小川洋子のレビュー一覧
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2編の短編が入っている。
1つ目は表題作「薬指の標本」。気味の悪いタイトルだな、と思いながら読み進めたが、意外とそうでもない。しかし、そうでもないな、と読み進めると、だんだん不気味になってくる…。
といっても、タイトルから想起されるような肉体的な不気味さではなく、精神的な不気味さだ。主人公が沼にはまっていくのを、不思議な気持ちで読み進めた。
2作目の「六角形の小部屋」の方が個人的には好きだった。小部屋に入った悩める子羊の「わたし」に、少しでも救いがあったのか、なかったのか? お悩み解決小説のような筋を辿りつつ、ハッピーエンドで終わらない。設定は非現実的なのに、そこがむしろリアルである。
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ネタバレファンタジーのような、それでいて物凄くリアリスティックな、その交差にある小説だった。個人的に主人公が書いている小説の内容と、主人公目線の物語とが並行し、そして最後には交わる点が興味深い。もともと一繋がりの話だったのではと感じる程。
物語の中には大きく2種類の生物が存在する:消滅の影響を受ける生物(恐らく秘密警察もこちら側?)と受けない生物。前者は薔薇や鳥等の消滅を感じたとしても、2〜3日もすればその世界に順応し、不自由を不自由とは感じなくなる。一方後者は消滅の影響を受けないので、その様を見て、簡単には手放してほしくはないと願う。面白いなと感じたのは、自分たちはその中間に位置付けられるのではない -
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作品はいくつか読んだことのある小川洋子さんですが、
小川さんのエッセイは始めて読みました。
小川さんの作品に流れる静かな哀しさや寂しさの源流はここにあるのか、と思わせるものもあれば、
かなり熱心な阪神ファンとのことで、野球にまつわるあれこれまで様々なところで書かれたエッセイを一冊にまとめたもの作品のようです。
『博士の愛した数式』にまつわるエッセイはとても興味深かったです。数字と人間の対比。美しく永遠に続く数字と弱くて物語なくしては生きていけない有限の人間の生。
日常のお話では、資料となる雑誌や書物の整理に関するお話に共感。(私も人よりは「増殖する乱雑さ」に対する耐性はあると自負しています -
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やさしくて、ほんのり体温が残っている喪失感。
最初は外から「私」を通してアーケードを覗かせてもらっている感覚だったのが、最後はアーケードの中にぽつんと取り残されたような気持ち。
徐々に「私」の輪郭がぼやけていく。
「私」はいつからいるのか、いないのか、アーケードの輪郭だってどこまではっきりしたものなのか。
素直に読み取れるようなものではない気がした。
生よりも死や無に近いところの商品を扱う店々。
アーケードの外がこちらで、ドアノブの向こうがあちら。ならばアーケードは時間がよどむ境界線か。
迷い込んだ名前も知らないアーケード、作者にゆかりのある地でとおった商店街、半年だけ過ごしたあの国の蚤 -
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ネタバレ
不思議な雰囲気の話が続く。
特に気に入ったのは
「銀色のかぎ針」と「ガイド」
特にガイドの題名屋のおじいさん。
名もない出来事や思い出に名前をつけることで、そのことをより鮮明に覚えることができる。
楽しかったり切なかったり辛かったことも、知らない間に通り過ぎて過去になってしまうから。
覚えたいことには名前をつけると、綺麗に思い出の引き出しにしまっておけて、取り出したい時に取り出して浸ることができるんだろうなぁ。
ただの日常でもそれは振り返れば幸せな思い出なのかもしれない。わたしも日常から、幸せを見つけてたくさん覚えていたいな。 おじいさんと少年のやりとりにとても心が温かくなった。 -
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ネタバレこの小説は夜寝る前によく読んでいて、穏やかでありながら、それでいて読み進めたいと思える面白さは十分で、寝る前に読むのがぴったりだなあと思っていた。しかし話が進むにつれ、島から何かが消えるにつれ、静かな焦燥感に駆られ、それはどんどん大きくなっていき、気づけば読み切っていた。
解説で、ナチスや、アンネの日記との関連について書いてあり、なるほどと思った。
こんなふうに日々何かを失いながら生活したことはないけれど、もしそんなことがあったらこんな感じなのかな。誰か1人がみんなを助けるために立ち上がったり、大騒ぎしたりすることは実際はなくて、それぞれがそれぞれで小さく何かを抱えながら、少しずつ何かをなくし -
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不思議で、不気味で、美しい短編集。
一見グロテスクに思える描写でも美しく見せてしまうところがさすが。
以下備忘録
「指紋のついた羽」
舞台で見た妖精ラ・シルフィードに手紙を送る少女。
「ユニコーンを握らせる」
昔女優だった伯母と過ごした日々。
「鍾乳洞の恋」
歯の詰め物の間から白い生き物が生まれる。
「ダブルフォルトの予言」
劇場に住んでいる女性の話。
「花柄さん」
役者のサインを集め続ける花柄さんの話。
「装飾用の役者」
お金持ちの家で装飾用の役者として働く。
「いけにえを運ぶ犬」
移動書店の車を引く犬と少年の話。
「無限ヤモリ」
子供を望む女性と無限ヤモリ。