小川洋子のレビュー一覧
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『博士の愛した数式』『猫を抱いて象と泳ぐ』『ブラフマンの埋葬』を過去に読んだことあり。ブラフマンがかなり純文系で、以降あまり手に取らず。久々に手に取った。
いい本だった。やはり作家の書く文章に限る。半端な訳者の文とは読みやすさが違う。
西の魔女よろしく、田舎での素敵な思い出が綴られた形式の作品。日常のちょっとした所作や会話に光を当てて、美しさを感じさせる文章だった。
ちょっと自分でもやってみる。
好きな季節というものが決まっていなかったのだが、今年で明確に「秋」になった。
仕事から逃げるように、金曜日の午前中に、メトロにのって江戸川の汽水域に。太陽光をキラキラと跳ね返す川面を眺めながら、ハゼ釣りを満喫。途中、天気雨に降られたが、日差しを反射して、はっきりと視認できる雨粒が、星のようだった。
今年は秋刀魚が豊作。ラグビー選手みたいなイカつい上背をしているのが、250円くらいで買える。IHコンロに乗せたフライパンで塩焼きに。小さい一人暮らしの部屋、グリルがないのが残念。何回も食ったが、最初に食ったやつが一番美味かった。
海産物のコーナーにいくと、1,000円もあれば贅沢できることがわかる。白子を1パック買って、まるごと白子ポン酢に。臭みがでないように、丁寧に下処理をしてから、九条ネギとポン酢に浸して、缶ビールと。調理の儀式を経ると、自然と食べる頃には、感謝の気持ちが湧いてくる。
サザエも丸ごと2個買って、壷焼きにして食ってやった。友達と行った居酒屋、「時価」と書かれたサザエが、1個2500円。2人でそれだけで5,000円もぼったくられたことを、俺はまだ忘れていない。正しい値段を確かめるように食ってやった。そうだ、お前は2個で700円だ。
ラフランスと柿がスーパーに出始めた。季節が早いから、自宅で追熟。段ボールの中に、まだ色が青いやつらと、リンゴ・バナナを同封しておくと、追熟が促されて甘みが増してくる。毎日箱を覗きながら、今日で10日くらい。ラフランスを一つ頂戴。手間のかかるやつだが、熟したときの甘さと香りはやはり格別。
「日常のちょっとした所作や会話に光を当て」るつもりが、会話など存在しておらず、飯しか出てこない件。
友達と会って、旅行にでも行って、酒を飲みながら、こういう話をしたい、こういう体験をしたい。なぁ。 -
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ネタバレヘンリー・ダーガー他、過去の人たちのエピソードから
インスパイアされ書かれた10の作品。
とても小川さんらしさに溢れた短編集。
母乳ババロアをこんなにさらっとそこに自然にむしろ必然的に
あるように書けるのは小川さん以外いない、と思います。
過去の人たちのエピソード自体も面白く
装丁もとても良かったです。断然文庫派なので
文庫待ちですが違う絵になってしまってたら
ハードカバーを買うかも。。
2025年10月7日再読
結局文庫を購入しました。
1度目のときに書いた「母乳ババロア」が書かれた作品で
「再読だわ…」と思い出しました。
誘拐の女王
主人公よりお姉さんのその後が気になります
散歩同盟会長への手紙
今回のNo.1。小説を書いてみたい、と思ったことはないんですが漫画を描いてみたい、とは思ったことがあるので主人公の気持ち、ちょっと分かるなぁ
カタツムリの結婚式
これは作品よりパトリシアハイスミスの経歴に目が行ってしまった。カタツムリを300匹飼育…。
臨時実験補助員
赤ん坊は本当にいたのかどうか。静謐なホラー。
肉詰めピーマンとマットレス
娘がいたらこんな感じなのかな、羨ましい。
若草クラブ
少女の妄想力がすごい。 -
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朋子が過ごした立派なお屋敷ではないけれど、子どものころ、一時期祖母の家で過ごした日々が、今でも色濃い思い出となっていることを、改めて感じました。
朋子にもミーナにも、伯父や伯母、ローザおばあさん、米田さんに小林さんにも、朋子の母にも、そしてポチ子にも心のどこかに影はあって、それでも、温かく過ごした日々を想像すると涙が滲みます。
そして、いつか来るお別れも、すべてが消え去ってしまうわけではなくて形をかえるだけなのだと思うと、私自身にも必ずいつかは訪れる様々な人との別れ、自分自身との別れ(本作を読んだあとでは、別れという表現は違う気がしますが)が、恐ろしいものではないのかも知れないなと思うことができました。
寂しい気持ちになったとき、また読み返したいと思います。 -
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『小川洋子のつくり方』の中の全作品紹介を読んで興味を持った一冊。
大学で心理学を専攻した身として、河合隼雄はもちろん知っていたけれども、なぜかどうしても著書を読む気持ちにならず、当時周りがみんな読んでいたのに、何となく話を合わせて読まなかったわたし。
今この本に出会えて良かった。
''人間は矛盾しているから生きている、整合性のあるものは生き物ではなく機械です''
矛盾を意識し、折り合いをつける。その折り合いの付け方が個性であり、物語だ、と。2人がそこで共感していて、共感し合えることが素晴らしいと思った。
その物語を小説にして見せてくれる小川洋子さんの作品は、だから心に響くのか。
「傍にいること」の章では、''苦しみ、悲しみを受け止め、一緒に苦しむけど、望みを失わずにピッタリ傍にいれればもう完璧''だ、と。
娘に対しても、仕事上でも、常に心に留めて行動すべき金言だと思った。
必要な時に必要な本に出会えるんだなぁ。 -
