小川洋子のレビュー一覧

  • ブラフマンの埋葬
    「謎」の生物、ブラフマンが本当に愛くるしい。⁡
    ⁡⁡
    ⁡この物語の、登場人物は
    干渉せずただ、静かに各々の時を過ごしています。⁡
    ⁡⁡しかし、干渉しない物語から足を1歩踏み出してしまった「僕」。⁡
    ⁡その先に訪れるのは…。⁡
    ⁡⁡
    ⁡なぜ「僕」はあんな行動をしてしまったのか⁡
    好意か嫉妬か、愛すべき...続きを読む
  • 密やかな結晶 新装版
    一つずつ消えていく記憶
    けれど、人間の心や感情まで、誰も奪うことは出来ない。
    素晴らしい本です。一気に読んでしまいました。
    全ての言葉に無駄がなく、完成されていると感じました。
    生きる事、誰かを想い大切にすること、今の時代にこそ読むべき本だと思います。
  • 密やかな結晶 新装版
    話を全て理解できるわけではない。
    でも、小川洋子さんの静謐な世界観が強烈に心に残る。
    消滅する世界に順応していく人。
    消滅せずに狭い部屋に潜む人。
    この奇妙な世界に、秘密警察の存在が輪をかけて恐怖心を煽る。
    ところで消滅がやってきたら、記憶も消える。そして残された世界で生活する。となると、私にもこれ...続きを読む
  • 猫を抱いて象と泳ぐ
    映像的な書き口なんだけど、
    言葉を深く理解していて、その効果を計算できるところは小川洋子の作品だな、と思う。
    そういった意味でこれはすごく詩的だった。

    最後のゴンドラのシーン。
    リトルアリョーヒンと総婦長とミイラ。
    キングとクイーンとポールに重なって美しく残酷な終わり。
  • やさしい訴え
    居場所を求める主人公の姿が痛々しく、悲しい気持ちになった。これまで読んだ小川洋子さんの作品の中で最も恋愛描写が濃厚だった。そして、孤独感も一層強かった。
    暴力を振るう夫との離婚、叶わない恋。次々と身の回りのものを失い、自分の存在を受け入れてくれる場所を探していく。淡々とした態度は達観してるようでもあ...続きを読む
  • 密やかな結晶 新装版
    この作品の読書感想文を書くには、私の文章力はとても足りない。
    それくらい圧倒されるのです。

    小川洋子さんの紡ぐ言葉たちは小川さんが作り出す物語同様、優しくて繊細で儚い。
    一文字も逃したくない洗練された文章。
    この物語の世界はとても寒くて淋しくて不安で切ないけれど、そんな状況下で蝋燭の火をぽっと灯し...続きを読む
  • 生きるとは、自分の物語をつくること
    物語とは、自分自身に現実にあるものを受け入れるもの。小説は現実に即した物語として、読み手や書き手に、そこにあるものを感じさせる。規則から生まれる合理性だけで世界は成り立っているわけではなく、そこにある偶然も含めて、その現実や矛盾をどう取り込むか、大きな流れの中で個性が現れる。(大樹)
  • 生きるとは、自分の物語をつくること
    物語とは、自分自身に現実にあるものを受け入れるもの。小説は現実に即した物語として、読み手や書き手に、そこにあるものを感じさせる。規則から生まれる合理性だけで世界は成り立っているわけではなく、そこにある偶然も含めて、その現実や矛盾をどう取り込むか、大きな流れの中で個性が現れる。
  • 猫を抱いて象と泳ぐ
    リトル・アリョーヒンと呼ばれる小さな男の子が、バスに住む運転手にチェスを教えてもらい、人生をチェスで過ごしていくお話。
    出会いと別れがあり、場所に思い出があり、出生時の出来事がある。
    彼の周りで起こる出来事はどこか悲しさの多いことばかり。
    彼は人生を、リトル・アリョーヒンと名付けられた人形の中で、チ...続きを読む
  • 凍りついた香り
    とても静かな最後になって、この作品にふさわしい終わり方をしたなと思う
    まだ悲しさと静けさが漂っているかのような不思議な感覚が無くならない

    結局ルーキーがなぜ自殺したのか、履歴書に嘘を書いたのか、関わった全ての人に異なった情報を与え続けたのか、答えは分からなかった。
    ただ目の前に彼が息をして言葉を操...続きを読む
  • 小箱
    心の中の木の陰の水溜まりには日が射しているけれど、思いの外深いようだったから蒸発することはなかった。その底には祈るように、幾つかの色のあるものが呼吸をしていて、それらのものに呼吸を合わせることが、この小説を読むことだった。

  • 口笛の上手な白雪姫
    とても綺麗で素敵な物語でした。
    特に、『先回りローバ』、『亡き王女のための刺繍』が印象に残りました。全体的にふんわりとした雰囲気で、穏やかな気持ちになれます。
  • 猫を抱いて象と泳ぐ
    とてもとても好きな書。
    主人公の生まれながらの事情、家族との関係、屋上から大きくなりすぎて降りられなくなった象のインディラ、壁の間の女の子ミイラ…と静かに紡ぐ序章をへて、マスターとの出会いがある。マスターと主人公の関係、その後のチェスの世界で出会う少女や老婦人との関係、また老人マンションでの人々との...続きを読む
  • 琥珀のまたたき
    目は口ほどに物を言うとはよく言ったものです。この本に書いてある文を読むと目で見た情報が思い起こされます。正解なんていらないし、至極シンプル。言語化レビューするのも憚られるくらい喰らっちゃったけど記憶のアウトプットに。小川洋子さんは何か特殊能力でも持ってるのかしら?
  • 密やかな結晶 新装版
    温かくて優しいのに、冷たくて寂しくて残酷。
    消滅を強要されることも、それを平気で受け入れるのも寂しくて、怖しい。
    そして、私にとっての「密やかな結晶」とは何だろうかと考えてみる。
  • 博士の愛した数式

    ずっと気になっていた作品

    かなり前から存在は知っていたのですが、なるほどこういうお話だったんですね。
    博士と、男の子とそのお母さんと、3人が共に関わり合い成長していく姿に感動しました。
  • からだの美
    イチロー選手が打球をつかみとり、ふりかえり、すぐさまホームに向かって投げる。見方のミットに吸い込まれていく。その肩をとおし、人々は記憶に刻まれた太古の肉体の美と再会する。と、いうふうに表現する小川洋子さんの文章がすごくいい。

    他には、ミュージカル俳優の声、棋士の中指、ゴリラの背中、バレリーナの爪先...続きを読む
  • 人質の朗読会
    “記憶”の美しさそのものを得られる物語

    なんて美しくて悲しくて儚くて確かな欠片達なんだろうと思いました。
    命や人生がそういうものなのか。

    詳細や輪郭が確実に見えるわけではないのに、
    失われる、失われたこと、が辛くて心が痛い。
    けど失われたことや、失われ方だけに意味がある訳ではない。

    相手が大切...続きを読む
  • 密やかな結晶 新装版
    今1番好きな本。淡々と存在が消えていく事を受け入れながら生きる人、いつまでも存在が消えない人の想い。じわじわと涙が溢れる。大事にしたい一冊。
  • からだの美
    小川洋子さんのフィルターを通して生身の「からだ」を観察すると、「人間と人間以外」を分けて考えることは無意味だな、とつくづく思わされる。超一流のアスリートから生まれたての赤ちゃんまで。文章も写真もすべて美しい。