小川洋子のレビュー一覧

  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    こんなに美しいレンズで世界を見れたなら、と思わされる。綺麗な世界を綺麗に演出して綺麗な文章で届けてくれる。チェスの駒を動かす静かな音が頭の中で響くような、静謐な小説。読み終えて現実に戻ってきた時に、周りの人や自分に対して少しだけ優しくなれる。世界の輪郭を柔らかくしてくれる。

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    2026年03月09日
  • 密やかな結晶 新装版

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    人間は失っていく生き物だと日々感じていた頃に手にとった。
    育児をしている自分。自分と向き合う時間がない中で、必死に子供の命を守ろうとしている自分。日々ささやかな幸せを噛み締めながらも、自分の描く自分がガタガタと崩れていく感覚があった。

    情景描写がものすごく緻密で、こんなにも情景描写に優れた作品は初めてだった。
    消滅の物語だが、消滅しないものについて考えている自分がいた。

    最近喉元が詰まる感覚があった。産後だからか、頭の回転も遅くて、うまく言葉がでてこないことも多かったからだ。でもこの物語を読んで、身体が消滅しても残るものはあると知って、自分の中の蜜やかな結晶はなんだろう、と思えるようになっ

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    2026年03月01日
  • 最果てアーケード

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    アーケードの人は、下世話な噂ばなしはせず、みんなひそかに、お互いを温かく見守る。お父さんと「私」のことも、輪っか屋さんの恋模様も。

    「私」ももう亡くなっていて、霊のようにゆらゆらと出てきては思い出を語っているのかな。小さいもの、目立たないもの、死んだものに視線を向ける。このアーケードでは、そういうものが大切にされ、尊重されている。

    目立たないけど、役に立つかどうかわからないけど、そのままでいいよ、と言ってもらえるような物語だった。

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    2026年02月28日
  • サイレントシンガー

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    小説は読者の精神の状態によって響き方が変わる。また読まれる環境によっても受け取り方は変わる。こんなにうるさくてせっかちな世界に生きる私にとって、鎮静剤のような物語だった。一枚の舌より二つの耳を重視する人々に囲まれてリリカは美しい声で歌い、それを認められた。ずっと彼女の『家路』が流れる町であってほしいけど、いつかは新しく明るく賑やかな歌と取って変わるのだろう。それでも小川作品の愛読者は、静かなシンガーを求める少数者がいることを知っているだろう。時折こんな世界に触れて心を落ち着けたいものだ。

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    2026年02月24日
  • ことり

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    ネタバレ

    1人の小父さんの人生を読んだ。
    一見波瀾万丈で、第三者から憐れみの目を向けられそうな人生にも見えるが、小鳥とお兄さんとの揺るがない繋がりがあり、穏やかに最期を迎えることができ、とても彩りのある素敵な人生に思えた。

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    2026年02月23日
  • とにかく散歩いたしましょう

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    小川洋子さんはエッセイでも文章が静謐で丹念で素晴らしいです。でも書かれている内容はフレンドリーで、小川さんにもこんな面があるんだ…!と楽しくなってしまう。文鳥やコビトカバの章では、ことりだ!ミーナだ!と盛り上がれるのも嬉しい。

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    2026年02月23日
  • まぶた

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    バックストロークは何回読んでも感動する。どんなに荒んだ心でもぐんぐんしみこむ小川洋子の言葉はすごいと思う(i_i)

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    2026年02月17日
  • 密やかな結晶 新装版

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    「わたし」が暮らしている島では、ある日突然に物事が消滅する現象が起こっていた。
    玩具、貴金属、本などの物的な物だけではなく、言葉、記憶、そして人体までもが消滅の可能性がある社会なのだ。

    「わたし」は父親を早く亡くし、母親と二人で暮らしていたのだが、母親は消滅現象が起こっても記憶を消失しない能力があったために秘密警察に連行されてしまう。
    それ以降、「わたし」は小説を書いて一人で暮らしている。
    「わたし」には二人の大切な人がいる。
    一人は「わたし」の両親のもとで色々と働いてくれていたお爺さんで、常に「わたし」の側に立って助けてくれていた。
    もう一人の大切な人は編集者のR氏で、「わたし」の小説を常

