小川洋子のレビュー一覧

  • 世にも美しい数学入門

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    「数学の美しさ」について、対談の形で語られている。途中数式等も出てくるが難解なものはなく非常に読みやすい。一見無秩序に見える事象に対し、わずかな言葉で表現することで秩序をもたらすという美しさが数学と俳句は似ている、という捉え方には感銘を受けた。

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    2026年05月06日
  • 密やかな結晶 新装版

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    一つずつ何かが「消滅」するという不思議な島。ある時は鳥だったり、またある時は薔薇だったり。消滅するものが決まると、島の人たちは自らそれを処分しなければならないと同時に、記憶からも失ってしまう。中には記憶の消滅が起こらない特殊な人もいるのだが、そういった人たちは「秘密警察」に連行され、二度と戻って来ない。
    現実には起こり得ないことなのに、消滅により徐々に悪くなる食糧事情、秘密警察の取り締まり、記憶を失わない知人の編集者R氏を匿う主人公といった設定は強烈に第二次世界大戦下を想起させる。
    「モモ」のように失われたものを取り戻しに行くのかと思っていたら、小説家である主人公は小説が消滅しても、それを受け

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    2026年05月03日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    優しく温かみのある文体で紡がれる美しく幻想的な世界観は癒しを与えてくれた。
    小川洋子作品の中でも、いちばん好きかもしれない。

    地味で大人しい少年が、ある巨漢の男と出会い、その男からチェスを学びながら少しずつ成長していく物語。
    人形の中に入りながらチェスを指すという、小川洋子らしい特異で魅力的な設定も面白い。

    幻想的な物語の中で、少年の成長や揺れ動く感情が、緻密かつ繊細な筆致で丁寧に描かれている傑作。

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    2026年05月02日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    小さくて、片隅なんだけど壮大な、繊細で美しい小説。

    チェスはルールくらいしか知らなかったが、チェスの詩に触れ、宇宙を舞った。

    芸術作品と呼ぶべき、軽快で思慮深い文章にいつまでも触れていたく、読み終わるのが寂しい気分になった。

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    2026年04月30日
  • 完璧な病室

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    ネタバレ

    表題作の「完璧な病室」は、大学の自主ゼミで集中ゼミの課題図書になった関係で、8人くらいのメンバーで一段落ずつ音読をして議論していく、というレベルの精読をしたこともあり、かなり思い出深い小説だった。当時は、コピーで読んだので、手元に小説を持っていなかったのだが、自分で小説を書いているときに、まったく書き進まなくなってしまい、何か参考にしたい小説があるかと思い返したとき、自分で買い直すことにしたのが、この本である。
    初読の時から、文体と内容が合致しているというのは、こういうことを言うんだろうと思ったことを覚えている。ガラスや水、雪、真っ白な病室といった細かな描写が、常に白く、透明であることが、白血

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    2026年04月29日
  • 密やかな結晶 新装版

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    ネタバレ

    島からさまざまな物が消滅していく。物だけでなく記憶までもが。

    消滅の度にパニックが起こるのかと読み進めたら、島の人たちにとっては当たり前のことだからか恐ろしいほど簡単に受容して自ら物を消そうと行動を起こしていて戸惑った。

    きっとR氏も、消滅しない側の人間として同じ思いを抱いていたんじゃないかなって思う。

    主人公とおじいさんのシーンはほっこりする場面も多く、心があたたまった。
    なんとなくおじいさんも消滅しない側の人間で、でも完璧に消滅する側を演じることで主人公に寄り添っていたのではないかと感じた。

    主人公が書いた小説では声が一番に失われたけど、島では一番最後まで声は消滅せずに残っていたん

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    2026年04月27日
  • 完璧な病室

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    完璧な病室 生活感のない、完璧に清潔な弟の病室に惹かれる私。そこに完璧に溶け込む綺麗な弟と、いつまでも一緒にいたい。一方、食べるという行為や生活そのものに嫌悪感を抱いている。その不快さを、これでもかというくらい気持ちの悪い描写であらわしていて、こちらまで食欲が無くなりそうだった。

