あらすじ
使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。それを必要としているのが、たとえたった一人だとしても、その一人がたどり着くまで辛抱強く待ち続ける――。
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Posted by ブクログ
「この世界では、し、ではじまる物事が一番多いの。し、が世界の多くの部分を背負ってるの。」という台詞で、死を連想して不思議な気持ちになった。生という漢字はたくさんの読み方があるが、死は1つしか読み方がないという話は有名だ。
どの短編にも切なさがあり、それらも日常として、アーケードに吸収されていく。特に父を、よりにもよって約束していた映画館で、火事で失ってしまうのは辛すぎる。ラストは不思議な終わり方だった。父の元に行くといいながら、雄ライオンのノブの暗闇に入っていく。その頃、人さらいの時計も止まっている。父と、アーケード、それらの思い出から一歩踏み出す。
Posted by ブクログ
確かインスタグラムで紹介されていた本。
小川洋子さんの文体が本当に好き。柔らかで優しくて丁寧に読まないと壊れてしまいそうな文体。
そこから紡ぎ出される物語もやはり柔らかで誰かを包み込むような作品。
あるアーケードの配達員さんのお話。不思議な店ばかりでそこにやってくるお客さんもなかなか癖がある。
でもさも普通ですよ、というように商売をしている店主たちと当たり前ですよ、というような顔をしてやってくるお客さんたちには違和感を覚えつつも優しい気持ちにさせられる。小川洋子マジック。
一番好きだったのはラビト夫人。
一番理解できなくて一番幸せになってほしいお客さんだった。
Posted by ブクログ
小川洋子さんらしいこざっぱりした悲しみ?哀愁?ただよう短編集です
どこかにある小さな小さなアーケードを舞台に主人公の『私』と様々な人のやりとりが描かれてます
私が遺髪レース屋さんに頼んだのはアーケードの過去から飛び出していく自分とのお別れの為だったのかな…と思いました
Posted by ブクログ
優しさの中に喪失感、死の香りが漂っています。ここで売られているものは必要がなさそうだけれど、誰かにとっては大切なものばかり。自分だけの大切なものが誰かの手によって届くって素敵だな。「私」はこのアーケイドの商店街の人にお父さんの姿を見ているような気がします。そして人生そのものなのかもしれない。
面白かったです
一部ネタバレありです。
どこかに身を隠す様、ひっそりと存在していて、それでも誰かに必要とされる小さなアーケードを「私」の視点から描いた作品。
死を題材とした話が多いため暗い印象がありますが、どこか暖かく優しさを感じさせる不思議な世界観でした。
ラストシーンが特に印象深く「私」がどうなったのか考えさせられました。
自身の髪で「遺髪のレース」の制作を依頼したこと、図書館で、おそらく故意に電話番号を間違えたことなどから「私」は死に向かう準備をしていたのだと思います。
人さらいの時計が止まる描写では、「私」の時が止まったことを表しており、最後の二行で、それでも尚、生きている者の日常が変わらず続いていくことを示しているのだと解釈しております。