小川洋子のレビュー一覧
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限りなく現実でありながらも、ダークなおとぎ話みたい。
不思議な夢をみて、しばしぼんやりとしてしまうような読後感だった。
乾いた浴場に差し込む光や、ビー玉のつまみがついた引き出しが延々と並ぶ標本室。
迷い込む暗い林、六角柱の部屋のつやめく木の質感。
映画のように頭に情景が流れる。
官能的なシーンも印象的。
例えば、背中の感触。
抱き合うのはベッドではない。
一話目では、ひんやりと硬い浴槽の底。
二話目では、陶芸工房の砂でざらついた床。
どこかサディスティックな男のからだの重みを受け入れながら、背中は硬質な床に押し付けられている。
逃れようとはせず、身を任せるのだ。
美しい文章に導かれ、恍 -
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観客や裏方さん、様々な視点で描かれる帝国劇場。
ひとつの作品を作り上げるまでに様々な人が関わり、それを観にくる人もまたいろんな事情や年齢、職業だったり…
たくさんの人に長年支えられ、そして受け入れてきた帝国劇場の品格と寛容さを感じられました。
「ホタルさんへの手紙」では、父と娘の深い愛情にボロボロ泣いてしまった。
そして観客1人にどこまでも寄り添ってくれる、案内係さんの頼もしさと温かさ。
着到板を書く幕内係さん、秘密の椅子を知っているたった1人の売店係さん、役者さんを舞台へ送り出すエレベーター係さん…
出てくる裏方さんが皆自分の役割に誇りを持っていて、押し付けがましくなく、さりげなく他人を -
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小川洋子さんを友達にお薦めしたら早速読んでくれて、それに続いて借りた本。その日に一気読み
これを読んで確信したんだけど、簡単に一言で面白いよ、というには覚悟が必要かな。。
どんでん返しのないつねに漂う不穏な雰囲気は、すごく内向的で独特。特に身体の描写が多く、それは緻密でいやでも想像をさせられてしまうし、そして多くの場面でふつうの人にとっては当たり前でないか意識したことのない感覚であって、不気味さを感じる。
妊娠カレンダーは題名の通り生理的な現状がテーマだし、ドミトリイで出てくる「先生」には両手と片足がない。
『まぶた』の中の短編に出てくる左腕が上がったまま動かなくなった弟。『猫を抱いて像と -
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ネタバレ妊娠カレンダー。姉と義兄と一緒に暮らす私。
妊娠した姉の要求に、文句も言わずに答えている。
いつも料理に文句をつけられたり、つわりが酷くて
キッチンで料理ができないからと、庭に調理器具を
持ち出して地面にござを敷いて食べる。
(庭でご飯というのはとても楽しそうだけど)
つわり後、食欲が増した姉にグレープフルーツジャムを
毎日作るようになった。店員にわざわざアメリカ産かどうか確認して、防カビ剤が塗布されたものを買ってくる。
発がん性があり、染色体を破壊する、という話を知りつつ皮を刻んでジャムにする。姉が食べたいというから?
悪意とも親切とも取れる行動だけど、やっぱり悪意が
勝っていると思う。最後 -
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第104回芥川賞受賞作、ということで。
受賞作と、他2篇。
91年に受賞、この文庫が94年に1刷ということで、35年の時を経ているというのは不思議に思えた。所々にその時代性は少しだけ顔を出すものの、全く古びていない。
3篇の短編集の共通して根底にあるものは、何とも言いがたい淡々とした不穏、不気味さと、観察者としての「わたし」、そして高く一貫した描写力だと思った。
個人的には「ドミトリイ」と、著者の文庫版あとがきの中の、新鮮な玉ねぎと猫の死体の話が一番面白かった。
「ドミトリイ」は特に途中からミステリーのような急展開になり、真の小説が生まれるのはそういうところにあるものかと、短いあとがき -
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小川洋子さんのかく文章は本当に読んでて心地良いです。静かだけどその静かかさの中には深淵が広がっているような。とてもいろんな色の絵の具を幾重にも重ねて描いた絵画のようです。パッと見は青に見える。でも近寄って覗き込むようによーく見るとその中には黄色も緑も灰色も茶色もあらゆる色が隠れていてびっくりする、そんな感じです。(←我ながらわかりにくい 笑)
全体的に感じる空気感はファンタジーのような神秘的な夢物語のような印象を受けますが、実は窮屈な生きにくさを描いたダークファンタジーでした。リトル・アリョーヒンにとってチェス盤の下以外の世界は何と生きにくかったことか。リトル・アリョーヒンが悪いわけじゃない -