小川洋子のレビュー一覧

  • サイレントシンガー

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    あまりに静謐で無言で無限で、こうして感想を残すことすらノイズになってしまいそう。

    「アカシアの野辺」に住みたいかと言われれば悩む。
    人に入りすぎるのも入られすぎるのも嫌だけど、あそこまで無言と孤独を愛せるだろうか。

    「アカシアの野辺」の特徴から、衰退していくことは自明だったように思うが、少しずつ衰えていく共同体に暮らすことも「完全な不完全」を体現しているのだろう。

    声を使って会話することのない野辺に住む男たちでも、一人一人が決まった木に思いを伝えることがある。
    この小説では口から声を出さないことと、歌うことに焦点を当てているが、「聴くこと、聞き上手」な野辺の男たちにも作中触れられている。

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    2026年01月09日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    『アンネの日記』は歴史の授業で習ったりと存在は知っていましたが内容までは全く知りませんでした。最初の入り口として分かりやすそうな本書を手に取りました。
    10代とは思えない、大人も舌を巻く文章力や表現力、何より人生の価値観がありありと溢れている内容だと言うことがわかりました。
    好きな言葉は本書のp105に出てくる、
    「じっさい自分でも不思議なのは、わたしがいまだに、理想のすべてを捨て去ってはいないという事実です。(中略)いまでも信じているからです―たとえいやなことばかりでも、人間の本性はやっぱり善なのだということを。」
    というアンネの言葉です。差別的な扱いを受け、学校にも通いたくても通えない、隠

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    2026年01月12日
  • 薬指の標本

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    独特な世界観で、とても引き込まれた。
    現実なのか夢なのか。
    ありそうでありえない絶妙なバランスで描かれた作品だと思いました。

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    2026年01月05日
  • 海

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    とても短いものから中篇に近い作品まで収めた、少し体温が低いような、逆に微熱があるような短編集。
    時折ユーモラスに、たまにエロティックですらあるのは、どこかほんの少しだけ終わりの意識/死の匂いがあるからだろうか。

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    2026年01月04日
  • サイレントシンガー

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    小川洋子さんらしい、静かな文章。
    読んでいて心が落ち着きます。
    本の中の世界がとても優しくて愛おしく、
    読み終えたとき、自然と涙が流れました。

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    2026年01月04日
  • サイレントシンガー

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    小川洋子さんの描く静かな世界。
    リリカは、“内気な人の会“と称する人達に囲まれて育った。彼らは言葉を話さず、指言葉で最低限の会話をする。
    言葉を尽くしても思いが伝わらずにもどかしいことがある。彼らが無言でも分かり合えて、思いが伝わる様子に心温まった。
    時折描かれる少しグロテスクな描写や、悲しい出来事も、この静かで優しい世界に溶け込んでしまうようだった。
    小川洋子さんの小説にはいつも生きづらさを抱えているような人が登場するが、読み終えた後は、自分は自分のままでいいのだと思える。

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    2026年01月02日
  • ミーナの行進

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    主人公の朋子が、ある事情によって、芦屋の富豪でもある、伯父・伯母のお屋敷に、1年間同居することになった。お屋敷には、朋子より1歳年下の体の弱いミーナと、伯父の母親(おばあさま)、家事を手伝う米田さんと小林さんが住んでいた。ミーナには、スイスの寄宿学校に留学をしている兄がいて、彼も朋子がお屋敷にいる間に帰省をしてくる。そして、お屋敷にはコビトカバのポチ子が住んでいて、体の弱いミーナを乗せて、小学校までの道のりを送り迎えしていた。
    物語は、そのような家族と偶然に1年間住むことになった朋子の視線で、その間のあれやこれやを描写したものだ。
    正直、芦屋での1年間の描写は、少し退屈なものだった。が、ミーナ

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    2026年01月02日
  • 人質の朗読会

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    ネタバレ

    多くの人が持っているちょっとした記憶に刻まれた出来事を、ちょっとした工夫で語られる話。それを人質たちが語る。それを立て篭もり犯人を囲む警察が盗聴するというシチュエーションがより人質たちの思いを際立たせる。僕だったら、何を語るだろうという思いを抱いた。そして、僕の行動・行為が相手を涙させたであろうことに思いが至った。きっと、とても楽しかったことではなく、心の奥に刺さったトゲのような出来事なんだとう。

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    2026年01月01日
  • サイレントシンガー

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    なんだろう不思議な物語
    大人の童話のような感じ
    沈黙の人達が住む土地で育ったリリカ
    母親が死に 祖母に引き取られ
    沈黙の人達の保健室で老介護人に
    世話され指で挨拶することを覚える

    自然と一体となり歌うことを覚え
    祖母も自然との関わり方を教えた
    自然と自分が一体化する
    そこで歌う自然とともに

    最後は死者の話相手になる人形の池で
    死んでしまう
    それはそろそろ昔のように歌えないと
    リリカが感じ始めた頃だった

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    2025年12月31日
  • とにかく散歩いたしましょう

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    いつから読んでいるんだろう。

    小川洋子さんの本はまだ読んだことないけど、エッセイから手を出してみた。
    一つ一つが短くて読みやすい。
    そしてこの人の本への愛がよくわかる。
    どんな思い出に関してもあの本のあの部分と似てるなぁとかあの本の主人公はこんな気持ちだったのかなとか、これまでの読書量が感想に出てきている。
    こんな素敵な表現ができるならもっと自分も本を読もう、そんなモチベを貰えたエッセイだった。

