小川洋子のレビュー一覧

  • 密やかな結晶 新装版

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    小川洋子さんの小説には、静謐という言葉がよく似合うと思う。本作は静謐ながらハラハラするような展開もあり、不思議な世界に浸りながら飽きることなく読み進められた。作中の小説とともに、危ういバランスの上で成り立っていた世界が徐々に壊れていくのを見届け、同時に新しい世界が始まる予感のする読後感も良かった。

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    2026年04月17日
  • ブラフマンの埋葬

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    最後までなにものなのかわからないブラフマン。
    そうなるかな、とおもっていたけれど
    そうなった。
    幸せだったのだろう、とおもいます。
    ちょっと悲しいけれど、美しいおはなし。

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    2026年04月14日
  • 劇場という名の星座

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    帝国劇場で陰で日向で働く人の姿を描いた優しさに満ちた本。劇を愛し、観衆のために己の仕事を全うする帝国劇場で働く人、帝国劇場に魅せられた観客側にいる人の物語。私は、劇場で生の演劇の舞台を見た事はないのですが、すごく感動しました。

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    2026年04月13日
  • 薬指の標本

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    限りなく現実でありながらも、ダークなおとぎ話みたい。
    不思議な夢をみて、しばしぼんやりとしてしまうような読後感だった。

    乾いた浴場に差し込む光や、ビー玉のつまみがついた引き出しが延々と並ぶ標本室。
    迷い込む暗い林、六角柱の部屋のつやめく木の質感。

    映画のように頭に情景が流れる。

    官能的なシーンも印象的。
    例えば、背中の感触。
    抱き合うのはベッドではない。
    一話目では、ひんやりと硬い浴槽の底。
    二話目では、陶芸工房の砂でざらついた床。

    どこかサディスティックな男のからだの重みを受け入れながら、背中は硬質な床に押し付けられている。
    逃れようとはせず、身を任せるのだ。
    美しい文章に導かれ、恍

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    2026年04月19日
  • 劇場という名の星座

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    観客や裏方さん、様々な視点で描かれる帝国劇場。
    ひとつの作品を作り上げるまでに様々な人が関わり、それを観にくる人もまたいろんな事情や年齢、職業だったり…
    たくさんの人に長年支えられ、そして受け入れてきた帝国劇場の品格と寛容さを感じられました。

    「ホタルさんへの手紙」では、父と娘の深い愛情にボロボロ泣いてしまった。
    そして観客1人にどこまでも寄り添ってくれる、案内係さんの頼もしさと温かさ。

    着到板を書く幕内係さん、秘密の椅子を知っているたった1人の売店係さん、役者さんを舞台へ送り出すエレベーター係さん…
    出てくる裏方さんが皆自分の役割に誇りを持っていて、押し付けがましくなく、さりげなく他人を

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    2026年04月13日
  • 妊娠カレンダー

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    芥川賞を読みたくて買いました。小川洋子さんはやはり有名ですしタイトルのインパクトが凄かったのですが、やはり感心させられるばかりでした。大衆文学ばかり読んでいる私にとってこの純文学はまた違った読後感と高揚感を与えてくれて最高でした。

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    2026年04月13日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    続編がある幸せを噛みしめる。
    本当にありがたい。

    何気ない日常の中に独特なこだわりや細やかな洞察が垣間見える。
    興味深い。

    学生時代の話で自分の学生時代を思い出し感慨に耽る。

    エッセイだけではなく著者の愛する本も紹介。

    充実の一冊。

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    2026年04月10日
  • 妊娠カレンダー

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    小川洋子さんを友達にお薦めしたら早速読んでくれて、それに続いて借りた本。その日に一気読み

    これを読んで確信したんだけど、簡単に一言で面白いよ、というには覚悟が必要かな。。
    どんでん返しのないつねに漂う不穏な雰囲気は、すごく内向的で独特。特に身体の描写が多く、それは緻密でいやでも想像をさせられてしまうし、そして多くの場面でふつうの人にとっては当たり前でないか意識したことのない感覚であって、不気味さを感じる。