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    2026年02月16日
  • ことり

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    本作は、声にならない声をすくいあげる物語だった。
    兄は人間の言葉からは静かにこぼれ落ちてしまう存在だが、ことりのさえずりだけは正確に受け取ることができる。その姿は、社会から取り残されているようでいて、同時に誰よりも純粋な世界に触れているようにも見える。
    弟は兄の言葉を翻訳し、現実とのあいだをつなぐ細い橋となる。兄の世界を守ろうとするその姿は献身的で、けれどどこか、常に風にさらされているような不安を帯びている。二人の暮らしは小さく閉じているが、その閉じた空間のなかにだけ流れる時間は、外の世界よりもずっと澄んでいる。
    ことりの声は、救いであると同時に隔たりでもある。羽ばたきは自由の象徴でありながら

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    2026年02月15日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    小説家・小川洋子さんと心理学者・河合隼雄さんの対談本。

    最近、私のなかで対談本が、アツい。
    この本を読む前に、村上春樹さんと河合隼雄さんの対談本を読んだ。
    宙をただよう概念が、思いもよらぬところで、ふっとつながるような体験が、なんとも快感だった。
    その熱量をそのままに、今回この対談本を手にしたのである。

    個人的には、次の一節が、心に響いた。

    「世界中にあふれている物語を書き写すのが自分の役割だとすれば、私はもうちっぽけな自分に怯える必要はないのです。物語は既にそこにあるのですから。」

    小説家・小川洋子さんが、河合隼雄さんとお話しして得た気づきである。

    書くときに、人はものを作り出そう

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    2026年02月14日
  • ミーナの行進

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    主人公はごく普通の中学1年生・朋子。家庭の事情で伯父さんのもとで暮らすことになります。
    この伯父さん、飲料メーカーの社長でお金持ち。芦屋の洋館で過ごす1年はまさに絵に描いたような夢の暮らし。
    しかも母親がドイツ人の伯父さんはイケオジ、その息子・いとこのお兄ちゃんももちイケメン!シャンデリアのお屋敷、池のある広大なお庭…まさに少女マンガの世界。
    そしてもう一人のいとこ・ミーナは小学6年生。美少女でか弱くまさに蝶よ花よ。あ〜ハイハイ知ってますこういうの、やっぱマンガだね。と思いきや!

    ミーナはバリバリ関西弁、お屋敷の池に住むのはコビトカバ。そしてミーナはそのカバ「ポチ子」に乗って登校(!)するの

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    2026年02月14日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    久しぶりの小川洋子さんの文章。エッセイはもしかしたら初めてか。
    まず、書かれた媒体の幅広さに圧倒され。高校生に読書の魅力を伝えた文、想像力を働かせる登場人物たちへの愛、見知らぬ迷子への愛、そして本書のラストはアンネの日記を例に挙げつつ文章を書くということへの賛美。
    本のあちこちに著者の優しさ温かさを感じられた。洋子さんの愛情深さに触れ、だいぶ久しぶりに著者の名著たちを再読したくなりました。何から読もう。

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    2026年02月12日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    言葉は、人の心を救い、生きる支えになるもの
    そのことを強く感じた
    アンネにとって隠れ家での生活は、不安と恐怖に満ちた毎日だった
    その中で日記は、誰にも言えない本音を打ち明けられる大切な存在であり、アンネの心を救っていたのだと思う
    ユーモアを忘れず、時には厳しい言葉で感情をあらわすアンネの姿から、彼女が必死に生きていたことが伝わってきた
    また、反抗期の影響で母親とうまくいかなかったことなど、人間らしい一面を知ることができた

     私はアンネの話は知っていたが、実際に日記をきちんと読んだことがあったのだろうかと考えさせられた
    アンネが日記を書き残したからこそ、私たちは彼女の気持ちを知ることができる

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    2026年02月08日
  • 遠慮深いうたた寝

