小川洋子のレビュー一覧
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これも何度読んだかわからない本だが、改めて再読した。これ以上好きな本に出会ったことはない。
最近大学で、なぜ自分が理系を選び、必死に勉強しているのかわからなくなってきていた。だがこの本を数年ぶりに読み、もしかするとこの本があったから私は今理系の道を選んだのかもしれないと思い、今までの漠然とした不安感が完全に払拭され、この選択に誇りを持てるようになった。
博士は本当に素晴らしい人格であり、私も見習いたいと思う。たくさん学び、自分がその成果を得られなかったとしてもこの学びをもっと若い子たちに伝えることができたらそれ以上の幸せはないだろうと思った。この本に出会うことができて幸せだった。皆んなに紹介し -
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ネタバレ第1回本屋大賞受賞以来新潮文庫がものすごく売り出している作品ということは以前から知っていて、何かの折に購入したきり本棚に眠らせていました。数日前にこの作品に触れているメディアを目にする機会があり、読み始めた次第です。
「ママが博士を信用しなかったからだよ。博士に僕の世話は任せられないんじゃないかって、少しでも疑ったことが許せないんだ」
というルートの言葉が強く心に残っています。本文を通して、純粋で思慮深く、思いやりに満ちた少年だと感じました。
もちろん博士の記憶が80分しか持たないことが話のメインとなりますが、「私」と博士とルート、それぞれの関係性や言葉の掛け合い、また阪神タイガースのアク -
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実におもしろい、ほのぼのとしたストーリーだった❗️
76歳でなくなった数学者は、良い終末を迎えれたのだと。
義理のお姉さんも、穏やかに息を引き取るのを見守ったのだろう。
ただ、どうして義理のお姉さんは、義弟の世話ができなかったのか⁉️
読者のかたは、どう思いますか⁉️
『司馬曰く、人は皆、頭にスクリーンを持っていて、そこに様々な光景を映し出します。
耳から入った「言葉」という情報も、頭の中で映像やイメージに変換され、このスクリーンに投映されます。
落語や読書が好きな人は言葉を聞きながら、あるいは読みながら、このスクリーンに様々な光景を映しだして楽しんでいるわけです。
言葉や文字というものは単 -
Posted by ブクログ
ネタバレスポーツ選手、将棋の棋士、俳優、文楽の人形遣い、赤ちゃんなどの体の一部に焦点を当てたエッセイ。他にもレース編みをする人の指先、とか、動物の体に着目したものも。「ハダカデバネズミの皮膚」っていうのが面白かった。それぞれ写真が添えてあり、「外野手の肩」のエッセイではイチロー選手が遠投しているときの写真が載っている。本当に、美しい。「力士のふくらはぎ」では、もうほぼ、後ろに倒されているのに、それでも相手より持ちこたえようと、ひざから下の力だけで自分の全身を支えているありえない写真が。
「その時」体の一部がどうなっているのか、なぜこんなにも美しいのかと、小川洋子さんにしか綴れない言葉で綴っている。本当 -
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ネタバレ寂しい小説だった。
この島では記憶の中から少しずつ消えていく。切手だったりカレンダーだったり。主人公は小説家だったのにあるとき小説もなくなってしまう。でも消えたものに対し、大方の人はなにも思わずない世界に順応してしまう。
全員が忘れてしまうのであればよかったけれど、一部には記憶がなくならない人もいる。記憶がなくならない人がいると、記憶からなくしてしまう人にどうにかできないものかと思ってしまう。主人公はどうにかしようとするけれどどうにもできなくて、記憶をどんどんなくしていく。
悲しみもなく、記憶からなくなってしまうことが悲しかった。 -
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3人の絆が、お互いに思いやる心が読んでいてとても暖かかった。
3人は一緒にいる時はもちろん、離れてからもこの時を思い出せば優しく暖かくなれたのではないでしょうか。
そして未亡人。彼女もまた、博士を想っていた。だからこそ博士と一緒にいたかったのだが、記憶障害の件が直視できなかった。だからこそ家政婦をお願いした。だけど必要以上に親しくはなって欲しくなかった。葛藤が分かります。あの数式を見て3人がどのような関係なのか理解できるのだから、それなりに数学に造詣があるか、博士に説明されていたのでしょう。
最後に4人でいる風景を描写してくれたのは良かった。
いちいち知らない単語が出てくると調べないといられな