あらすじ
使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。それを必要としているのが、たとえたった一人だとしても、その一人がたどり着くまで辛抱強く待ち続ける――。
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Posted by ブクログ
最初は大人のための童話・おとぎ話を読んでいるような気持ちだったけど、
だんだん主人公の輪郭がぼやけていくような不穏な感覚が高まっていく。
外国のようで、昭和の日本のようで
本当に不思議な世界観。
不穏さ、奇妙な売り物。
全部好きです。
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不思議なアーケードの片隅で起こる「死」を弔う話。異国の童話のような不思議な世界観だった。「死」を美しく拾い集めた話の数々は、読後に喪失感を感じながらも、どこか心の傷を埋めてくれるような不思議な気持ちになった。ライオンのドアノブの奥の窪みのような場所はどんな人にもあるのだろうか。きっと誰にでもそんな場所はあって、見つけたいような見つけたくないような不思議な場所だと思った。
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ささやかな物品や情景から垣間見える人柄など
目にうかぶお話。
今は無き、故郷の昔馴染んだ店々が思い浮かぶ。
八角形のラーメン屋、祖母と行ったおやきとかき氷、手芸屋のおじさん先生、甘茶の匂いのお茶屋、飴色の喫茶店のコーラフロート、乾物屋のじいちゃん、母の財布を盗んで行った駄菓子屋、犬と散歩に行った時可愛がってくれた、食パンがとにかくおいしいパンやさん、やさしいお姉さんの肉屋さん、
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この物語は「小さい時の思い出から」と、エッセイ『遠慮深いうたた寝』に書いてあった。
だから、このアーケードでの出来事を語る「私」とは小川洋子さんだ。
小川洋子さんは、岡山市中区森下町で生まれ育ち、11歳に祇園町に引っ越している。
岡山市のどのアーケードの思い出なのだろうと思っていたが、パリのパサージュをイメージしていたそうだ。
日常の「とるにたらないものもの」への想いを綴った、江國香織さんの作品を思い出したが雰囲気は違った。
「最果てアーケード」は、だれがそんなものを必要とするの?という品物を扱っている商店の人々の物語だった。
『ブラフマンの埋葬』でもそうだったが、本書も人の名前が出てこない。
舞台となるお店が違う10篇の物語でできているので、"店主さん"と呼べばどの店の店主さんか分かるのだ。
人物が多人数登場する小説が苦手な私にとってはありがたい。
名前で呼ばれるのは飼い犬の べべ だけだ。
登場人物は、
物語を語る「私」。私の「父」。
レース屋の店主、かつて衣装係だった老女。
百科事典のセールスマン、同級生のRちゃん。
義眼屋の店主、(店主の)婚約者さん、兎夫人。
輪っか屋(ドーナツ屋)さん、元体操選手。
紙店の店主(レース屋の姉)、雑用係のおじいさん。
ドアノブ専門店の店主"ノブさん"。
未亡人の勲章店の店主。
遺髪レース編み師。
軟膏屋さん。
大学の助手。
どんな商品を扱っているお店かは、登場人物の呼び方でわかると思うが、
こんな(商売になりそうもない)お店が連なっているアーケードなどあり得ない風景だ。
だが、昔はアーケードの中のどこかに、似たような雰囲気のお店が紛れ込んでいた記憶がうっすらとある。
その品物が必要で探し求めてくるお客さんと店主さんのこだわりや想いが伝わってきます。
さり気ない動作や心情の描写がうまい小川洋子節が堪能できる物語だと思います。
Posted by ブクログ
生と死の間にある小さな物語たちが、小川洋子さんにしか描けない優しく穏やかで静謐な、しかしときに冷たく曖昧な描写で淡々と紡がれていきます。
途中途中で感じられる違和感も、最終章で納得が行く形となりますが、まだまだ私が未熟なこともあって全てを理解しきれてはいないような気がします。とはいえ、全てを語らないのも小川洋子さんワールドという感じがして、なんとも魅力的でした。
きっと遠くない未来にまた何度も読み返すであろう特別な一冊に出逢えました。
Posted by ブクログ
良かったです。
小川洋子さんの作品で今まで読んだ中では「ことり」が1番好きですが、同じ位大切にしたい本になりました。
