小川洋子のレビュー一覧

  • 猫を抱いて象と泳ぐ

    Posted by ブクログ

    最後まで読み終わるのが本当に嫌だった。この優しくて静かな物語が終わってしまうのが寂しくて寂しくて、残り数ページを捲るのが躊躇われた。

    私はチェスのルールなんてこれっぽっちも知らなかったけれど、だからこそチェスの宇宙をその広さを存分に味わえたのかもしれない。
    カツカツと音を立てながら敵陣に攻め入っていくチェスというゲームはただただかっこいいものだと思っていた。こんなに優しさに満ちているなんて知らなかった。

    物語に出てくる彼らが特別に不幸とか幸せ者だとかではない。なのに満ち足りた気持ちとまだ何か物足りなさと、二つの空気が一緒にあって今までにない読書体験でした。

    特にエチュードでS氏とみんなで

    0
    2025年09月09日
  • 人質の朗読会

    Posted by ブクログ

    やっぱり小川洋子作品にはハズレがない。夢の中にいるような、原風景を見ているような、生きているけどすぐ側には常に死があるような。この本の中で特に好きだったのは「やまびこビスケット」「B談話室」「槍投げの青年」「花束」かなー。解説で紹介されている小川さんの言葉「物語として残しておきたいと願うような何かを誰でも一つくらいは持っている」「それらを見つけ、言葉ですくいあげてゆくときのわくわくする気持ちが好き」。自分には出来ない言語化をしてもらってる感じ。

    1
    2025年09月07日
  • ホテル・アイリス

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    かなり食らった
    官能小説だと聞いて読んだが官能的なものもエッセンスにありつつも穏やかで脆く儚い小川ワールドが広がっていて、それに加えていつもよりも激しさを増した表現が響いた
    主人公の気持ちに入り込みやすかった 心情表現の奥ゆかさも凄い

    1
    2025年09月07日
  • ブラフマンの埋葬

    「ブラフマンの埋葬」

    この小説は、人にも場所にも名前がないおとぎ話だ。年代不詳、どこかの国の、山と海と川と沼に囲まれた村。

    芸術家の桃源郷「創作者の家」で管理人を務める若者の僕は、森で親とはぐれた小動物を「ブラフマン」と名付けて飼い始める。
    よそ者の男とつきあう雑貨屋の娘への僕の恋心。

    ひと夏が過ぎ、季節風が死の気配を運んでくる。
    この得も言われず愛らしい生き物がなんという動物なのか書かれていないが、そこが限りない夢想を誘って効果的だ。

    読み手に具体像を思い描かせない力があり、それがこの小説をファンタジー以上のものにしているのだ。
    映像文化に押されている小説だが、この小説を読むと、今もって言葉だけに成し得る魔

    0
    2025年09月02日
  • 人質の朗読会

    Posted by ブクログ

    ひとまとまりのお話だけれど、短編集のような構成。一人ひとりの静かなコアな地味な物語が、心に染み入ります。小川洋子さんの世界観は人であることでしか味わえない心理描写をいつも描いてくれて、それがたまらなく大好きです

    0
    2025年08月22日
  • 薬指の標本

    Posted by ブクログ

    とても静かで耽美で、それでいて少し不気味だった。
    繊細で丁寧な描写が美しく、少し官能的なものを感じた。
    あの後、どうなってしまうのかが気になって仕方がない。

    0
    2025年08月15日
  • 人質の朗読会

    Posted by ブクログ

    個人的にかなり好きな話です。
    人質たちはみんな悲惨な最後を約束されていますが、その人達がぽつりぽつりと語るのはふとした日常。きっと人の心や物語と呼ばれる物は尊い日常から生まれて、その日々を元に生きてきたのだなと思いました。小川洋子さんの語る「物語」というのはこういうものなのだなと思いました

