小川洋子のレビュー一覧

  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    静かで美しくて寂しくて切ない世界、感情がゴチャゴチャなはずなのに、小川先生は朝の光が部屋に入ってくるように一筋の光として書き上げてしまう。
    不思議な世界をいとも簡単に脳裏に浮かび上がらせてしまう技術。読んでいて目が綺麗になる感覚。いつどこでどの季節に読んでも、きっと私を良い方向へ導いてくれるそんな作品だった。

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    2026年01月27日
  • 人質の朗読会

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    普段、腕や首や血が飛び散ったり井戸から貞子が出たりするものばかり読んでいるので、文字通り心が洗われた気持ちになった。
    たまには心をお洗濯しないとだめですね…。

    ささいな日常を(もちろん練りに練られた内容なのだけども)繊細で丁寧で厳選された言葉で綴られると、こんなにも濃密な世界になるんですね。
    どの話も素敵なだったのですが、個人的には「B談話室」と「コンソメスープ」が好きでした。

    この物語を語った人々がどうなったかは、冒頭で語られているので、だから余計に最後のエピソードの「この朗読会が終わらなければいいのに」という一文が胸に応えました。
    読み終わってため息です。余韻引きずるわー。

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    2026年01月23日
  • サイレントシンガー

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    この物語は言葉ではなかなか表しにくいものだと思うでもあえて一言でまとめるなら静謐さだと思う
    静かに進んでいくが、決して単調ではなくりりかの歌がこの物語にさらに色を加えていると思った
    なんだが静かに私の心の中に染み渡っていくような作品でした

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    2026年01月20日
  • 人質の朗読会

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    監禁されたことによる人質の方たちの朗読会。人は誰しも語りたくなるような思い出を持っている。事件や事故大きいことではないかもしれない。けれども、自分にとって大きいことは物語のように話は進んでいく。
    素晴らしい小説です。

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    2026年01月18日
  • ことり

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    少し特殊で、だけどその人の生き方で慎ましく暮らしている。少し変な人だけど、何だか応援したくもある。そんな弟。たった一人の肉親の兄と暮らしていた日々はとてもかけがえのないものだっただろう。一人になってからも、生き方は大きく変えずに日々を過ごし、少し羨ましくもある。そんな生活を覗かしてもらっているうちに自分も小鳥のおじさんとなってしまう。心の奥で大事にしたい逸品。

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    2026年01月15日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    冒頭、黒電話の描写で一気に引き込まれた。ほんとうに美しい文章。一つ一つの物語を、言葉を、時間をかけて味わいたいと思いつつ、ページを捲る手が止まらなかった。何度でも読み返したい。全部の話が好きだと言える短編集に出会えて嬉しい。読み終わった後この本を抱き締めたくなった。


     形容しがたい丸み、暗号めいたダイヤル、耳にフィットするよう計算された受話器のカーブ、可愛らしげにクルクルとカールするコード。そうした何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものでないことにちゃんと気づいていた。
     とにかくその黒色は特別だった。一点の濁りもなく、濃密で、圧倒的で、気高くさえあった。

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    2026年01月15日
  • ことり

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    読み終わってまず思ったことは読み終わってしまったということ。
    もっともっとこの世界に居たかった。

    匿名性の高い小説はどちらかというと苦手としていたと思っていたけれど、小川さんが別格なのか、自分の感性が変化したのか。

    主人公は「小父さん」
    人の言葉は話せないが、小鳥のさえずりを理解する「お兄さん」
    うっかりするとニンゲン嫌いが加速してしまいそうだけれど、調整しつつ。

    「内ポケットに仕舞う」という所作とそれに対する描写が指先にまで意識が行き届いていそうでとても美麗。
    「仕舞う」って、字も響きもとてもいい。

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    2026年01月12日
  • サイレントシンガー

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    小川洋子の世界の捉え方をなぞると、いつも今生きている世界の見え方が少しだけ変わる気がする。
    きっとわたしが見落としてしまうもの、気付けないことを彼女は丁寧にやさしく拾い続けている。

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    2026年01月16日
  • 密やかな結晶 新装版

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    恥ずかしながら、これまで小川洋子さんの作品を読んだことがなかった。

    そして本作『密やかな結晶』が、25年も前に刊行された作品だということにも驚かされた。
    これほど時代を超えて読み継がれている理由は、読み終えた今ならよくわかる。

    物語の舞台となる島では、ある日を境に、人々の記憶から「もの」や「概念」が、ひとつずつ消えていく。

    島の人々は戸惑いながらも、その消滅を受け入れ、忘れるべきものとして手放していく。
    そこには秘密警察の存在があり、記憶を失わない者は連行されてしまうという恐怖が、常に影を落としている。

    この構図は、読みながら何度も、
    ナチス・ドイツ下で迫害を受けたユダヤ人の歴史を思い

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    2026年01月10日
  • 海

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    誰にでもあるようなありふれた生活の一場面を切り取ったような短編集です。
    それでも無国籍で御伽話のように感じるところが、著者の本領なのでしょうね。
    変わりのない日常だと思っている日々の中にも、かけがえの無い何かが有るのだと思わせてくれます。
    日々の暮らしが愛おしくなるように生きていかねば。

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    2026年01月07日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    主人公は、幼少期の中でデパート屋上で死んだ象のインディラ、バスのマスター、そしてミイラとの関わりを通じ、「大きくなること」への恐怖を感じ、成長を止めた。
    そこから、からくり人形「リトルアリョーヒン」の中でチェスを指すようになっていき。。

