あらすじ
人間の言葉は話せないけれど、
小鳥のさえずりをよく理解し、
こよなく愛する兄と、
兄の言葉を唯一わかる弟。
小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、
世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。
やさしく切ない、著者の会心作。
解説・小野正嗣。
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1人の小父さんの人生を読んだ。
一見波瀾万丈で、第三者から憐れみの目を向けられそうな人生にも見えるが、小鳥とお兄さんとの揺るがない繋がりがあり、穏やかに最期を迎えることができ、とても彩りのある素敵な人生に思えた。
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本作は、声にならない声をすくいあげる物語だった。
兄は人間の言葉からは静かにこぼれ落ちてしまう存在だが、ことりのさえずりだけは正確に受け取ることができる。その姿は、社会から取り残されているようでいて、同時に誰よりも純粋な世界に触れているようにも見える。
弟は兄の言葉を翻訳し、現実とのあいだをつなぐ細い橋となる。兄の世界を守ろうとするその姿は献身的で、けれどどこか、常に風にさらされているような不安を帯びている。二人の暮らしは小さく閉じているが、その閉じた空間のなかにだけ流れる時間は、外の世界よりもずっと澄んでいる。
ことりの声は、救いであると同時に隔たりでもある。羽ばたきは自由の象徴でありながら、兄を社会から遠ざける羽音でもある。その二重性が、物語全体に淡い影を落としている。
大きな出来事は起こらない。ただ静かに、季節のように時間が積み重なっていく。しかし読み終えたとき、胸の奥に小さな鳥が一羽とまっているような感覚が残る。それは哀しみなのか、やさしさなのか、名前をつけられない余韻だった。
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少し特殊で、だけどその人の生き方で慎ましく暮らしている。少し変な人だけど、何だか応援したくもある。そんな弟。たった一人の肉親の兄と暮らしていた日々はとてもかけがえのないものだっただろう。一人になってからも、生き方は大きく変えずに日々を過ごし、少し羨ましくもある。そんな生活を覗かしてもらっているうちに自分も小鳥のおじさんとなってしまう。心の奥で大事にしたい逸品。
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読み終わってまず思ったことは読み終わってしまったということ。
もっともっとこの世界に居たかった。
匿名性の高い小説はどちらかというと苦手としていたと思っていたけれど、小川さんが別格なのか、自分の感性が変化したのか。
主人公は「小父さん」
人の言葉は話せないが、小鳥のさえずりを理解する「お兄さん」
うっかりするとニンゲン嫌いが加速してしまいそうだけれど、調整しつつ。
「内ポケットに仕舞う」という所作とそれに対する描写が指先にまで意識が行き届いていそうでとても美麗。
「仕舞う」って、字も響きもとてもいい。
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ラランドニシダが一番好きな小説と言っていたので読んだ
美しい文章、描写。
はっとする出来事に、胸がきゅーっとする。
設定も面白いし、ほんと読んでよかった。
読んでいて心が穏やかになる文体で最高。
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人間の言葉は話せないけれど、小鳥の囀りを理解する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。言葉を交わすことよりも深く、心の奥で繋がっている二人の関係性がすごく素敵だと思った。ことりの囀りのように繊細で、優しく切ない作品でした。
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幸せそうです 小鳥の小父さんも、そのお兄さんも、自分の求めるもの、必要なことをよく知っていて、それだけを大切に生きています。
時に、願いの叶わないこともありますが、それでも大丈夫です。二人とも一番大切な欲しいものは、ぶれずに手にしているのです。
慎ましやかではありますが、実はとても贅沢な人生なのかも知れません。
私とは求めるものが全く違うけれども、それを手にしているという点で、うらやましく思います。
疲れたときに、また読みたくなるだろう、そんな本です。
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久々に本というメディアでしか体現できない物語を読みました。日常の生活の中で、一瞬で通り過ぎてしまいそうなことに目線を合わせて、丁寧に紡いでいったものがたりでした。
他の作品も追ってみます。
