小川洋子のレビュー一覧

  • 博士の愛した数式

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    ネタバレ

    静かに、穏やかに、琴線に響く物語だった。
    「私」とルートと博士との間に流れる時間と情景が読書中の私自身を癒してくれました。

    ルートをおんぶしての帰り道の場面で、
    幼いころ、お祭りの夜店で大はしゃぎしすぎて疲れて眠くなった私をおんぶしてくれた亡き父を思い出した。
    父におんぶされた記憶は後にも先にもあの時だけ。嬉しくて、ずっとこのままでいたくて起きていたけど寝たふりをしていた私。
    あったかくて大きな父の背中。
    博士が父と重なって泣いてしまった。

    博士が走らせる鉛筆の音、ルートがチラシの裏を使おうとめくる音、夕飯の支度の音、かすかに流れるラジオの音声、優しく長く差し込む夕陽。幸せってこういう事な

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    2026年03月23日
  • 密やかな結晶 新装版

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    すごい。すごすぎる。こんなに美しい文章に出会ったことはないんじゃないかな。
    途中から、完全に作者の虜になってしまった。

    理不尽に消滅していく世界、受け入れる主人公と拒むR氏。
    受け入れちゃいけない、と頭では分かっていても、心が追いつかない。
    主人公の心がゆっくり消滅していくのと同時に、読んでいる私も理不尽を受け入れているように感じた。

    消滅の前に書き上げたタイプライターの小説。途中までは分からない事もあったけれど、最後が見事だった。消滅してゆく著者が、消滅を受け入れる小説を書き残したこと、悲しかったな。

    おじいさん……。優しくて大好き。

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    2026年03月19日
  • 海

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    再読。のはずなのに「風薫るウィーンの旅六日間」「バタフライ和文タイプ事務所」以外はほぼ記憶から抜け落ちてる。「風薫る」は不謹慎なすべらない話。「バタフライ」はなかなかに癖。「海」「銀色のかぎ針」「ガイド」が特によかった。

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    2026年03月17日
  • 密やかな結晶 新装版

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    いろんな感想があるのかもしれないけれど、私の感想としては、悲しい話であり怖い話であり、どこか「今リアルに起きていること」の話。
    なくなっていく現実に鈍感になっていくのも怖いけど、最後までなくなっていく現実に抗えないラスト1人になるのも怖いな。

    川上弘美さんと同じくで昔からあれこれ読んできた作家さんだけれど、小川洋子さんの話の多くには救われない人やネガティブな現実から脱するのを諦めた人が出てくる(私の印象)。元気なときに読んで悲しみと美しさに浸るのは幸せだけど、元気がないときに読むとけっこうキツい。

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    2026年03月17日
  • 密やかな結晶 新装版

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    小川洋子さんの記憶の消滅に関する小説。
    『博士の愛した数式』でも80分しか記憶を持たない数学者がおり、今回の小説と「記憶」というテーマで共通するところがある。

    儚く自然と涙がこぼれるような物語。
    モノが人々の記憶から消滅していくということは、モノに宿る人々の想いさえも無くしてしまうことなのかもしれないと感じた。

    私自身も数々の記憶を忘れてしまっているのだろう。
    ただ、今回小説を読んだことで、その時の想いや感情などできる限り日記に留めておきたいと感じた。
    それが記憶、その時の感情・情景を思い出すことに繋がると思うから。

    解説で、記憶しているがゆえに、迫害され、粛清される。そこで、ユダヤ人差

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    2026年03月17日
  • サイレントシンガー

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    毎日、夕方の5時になると町役場からの放送で「家路」が流れる。
    あまりにも自然に溶け込んだ歌声のため、人々は熱心に聴きいる事もなく、1日の区切りとして耳にしているだけで、誰が歌っているのかなどの関心を抱く者は誰もいなかった。

    この地域に、ちょっと変わった人々が暮らす集団が存在していた。
    彼らは極端な内気の性格のため、言葉を交わす人との関わりを避け、沈黙を優先した生活を営んでいた。
    その地域に、おばあさんと孫娘リリカの二人が雑用係として加わることになる。
    おばあさんはリリカを育てるために、この変わった人々が暮らす地域に職を得て、外部の人々との接触を担当する雑用係として働くことになる。

    リリカの

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    2026年03月16日
  • カラーひよことコーヒー豆

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    題名に強烈に惹かれて手に取った。小川洋子のエッセイ。どの作品も読みやすい。印象的なのは題名と同じ話。ほんわかした内容かと先入観を持って心躍らせながら読み進めると「そうきましたか!」と膝を打っていた。発想力が素晴らしい。

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    2026年03月15日
  • 博士の愛した数式

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    尊い。この言葉が最もしっくりくる小説だろう。小川洋子さんの名作中の名作。数学の美しさと文章表現の繊細さがマッチしている。自分の頭でじっくり考えることの大切さ、80分しか記憶のもたない博士と家政婦の主人公とその息子ルートくんの互いを思う純粋さ、全てがただただ尊い

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    2026年03月14日
  • まぶた

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    再読。静かにそこに佇む死。それはこれみよがしなメメント・モリとも違う、小川洋子にしか出せない空気感だと感じる。昔読んで印象に残っていた「バックストローク」ここに収録されてたのか。一押しは「お料理教室」

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    2026年03月14日
  • 博士の愛した数式