    揚羽蝶が壊れる時 一緒に暮らしていた祖母(さえ)は痴呆症になり、今まで信じてきたものを一つずつ忘れて胎児に遡っている。わたしのお腹では、祖母の痴呆症が進むのと同じ速度で、わたしとは違う塊が密度を増していく。
    揚羽蝶の標本を握り潰したあと、この人はベイビーをどうしたんだろう?カレンダーを破いたのは祖母とのお別れの意味

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    2026年04月19日
  • 密やかな結晶 新装版

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    途中までは物語がただ進んでいるかのように読んでしまったけれどラスト100ページぐらいは消失がどんどん進んでいってその中で主人公が自分の心迄を失わせないように必死になっている姿を見て、今の自分と重ね合わせてしまった。

    自分が空気の存在の様に孤独感を感じているが、座っていれば給金が得られるので会社に行っている、、ぐらい仕事に行きたくないのが現状。元凶は上司。多分権力が蔓延っているからだと思う。駒使い、人を経営資源としか見做さず、人の心が分からない、エンゲージを下げるだけの役職者。誰が何を考えて仕事しているのか、考えようともしない。嫌味しか言わなくなる性格悪いオジサン。
    多分一般的に嫌われるタイプ

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    2026年04月17日
  • 密やかな結晶 新装版

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    小川洋子さんの小説には、静謐という言葉がよく似合うと思う。本作は静謐ながらハラハラするような展開もあり、不思議な世界に浸りながら飽きることなく読み進められた。作中の小説とともに、危ういバランスの上で成り立っていた世界が徐々に壊れていくのを見届け、同時に新しい世界が始まる予感のする読後感も良かった。

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    2026年04月17日
  • ブラフマンの埋葬

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    最後までなにものなのかわからないブラフマン。
    そうなるかな、とおもっていたけれど
    そうなった。
    幸せだったのだろう、とおもいます。
    ちょっと悲しいけれど、美しいおはなし。

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    2026年04月14日
  • 薬指の標本

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    限りなく現実でありながらも、ダークなおとぎ話みたい。
    不思議な夢をみて、しばしぼんやりとしてしまうような読後感だった。

    乾いた浴場に差し込む光や、ビー玉のつまみがついた引き出しが延々と並ぶ標本室。
    迷い込む暗い林、六角柱の部屋のつやめく木の質感。

    映画のように頭に情景が流れる。

    官能的なシーンも印象的。
    例えば、背中の感触。
    抱き合うのはベッドではない。
    一話目では、ひんやりと硬い浴槽の底。
    二話目では、陶芸工房の砂でざらついた床。

    どこかサディスティックな男のからだの重みを受け入れながら、背中は硬質な床に押し付けられている。
    逃れようとはせず、身を任せるのだ。
    美しい文章に導かれ、恍

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    2026年04月19日
  • 妊娠カレンダー

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    芥川賞を読みたくて買いました。小川洋子さんはやはり有名ですしタイトルのインパクトが凄かったのですが、やはり感心させられるばかりでした。大衆文学ばかり読んでいる私にとってこの純文学はまた違った読後感と高揚感を与えてくれて最高でした。

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    2026年04月13日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    続編がある幸せを噛みしめる。
    本当にありがたい。

    何気ない日常の中に独特なこだわりや細やかな洞察が垣間見える。
    興味深い。

    学生時代の話で自分の学生時代を思い出し感慨に耽る。

    エッセイだけではなく著者の愛する本も紹介。

    充実の一冊。

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    2026年04月10日
  • 妊娠カレンダー

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    小川洋子さんを友達にお薦めしたら早速読んでくれて、それに続いて借りた本。その日に一気読み

    これを読んで確信したんだけど、簡単に一言で面白いよ、というには覚悟が必要かな。。
    どんでん返しのないつねに漂う不穏な雰囲気は、すごく内向的で独特。特に身体の描写が多く、それは緻密でいやでも想像をさせられてしまうし、そして多くの場面でふつうの人にとっては当たり前でないか意識したことのない感覚であって、不気味さを感じる。

    妊娠カレンダーは題名の通り生理的な現状がテーマだし、ドミトリイで出てくる「先生」には両手と片足がない。
    『まぶた』の中の短編に出てくる左腕が上がったまま動かなくなった弟。『猫を抱いて像と