    0
    2025年08月14日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

    Posted by ブクログ

    「生きるとは、自分の物語をつくること」
    物語は、既にそこにある。
    なんか、分かりそうな言葉だなと、最近感じる。自分の視野で見えているものは一時的で、その瞬間瞬間に過ぎないけれど、人が生きてるだけで、それは全く瞬間的でない。そこには間違いなく過去があって、歴史があって、今までとの繋がりがあって、多様な偶然が折り合った果てに、今の自分がここにいる。
    何となく毎日を生きてると、すぐに忘れてしまうし、今この感想を書いている間も、自分が「そういった意味」で現実を見れているかと問われると、見たいように認知している部分があるし、確かとは言えないよなと感じる。
    近代化学の発展から、合理的で効率的であること

    0
    2025年08月12日
  • ミーナの行進

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    宝塚の祖母の家には、暖炉や三角天井の屋根裏部屋や網戸にできる裏口や裸足で駆け回れるフカフカ芝生の広い庭があって大好きだった。庭には大きな桃の木と柑橘の木が植えられていて、夏休みに遊びに行くと桃の実には新聞紙を折った袋がかけてあり、柑橘の木にはアゲハの幼虫がいた。
    父と母が離婚して、その家に行くことは許されなくなってしまったので、そんなことももうずっと忘れていた。でもこの本を読んで、その家で過ごした夏休みのことを鮮明に思い出した。

    ミーナがベッドの下に書き溜めて隠したお話が、存外に暗いものだったことで、彼女が身近に死を感じていたのだと分かる。
    朋子は「完璧な家」に「全員が揃う」ことが何より大切

    0
    2025年08月11日
  • 薬指の標本

    Posted by ブクログ

    独特の世界観と丁寧な描写で読む手が止まらなくなる1冊。

    本のタイトルにもなっている薬指の標本が特に好きでした。タイトルからしてグロ注意作品なのかな、と少し気構えて読み始めましたがグロさは感じられなかったので安心して読めます。
    テンポが良く、描写が秀逸なのに難しい表現がないため読みやすい。ついつい読む手が止まらなくなる作品でした。
    薬指の標本がどういう意味なのか、それを考えながら読んでいましたが私個人としては標本に興味を持ちながら、何よりも少し変わった恋を覗き見てしまった気がするようなお話でした。若いフレッシュな感じの恋愛ではなく歳を重ねたからこその少し重ためな愛の形を知れた気がします。

    0
    2025年08月06日
  • 薬指の標本

    Posted by ブクログ

    愛の話。
    苦しくて辛いはずの内容だけど、淡々と日常の様に過ぎてゆく感覚は読んでいてとても気持ちが良いです

    0
    2025年08月05日
  • 妊娠カレンダー

    Posted by ブクログ

    姉の妊娠中の記録が、妹目線で描かれている。赤ん坊の染色体を破壊させるかもしれないグレープフルーツジャムを毎日のように作り、食べさせる描写には震えた。ものすごく怖いのに、頁を捲る手が止まらなかった。

    0
    2025年08月04日
  • 博士の愛した数式

    Posted by ブクログ

    とっても高度な位置である意味普通の家政婦と博士の日常を描いた作品 いいお話だった。数学の部分もふむふむと思いながら面白く読めたし、教授の性格が最初は取っ付きにくいけど、子供を大事に思うとか言葉遣いとか、かなりあたたかく、数字に魅了された人柄が良かった。
    子供を登場させたのがかなり正解だったと思う。それと子供のあだ名をルートにして、最後まで本名を出さなかったのも大正解。おかげで真っ直ぐで純粋で元気なとってもかわいらしい愛されるキャラクターになったと思うし。