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久しぶりに紙の文庫本を買って読んだ。表紙の小鳥の絵が可愛くてつい買ってしまった。小川洋子の小説らしい、風変わりな人たちの静かな日常を綴ったお話。
道端ですれ違ってふと気になった風変わりな人について、どんな人生を送っているんだろう?と思いを巡らすことがある。そんな風変わりな人の人生を、丸っと覗き見したような読後感。そんな静かな不思議なお話だった。
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小鳥の小父さんと言われる男性の生涯の物語。人間が理解できない言葉を話す兄の言うことを唯一理解できる存在として、兄と肩を寄せて暮らす日常は、変化を好まず、小鳥のさえずりをはじめ、ほかの人には見えない何かを大切にひっそりと、それでも少しずつ世界がズレていく様子が物悲しい。
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静かで独特な世界観の中で、1人の人間がいかに生きて亡くなっていったのか見守ることのできる作品だった。
周囲の人々からの偏見や狭い生活圏の中で、言い訳することもせず(できず)、自分が大切とするものを淡々と守りながら静かに生きる小父さんのストーリーに触れられたことに意義を感じた。
【印象に残ったフレーズ】
"鳥籠は小鳥を閉じ込めるための籠ではありません。小鳥に相応しい小さな自由を与えるための籠です"
「いくら鳥が鳴いていても、気づかない人がいるのと同じです」
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解説のタイトルが、「取り繕えない人たちへの愛の歌」なんだけど、ほんとうにそれに尽きるなあ…と。小川洋子の、はぐれ者にやさしいところがとてもすき。なにも知らない人から見たらたぶん「変」なんだと思うし、自分も実際目の当たりにしたら「変」って感じるんじゃないかなと思うし、でもこの物語のようなその人の世界を尊重する物語があることに誰だってほっとする気がする。感情移入したわけでもないのに、切なさとさみしさと安心が混ざってため息が出た。
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小川洋子さんの文章の端正さ、美しさが輝く作品だった。小父さん、お兄さんはきっといわゆるマイノリティであり、ポーポー語という「みんなとは違う言葉で話す人」であるが、共感できないマイノリティとしてではなくて、誰しもが理解したいと思いながら完全には理解できないことを実感として感じられた。小父さんとお兄さんも、コミュニケーションは通じているが、一緒の言葉で会話できているわけではなく、わかり合っている人でも、完全に理解し合うことはできない、という人間の根源的な寂しさと、だからこそ耳を傾けたいと思う尊さを感じた。
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花鳥風月(この話では「鳥」の部分しかないが)を楽しむことへの豊かさを感じる本だった。無害な小父さんが時の経過とともに虐げられていくのは見れられなかったが、小鳥の歌がいつも傷を癒してくれる描写が素敵だった。
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小鳥を大事にする、小鳥の小父さんと呼ばれる男性の話。
小父さんより、もっと小鳥と分かり合えてた小父さんの兄の影響も大きく、2人の世界観が静かで厳か。
お兄さんの話す、周りの人とは違う言葉、ボーボー語は、どんな言葉だったんだろう。
弟の小父さんだけが、その言葉を理解できていた。
そんなお兄さんが亡くなり、1人になった小父さん。
淡々と過ごす毎日の中で、わずかな楽しみができたりもするが、それも永遠には続かなかった。
ラストがまた、静かな余韻が残る幕引き。
これから、実際に小鳥のさえずりを聞くたびに、この小説を思い出しそう。
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物語の中心にあるのは大きな事件ではなく、淡々とした暮らしの日々である。庭に現れる鳥の動きや、その鳥がどのような感情を持っているように見えるのかといった観察が繰り返され、静かな世界観が積み重なっていく。鳥は、一見すると小さくて守られる存在のように見えるが、渡り鳥の描写が示すように、遠くへ飛び続ける強さや目的を持った生き物としても描かれる。作品の中で常に“小鳥”と書かれているにもかかわらず、実際には主体性をもって迷わず進む存在として浮かび上がる点が印象深い。この“弱さと強さの同居”は、兄の生き方とも静かに共鳴している。
兄弟の関係は、「依存」「相互関係」「相互不干渉」のどれにも読める曖昧さを持っている。外側から見れば兄が弟に依存しているように見えるが、弟も兄の世話をすることで自身の役割や存在意義を形づくっているように感じられる。この一方向に決めきれない関係性は、理解しきれない他者とどのように共に生きていくのかというテーマへとつながっている。