    妊娠カレンダーは題名の通り生理的な現状がテーマだし、ドミトリイで出てくる「先生」には両手と片足がない。
    『まぶた』の中の短編に出てくる左腕が上がったまま動かなくなった弟。『猫を抱いて像と

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    2026年04月07日
  • 最果てアーケード

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    読むごとに頭の中でアーケードのお店がどんどん充実していって楽しかった。時系列で話が進んでいかず、時が行ったり来たりする構成が読んでいて不思議だった。その行ったり来たりの中で出来事の点と点が線で繋がってくるのが面白かった。

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    2026年04月02日
  • 妊娠カレンダー

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    ネタバレ

    妊娠カレンダー。姉と義兄と一緒に暮らす私。
    妊娠した姉の要求に、文句も言わずに答えている。
    いつも料理に文句をつけられたり、つわりが酷くて
    キッチンで料理ができないからと、庭に調理器具を
    持ち出して地面にござを敷いて食べる。
    (庭でご飯というのはとても楽しそうだけど)
    つわり後、食欲が増した姉にグレープフルーツジャムを
    毎日作るようになった。店員にわざわざアメリカ産かどうか確認して、防カビ剤が塗布されたものを買ってくる。
    発がん性があり、染色体を破壊する、という話を知りつつ皮を刻んでジャムにする。姉が食べたいというから?
    悪意とも親切とも取れる行動だけど、やっぱり悪意が
    勝っていると思う。最後

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    2026年04月04日
  • 妊娠カレンダー

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    第104回芥川賞受賞作、ということで。

    受賞作と、他2篇。
    91年に受賞、この文庫が94年に1刷ということで、35年の時を経ているというのは不思議に思えた。所々にその時代性は少しだけ顔を出すものの、全く古びていない。

    3篇の短編集の共通して根底にあるものは、何とも言いがたい淡々とした不穏、不気味さと、観察者としての「わたし」、そして高く一貫した描写力だと思った。

    個人的には「ドミトリイ」と、著者の文庫版あとがきの中の、新鮮な玉ねぎと猫の死体の話が一番面白かった。

    「ドミトリイ」は特に途中からミステリーのような急展開になり、真の小説が生まれるのはそういうところにあるものかと、短いあとがき

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    2026年04月01日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    小川洋子さんのかく文章は本当に読んでて心地良いです。静かだけどその静かかさの中には深淵が広がっているような。とてもいろんな色の絵の具を幾重にも重ねて描いた絵画のようです。パッと見は青に見える。でも近寄って覗き込むようによーく見るとその中には黄色も緑も灰色も茶色もあらゆる色が隠れていてびっくりする、そんな感じです。(←我ながらわかりにくい 笑)

    全体的に感じる空気感はファンタジーのような神秘的な夢物語のような印象を受けますが、実は窮屈な生きにくさを描いたダークファンタジーでした。リトル・アリョーヒンにとってチェス盤の下以外の世界は何と生きにくかったことか。リトル・アリョーヒンが悪いわけじゃない

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    2026年04月01日
  • 密やかな結晶 新装版

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    読みながら読んだ文字がポロポロと落ちていく感覚
    まさしく物語の中どおりの消滅のような感じがして面白かった
    主人公の名前も、おじいさんも、結局名前が出てるはずのR氏もはっきりとした名前が分からずにこの物語は進んでいってこうやって文章って書けるんだ…と圧倒された
    天然石や鉱石を見ているような透明なでも角度を変えると見方が変わるようなそんな物語だった

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    2026年03月31日
  • そこに工場があるかぎり