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    記憶が持たない自分の運命を宣告され続け、その運命と戦い続ける博士。その博士を支えながら、自分たちも博士を必要とするルート親子。心が温かくなる物語でした。

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    2026年03月14日
  • 博士の愛した数式

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    本当に面白かった!数学好きは絶対に読んでほしい。
    80分で記憶がなくなってしまう数学者の博士と家政婦とその息子の話。数字の面白さと美しさ、人間の愛が詰まっていた。
    博士も家政婦も息子もみんな素敵な人たちで心が温まった。
    今すぐにでも読み返したい。

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    2026年03月14日
  • 博士の愛した数式

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    ほっこりするお話でした。様々なところに散りばめられている数式には、考えさせられました。
    0は、美しい。
    文学的な部分は、ありますが、読みやすかったです。恋愛とは違う愛を感じました。

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    2026年03月11日
  • 薬指の標本

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    再読。初期の小川洋子はけっこうエグみが強いなぁと思ったけど「妊娠カレンダー」「密やかな結晶」のほうが前なのね。喪失とインモラル。カタリコベヤ。

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    2026年03月10日
  • いつも彼らはどこかに

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    動物がモチーフの短編集。
    登場人物たちは何かしら大事なものを失っているし、そしてどこか狂っている。
    現実と非現実の境目が曖昧で、気づけばどこか別の世界に自分も連れて行かれている。

    短編集なので一作一作は短くて、しかも言葉が美しいので軽く見えるのだけど、とても重たくて。
    まるで海の中に潜って水底の神秘的な世界を見ているよう。ときどき顔を出して息継ぎするみたいに、合間に明るい外国作品などを読まないと、その圧倒的な力に押し潰されそうになりました。

    安心できる場所をちゃんと確保して、静かな夜に、一話ずつ。そーっとのぞき込むように。
    そんな読み方がおすすめの作品です。

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    2026年03月09日
  • 海

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    小川洋子さんの小説をちゃんと読んだのは今回が初めて。非常に良かった。特に好きなのは下記3編。恋人の弟と鳴鱗琴について話す「海」。孤独なホテルドアマンと話せない少女の交流を描いた「ひよこトラック」。最後にひよこを守るため言葉を発した少女の台詞がとても大人びてて驚いた。題名屋と観光ガイドの母を持つ少年の交流を描いた「ガイド」。巻末のインタビューもとても良かった。小川さんの描く歳の離れた人同士の交流が本当に素敵な関係性で良い。どこか懐かしく繊細で温かな気持ちになる物語ばかり。あやしい職業、不思議な世界観も好き。

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    2026年03月09日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    こんなに美しいレンズで世界を見れたなら、と思わされる。綺麗な世界を綺麗に演出して綺麗な文章で届けてくれる。チェスの駒を動かす静かな音が頭の中で響くような、静謐な小説。読み終えて現実に戻ってきた時に、周りの人や自分に対して少しだけ優しくなれる。世界の輪郭を柔らかくしてくれる。

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    2026年03月09日
  • 博士の愛した数式

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    交通事故の後遺症により記憶を80分しか保持できない数学者の「博士」と、彼の家政婦である「私」、その息子「ルート」の交流を通じて、人間関係の温かさと数学の美しさを静かに描いた物語。
    博士がルートを、また私とルートが博士を思いやる姿を通じ、たとえ記憶が失われてもなお積み重なっていく関係性や、人が他者を信頼していくプロセスの尊さが丁寧に表現されている。また博士が語る数学は単なる知識に留まらず、数学の公式と美しい情緒を結びつけた表現がとても印象的だった。
    物語全体を通して、効用よりも「美しさ」を大切にする姿勢が強調される。博士にとって数学は生きる軸であり、その真摯さが周囲の人にも静かに影響を与えていく

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    2026年03月08日
  • 密やかな結晶 新装版

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    人間は失っていく生き物だと日々感じていた頃に手にとった。
    育児をしている自分。自分と向き合う時間がない中で、必死に子供の命を守ろうとしている自分。日々ささやかな幸せを噛み締めながらも、自分の描く自分がガタガタと崩れていく感覚があった。

    情景描写がものすごく緻密で、こんなにも情景描写に優れた作品は初めてだった。
    消滅の物語だが、消滅しないものについて考えている自分がいた。

    最近喉元が詰まる感覚があった。産後だからか、頭の回転も遅くて、うまく言葉がでてこないことも多かったからだ。でもこの物語を読んで、身体が消滅しても残るものはあると知って、自分の中の蜜やかな結晶はなんだろう、と思えるようになっ

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    2026年03月01日
  • 博士の愛した数式

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    この3人の物語が終わらないでほしい、そんな空気感のある物語だった。
    なぜ泣いているかもわからない、涙が止まらなかった。

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    2026年03月01日
  • 最果てアーケード

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    アーケードの人は、下世話な噂ばなしはせず、みんなひそかに、お互いを温かく見守る。お父さんと「私」のことも、輪っか屋さんの恋模様も。

    「私」ももう亡くなっていて、霊のようにゆらゆらと出てきては思い出を語っているのかな。小さいもの、目立たないもの、死んだものに視線を向ける。このアーケードでは、そういうものが大切にされ、尊重されている。

    目立たないけど、役に立つかどうかわからないけど、そのままでいいよ、と言ってもらえるような物語だった。

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    2026年02月28日