小川洋子のレビュー一覧
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言葉は、人の心を救い、生きる支えになるもの
そのことを強く感じた
アンネにとって隠れ家での生活は、不安と恐怖に満ちた毎日だった
その中で日記は、誰にも言えない本音を打ち明けられる大切な存在であり、アンネの心を救っていたのだと思う
ユーモアを忘れず、時には厳しい言葉で感情をあらわすアンネの姿から、彼女が必死に生きていたことが伝わってきた
また、反抗期の影響で母親とうまくいかなかったことなど、人間らしい一面を知ることができた
私はアンネの話は知っていたが、実際に日記をきちんと読んだことがあったのだろうかと考えさせられた
アンネが日記を書き残したからこそ、私たちは彼女の気持ちを知ることができる
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Posted by ブクログ
7人の科学者に、彼らの研究についてインタビューをする小川洋子さん。改めて、サイエンスの果てしなさを思い知ることになった。
小川洋子さんの作品の原石を見ているような思いだった。『最果てアーケード』『琥珀のまたたき』『博士の愛した数式』など、それらの登場人物がみな魅力的なのは、彼らが収集したり、探求したり、愛を捧げていたりと、科学の美しさを一身に纏っていたからだったのだ。
サイエンスの美しさが含まれていることを意識しながら、彼女の作品をもう一度読み直してみたくなる。
小川洋子さんが科学者とお会いする前に、想像されていた科学者像が、小川ワールド全開でくすりと笑えてしまう。
続編も出してほしい。
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Posted by ブクログ
こってりとした『BUTTER』の後はさっくりと読める短編集を。実は初めて、小川洋子さんの本を読破しました。
ずっと憧れはあった。何冊か手に取ってはその言葉の美しさと静謐な世界観に、ある種の格式高さ、ハードルの高さのような感想を抱いて、もう少し読書慣れしてからにしようと挫折していた。
だから今回、あえて短編という形で再挑戦をした。ゴールが近いからこそ、あまり怖がらずに読み進められたし、自分の中で感じていた高嶺の花のような文体も実はとても柔らかく、ひんやりとした手のひらの中に温かな小さな命が握られているような繊細さが感じ取れた。
誰だって、この温かさに触れてもいいんだよ、でもそっとね、と言われて -
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〈最近、歴代の本屋大賞受賞作を読み漁っています。〉第1回の本作は、わたしが高校生の頃に発刊・受賞されたものでした。なかなか当時は学業に忙しく、その後も学生/社会人と読書習慣の度に異なる作者さんや異なるジャンルの本ばかり読んでいたので、この頃まで巡り会うことができませんでした。
こんな素晴らしい傑作に。
わたしも、数字(数学よりは笑)や素数が、好きです。(よく運転中に周りの車のナンバープレート見て足し算して、あ、11だ素数だ、23だ素数だ、とか無意識にやっちゃうタイプです)
そしてプロ野球も好きなので、両者がテンポ良く絡み合い繰り返され、博士と私とルートの3人の仲を深めていくキーになる本作は、と -
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ネタバレ読む前は、優しい博士と親子が数学を通じて繋がる温かいストーリーなのかな、と予想していた。
読み始めると、あれ?博士そんな無愛想なん?と驚き。身の回りのことも自分でできない小汚い数学好きのお爺さんかい!って思った。
読み進めると、優しい博士だとわかった。
記憶を80分しか保てない日々の中での、初対面の人との数字の話は、緊張や気まずさを緩和させる目的だったし、博士の愛した数式たちと同等に親子のことを大切にした。こんなに愛情深い人だったなんて。
ルートの11歳の誕生日パーティー以降、
読みながらずっと泣いていた。
また、何回も読み返したい。自分にとって大切な本になった。 -
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とても大事にしている本です。
折に触れて読み返します。
温かく、切なく。感じ取るものが多すぎて言葉にならない。でも大事なことってこういう事だよね、ってそっと教えてくれるような。
自分の中で優しさが込み上げてくるような。
記憶が80分しか持たない博士、その担当をする事になったシングルマザーの家政婦、そしてその子供のルート。
記憶が80分?そんな設定!とまず驚きます。
例えば、大事な人を失くしても、記憶は消えない。きっとお互い心の中で残る。というその大前提が、ない。
私はやっぱり最後までその事が切なかったです。
でも、確かに存在した時間は消えない、自分が忘れなければ…って私の心が追い付くまで、物 -
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普段、腕や首や血が飛び散ったり井戸から貞子が出たりするものばかり読んでいるので、文字通り心が洗われた気持ちになった。
たまには心をお洗濯しないとだめですね…。
ささいな日常を(もちろん練りに練られた内容なのだけども)繊細で丁寧で厳選された言葉で綴られると、こんなにも濃密な世界になるんですね。
どの話も素敵なだったのですが、個人的には「B談話室」と「コンソメスープ」が好きでした。
この物語を語った人々がどうなったかは、冒頭で語られているので、だから余計に最後のエピソードの「この朗読会が終わらなければいいのに」という一文が胸に応えました。
読み終わってため息です。余韻引きずるわー。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ一見孤独とも判断されてしまうような数学者の博士が、ルートや「私」、との出会いを通して日常に彩りが加わっていく暖かい物語。
この話の大きな話題は阪神タイガースと数学だった。博士にとってルートは愛おしいという一言では表せないほどのかけがえのない存在であることがいろいろな場面から読み取れる。でも、博士の記憶は80分しかもたない。そんな特徴があるがために少し切ない気持ちになってしまう場面もしばしばあった。3人によって紡がれていく思い出が消えてしまうから。
物語の終盤では博士が施設に入ってしまう。博士は80分の記憶すらもてなくなってしまう。
1番感動したのは博士が2人の記憶が消えてもなおルートと「私」 -
Posted by ブクログ
読み終えて、まず心に浮かんだのは
「凄い」という言葉だった。
物語としての完成度はもちろんだが、
小川洋子さんの数学への深い理解と、それを文学として昇華させる力に、
ただただ圧倒された。
物語の中心にいるのは、
不慮の事故によって、ある時期以降の記憶が80分しかもたない数学博士。
博士のもとにやって来る家政婦と、その息子・ルート。
この三人が、数学を通じて少しずつ関係を結んでいく様子は、
どこか不思議で、けれどとても静かで美しい。
読み進めていくうちに、
博士の人間像が少しずつ浮かび上がってくる。
数字や数式に対する純粋なまなざし、
誠実で、子どものように無垢な心。
最初は風変わりな人物と