    0
    2026年03月14日
  • 遠慮深いうたた寝

    Posted by ブクログ

    「ほんの数ページしかない小説でも、一度読んだだけでは見えてこない世界が隠れている。活字の間からこぼれ落ちてしまう何かがある。安易に分かったつもりになるのは、読み手の傲慢さに他ならない。──だからこそ再読には意味があるのだと思う。百年でも二百年でも小説は、書かれた時のままの形でそこにあり続ける。にもかかわらず、読み手の成長や社会の変化によって、見せる姿が違ってくる。その時必要とされているものを、差し出してくれる。つまり小説は、作家一人の力で書かれるのではなく、読者の働きがあって初めて、成立できるのだ」

    0
    2025年07月30日
  • ホテル・アイリス

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    読者を選ぶ内容だと思いますが
    すごく主人公に共感しました

    変わらない日々、どうしようもない嫌悪と、母親(他人)殻否定される主人公、だけど今現状の世界から出ていくことはできない少女
    そんな少女はたまたま老人に恋をした、それが汚い罵り言葉から始まった事だが、きっとどこに彼女の希望があったのだと思う。
    罪を抱え最後にしたいと考えていた老人、そして変えられないけど終わりにしたい認めて欲しいと望む少女。
    二人が認め合える、愛し方というのは「破壊」しかないのかもしれない。

    自分がどこか消えてしまいたい、破壊されたいと望んだ時に読むと救われた本です。

    0
    2025年07月27日
  • ミーナの行進

    Posted by ブクログ

    赤毛のアンを彷彿とさせるようなでも数十年前の芦屋での美しい世界の物語。とても好きなジャンルだった。
    物語のどの登場人物も大好きになれたし、小川洋子さんの日常を美しく彩る文才のお陰でこの本を通じて心が綺麗に洗われた気がする。起承転結があるようなどんでん返しがあるようなタイプのお話ではないが、一気読みしてしまった。

    0
    2025年07月27日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    か〜な〜り〜前から
    読みたいなと思いつつ
    なかなか出会う事なく
    保留にしていた本
    (↑そんなんばっかり)

    初見でびっくり!という
    知識的な所は無かったけど
    おふたりそれぞれの
    知識や経験や諸々...が
    スパークしてる感じが
    とても良かった

    人間も「父親」になる
    というのは難しいように
    ゴリラも学んで経験して
    尊敬される「父親」に
    なるのだ...格好いい〜!

    人様にもおすすめしたい本!

    0
    2025年07月22日
  • ミーナの行進

    Posted by ブクログ

    友達に誕生日プレゼントでもらった本
    いつも読む続きが気になってドキドキとかどんでん返しとかではないけど、ミーナと朋子の思い出を読んでいると心が温まる感じがした。自分がしんどい時に読んだ部分でちょうどミーナが泣いていた。
    仕事帰りの電車で少しずつ読んだから時間がかかったけど、どんなに仕事で嫌なことがあっても帰り道が楽しみでこの1ヶ月乗り切れた。

    0
    2025年07月16日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

    Posted by ブクログ

    勝敗ではなく、宇宙を描くように、リトル・アリョーヒンにとってチェスとはどんなものかに焦点を当てていて素敵でした。
    「慌てるな、坊や」という言葉が印象的なマスターと素敵な丁度品とおやつの甘い匂いの中過ごした日々が好きです。
    最近から最後まで美しいお話でした。

    0
    2025年07月13日
  • ミーナの行進

    Posted by ブクログ

    思い出は色褪せないことを教えてくれる 
    芦屋の洋館、伯父さんの家で1年暮らすことになった朋子の日記のようなお話。読んでいるときに、脳裏に描き出される人物や景色や出来事が、なんていうか自分もそこにいたい!と嫉妬させられるほど生き生きとして素晴らしい。
    そして、時々「あれから何十年たっても」みたいな描写が入ると、そうかこの出来事は遠い昔のことか、と思いながらも、私にとっても決して忘れたくない色褪せてほしくない大切な思い出になる。読み終わりたくなかったが、読み終わったあとすごく前向きになれた。大好きな作品に仲間入り。

    0
    2025年12月05日