いつも独特な世界観で中々感想を書くのが難しいのですが、この作品は読みやすく主人公の気持ちに触れ合えるような気持ちになれました。
変わらず不思議な世界です。
Posted by ブクログ
「この世界では、し、ではじまる物事が一番多いの。し、が世界の多くの部分を背負ってるの。」という台詞で、死を連想して不思議な気持ちになった。生という漢字はたくさんの読み方があるが、死は1つしか読み方がないという話は有名だ。
どの短編にも切なさがあり、それらも日常として、アーケードに吸収されていく。特に父を、よりにもよって約束していた映画館で、火事で失ってしまうのは辛すぎる。ラストは不思議な終わり方だった。父の元に行くといいながら、雄ライオンのノブの暗闇に入っていく。その頃、人さらいの時計も止まっている。父と、アーケード、それらの思い出から一歩踏み出す。
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「紙店シスター」と「人さらいの時計」が好きだった
こんな商店街があったら行きたい、というよりは
この商店街の中の人になりたいと思った
登場人物は皆、一様に優しくて温かいのに、何故か物語全体は少し薄暗くて冷たい印象があって不思議な本だった。
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1人1人奇妙ながら物語があって小川さんらしい温もりとミステリアスで骨董品のほこりのような落ち着く本だった。べべとお嬢さんとお父さん、そしてアーケードの人たちが愛おしい。
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やさしくて、ほんのり体温が残っている喪失感。
最初は外から「私」を通してアーケードを覗かせてもらっている感覚だったのが、最後はアーケードの中にぽつんと取り残されたような気持ち。
徐々に「私」の輪郭がぼやけていく。
「私」はいつからいるのか、いないのか、アーケードの輪郭だってどこまではっきりしたものなのか。
素直に読み取れるようなものではない気がした。
生よりも死や無に近いところの商品を扱う店々。
アーケードの外がこちらで、ドアノブの向こうがあちら。ならばアーケードは時間がよどむ境界線か。
迷い込んだ名前も知らないアーケード、作者にゆかりのある地でとおった商店街、半年だけ過ごしたあの国の蚤の市で買った、どこかの誰かが写ったネガフィルム。
自分のみてきたそんな景色と最果てアーケードが寂しく重なった。
Posted by ブクログ
小川洋子さん初読みです。
静かで不思議な世界観と、小川さんの美しい文章がとても心地よい作品でした。
使用済みの絵葉書や義眼、ドアノブなど、その物から持ち主の思いが感じられ、その思いを大切にしている店主たちのまなざしに心があたたかくなりました。主人公の「私」の存在が少しずつ明らかになり、読み終えると『最果てアーケード』の意味がわかります。
また読み返したくなる作品でした。
Posted by ブクログ
確かインスタグラムで紹介されていた本。
小川洋子さんの文体が本当に好き。柔らかで優しくて丁寧に読まないと壊れてしまいそうな文体。
そこから紡ぎ出される物語もやはり柔らかで誰かを包み込むような作品。
あるアーケードの配達員さんのお話。不思議な店ばかりでそこにやってくるお客さんもなかなか癖がある。
でもさも普通ですよ、というように商売をしている店主たちと当たり前ですよ、というような顔をしてやってくるお客さんたちには違和感を覚えつつも優しい気持ちにさせられる。小川洋子マジック。
一番好きだったのはラビト夫人。
一番理解できなくて一番幸せになってほしいお客さんだった。
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登場人物たちは誰も泣き喚いたり大げさな感情表現をしないのにこんなにも喪失感を感じさせる小川洋子さんの芸術。アーケードには懐かしいような雰囲気が漂いながら、現実から一歩外れて置き去りにされてしまった世界のようでもある。最終話で女の子の過去が描かれるところが良い。
読んでいるとひっそりと静かで心地良い自分だけの時間が流れます。
Posted by ブクログ
