あらすじ
どのエッセイも結局は文学のない世界では生きられないことを告白している――日々の出来事、思い出など、温かな眼で日常を掬い取り、物語の向こう側を描く、作家の素顔が垣間見られる極上エッセイ集。
作家の日常が垣間見られる、10年ぶりの文庫エッセイ集!
どのエッセイも結局は
文学のない世界では生きられない
ことを告白している――小川洋子
日々の出来事、思い出、創作、手芸、ミュージカル……
温かな眼で日常を掬い取り、物語の向こう側を描く。
2012年から現在まで続く「神戸新聞」好評連載エッセイ「遠慮深いうたた寝」を中心に、約10年間に発表されたエッセイの中から厳選し、「手芸と始球式」「物語の向こう側」「読書と本と」の4章で構成する珠玉のエッセイ集。
*美しい装幀も話題!
九谷焼による陶板画・上出惠悟/デザイン・名久井直子
単行本 第55回造本装幀コンクール・日本書籍出版協会理事長賞受賞。
著者より
「本書を編むことは、文学が自分の生活、人生をどれほど大事な部分で支えているか再認識する作業でもありました。題材はさまざま異なっていても、どのエッセイも結局は文学のない世界では生きられない、ということを告白しています。実際には味わえない体験、自分とは異なる誰か、この世にはいない死者、そういうものたちへの想像力が、現実の私の救いとなってくれているのです」(「あとがき」より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
私たちに近い日常も、小川さんの目を通すと全く違う世界が広がり、偶然居合わせた一瞬にさえ光を見出す。その眼差しが見つめる先から新たな物語が始まるのだとわくわくが止まらない。
まるで短編集のような珠玉のエッセイ。
Posted by ブクログ
「ほんの数ページしかない小説でも、一度読んだだけでは見えてこない世界が隠れている。活字の間からこぼれ落ちてしまう何かがある。安易に分かったつもりになるのは、読み手の傲慢さに他ならない。──だからこそ再読には意味があるのだと思う。百年でも二百年でも小説は、書かれた時のままの形でそこにあり続ける。にもかかわらず、読み手の成長や社会の変化によって、見せる姿が違ってくる。その時必要とされているものを、差し出してくれる。つまり小説は、作家一人の力で書かれるのではなく、読者の働きがあって初めて、成立できるのだ」
Posted by ブクログ
エッセイを久しぶりに読んでいます。昔好きだったのは、向田邦子さん、伊集院静さんのエッセイ。小川洋子さんのエッセイも面白い。一つのお話から得るものがいくつもある。
Posted by ブクログ
小川洋子の目を通したら、日常はもう少しコミカルでユニークに映るだろうか。うたた寝、というのは内田百聞の短編「件」から来ているらしい。
慣れない子育てをしながら家事をこなし、忙殺される中だったからこそ、彼女は小説を書かざるを得ない状況だったと言った。読むだけで満足できない、書きたいという創作の衝動は私もそういうものだと思う。ペンを握れば、今ここではない場所へと翔び立てる。本書では小説を書くネタのはじまりも書かれているのだが、物事一つの受け止め方にしろ、なんて感性が豊かさなんだろうと思った。私も、もっと自分の妄想を歓迎したいと思う。
Posted by ブクログ
小川洋子さんの言葉に触れるたび、私の心を守ってくれた物語たちを思い出す。小川洋子さんの作品もその一つだし、このエッセイもその一つになった。
心が頑なになって、みんなが敵に見えてしまったときに、また読み返したい本。私は弱いし何もできないけど、そんな私を守ってくれる物語が世界にはあふれていると気づかせてくれる、お守りのような本。
Posted by ブクログ
私たちと同じような日常の中でも
小川洋子さんは誰も気づかないようなことに
気づいたり、たくさん思考をしていて。
それらを丁寧に紡いでいくと
こんなにも煌めく言葉になるの、すごいな。
彼女の小説がとても美しく繊細であり、
また少し不気味なところもあるのは
こんな風に日々を過ごされて、生み出されたからなのかと頷ける作品だった。
自分の感性や言葉をもっと磨きたいと思ったし
日常をどのように感じ取るかは自分次第だとも
思えた。
Posted by ブクログ
本を読まない人が増えて、本屋がどんどんつぶれ、何分以内に読める!というのが売り文句になってしまった今の時代だけど、やっぱり本を好きでいいんだ、本の力を信じていいんだと思わせてくれる心強い一冊。
Posted by ブクログ
小川洋子さんの思い出話や本の感想、妄想や半分小説のようなお話をまとめたエッセイ。
小川さんの魅力が詰まった作品でした。
特に『答えのない問い』という作品で、小説を読んで、わけがわからない、面白くないと自分の狭い価値観で作品を否定してしまうことがあるけれど、分かる分からないにこだわるのは実にもったいないということ。分からない自分の未熟さを認めると、一気に視界が広がるという小川さんの言葉が心に響きました。
また読み返したくなるエッセイです。
Posted by ブクログ
まとまった小川洋子さんのエッセイを読むのは初めてでした。素晴らしい小説世界の創作秘話や素顔がうかがい知れ、小川さんの日常にそっと触れられた感があって興味深かったです。
小川さんの描く世界観が腑に落ちたり、語りかけられ考え思わず納得したりと、気にも留めない自分の日常を、新たな視点で見直すきっかけにもなりました。各編の内容がいかに深いことか! 「言葉を捨て去る」「答えのない問い」の前段などは、惚れ惚れします。
2012年から続く「神戸新聞」の連載、他に約10年間のエッセイから厳選された作品の数々…。日々の出来事、思い出、創作、野球やミュージカルなど、物語の裏側が描かれます。
ミュージカルの推しなどで、高揚感のある話もありますが、現実世界から想像が膨らみ、非現実の間を行き来するような雰囲気の話も随所にあります。そしてやっぱり静謐で温かく美しい文体です。
おそらく小川さん自身が、元気で楽しいときに陥る視野の狭さを自覚し、律しながら他者を思いやる姿勢が伝わってきます。小川さんがある種の哀しみを抱えていることで、想像力を働かせているのかもしれません。本とつきあいながら、優雅に歳を重ねるのも悪くない、と思わせてくれる一冊でした。
※本文庫版も単行本版同様、上出惠悟氏が焼いた陶板画(九谷焼)を名久井直子氏が装幀した美表紙で、第55回造本装幀コンクール「日本書籍出版協会理事長賞」を受賞しています。
Posted by ブクログ
もう誰にも必要とされないものが、なぜこんなにも美しいのか不思議だった。(本文より)
石を積み上げるようにコツコツと書く作業をするという著者は、いつものように誰にも思いつかないような表現力で、世界の神秘に目を輝かせる少女の眼差しで世界をみせてくれている。
Posted by ブクログ
かわいい表紙に惹かれて購入しました。
一つ一つが短いので、寝る前の少しの読書時間にちょうど良かったです。
小川洋子さんの作品は、ほとんど読んだことがないのですが、このエッセイで阪神ファンだったり推しがいたり、私が勝手に今まで小川さんに持っていたイメージと違う一面がたくさん知れて、面白かったです。