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すごく面白くて1時間半ほどで一気読み。見学する工場に基準はなく、とにかく著者の気になる工場に行ったそう。
出てくる工場は、
·エストロラボ(細穴屋)
·グリコピア神戸
·桑野造船(ボート)
·五十畑工業(サンポカー)
·山口硝子製作所(ガスクロマトグラフィーの部品)
·北星鉛筆
時々出てくる著者の妄想劇が面白くてクスッとする。作家さんってやはり想像力が豊かなのだろうか。
また、工場見学のレポは細やかで温かな視点で書かれており、これまた笑ったり、なるほどと唸ったりと読んでいてとても楽しかった。
同著者の『科学の扉をノックする』も読んでみたくなった。 -
「ブラフマンの埋葬」
この小説は、人にも場所にも名前がないおとぎ話だ。年代不詳、どこかの国の、山と海と川と沼に囲まれた村。
芸術家の桃源郷「創作者の家」で管理人を務める若者の僕は、森で親とはぐれた小動物を「ブラフマン」と名付けて飼い始める。
よそ者の男とつきあう雑貨屋の娘への僕の恋心。
ひと夏が過ぎ、季節風が死の気配を運んでくる。
この得も言われず愛らしい生き物がなんという動物なのか書かれていないが、そこが限りない夢想を誘って効果的だ。
読み手に具体像を思い描かせない力があり、それがこの小説をファンタジー以上のものにしているのだ。
映像文化に押されている小説だが、この小説を読むと、今もって言葉だけに成し得る魔術がある事を再認識させられた。
ブラフマンとは何者だろう? 象徴的な解釈はいろいろあるだろうが、読み終えて、ほーっとため息をつくしかなかった。
小川洋子の小説は、いつも余韻がとりわけ素晴らしいのだ。
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「生きるとは、自分の物語をつくること」
物語は、既にそこにある。
なんか、分かりそうな言葉だなと、最近感じる。自分の視野で見えているものは一時的で、その瞬間瞬間に過ぎないけれど、人が生きてるだけで、それは全く瞬間的でない。そこには間違いなく過去があって、歴史があって、今までとの繋がりがあって、多様な偶然が折り合った果てに、今の自分がここにいる。
何となく毎日を生きてると、すぐに忘れてしまうし、今この感想を書いている間も、自分が「そういった意味」で現実を見れているかと問われると、見たいように認知している部分があるし、確かとは言えないよなと感じる。
近代化学の発展から、合理的で効率的であることが求められる社会だけど、個人的には、そういう「物語」とか、その人がそこに存在してる理由,意味みたいなものが魅力的だと最近感じるし、それを社会の渦に巻取られて忘れてしまわないようにありたいと、思う。でも、自分は能力値が高い訳では無いし、中々難しいだろうなと感じてもいる。
だから、今を大事にしたい。最近、思い出に支えられていると感じることがある。それは全部事実だけど、母の愛だったり、家族の愛だったり、誰かの労りとか,「思い」であることが多くて、思いが形には見えないけれども、確かに存在するのだから、今を大事にしたいかな、とか考える。
うっちーにこの前言われた、「逃げてる」ってのもそうだと感じるし、相変わらず常時焦ってばっかな感じは拭えないし、「浅はか」なのだなと論理的に思うことも多々あるが、それでも、生きていけたらなぁと、思う、感じる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ宝塚の祖母の家には、暖炉や三角天井の屋根裏部屋や網戸にできる裏口や裸足で駆け回れるフカフカ芝生の広い庭があって大好きだった。庭には大きな桃の木と柑橘の木が植えられていて、夏休みに遊びに行くと桃の実には新聞紙を折った袋がかけてあり、柑橘の木にはアゲハの幼虫がいた。
父と母が離婚して、その家に行くことは許されなくなってしまったので、そんなことももうずっと忘れていた。でもこの本を読んで、その家で過ごした夏休みのことを鮮明に思い出した。
ミーナがベッドの下に書き溜めて隠したお話が、存外に暗いものだったことで、彼女が身近に死を感じていたのだと分かる。
朋子は「完璧な家」に「全員が揃う」ことが何より大切で、子供心に叔父さんの行動にストレスを感じている。
おばあさんは独りで日本に来たことで、家族が皆ナチスによって失われ自分だけ生き残った悲しみを抱えている。
叔母さんも、米田さんも、小林さんも、お兄さんも…
そういった各々の薄曇りを感じさせながらも、思春期の少女2人が1年間子供らしい伸びやかさで成長していくストーリー。一日が30時間くらいあったあの頃。
祖母の家を、大人になってストリートビューで覗いてみたら、平凡な家でささやかな庭だった。
それも何年か後には住宅地一帯が取り壊され、マンションになった。
でも朋子の記憶に鮮明に残るあの家のように、祖母の家とあの庭も、私の中に永遠に在り続ける…
何度も読み返したくなる一冊になりました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ読者を選ぶ内容だと思いますが
すごく主人公に共感しました
変わらない日々、どうしようもない嫌悪と、母親(他人)殻否定される主人公、だけど今現状の世界から出ていくことはできない少女
そんな少女はたまたま老人に恋をした、それが汚い罵り言葉から始まった事だが、きっとどこに彼女の希望があったのだと思う。
罪を抱え最後にしたいと考えていた老人、そして変えられないけど終わりにしたい認めて欲しいと望む少女。
二人が認め合える、愛し方というのは「破壊」しかないのかもしれない。
自分がどこか消えてしまいたい、破壊されたいと望んだ時に読むと救われた本です。