あらすじ
人間の言葉は話せないけれど、
小鳥のさえずりをよく理解し、
こよなく愛する兄と、
兄の言葉を唯一わかる弟。
小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、
世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。
やさしく切ない、著者の会心作。
解説・小野正嗣。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
1人の小父さんの人生を読んだ。
一見波瀾万丈で、第三者から憐れみの目を向けられそうな人生にも見えるが、小鳥とお兄さんとの揺るがない繋がりがあり、穏やかに最期を迎えることができ、とても彩りのある素敵な人生に思えた。
Posted by ブクログ
コミュニケーションについてや、ケアについてを考えさせられる。それから、愛ってなんだろう、と考えさせられる。
他者と関わるとはそもそも何をすることなのかを、静かな形で書いた小説だと思う。
相手が自分には完全には分からない形のまま存在することを許し、それでも注意を向け続けること。
他者との関わりは、本来そこから始まるはずなのに、会話や共感、社会的役割、利益を求められることがある。そしていつからか、要求が発生し、ケアと支配が境界不明瞭に立ち現れる。
「ことり」は「愛の話」ではあるとしても、愛が孤独を救う話ではない。愛するからこそ相手へ声を届けようとし、愛するからこそ届いたと信じたくなり、そして最後には、その応答も自分が作ったものだったのではないかと知る。愛は孤独を埋めるものではなく、埋められない距離を最もはっきり測ってしまうものかもしれない。
小父さんは、傷ついた小鳥を保護した。小父さんは、小鳥に歌を教えて一緒に歌った。解放しようと思いながら、解放の時期は訪れなかった。小父さんの死によって小鳥は解放されて、空に戻り、習得した求愛の歌を、本来向けるべき相手に向けることができるだろう。
小父さんのそれは愛だったのか、私はまだわからずにいる。
Posted by ブクログ
半分までは主人公のお兄さんの話で、鳥の言葉を話すことを中心に進んでいった。前半は心地よい詩を聞いているような、お兄さんの人生のようにすうっと流れていった。美しい言葉とリズムで作れられているのかもしれない。後半は主人公の人生で、途中途中危ない人なのではないかとハラハラしながら読み進めた。希望を見つけ、また失い、見つけを繰り返す小父さんに幸せになってほしかった。
Posted by ブクログ
ことりの小父さんと呼ばれるおじさんの人生。
小父さんにはポーポー語を話すお兄さんがいて、
両親がいた頃から
お兄さんとの生活を大切に守っていたし、
幼稚園の鳥小屋も大切にしてたし、
司書さんも大切にしたかったし、
仕事も丁寧にしてたし、
ブローチも宝物だったし…
全部を繰り返し繰り返し、
丁寧に丁寧に扱うことで、
それはそれは大切に守ってたし
守りたかったのに
なかなかそうはいかなくて、みんな結局は
小父さんのもとから離れていってしまって…
小父さんはただ守りたいだけなのに
(時にはひどい方法で)離れてしまうのが辛い。
とても静かな小説の世界の中で
何度も胸が締め付けられる、
いたたまれない、悔しい気持ちにさせられた。
でも、守り続けていた小父さんが
鳥たちを解放して自分も旅立つラストは
とても清々しく晴れやかな読後感だった。
小父さん、あっちの世界では
お兄さんとポーポー語で話してるんだろうな。
Posted by ブクログ
ある小父さんの一生。
始め、彼が亡くなった所から過去を遡る描写は衝撃だった。この物語を全く知らずに読んだためだ。どこまでが姪(私の中では)の語らいで、どこからが小父さんの語らいなのか。
流れるよう描写展開は美しかった。静に始まり静に閉じる。ある意味、人から見た人生ってこういうもんだよなとか思った。本人はそこに感情が重くのしかかるから、動的な人生であったろうが、話として大きな展開が少ないと感じるのはまさにそういう事ではないのだろうか。
1つ無くしたら次の拠り所を探した小父さんが段々とそれらの悲しみを感じ生きるのは辛くも感じたが、始めから最期までことりは彼の傍にいたのだった。