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    御神籤ブック6冊目。

    ささやかな日常を綴る美しい言葉の数々に、ただただ陶酔する。
    平凡な日々にこれほどまでの華を添えられる言葉のチカラは、やはり素晴らしい。

    人生は何なるかではなく、何をするかだ。
    って、どこかで聞いたような言葉だけれども、もしかしたら、それよりも大事なのは、どう受け取るか、なのかもしれない。

    今日も明日も明後日も、なんでもない毎日だけど、きっとそこは、ダイヤの原石だらけ。
    こんなにも美しい言葉で磨き上げることはできないけれど、自分なりの方法で磨いていけたらなと思った。

    折に触れて読み返したくなる一冊でした。



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    2026年02月07日
  • 海

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    再読。何度読んでもいい。

    強烈に記憶に残っていたのは「バタフライ和文タイプ事務所」。とても上品な官能小説です。それはまるで、文のやりとりから始まり、御簾越しの会話に情熱を燃え上がらせた、平安時代の恋愛のよう。

    他には「缶入りドロップ」と「ひよこトラック」が私のお気に入りで、とても心が温まります。

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    2026年02月07日
  • 科学の扉をノックする

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    7人の科学者に、彼らの研究についてインタビューをする小川洋子さん。改めて、サイエンスの果てしなさを思い知ることになった。

    小川洋子さんの作品の原石を見ているような思いだった。『最果てアーケード』『琥珀のまたたき』『博士の愛した数式』など、それらの登場人物がみな魅力的なのは、彼らが収集したり、探求したり、愛を捧げていたりと、科学の美しさを一身に纏っていたからだったのだ。
    サイエンスの美しさが含まれていることを意識しながら、彼女の作品をもう一度読み直してみたくなる。
    小川洋子さんが科学者とお会いする前に、想像されていた科学者像が、小川ワールド全開でくすりと笑えてしまう。
    続編も出してほしい。

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    2026年02月03日
  • 海

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    こってりとした『BUTTER』の後はさっくりと読める短編集を。実は初めて、小川洋子さんの本を読破しました。
    ずっと憧れはあった。何冊か手に取ってはその言葉の美しさと静謐な世界観に、ある種の格式高さ、ハードルの高さのような感想を抱いて、もう少し読書慣れしてからにしようと挫折していた。
    だから今回、あえて短編という形で再挑戦をした。ゴールが近いからこそ、あまり怖がらずに読み進められたし、自分の中で感じていた高嶺の花のような文体も実はとても柔らかく、ひんやりとした手のひらの中に温かな小さな命が握られているような繊細さが感じ取れた。

    誰だって、この温かさに触れてもいいんだよ、でもそっとね、と言われて

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    2026年01月31日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    静かで美しくて寂しくて切ない世界、感情がゴチャゴチャなはずなのに、小川先生は朝の光が部屋に入ってくるように一筋の光として書き上げてしまう。
    不思議な世界をいとも簡単に脳裏に浮かび上がらせてしまう技術。読んでいて目が綺麗になる感覚。いつどこでどの季節に読んでも、きっと私を良い方向へ導いてくれるそんな作品だった。

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    2026年01月27日
  • 人質の朗読会

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    普段、腕や首や血が飛び散ったり井戸から貞子が出たりするものばかり読んでいるので、文字通り心が洗われた気持ちになった。
    たまには心をお洗濯しないとだめですね…。

    ささいな日常を(もちろん練りに練られた内容なのだけども)繊細で丁寧で厳選された言葉で綴られると、こんなにも濃密な世界になるんですね。
    どの話も素敵なだったのですが、個人的には「B談話室」と「コンソメスープ」が好きでした。

    この物語を語った人々がどうなったかは、冒頭で語られているので、だから余計に最後のエピソードの「この朗読会が終わらなければいいのに」という一文が胸に応えました。
    読み終わってため息です。余韻引きずるわー。

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    2026年01月23日
  • サイレントシンガー

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    この物語は言葉ではなかなか表しにくいものだと思うでもあえて一言でまとめるなら静謐さだと思う
    静かに進んでいくが、決して単調ではなくりりかの歌がこの物語にさらに色を加えていると思った
    なんだが静かに私の心の中に染み渡っていくような作品でした

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    2026年01月20日