小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレまだ読み始めて数ページだけど早くも引き込まれている ミイラの女の子の話 それだけでぞっとするような展開にもなりそうなのにそこには静かな時間だけが流れている 少年の唇の話や象のインディラの話だって決して明るくはないのにどこにも悲壮感がなく自然とページを巡りただただ物語の中に吸い込まれていく
マスターが出てきたところでストーリーが少しずつ核心へと近づいていってて、今までのインディラやミイラが優しく彼を包み込んでる様子が伝わってくる
あぁそうか
そうなんだ
最後まるで予期してなかった終わり方で幕を閉じた
生と死
象と猫
チェスの海を渡る人々の話
いい本だった
ゆっくりゆっくり少しずつ余韻に -
Posted by ブクログ
岡山県で暮らしていた13歳の朋子が、家庭の事情で、芦屋の伯母さん家族の家ですごした1年間の話。
この小説には「本」や「お話」が度々登場します。私のお気に入りは、ミーナ作「2匹のタツノオトシゴのお話」です。三日月に腰掛ける2匹のタツノオトシゴの話です。
従妹のミーナと朋子
ドイツ人のローザおばあさんとお手伝いの米田さん
性格も育った環境も違う2人が、お互いを認めあい信頼する関係で、そのような相手がいることもうらやましいし、心があたたかくなります。
朋子が芦屋ですごした1年間は、人生にとってはほんの一部かもしれません。
でも芦屋で大切にされたこと、ミーナと姉妹のように暮らしたこと、ポチ子をか -
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チェス指しからくり人形の裏でチェスを指し続けた男のお話
以下、公式のあらすじ
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「大きくなること、それは悲劇である」。
少年は唇を閉じて生まれた。手術で口を開き、唇に脛の皮膚を移植したせいで、唇に産毛が生える。そのコンプレックスから少年は寡黙で孤独であった。少年が好きだったデパートの屋上の象は、成長したため屋上から降りられぬまま生を終える。廃バスの中で猫を抱いて暮らす肥満の男から少年はチェスを習うが、その男は死ぬまでバスから出られなかった。
成長を恐れた少年は、十一歳の身体のまま成長を止め、チェス台の下に潜み、からくり人形「リトル・アリョーヒン」を操 -
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幸せと、あたたかさと、切なさで胸いっぱいになりながら本を閉じました。
13歳の少女が芦屋の洋館で過ごした1年、彼女の見たもの、出会う人、嬉しいできごとや悲しいできごとが終始キラキラとした言葉で綴られています。
この日々が期間限定であると冒頭で語られているので、読み進めながら、終わってほしくないと心から願いました。
13歳の言葉では語られない、そこにあったであろう大人の複雑な事情や苦悩を想像すると、とても切なくてやりきれない気持ちになります。でもその大人たちが、彼女やミーナ、そしてポチ子に惜しみない愛を注いでくれたことが、この胸いっぱいの読後感を残してくれたのだと感じます。愛にあふれた1冊です。 -
Posted by ブクログ
小川洋子さんの世界へ。
優しく静謐でありながら、力強さも感じる世界観に、いつも静かに圧倒されている気がします。
「大きくなることは、悲劇である」
そう信じる11歳の身体のまま成長を止めた少年。
少年とマスターがチェスを指す、穏やかで濃密な時間がとても好きでした。
折に触れ、マスターの『慌てるな、坊や』の優しい声が耳によみがえって響く。
やがてリトル・アリューヒンとしてからくり人形を操るようになるが、老婆令嬢とのチェスの時間もまた特別で、文字を追いながら、息を潜め見守るような気持ちでした。
読み終えて、密やかで哀しくもありますが、誇らしく幸せにも感じる。
自分でもこの感情をうまく言い表せま -
Posted by ブクログ
舞台の上で、観客席で、誰もが自分自身の孤独と向かい合っている。誰も入ることのできないその場所でしか存在できないものを、ステージ上の輝きに、客席に落ちた暗闇に、見出している。そんな、自分だけの「舞台」との関係性をそっと覗くような短編集でした。
指紋のついた羽
縫い子さんと少女の距離が、ラ・シルフィードの浮いた爪先と地面の距離なのかも知れない。その空間は青年のことを拒否したけれど、少女に手紙を届けて、ボビンケースの中の縫い子さんを守っている。得難い断絶となって二人の世界を包んでいる。ちょっとすれ違って、でもちゃんと心を通わせあっている手紙のやり取りが長く続きますようにと祈らずにいられない。
ユ