小川洋子のレビュー一覧

  • いつも彼らはどこかに

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    世の中の片隅でひっそりと暮らしているひと。静かに寄り添う動物、または動物のかたちをしたもの。かなしみと小さなよろこび、現実かからそうでない場所に広がっていく、静謐な、著者ならではの世界。
    ディープインパクトとともに海を渡ったピカレスクコートに自らを重ねる冒頭の「帯同馬」、亡くなった弟を心の片隅におき身代わり旅人を請け負う巻末の「竜の子幼稚園」が特によかった。

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    2018年10月18日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    タイトルの「夜明けの縁をさ迷う人々」の場面を想像してみる…夜明け。眩しい光が差し込めるがそれを嫌い闇を求めてさ迷う人々。小説はその場面を切り取り彼らは永久に日の目を見ることがない。小川さんの作品から感じる世界にはどれも独特の時間軸が存在し時間がゆったりと流れるている事。人と人との微妙な距離感。見事なまでの五感の表現方。儚さ、切なさ、狂気、淫靡、孤独…といった感情を独特の時間の流れとともに読後に様々な想いを胸に抱かせてくれる。淫靡で狂気を伴っていてもそういう美しさもあるよなぁ…と感じさせながら。

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    2018年08月15日
  • 原稿零枚日記

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    日記風の小説ですが面白かったです。
    作家の「私」の奇妙な日々と、ひたすら原稿が進まないのがかわいいです。
    再読なのですが、今回は、好きなエピソードの、現代アートの祭典を見に行くお話が、西岡兄妹さんの作品のように脳内再生されて、更に好きになりました。ガイドさんのしわしわぶりが千晶さんの独特な老人で表れた、と思うとそのまま、あの世界に。楽しかったです。
    眠れない夜に図鑑を写すお話も好きです。「光の射さない深海で、少しずつ自分を失ってゆくのはどんな気分だろうかと考える。」

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    2018年08月08日
  • 科学の扉をノックする

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    理系の知識を付けたいと思い、色々読んでたけど、文系の私に一番しっくりきたのがこの作品。数式や原理原則がつらつらと書かれているのではなく、物語的に宇宙とか鉱物などの自然科学のことが語られています。ロマンティックです。

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    2018年03月02日
  • まぶた

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    とてもするすると読んでしまうのですけれど、この短編集も確かに小川ワールドでした。
    何度読んでも大好きな「詩人の卵巣」の眠りの描写が、心にひたひたと染み込みます。軽くはなりましたが、不眠症でもあるわたしの眠りの召し使いは何処に…。
    どのお話も死の予感がするのですが、「匂いの収集」の猟奇的な感じも好きです。
    「バックストローク」の、弟の片腕が体から離れていく描写も素敵。
    お話たちの薄暗さが心地好いです。日常を離れられました。

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    2018年02月22日
  • ホテル・アイリス

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    ネタバレ

    何気なく幾度となく読み返した作品。ふと読みたくなる。小川洋子さんの描くこの質感が好きなんだと思う。
    最初に読んだときは高校生だった。翻訳家の老人とおとなしい女子高生の関係はいわゆるSMというものなんだろうけど、高校生のわたしになにかが引っかかった。最近の再読で、ああ、それはその裏にひそむ二人にしかわからない究極の純愛なのかもしれないと感じた。

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    2018年01月23日
  • いつも彼らはどこかに

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    時間を忘れて一気に読破したくなるサスペンスフルな小説もいいけど、
    不思議でシュールでユーモラスな1つの短編の世界に
    1日の終わりにじっくりと浸るのも読書の醍醐味だ。

    本書はまさに寝る前に1話ずつ
    ゆっくりと読んで欲しい短編集。


    たちまち非日常にさらってゆく魔力と甘美な陶酔。
    残り香のように漂う異国情緒。
    小川作品に顕著な、
    物語の中、息を潜めた死の匂いとうっすらとした狂気。

    どの話も様々な動物たちをモチーフに、
    そこにしか居場所のない
    小さな場所に生きている人を描いている。


    スーパーマーケットで試食品のデモンストレーションガールをする女性は
    狭いモノレール沿線から抜け出せない自分の

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    2018年01月13日
  • 沈黙博物館

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    すごくしんとした気持ちになりました。
    爆弾事件と殺人事件のくだりは忘れていたので、こんなにミステリな作品だったっけ…と思いましたが好きです。
    沈黙の伝道師も好き。わたしもかれらにひっそりと語りたいです。
    遺品を展示する沈黙博物館、訪れてみたいです。
    わたしなら一体何を展示されるのだろう…。
    解説が、気になる堀江敏幸さんだったのも良かったです。この村はすでに命の無い人が住む場所、という視点は無かったので興味深く読みました。次に読むときは、このことを心に置いて読もうと思います。