とあるアーケードを軸にした短編集。それぞれの話が絡み合って短編集全体として一つの作品となっている。何かをテーマにした短編集は小川洋子さんのよくあるパターンだが、それぞれの話が関連し合うというのは意外と珍しいかも。こういう個別の話はそれぞれで完結するものの全体として大きな話が流れてる、というのは連続もののTVドラマとかでよくある手法と思うが、1話ずつの長さがちょっと読むのにちょうどいい分量なのもあり、TVドラマを見ているような趣もある。
内容は小川洋子さん特有の現代のファンタジー。レースの切れ端、使われた絵葉書、義眼など、何だか美しくて儚い雰囲気がいい。特に以前読んだ『猫を抱いて象と泳ぐ』の空気感と似たイメージ、好きな人には堪らないと思う。また最後のエピソードもとても素敵。全体の儚さをまとめ上げるような役割で、これがこの作品全体の読後感を決定付けていると思う。
意味だけではなく、文章そのものが生み出す空気感を堪能できる小川洋子さん好きなら必ず満足のいく作品だと思います。
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特殊で個性的な店が集まる世界で一番小さなアーケード。
配達係の女の子の視点でアーケードの出来事が語られる。
お客さんも個性的で面白く引き込まれる。
微笑ましさと物哀しさが同居した著者ならではの世界を堪能する。
Posted by ブクログ
アーケード街大家の父親を亡くしたわたしが、お店を訪れるお客様と織り成す小さな物語。
どこかもの悲しい雰囲気のなかに灯る小さな光、お店それぞれの味わいがありました。
小川洋子さんの作品に漂う雰囲気は本当に独特。
穏やかで静謐な世界観。
レース屋、義眼屋、ドアノブ店、勲章店など、
「一体こんなもの、誰が買うの?」
という品を扱う店ばかりが集まってるアーケード。
買いに来る人は少ないけど必要とする人がいて、そんな人のためにお店がある。
お気に入りは、
*衣装係さん
*百貨辞典少女
*紙店シスター
小川さんの作品は、個人的にやっぱり静かな環境でゆったり落ち着いて読みたい。
小川さんの文章表現がとても好き。
やっぱり良いなぁ。
アーケードの突き当たりの中庭で愛犬ベベと過ごす時間が愛おしい。
店主だけじゃなく、配達屋さんの思いも胸に響くものがありました。
小川ワールド堪能しました。
Posted by ブクログ
『寡黙な死骸 みだらな弔い』以来に読む小川さんの短編集。
レース、使用済みのはがき、勲章、義眼等一見役に立たなそうな品物を扱う店が連なるアーケードと、そこに住む住人達と買い物客のエピソードを一つずつ丁寧に拾い上げた連作は寂しく、ときに静かな狂気を孕んで紡がれている。
どのお話も死や別れを絡むせいか、全体的な雰囲気が物悲しい。しかし、この連作の語り部である「私」はアーケードの大家の娘としてそこまで悲観的ではない。アーケードの配達係としてアルバイトをする彼女と、彼女の助手である犬のベベがかわいらしいエッセンスを仄暗い小説に加えている。
個人的なお気に入りは最初の「衣装係さん」と「遺髪レース」だった。
Posted by ブクログ
【好きなだけ窪みに身を沈めていられるよう、ただ黙って放っておいた】
「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まった小さなアーケードの話。
「私」も店主たちも登場人物がみな大切なものがあり、繊細だけれど芯が通っているため、発言の一つ一つにハッと思わされる。
短編集のようだが話に繋がりはあって、ただ時系列がバラバラ。しかし不思議と違和感がない。
作中に「それを必要としているお客さんが来るまで、わたしたちはいつまでも待った。」という一節があるが、もしかするとこの話の一つ一つが読者が必要とするタイミングで読まれるようになっているのではないだろうか。
Posted by ブクログ
全体を通して、静かなお話
ひっそりと、静かに、でも確実に、光の中に存在しているアーケードが浮かんでくる。
綺麗なだけでなく、少しの狂気なんかも含まれている。
結局「私」はどんな人物で、何歳で、生きているのか死んでいるのか、生きているなら何をして生活しているのか、そんなことがほとんど分からなかった。
どこか非現実的なで、偽物のようなアーケードだけど、本当にあったら行ってみたくなった。
親しい人、大切なものを失くすことへの向き合い方のひとつのヒントを教えてくれるような気がしました。
Posted by ブクログ
小川洋子さんらしいこざっぱりした悲しみ?哀愁?ただよう短編集です
どこかにある小さな小さなアーケードを舞台に主人公の『私』と様々な人のやりとりが描かれてます
