小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『小川洋子のつくり方』の中の全作品紹介を読んで興味を持った一冊。
大学で心理学を専攻した身として、河合隼雄はもちろん知っていたけれども、なぜかどうしても著書を読む気持ちにならず、当時周りがみんな読んでいたのに、何となく話を合わせて読まなかったわたし。
今この本に出会えて良かった。
''人間は矛盾しているから生きている、整合性のあるものは生き物ではなく機械です''
矛盾を意識し、折り合いをつける。その折り合いの付け方が個性であり、物語だ、と。2人がそこで共感していて、共感し合えることが素晴らしいと思った。
その物語を小説にして見せてくれる小川洋子さんの作品は、だから心に響くのか。
「傍にいること」の章では、''苦しみ、悲しみを受け止め、一緒に苦しむけど、望みを失わずにピッタリ傍にいれればもう完璧''だ、と。
娘に対しても、仕事上でも、常に心に留めて行動すべき金言だと思った。
必要な時に必要な本に出会えるんだなぁ。 -
Posted by ブクログ
すごく面白くて1時間半ほどで一気読み。見学する工場に基準はなく、とにかく著者の気になる工場に行ったそう。
出てくる工場は、
·エストロラボ(細穴屋)
·グリコピア神戸
·桑野造船(ボート)
·五十畑工業(サンポカー)
·山口硝子製作所(ガスクロマトグラフィーの部品)
·北星鉛筆
時々出てくる著者の妄想劇が面白くてクスッとする。作家さんってやはり想像力が豊かなのだろうか。
また、工場見学のレポは細やかで温かな視点で書かれており、これまた笑ったり、なるほどと唸ったりと読んでいてとても楽しかった。
同著者の『科学の扉をノックする』も読んでみたくなった。 -
「ブラフマンの埋葬」
この小説は、人にも場所にも名前がないおとぎ話だ。年代不詳、どこかの国の、山と海と川と沼に囲まれた村。
芸術家の桃源郷「創作者の家」で管理人を務める若者の僕は、森で親とはぐれた小動物を「ブラフマン」と名付けて飼い始める。
よそ者の男とつきあう雑貨屋の娘への僕の恋心。
ひと夏が過ぎ、季節風が死の気配を運んでくる。
この得も言われず愛らしい生き物がなんという動物なのか書かれていないが、そこが限りない夢想を誘って効果的だ。
読み手に具体像を思い描かせない力があり、それがこの小説をファンタジー以上のものにしているのだ。
映像文化に押されている小説だが、この小説を読むと、今もって言葉だけに成し得る魔術がある事を再認識させられた。
ブラフマンとは何者だろう? 象徴的な解釈はいろいろあるだろうが、読み終えて、ほーっとため息をつくしかなかった。
小川洋子の小説は、いつも余韻がとりわけ素晴らしいのだ。
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Posted by ブクログ
「生きるとは、自分の物語をつくること」
物語は、既にそこにある。
なんか、分かりそうな言葉だなと、最近感じる。自分の視野で見えているものは一時的で、その瞬間瞬間に過ぎないけれど、人が生きてるだけで、それは全く瞬間的でない。そこには間違いなく過去があって、歴史があって、今までとの繋がりがあって、多様な偶然が折り合った果てに、今の自分がここにいる。
何となく毎日を生きてると、すぐに忘れてしまうし、今この感想を書いている間も、自分が「そういった意味」で現実を見れているかと問われると、見たいように認知している部分があるし、確かとは言えないよなと感じる。
近代化学の発展から、合理的で効率的であることが求められる社会だけど、個人的には、そういう「物語」とか、その人がそこに存在してる理由,意味みたいなものが魅力的だと最近感じるし、それを社会の渦に巻取られて忘れてしまわないようにありたいと、思う。でも、自分は能力値が高い訳では無いし、中々難しいだろうなと感じてもいる。
だから、今を大事にしたい。最近、思い出に支えられていると感じることがある。それは全部事実だけど、母の愛だったり、家族の愛だったり、誰かの労りとか,「思い」であることが多くて、思いが形には見えないけれども、確かに存在するのだから、今を大事にしたいかな、とか考える。
うっちーにこの前言われた、「逃げてる」ってのもそうだと感じるし、相変わらず常時焦ってばっかな感じは拭えないし、「浅はか」なのだなと論理的に思うことも多々あるが、それでも、生きていけたらなぁと、思う、感じる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ宝塚の祖母の家には、暖炉や三角天井の屋根裏部屋や網戸にできる裏口や裸足で駆け回れるフカフカ芝生の広い庭があって大好きだった。庭には大きな桃の木と柑橘の木が植えられていて、夏休みに遊びに行くと桃の実には新聞紙を折った袋がかけてあり、柑橘の木にはアゲハの幼虫がいた。
父と母が離婚して、その家に行くことは許されなくなってしまったので、そんなことももうずっと忘れていた。でもこの本を読んで、その家で過ごした夏休みのことを鮮明に思い出した。
ミーナがベッドの下に書き溜めて隠したお話が、存外に暗いものだったことで、彼女が身近に死を感じていたのだと分かる。
朋子は「完璧な家」に「全員が揃う」ことが何より大切で、子供心に叔父さんの行動にストレスを感じている。
おばあさんは独りで日本に来たことで、家族が皆ナチスによって失われ自分だけ生き残った悲しみを抱えている。
叔母さんも、米田さんも、小林さんも、お兄さんも…
そういった各々の薄曇りを感じさせながらも、思春期の少女2人が1年間子供らしい伸びやかさで成長していくストーリー。一日が30時間くらいあったあの頃。
祖母の家を、大人になってストリートビューで覗いてみたら、平凡な家でささやかな庭だった。
それも何年か後には住宅地一帯が取り壊され、マンションになった。
でも朋子の記憶に鮮明に残るあの家のように、祖母の家とあの庭も、私の中に永遠に在り続ける…
何度も読み返したくなる一冊になりました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ読者を選ぶ内容だと思いますが
すごく主人公に共感しました
変わらない日々、どうしようもない嫌悪と、母親(他人)殻否定される主人公、だけど今現状の世界から出ていくことはできない少女
そんな少女はたまたま老人に恋をした、それが汚い罵り言葉から始まった事だが、きっとどこに彼女の希望があったのだと思う。
罪を抱え最後にしたいと考えていた老人、そして変えられないけど終わりにしたい認めて欲しいと望む少女。
二人が認め合える、愛し方というのは「破壊」しかないのかもしれない。
自分がどこか消えてしまいたい、破壊されたいと望んだ時に読むと救われた本です。 -
Posted by ブクログ
8つの短編の中で『亡き王女のための刺繍』は小川洋子さんならではの妖しい毒っ気が美しかった。『かわいそうなこと』も良かったなあ。敏感なアンテナを大人になっても持ち続けている作者は日々の中で辛くなることはないのだろうかと心配になると同時に羨ましい。
でも、一番好きだったのは『一つの歌を分け合う』。同じ時代を生きる人たちは大縄跳びみたいに次々この世を抜けていく。だけどそれはおしまいじゃなくて、帰れる、焦がれた人たちに合流できるという優しい気持ちで越えられる一線。レミゼラブルから受け取れるうちのそんなひとつを、たった二十数ページで表せられるのがすごい。