小川洋子のレビュー一覧
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幻想的な長編小説。「博士の愛した数式」以来、小川洋子の長編はあまり読んでこなかったのだけれど、すごく良かった。
博物館技師の「僕」が訪れた幻想的な村。そこで「僕」は形見を陳列する「沈黙博物館」を作ることになる。形見を収集してきた「老婆」と、その娘だという「少女」、屋敷に代々仕えている「庭師」と「家政婦」とともに…。
相変わらず身体の表現、触感の鋭さが際立つ。老婆の皺とそこにたまる垢、昔一部を切除された歪な耳。少女のまつ毛や指先。体のパーツ一つ一つを慈しむように丁寧に表現する。
村の伝統や仕来り、不思議な涙祭りや、沈黙の伝道師、卵細工、森や屋敷の様子も、目の前に浮かんできそうなほど繊細。
そ -
Posted by ブクログ
上手い、の一言。
元々新聞の連載だったと言うこともあり、一つ一つがほど良い長さで、シンプルな表現が多く、それでいて濃度が高い。
日常の些細な出来事や作家活動の一環としてのあれこれ、愛犬の話。ふとした出来事を深く、でも、深過ぎて読み手が迷子になることがない程度に掘り下げて書いてくれているので、心にすんなり入り込み、心地いい。
こうやって本を書くのだな。こうやってアイディアを紡いで行くのだなと、一作家の裏側を垣間見れた作品。作家を志す人が読むのにもいいと思う。
本としてまとめられているので、立て続けに読んだけれど、新聞掲載と言う形は正解で、一つ一つエッセイをゆっくり味わうのに適している。
小川さん -
Posted by ブクログ
犬好きでタイガースの熱狂的なファン、どこにでもいそうなどちらかといえば垢抜けないおばさん。
レジに並ぶときはもたもたして後ろの人に舌打ちされないように万全と小銭の準備をし友達と食事した後に喋りすぎたのでは?と不安になる。
なるべく世間の端っこで生きるよう努力しながらおこがましい気持ちで小説を書いている。
でもね小川さん、神様はあなたの小説の才能に特別な計らいをされているのですよ、多くの人が感動するカレンの歌声のようにあなたの本を読むことは私たちにとって至福の喜びなのです。
いつか阪急電車でお会いしたらお礼を言おうと密かに思ったりしています -
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毎日の中でスルリと零れてしまいそうなひとコマを
大切に丁寧に書かれたエッセイたち。
不平不満をこぼさず、たくさんのことを
じっと我慢して超えてこられたお料理の先生の
謙虚な笑顔と誠実な人柄のお話。
大好きな須賀敦子さん、堀江敏幸さん、
柴田元幸さんの話もうれしく、
「枕草子」に対する想いに、そうそう!と
うれしくなったり。
人を結びつける本の話もとても素敵だった。
同じ本を読んでいるだけで、とても話が弾んだり
言葉にできない深い繋がりを感じたりする。
読書ツールでの出会いも然り。
たかが1冊、されど。
人との縁、結びつき、大切にすること、
丁寧に続けていくこと、楽しむこと。
たくさんの -
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酒井駒子さんの装画が素敵すぎて衝動買い。写真と実物は異なります。奥付の日付が今年の1月だったので、どうやら新装版になったようだ。
冷たい気配が漂う短編集。
あまりにも美しいものが、時に近寄りがたい雰囲気を纏っているのと同じような感覚だろうか。
ページを捲るたびに、行間に漂っている「死」の気配がぽろぽろと零れ落ちてくる。
淡々として端正な描写の奥で、「ああ、でも最後には、きっと恐ろしい裏切りが待っているに違いない」という予感に息が詰まる。
なんだかもう、「恐ろしいものを見てしまった」、という読後感だ。
短編集だけどちびちび拾い読みをしないで、ぜひ全篇をとおして読んでほしい一冊。
このただなら -
Posted by ブクログ
ネタバレ・無駄な行動が生物学的な強さであり、異性の評価を受ける。発展して美的評価に。独立して芸術に。
・言語の歌起源説。
・歌から言葉へは「一瞬」。
・ミラーニューロン。
・天才は刺激の過剰さ。子孫は残せないが芸術を残す。
・赤ん坊が泣くのは人間が天敵から身を護れるから。
・母と子供の言葉のコールアンドレスポンスによる、相互カテゴリー化仮説。
・言葉は情動を動かせない道具として進化した。
・フェルミのパラドックス……エイリアンが来ないのはなぜか……言語をもってしまうと文明は滅びるから。
・「つながる」こと自体の快感が独り歩きして、空疎なメールなどの言葉。
・統合失調症患者の「死にたい」……言い換えてい -
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Posted by ブクログ
『博士の愛した数式』の小川洋子さんと、脳科学者の岡ノ谷教授の対談本(文庫)
言葉の起源についての説や考察を、岡ノ谷教授の研究や近接領域の話題で盛り上げる。
唐突に繰り出される作家小川洋子さんのアイデアが、岡ノ谷教授を触発する様子が読み取れて面白かった。
やはり、言葉の探求は興味深い。
本書では、岡ノ谷教授の言葉の発生には”歌"が起源になっているという内容が、なんとも興味深かった。
言葉ってなんだろう?歌ってなんだろう?と想いを廻らせながら読んだ。
本書はもともと2011年4月に発刊されたもの。
対談は、東北の震災前に行われていて、震災後に発刊となった。
今回の文庫版の出版に当 -
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ああ、これは恐ろしく美しい。とても美しい、という意味でもあるし、恐ろしくて美しいという意味でもある。
日常と異界と間にあるはずの境界がふと揺らいでなくなってしまい、頭では「逃げなくては」とわかっているのに目も足も動かない。美しさに釘付け。
『博士の愛した数式』ではなく『薬指の標本』の方の、ファンタジーホラーな小川洋子。しかも円熟味を増して怖さに色気艶渋みが加わり、ある日ふと友人から「お前、最近痩せた?」と聞かれたら真っ先に「この本の精に取り憑かれたから」と思うくらい楽しんだ。
売れない中年独身女性作家が日々狼狽しこっそり人混みに紛れて誰にも気づかれないように何かしてくるだけの話しなのに。
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