小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
普段、腕や首や血が飛び散ったり井戸から貞子が出たりするものばかり読んでいるので、文字通り心が洗われた気持ちになった。
たまには心をお洗濯しないとだめですね…。
ささいな日常を(もちろん練りに練られた内容なのだけども)繊細で丁寧で厳選された言葉で綴られると、こんなにも濃密な世界になるんですね。
どの話も素敵なだったのですが、個人的には「B談話室」と「コンソメスープ」が好きでした。
この物語を語った人々がどうなったかは、冒頭で語られているので、だから余計に最後のエピソードの「この朗読会が終わらなければいいのに」という一文が胸に応えました。
読み終わってため息です。余韻引きずるわー。 -
Posted by ブクログ
冒頭、黒電話の描写で一気に引き込まれた。ほんとうに美しい文章。一つ一つの物語を、言葉を、時間をかけて味わいたいと思いつつ、ページを捲る手が止まらなかった。何度でも読み返したい。全部の話が好きだと言える短編集に出会えて嬉しい。読み終わった後この本を抱き締めたくなった。
「
形容しがたい丸み、暗号めいたダイヤル、耳にフィットするよう計算された受話器のカーブ、可愛らしげにクルクルとカールするコード。そうした何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものでないことにちゃんと気づいていた。
とにかくその黒色は特別だった。一点の濁りもなく、濃密で、圧倒的で、気高くさえあった。 -
Posted by ブクログ
恥ずかしながら、これまで小川洋子さんの作品を読んだことがなかった。
そして本作『密やかな結晶』が、25年も前に刊行された作品だということにも驚かされた。
これほど時代を超えて読み継がれている理由は、読み終えた今ならよくわかる。
物語の舞台となる島では、ある日を境に、人々の記憶から「もの」や「概念」が、ひとつずつ消えていく。
島の人々は戸惑いながらも、その消滅を受け入れ、忘れるべきものとして手放していく。
そこには秘密警察の存在があり、記憶を失わない者は連行されてしまうという恐怖が、常に影を落としている。
この構図は、読みながら何度も、
ナチス・ドイツ下で迫害を受けたユダヤ人の歴史を思い -
Posted by ブクログ
ネタバレ小川洋子さんらしさはあるのだけど、今までに読んだ作品とは少し雰囲気が違う印象。ほかの作品で共通して感じるのは、薄暗くてどことなく埃っぽい空気感。『ミーナの行進』はもっと明るい陽だまりのなか、物語が展開していくようなイメージだった。
日本とドイツ、歳の近い2人の従姉妹(ミーナと朋子)、広くて豪華な芦屋の洋館。少女たちが一緒に暮らしたのはほんの1年にすぎないが、2人にとって忘れることのできない思い出になる。華やかな容姿を持つがなぜか家に帰ってこない伯父さん、一人でじっと何かに耐えるようにウィスキーと煙草を燻らせる伯母さん。双子の妹と家族を哀しい理由(ナチスの迫害)で亡くした過去をもつローザおばあ -
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知人のおすすめで手に取った、小川洋子さんと河合隼雄さんの対談本『生きるとは、自分の物語をつくること』。
この本はまさに、私の「読み、聴く」という営みが深く意味づけられる内容でした。
対談されているお二人は、小説家と臨床心理学者であり、「物語をつくる」という共通点をお持ちです。
臨床心理では、人々が自分の物語をつくるのを手助けする。
小説家は、意識的に物語を生み出し、それを読んで人が救われる。
「もしや私がやっていることは、本を読むことで、物語を豊富にストックし、他者の物語化の材料として差し出すことではないか」と自らの行いに輪郭をもらえた心持ちです -
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物語は既にそこにある。
小川洋子さんにかけられる「なぜ小説を書くのか」という問いは、私が人に「なぜ山に登るのか」と問われる時と似ているものかあった。「なぜ登るのか」と聞かれるのは「なぜ生きるのか」と問われるのに等しい。説明できないからこそ、自分は山に登っている……。なんて、私における山の存在って、小川洋子さんにとっての小説くらい、知らぬ間にこんなに大きくなっていたのか、と驚いた。
河合隼雄さんのトークセンスが光に光っていており、一気に大好きになった。今まで存じ上げなかったことがもったいないくらいに素敵な方。谷川俊太郎さんとバカ飲みしたエピソードだけでも面白かったのにその勢いは留まることを知ら -
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ネタバレ博士と少年の純粋な愛を描いたヒューマンドラマ。
博士は数学以外のことには無関心かと思いきや、特に血の繋がっているわけでもない子ども(ルート)に対して、大きな愛情を持って接してくれる。
博士は学校の先生をしていたから、元々子供が好きだったことが窺える。
博士は数式でメッセージを伝える。
今までの家政婦からは、星が10近く(10回)ほども面倒が見れないと突き放されてしまったのに、新しい家政婦(ルートの母)はめげずに博士の数式を解こうとし、寄り添おうとする。
ルートも計算を諦めたと思ったら、違うアプローチで博士を喜ばせようとしているのだ。
私はこのシーンに強く胸を打たれた。
記憶を失くす度に