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    小川洋子さんの工場を見学してきたお話。

    小川さんは岡山県出身。
    幼い頃から近くに工場があり、ずっと興味を抱いていた。
    小川さんの工場愛がにじみ出ている一冊。
    文章がとてもきれい。
    読んでよかった。。。
    この本を読んで、鉛筆を購入。
    しばらく使ってみようっと。。

    メモ
    細穴の奥は深い (エストロラボ<細穴屋>)
    お菓子と秘密。その魅惑的な世界 (グリコピア神戸)
    丘の上でボートを作る (桑野造船)
    手の体温を伝える (五十畑工業)サンポカー
    瞬間の想像力 (山口硝子製作所)ガスクロマトグラフィー
    身を削り奉仕する (北星鉛筆)

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    2026年03月31日
  • カラーひよことコーヒー豆

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    言葉一つ一つがきれい

    私にだってちゃんと若い頃はあった。疲れを知らず、恐れを知らず、時間に限りが

    あるなどと考えもせず、今目の前を行くあの子のようにずんずん突き進んでいた。愛してくれない人を恨み、自分より愛されている人をねたみ、いつも、自分自身を哀れむために泣いていた。それでも思う存分泣けば案外とすっきりし、むくみも食欲不振も目の下の隈も、一晩で解消した。そんな時代があったはずなのに、ちょっと油断し

    ている隙に、すべてが遠くなってしまった。なぜだろう。あの日々は一体、どこへ消

    えてしまったのだろう。

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    2026年03月29日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    何の話?と思わせるこのタイトル。マスターから教えてもらったチェスに魅入られた男性の物語。独特の世界観で、いつの時代の話なのかもよくわかりませんが、一人の男性の生涯に思いを馳せながらの余韻の残る読書体験でした。チェスと将棋ってすごく似てるんだなぁと思ったり、最後はミイラと再会させたかったなぁと思ったり、この話ってノンフィクションなの?と思ったり、これはこれで一つの幸せな人生だっただろうなぁとか、いろんなことを思いながら楽しく読めました!

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    2026年03月29日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

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    人間とゴリラまた他の動物たちとの様々な比較をしている本書はとても面白かった。言葉があることによって文学が生まれたりして文化的に豊かになった部分もあるけれど、本能を超えた残虐性が生まれたり、曖昧さが許容されなくなってきたり言葉以外の手段が弱くなったりということもある。使い方を考えていきたいし言葉だけを絶対視しないようにしたい。

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    2026年03月28日
  • 沈黙博物館

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    ネタバレ

    青年を主人公に据えて青年を支える少女と気難しい老婆がいる。
    この設定だけで「小川洋子」であれば、話が面白いのは決まっている。

    地域の人々の形見を集めた博物館を建てるための準備をしに来た主人公。
    形見はもっぱら遺族からの寄贈などではなく、青年や老婆による盗難。されど、それに気づく者はいない。

    爆発事件、女性の刺殺事件、兄への手紙などミステリーな要素が存分に入り込んでいて不穏な雰囲気。
    切り取られる乳首と庭師が研ぐジャックナイフの関連。

    不穏な中から急に陽が差し込む。どういった理屈だろうか??なぞは謎のままで物語は終わっていく

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    2026年03月25日
  • サイレントシンガー

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    童話のようでいて、少しリアルでもある。

    アカシアの野辺のような場所は、本当にこの世界のどこかにありそうだと思う。

    そして、リリカの声のような存在のものはこの世界に間違いなくたくさんあるんだろうな。誰にも強く認識されないのに、誰からも受け入れられ、必要とされるもの。

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    2026年03月24日
  • 密やかな結晶 新装版

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    全てを語らないラストに想像力が膨らまされた

    集団的に何かを一つずつ失っていくという表現はファンタジーの中のものでフィクションではあるけど、
    そう遠くない未来に、歳をとった自分がこの小説にあるように、一つずつ何かを忘れて認識できなくなる日が来るのかもしれないと思った

    優しいおじいさんが大好きになった

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    2026年03月23日