り壊され、家族もばらばら…。でも、共有した思い出は色褪せることなく心の中で生き続け、キラキラ輝いています。そんな様子が生き生きと素晴らしい筆致で描かれ、爽やかな読後感があとを引く一冊でした。
Posted by ブクログ
どうぞこの人たちに悲しい出来事が起こりませんように、と祈るような思いでページをめくりました。美しい四季の移ろい、あたたかくささやかな日常、夢のような富んだ生活への憧れ、きらきらした秘密の小箱のお話、家族を見失うまいとする思い。読み終わってなぜか赤毛のアンを思い浮かべました。大切にしたい小説が一つ増えました
Posted by ブクログ
新聞に連載されていたのを時々読んでいた。単行本で読み、大好きな作品となった。
懐かしくて(自分の生まれる前だが)、温かい気持ちにさせてくれる。
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川﨑秋子の「ともぐい」という全く正反対なような小説と並行して読んだ。この小説は井上ひさし曰く「関節外し」なストーリーだというのがまさにその通りで、こちらが勝手にハラハラする要素を見つけてもそこは完全に無視され、登場人物に悪い人は一人も出て来ず(敢えてあげるとすれば、米田さんの旅行券を盗んだ泥棒だろうか)、みんな個性的で優しくて、愛しいのだ、コビトカバまで。コビトカバに乗って通学するミーナを想像するだけで胸がキュンとする。いやミーナだけでなく、みなさんにお会いしたいです。そんな屋敷がもうないなんて。いや、初めっからなかったんやけど。
Posted by ブクログ
例に漏れず小川洋子さんの美しい言葉選びと静かななストーリー展開が至高の物語だった。
『薬指の標本』や『妊娠カレンダー』のようなひんやりとした静けさではなく、『博士の愛した数式』のように柔らかくて暖かな静けさだった。
阪神芦屋駅、須磨海岸、天王寺動物園と馴染みのある場所を舞台にこんなに素敵な物語が紡がれて嬉しい。
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美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない――懐かしい時代に育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。谷崎潤一郎賞受賞作。
Posted by ブクログ
物語の舞台である芦屋市内は学生時代、そして今も、と馴染みのある街なので、頭のなかで街並みを映像化しながら楽しんだ。
思春期の、あの時期に過ごした1年間は主人公の朋子にとっても、ミーナにとっても濃密な時間だったんだろう。
少しざわざわすることもあるのだけれど、読み終わる頃、すこーんとした気持ちになりタイトルの『ミーナの行進』が読み始めとは違う響きを帯びてくるのだった。
Bのパン、クレープシュゼット、食べてみたくなった!
Posted by ブクログ
自分も社会人一年目で関東から神戸に移るという経験があるので、序盤から引き込まれた。神戸、芦屋の街並みを想像しながら登場人物たちの行方を追えたので、とても楽しくゆっくり読むことができた。
思い出は死なない。死んでも消えるわけではない。
Posted by ブクログ
大人と子どもの間、まだ家族に守られている時代の中学生朋子が、事情があって一緒に暮らすことになった叔母家族。朋子を含む家族の誰もの拠り所である、芦屋の洋館での一夏の出来事と心情を瑞々しい感性で切り取り、描いた物語。
芦屋は私が暮らした街なので、橋の名前さえも懐かしく、景色が目前に浮かび、私の思い出と作者小川洋子さんの生み出した世界が交錯するような、不思議な読書の時間でした。
Posted by ブクログ
小さい頃、友達の別荘で数日間過ごしたことを思い出した。
あの頃に経験したすべての物事は、今となっても色褪せず大切な記憶。
普段何気なく過ごしてる日常も、将来見返したときに、かけがえのない宝物にきっとなると思うので、日々を大切に過ごそうと思いました。
Posted by ブクログ
久々に小川洋子読んだので面白かった〜!
文学に触れてる感じがして本読むのが楽しい。
何でもかんでも綺麗に書くから、伯父さんの行動すらも負の感情感じずに読み終わってびっくり。
本書きたくなる
Posted by ブクログ
小川洋子さんらしい逸品 丁寧に小さなエピソードが重ねられ やがて、全体像がとても暖かな感動を引き起こしてくれる 2024年に読むべき百冊にTime誌が入れた唯一の日本の小説
Posted by ブクログ
小川洋子さんらしい作品、と言いながらそんなにたくさん読んでるわけではないが・・ゴメン
物語は二人の少女を中心に静かに進んでいく。静謐な中に少しだけ不穏な空気を漂わせて。いかにも小川洋子さんらしい作品だと感じた。
クライマックスはあっけないと言えばあっけないが、男の私には二人の少女の関係性がなんとも言えずに細やかに描かれていて、心の襞に入り込んでくる。いい物語を読んだという気になりました。
Posted by ブクログ
小学生の女の子二人が主人公という可愛さの中に、大人の事情がチラチラ顔を出して読めば読むほど気になるお話。この時代に生きていたわけではないけれど、なんだか懐かしいなと思わせる設定。大人の事情も、いけないことなのに何故か嫌味なく書かれていて、筆者の文章力や人物設定に感心する。
Posted by ブクログ
子どもの頃のたった1年間。
でもそれが、今後の人生の宝物と言えるような素敵な経験をした女の子の話。子供の頃印象的だった事って、期間の長短関係なく、ずっと心に刻まれるのは何となく共感できる部分もあり…。
そんな宝物らしく、キラキラして温かい物語でした。
Posted by ブクログ
家庭の事情で主人公の朋子が芦屋にある親戚の家に預けられ、そこに住まういとこのミーナや伯父さん伯母さん家事手伝いの米田さんやローザおばあさん、ペットのポチ子との生活を描いた作品。
朋子は芦屋にある洋館の大きさや暮らしの違いに戸惑いつつも、楽しく暮らしいていく。ページを読み進めるたびに1970年代の良い雰囲気が伝わってくる。また、登場人物たちが織りなす日常生活の中にある、現代においては小さな出来事や幸せを一緒に噛み締めることができる良い作品。