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    2026年04月07日
  • 最果てアーケード

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    読むごとに頭の中でアーケードのお店がどんどん充実していって楽しかった。時系列で話が進んでいかず、時が行ったり来たりする構成が読んでいて不思議だった。その行ったり来たりの中で出来事の点と点が線で繋がってくるのが面白かった。

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    2026年04月02日
  • 妊娠カレンダー

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    ネタバレ

    妊娠カレンダー。姉と義兄と一緒に暮らす私。
    妊娠した姉の要求に、文句も言わずに答えている。
    いつも料理に文句をつけられたり、つわりが酷くて
    キッチンで料理ができないからと、庭に調理器具を
    持ち出して地面にござを敷いて食べる。
    (庭でご飯というのはとても楽しそうだけど)
    つわり後、食欲が増した姉にグレープフルーツジャムを
    毎日作るようになった。店員にわざわざアメリカ産かどうか確認して、防カビ剤が塗布されたものを買ってくる。
    発がん性があり、染色体を破壊する、という話を知りつつ皮を刻んでジャムにする。姉が食べたいというから?
    悪意とも親切とも取れる行動だけど、やっぱり悪意が
    勝っていると思う。最後

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    2026年04月04日
  • 妊娠カレンダー

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    第104回芥川賞受賞作、ということで。

    受賞作と、他2篇。
    91年に受賞、この文庫が94年に1刷ということで、35年の時を経ているというのは不思議に思えた。所々にその時代性は少しだけ顔を出すものの、全く古びていない。

    3篇の短編集の共通して根底にあるものは、何とも言いがたい淡々とした不穏、不気味さと、観察者としての「わたし」、そして高く一貫した描写力だと思った。

    個人的には「ドミトリイ」と、著者の文庫版あとがきの中の、新鮮な玉ねぎと猫の死体の話が一番面白かった。

    「ドミトリイ」は特に途中からミステリーのような急展開になり、真の小説が生まれるのはそういうところにあるものかと、短いあとがき

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    2026年04月01日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    小川洋子さんのかく文章は本当に読んでて心地良いです。静かだけどその静かかさの中には深淵が広がっているような。とてもいろんな色の絵の具を幾重にも重ねて描いた絵画のようです。パッと見は青に見える。でも近寄って覗き込むようによーく見るとその中には黄色も緑も灰色も茶色もあらゆる色が隠れていてびっくりする、そんな感じです。(←我ながらわかりにくい 笑)

    全体的に感じる空気感はファンタジーのような神秘的な夢物語のような印象を受けますが、実は窮屈な生きにくさを描いたダークファンタジーでした。リトル・アリョーヒンにとってチェス盤の下以外の世界は何と生きにくかったことか。リトル・アリョーヒンが悪いわけじゃない

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    2026年04月01日
  • 密やかな結晶 新装版

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    読みながら読んだ文字がポロポロと落ちていく感覚
    まさしく物語の中どおりの消滅のような感じがして面白かった
    主人公の名前も、おじいさんも、結局名前が出てるはずのR氏もはっきりとした名前が分からずにこの物語は進んでいってこうやって文章って書けるんだ…と圧倒された
    天然石や鉱石を見ているような透明なでも角度を変えると見方が変わるようなそんな物語だった

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    2026年03月31日
  • そこに工場があるかぎり

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    小川洋子さんの工場を見学してきたお話。

    小川さんは岡山県出身。
    幼い頃から近くに工場があり、ずっと興味を抱いていた。
    小川さんの工場愛がにじみ出ている一冊。
    文章がとてもきれい。
    読んでよかった。。。
    この本を読んで、鉛筆を購入。
    しばらく使ってみようっと。。

    メモ
    細穴の奥は深い (エストロラボ<細穴屋>)
    お菓子と秘密。その魅惑的な世界 (グリコピア神戸)
    丘の上でボートを作る (桑野造船)
    手の体温を伝える (五十畑工業)サンポカー
    瞬間の想像力 (山口硝子製作所)ガスクロマトグラフィー
    身を削り奉仕する (北星鉛筆)

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    2026年03月31日