    主人公含め、全ての登場人物に名前があてられてないが、それが気にならないほど丁寧な作品だった。
    様々な登場人物との出会いの中でも、主人公のチェスへの思いは、「その人自身」で、「海を泳ぐ」と比喩されているのは、とても印象的だ。
    山崎努氏の解説にもある通り、静かで優しい世界だった。

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    2026年01月01日
  • ホテル・アイリス

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    老翻訳家と少女の性。倒錯的でありつつも美しい愛の物語の結末は残酷で、とてもよかった。老翻訳家に躾けられた少女は、これから先、セックスで満たされることはあるのかな。

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    2026年01月01日
  • サイレントシンガー

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    またしても独特の世界観を体験させてくれた。おばあさんと主人公リリカは野辺に住む。無口で手話と異なる独特の指言葉を使って会話する野辺の人たちの売店で仕事をするようになる。その売店も独特。客と顔を見て接客することはない。そこに通い続ける料金所の男性と親しくなる。リリカはボイトレを受け、その講師から仮歌の仕事が紹介される。その仕事は音程通り、依頼者が望む通りに歌う必要がある。歌手のように上手く歌うことを求められることはないが、表に出ることのない影のような存在であり続けるリリカの慎ましさ、そしてたくましさがある。

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    2026年01月01日
  • 海

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    鳴鱗琴ってすごく美しい漢字。
    どれも小川洋子さんによる異国のお話しのように感じられて、小川洋子さんの描く世界観と文章がとても好きなんだなと新たな発見になった。
    自分の思い出にも題名をつけてほしいな。

    次に読みたい本も決まりました。

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    2025年12月30日
  • サイレントシンガー

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    「内気な人たちの会」を称する男の人ばかりの共同生活の場、「アカシアの野辺」で育った女の子リリカの話。リリカは歌を歌う。名もない、後世にも残らない、誰もリリカぎ歌ったとは気づかない空気に溶けていく歌を歌う。おばあさんと、介護人と、羊の毛刈り係と、歌の先生と、羊と人形たちと、料金係さんとリリカの、静謐を旨とする生活の物語。

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    2025年12月25日
  • ことり

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    ラランドニシダが一番好きな小説と言っていたので読んだ
    美しい文章、描写。
    はっとする出来事に、胸がきゅーっとする。
    設定も面白いし、ほんと読んでよかった。
    読んでいて心が穏やかになる文体で最高。

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    2025年12月18日
  • ミーナの行進

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    ネタバレ

    小川洋子さんらしさはあるのだけど、今までに読んだ作品とは少し雰囲気が違う印象。ほかの作品で共通して感じるのは、薄暗くてどことなく埃っぽい空気感。『ミーナの行進』はもっと明るい陽だまりのなか、物語が展開していくようなイメージだった。

    日本とドイツ、歳の近い2人の従姉妹(ミーナと朋子)、広くて豪華な芦屋の洋館。少女たちが一緒に暮らしたのはほんの1年にすぎないが、2人にとって忘れることのできない思い出になる。華やかな容姿を持つがなぜか家に帰ってこない伯父さん、一人でじっと何かに耐えるようにウィスキーと煙草を燻らせる伯母さん。双子の妹と家族を哀しい理由(ナチスの迫害)で亡くした過去をもつローザおばあ

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    2025年12月18日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    知人のおすすめで手に取った、小川洋子さんと河合隼雄さんの対談本『生きるとは、自分の物語をつくること』。

    この本はまさに、私の「読み、聴く」という営みが深く意味づけられる内容でした。

    対談されているお二人は、小説家と臨床心理学者であり、「物語をつくる」という共通点をお持ちです。

    臨床心理では、人々が自分の物語をつくるのを手助けする。
    小説家は、意識的に物語を生み出し、それを読んで人が救われる。

    「もしや私がやっていることは、本を読むことで、物語を豊富にストックし、他者の物語化の材料として差し出すことではないか」と自らの行いに輪郭をもらえた心持ちです

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    2025年12月17日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    物語は既にそこにある。
    小川洋子さんにかけられる「なぜ小説を書くのか」という問いは、私が人に「なぜ山に登るのか」と問われる時と似ているものかあった。「なぜ登るのか」と聞かれるのは「なぜ生きるのか」と問われるのに等しい。説明できないからこそ、自分は山に登っている……。なんて、私における山の存在って、小川洋子さんにとっての小説くらい、知らぬ間にこんなに大きくなっていたのか、と驚いた。

    河合隼雄さんのトークセンスが光に光っていており、一気に大好きになった。今まで存じ上げなかったことがもったいないくらいに素敵な方。谷川俊太郎さんとバカ飲みしたエピソードだけでも面白かったのにその勢いは留まることを知ら

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    2025年12月17日
  • 博士の愛した数式

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    ネタバレ

    博士と少年の純粋な愛を描いたヒューマンドラマ。

    博士は数学以外のことには無関心かと思いきや、特に血の繋がっているわけでもない子ども(ルート)に対して、大きな愛情を持って接してくれる。

    博士は学校の先生をしていたから、元々子供が好きだったことが窺える。

    博士は数式でメッセージを伝える。
    今までの家政婦からは、星が10近く(10回)ほども面倒が見れないと突き放されてしまったのに、新しい家政婦(ルートの母)はめげずに博士の数式を解こうとし、寄り添おうとする。
    ルートも計算を諦めたと思ったら、違うアプローチで博士を喜ばせようとしているのだ。
    私はこのシーンに強く胸を打たれた。

    記憶を失くす度に

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    2026年03月16日