さらに、小川洋子の作品に通底する“運命の受容”というモチーフもここに重なる。『六角形の小部屋』と同様に、運命は自分の努力や意思とは別に、あらかじめ決まっているものがあるという視点が示される。しかし、決まっているからといって諦めてしまうのではなく、その枠の中で意味を探し、静かに生き方を整えていく姿が丁寧に描かれている。『ことり』の兄弟もまた、社会と折り合いを自分たちなりに、少しいびつな形ではあるもののつけながら、それぞれの世界で役割や意味を探し続けているように見えた。
全体として、『ことり』はドラマチックな展開を避けながら、人と人のつながりの不確かさや、弱さと強さが入り混じる存在のあり方、そして運命との向き合い方を静かに描いた作品だった。
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静かな作品だった。
最終章にあった、メジロで「鳴き合わせ」を行なっていた団体との話でははじめていつになく感情的な小鳥の小父さんを見ることができた。ここで小鳥の小父さんを感情的にさせたのはこの作品の肝である「小鳥は愛を歌っている」ということから激しく逸脱した行為だったためだった。
小鳥を通じた兄への愛情と、小鳥との触れ合いを兄とつながる唯一の手段だとでもいうように社会と断絶し独りになっていく様がなんとも哀しく切ない話だった。
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賑やかな世の中でも、この話を読んでいる時は静かな世界で読むことができた。
初めて小川洋子さんの作品を読みましたが、無駄な情報をカットしているからこそ、より想像力が掻き立てられて、読む人それぞれの物語ができたと思う。
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物語としては大きな出来事があったり、事件が起こったりということはなく、とても静かな物語なのですが、「小鳥の小父さん」と呼ばれた人の生涯が小鳥とともに描かれていて、小川洋子さんの手にかかればとてもささやかな日常の一つ一つが本当に鮮やかに美しいものだと感じさせてくれるので、一文も読み落としたくなくてかなりゆっくりと読み込みました。
切なく、少し哀しい物語ですが、人の温かさや優しさが心に染みるとてもいい作品に出合えました。
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社会とのつながりに疎い人間が急に社会と繋がった時に、それが想いのほか刺激的だった時に取る行動に私は、ちょっと気持ち悪いなと感じてしまいました。また、周りの人たちの身勝手さと言うか思いやりのなさに、社会、人間の狂気を感じました。
だからこそ小父さんは鳥と過ごしたのかなぁ思うと、終わり方は良かったと思います。
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小鳥が人生の全てだった兄と、その弟で主人公である「小鳥の小父さん」の一生を描いた物語。
私は、お兄さんが亡くなってから、小父さんの本当の人生が始まった気がした。兄との記憶を辿りつつ、自分自身の拠り所を見つけようとする姿を見て、小父さんが平穏に生きられるようにと、祈りながら読み進めた。
小父さんの最期は、きっと幸せだったんじゃないかと思う。
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小川洋子さんの独特の世界観が描かれている素敵な作品でした
世俗的なものに影響されることなく、強く何かを求めることもせず(本当は求めているのかも知れないけれどそこには常に諦めのようなものが感じられる)人生を歩んでいる姿は私に安心感を与えてくれます
時々小父さんが見せる大胆な行動には少しドキドキしました
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最初は今の自分には合わない本だな〜と思ってたけど、途中から夢中で読んでいました。
純粋すぎるが故に自分を守ることが苦手で、他人から誤解されたり、傷ついてしまったり。
そんな人にも優しい社会であってほしいなと、いう気持ちになりました。
Posted by ブクログ
昨日と同じ毎日を過ごすこと、それがお兄さんを安心させる
大きな事件は起こらないけど、そこに生きている
鳥の声を聞いて静かに過ぎていく日々
今の自分とはかけ離れた静かな、静かな時間
全体を通して寂しい切ない物語として読んだ
きっと読む時の自分の状況で、感じる気持ちが大きく変化する本なんだろうな
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ある日、独自の言語を話し始めた兄と、その言語を唯一完全に理解できる弟の人生を綴った物語。
終始、静かなトーンで物語が進行し、淡々と大切な存在が弟の人生から消えていく。大袈裟な演出はなにもなく、BGMは鳥の鳴き声だけ、そんな感じの本だった。兄との生活を通して、だんだんと鳥を大切な存在としていく弟の緩やかな心情変化が、味わい深かった。
兄弟の人生について、頭では「良い人生だったのでは」と考えつつ、本音では少し寂しさを感じてしまうのは、「足るを知る」ということを私が出来ていないからなのだと思う。