私が遺髪レース屋さんに頼んだのはアーケードの過去から飛び出していく自分とのお別れの為だったのかな…と思いました
Posted by ブクログ
優しさの中に喪失感、死の香りが漂っています。ここで売られているものは必要がなさそうだけれど、誰かにとっては大切なものばかり。自分だけの大切なものが誰かの手によって届くって素敵だな。「私」はこのアーケイドの商店街の人にお父さんの姿を見ているような気がします。そして人生そのものなのかもしれない。
Posted by ブクログ
小さなアーケードで、
人々が少しずつ、それぞれの人生を重ねながら
今を生きている。
アーケードに暮らす登場人物それぞれについての部分は短編でも、小川さんの情景表現があれば、ずっと昔から知っているような、自分も何かしらの当事者のような、関わりがあるような、、
そんな不思議な気持ちになれます。
(衣装係さん)描かれているのは今の衣装係さんについてなのに、衣装係さんが歩んできた長い長い歴史に、ふと触れてしまった、たしかに生きていたんだと実感する感覚を味わえました。
ここに記されているのは、誰かの人生のほんの少しの期間でしかないはずなのに、それぞれの歩みや暮らし、それぞれの時代の姿や感情がすごく凝縮されていてとても贅沢な気持ちになります。
こんなにもリアルに想像できた上で
どこか現実味のない、幻想的な空間を作り出せるのは何故なのか。
日本なのか海外なのか、時代はいつなのか、
小川さんの作品はそれらがわからない。
わからないのにまるでこの目で見たような気がする。本当に不思議です。
現実から一旦離れてもう一つの世界に没入したい時にぴったりです。
面白かったです
一部ネタバレありです。
どこかに身を隠す様、ひっそりと存在していて、それでも誰かに必要とされる小さなアーケードを「私」の視点から描いた作品。
死を題材とした話が多いため暗い印象がありますが、どこか暖かく優しさを感じさせる不思議な世界観でした。
ラストシーンが特に印象深く「私」がどうなったのか考えさせられました。
自身の髪で「遺髪のレース」の制作を依頼したこと、図書館で、おそらく故意に電話番号を間違えたことなどから「私」は死に向かう準備をしていたのだと思います。
人さらいの時計が止まる描写では、「私」の時が止まったことを表しており、最後の二行で、それでも尚、生きている者の日常が変わらず続いていくことを示しているのだと解釈しております。
Posted by ブクログ
最近長編を読む気力が薄れていたのでこの短編なら読めるかも!と思って読んだら正解だった。
やはり仄暗くて少し埃っぽいような空気感。静かな絶望、諦め、受容、みたいな。明るさとか希望とかはないけど登場人物みなその絶望をひっそりと受け止めているような感覚?
小川洋子さんだなあ、という感じ。
Posted by ブクログ
先日読んだ博士の愛した数式が面白かったので、同じ著者さんの本を買ってみました。
街の中にひっそりとあるアーケード内にまつわる短編。
コンビニたそがれ堂や、あずかりやさんみたいな、短編が繋がってる話すっごく好きなんだよなあ。こういうお話の書き方って名前あるんだろうか。
相変わらず文章がとても綺麗で頭にスッと入ってくる。瞬時に情景が浮かぶような小説を読むと心の底から没頭できて良い時間を過ごせたなあと感じます。
悲しかったり、少し怖かったり、心温まるような、アーケード内の人にまつわるお話が「私」の目線で淡々と書かれている。
いまいちグッと感じなかったのはあまりにも「私」が淡々としていたからかもしれない。
私の読解力では「私」が今何歳なのか分からなかったよーん。アーケードと共に長い時間を過ごしてきたのだなあ。途中、もう亡くなってるのかと思ったけどノブさんと普通に話してたし。
不思議なお話でした。
Posted by ブクログ
【なぜだかわからんがずっと鞄に入れておきたい本】
なんだかわからない
特別感動したわけでもない
大好きな本になりました!てわけでもない。
可笑しさとかさみしさとか嬉しさとか
いろんなものがしっくりきて心が落ち着く。
現実とひと続きの中にアーケードがあって
でも絶対に存在しない感もある。
どんなに悲しくたって本はどっかへ行ったりしないから
そっと鞄の中身のレギュラーになったっていいじゃない。
いつだって自分が求めればそこにいてくれる安心感を本に求めたっていいじゃない。
読み終わって次の日とか次の次の日とか
すぐじゃないいつか
急にアーケードのことを思い出して泣きそう