    時々切なさを感じる場面があり、「とにかく散歩をいたしましょう」につながる終わりがとても良かった。

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    2025年12月30日
  • 海

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    文芸評論家の三宅香帆さんがおすすめしていたので購読。眠る前のベッドで少しずつ読み進めたが、どのお話も心が静かになる短編。小川先生が巻末のインタビューで「ひとつ世代が抜けている者同士のつながりを書いたものが多い」と仰っているが、ひとつ世代が抜けていることによって、死の気配も、みなぎる生命力も同時に感じるのがなんとも儚くて、胸にじんわりとくる。小川先生の作品の登場人物の感受性の強さも好きで、また過去の作品も読み直そうかなと思った。

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    2025年12月27日
  • ことり

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    小鳥を大事にする、小鳥の小父さんと呼ばれる男性の話。
    小父さんより、もっと小鳥と分かり合えてた小父さんの兄の影響も大きく、2人の世界観が静かで厳か。
    お兄さんの話す、周りの人とは違う言葉、ボーボー語は、どんな言葉だったんだろう。
    弟の小父さんだけが、その言葉を理解できていた。
    そんなお兄さんが亡くなり、1人になった小父さん。
    淡々と過ごす毎日の中で、わずかな楽しみができたりもするが、それも永遠には続かなかった。
    ラストがまた、静かな余韻が残る幕引き。

    これから、実際に小鳥のさえずりを聞くたびに、この小説を思い出しそう。

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    2025年12月22日
  • 海

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    薄水色の妄想の世界をずっと歩かされているような気分になる。官能的なものであれ、少し笑えるものであれ、すごく淡くて遠い。小川洋子といえば薄気味悪い表現で、わたしはそれが大好きなんだけど、この短編はそのエッセンスは少し弱いかな。
    「バタフライ和文タイプ事務所」は読んでいて感嘆の息を漏らすくらい好きだった。薬指の標本と同じ空気。

    全体として、純粋な者との交流というのが一貫してあったと思う。「海」の弟、「風薫るウィーンの旅六日間」の琴子さん、「缶入りドロップ」の子ども、「ひよこトラック」の少女…。「バタフライ和文タイプ事務所」と「ガイド」はメインの登場人物2人ともに純粋さを感じた。その純粋さには現実

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    2025年12月21日
  • ことり

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    「自由」とは何でもできるということではなく、できないことのなかにある。できないことのなかに「自由」を見つけること。

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    2025年12月20日
  • 世にも美しい数学入門

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    中学生、高校生などがこれを読んだらかなり勉強熱心になるのでは、と思う。
    そんな時代に読みたかった本。
    数学の疑問について調べたくなる癖が着くと思う。
    対談形式なので読みやすい。

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    2025年12月20日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    『押し潰されそうに耐え難い、大きな岩石のような苦しみが、言葉というかたちをとることで頭の上から足元へと移動し、重荷から、その人自身の土台へと変わる。悲しみや苦しみはけっして消えないけれども、置き場所を変えることはできる』

    言語化することの意味やその効力の強さを学ぶことが多い1冊だった。

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    2025年12月20日
  • サイレントシンガー

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    小川洋子さんの世界からただいま戻りました‥‥
    どっぷりと世界観に浸りました。
    おばあさんと二人暮らしのリリカ。
    家の隣の広大な森を買い取り移り住んできたのは“内気な人の会”と称するグループ。宗教的施設でも、営利目的の会社でもなく、ただただ内気な人たちの集まり。やがて門には“アカシアの野辺”と書かれた看板が掲げられるようになる。
    とにかく、“内気な人の会”とか“アカシアの野辺”とか、本を数ページ読んだだけで、小川洋子さんの世界へスーッと引き込まれて行きます。
    “内気な人の会”の雑用係として働くことになったおばあさんと、その孫娘のリリカは唯一“アカシアの野辺”に入ることができる二人。
    『魂を慰める

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    2025年12月18日
  • そこに工場があるかぎり

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    ふと気づくと、金属に穴があきはじめている。そもそもの目的がこれなのだから、驚く必要もないのに、なぜかとても不思議な現象を目にしている気分になる。一点の窪みが少しずつ、慌てず慎重に、奥へ奥へと潜り込んでゆく。電極と金属は一定の距離を保ち、決して触れ合わない。電極の回転も、穴の形成も、想像よりずっとゆっくりしたスピードで行われる。金属はまるでそれが自らの意思であるかのように、穴を受け入れている。この密やかな営みを、火花が祝福している。(第1章 株式会社エストロラボ〈細穴屋〉より)

    凡ゆる仕事には、たとえ文化勲章受賞者ではなくとも、匠の技が隠れている。と、私は思う。
    例えば、封筒詰めの単純作業であ

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    2025年12月17日
  • ことり

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    物語の中心にあるのは大きな事件ではなく、淡々とした暮らしの日々である。庭に現れる鳥の動きや、その鳥がどのような感情を持っているように見えるのかといった観察が繰り返され、静かな世界観が積み重なっていく。鳥は、一見すると小さくて守られる存在のように見えるが、渡り鳥の描写が示すように、遠くへ飛び続ける強さや目的を持った生き物としても描かれる。作品の中で常に“小鳥”と書かれているにもかかわらず、実際には主体性をもって迷わず進む存在として浮かび上がる点が印象深い。この“弱さと強さの同居”は、兄の生き方とも静かに共鳴している。

    兄弟の関係は、「依存」「相互関係」「相互不干渉」のどれにも読める曖昧さを持っ

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    2025年12月16日
  • まぶた

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    小川洋子さんならではの素敵な言葉選びと不穏な雰囲気が漂う短編集。。
    バックストロークは強烈。まぶたは流浪の月みたいだと思った(まぶたが先です)。2001年にこの物語が存在したんだと思うと不思議な感覚。

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    2025年12月14日