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    2018年01月11日
  • 偶然の祝福

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    何度読んでもひっそりとしたお話たちが好きです。
    小説家が主人公で、彼女の書くお話が小川洋子さんが書かれてきたお話なので、私小説のような空気です。
    「時計工場」の最後の一文に、今回は目が留まりました。素敵な一文です。
    小川洋子さんと同じくらい大好きな川上弘美さんの解説も良かったです。川上弘美さんも、小川洋子さんの新刊が出たら必ず買うのか…わたしもです。

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    2018年01月06日
  • 刺繍する少女

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    何度目かの再読ですが、今回も面白かったです。小川洋子さんは長編も短編も大好きです。奇妙さや狂気が、どのお話からも静かに漂ってきます。時に残酷な描写でも、ひっそりと感じられます。これまで書いてこなかっただけで、「ケーキのかけら」が大好きなのを発見しました。「森の奥で燃えるもの」の、時間から離れた不思議な世界観も好きでした。「キリンの解剖」「トランジット」も好きです。最近、本格的に喘息を発症したので「第三火曜日の発作」を身近に感じます。こんなに密やかな時間は過ごしませんが…。

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    2017年12月09日
  • 妖精が舞い下りる夜

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    再読です。小川さんの「書きたい」という思いをあらためてしみじみと強く感じるエッセイでした。初期の頃のエッセイなので、あの小説はこんな思いで書かれたのだ、というところが興味深いです。出産と子育て、阪神タイガース…阪神タイガースの応援日記が、なんだか小川さんを身近に感じました。日々の切り取り方が、エッセイという形でも、小川さんだなと思わされます。面白かったです。小川さんはやっぱり、物語を紡ぐために生まれてきたのだなと思いました。これからも読みます。

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    2017年10月22日
  • ホテル・アイリス

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    年老いた翻訳家と少女の倒錯愛の物語
    冒頭の娼婦と翻訳家が揉めるシーンの
    ホテルの娘がマリ
    乱れた姿で逃げるように部屋から這い出て口汚く罵る娼婦に「黙れ、売女」と明瞭な言葉で圧した翻訳家に心が惹かれたマリ

    二人は再開するが彼はあの時の威圧はなく貧相で力なく弱々しかった
    彼女に送ってきた手紙の
    翻訳家の文字は異常なまでに乱れがなく
    綴る言葉は知的で美しくとても紳士的
    これから何度も書かれる手紙のシーンは大好きでした


    しかし、彼の島ではあの時の高圧的で異常な支配者だった

    ここまでのシーンに振り回される心地良さ
    ギャップの描き方が見事でマリが快楽へ没入していく様は圧巻

    醜く老いた翻訳家に瑞々

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    2017年08月24日
  • 沈黙博物館

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    久しぶりに胸を打つ話を読んだ。老婆の描き方が素晴らしく、魅力的だった。自分だったら形見は何になるのだろう、と想像するのも楽しめるというか。言葉にならない思いがたくさん溢れてきた作品です。読み終わった時、この本に出会えてよかったと思った。

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    2021年10月09日
  • 最果てアーケード(1)

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    小川洋子氏原作の漫画。小説も出ており、内容は概ね同じ。
    ただ、漫画では小説でぼかしていた所をはっきりと描いているので、両方読むとしたら先に小説を読むのがお勧めです。

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    2017年04月21日
  • とにかく散歩いたしましょう

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    エッセイでした。
    たくさんありすぎて、9割ほどは良かったのですが、ちょっとだけ普通な話が混じってて、ちょっと残念でした。

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    2017年03月17日
  • 沈黙博物館

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    象徴に満ち溢れている。

    沈黙。形見。博物館。冬。
    身寄りのないことが、逃げ場のないことが分かった主人公。高齢の老婆。バイソン。
    解説でホロコーストとの関連に触れているが、その文脈で行くと多くのことがなにかにあてはまる。

    そして、圧倒的で静謐な世界観。
    特に沈黙の伝道師の存在が不可思議で考えさせられた。
    死の象徴か。冷たくも温かくもない。常に意識すれば寄り添っているもの。あちらから語ってくることはない。

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    2017年01月31日
  • ホテル・アイリス

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    感動作ではない。ただ、息が詰まるような、それでいて生きている実感に乏しい場面が続く。SMも含め倒錯とはそういうものなのかもしれない。

    これからマリはどうなるのだろうか。
    物語は閉じたが、希望は見えない。

    これは少女のエゴの物語なのだろうか。思索は尽きない。

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    2017年01月20日
  • やさしい訴え

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    深み、静謐を描ききった、チェンバロと三人を主軸に廻る物語。小川洋子の傑作。演奏家の方の解説で、チェンバロという楽器の持ち味を知る。

    全ては失われたのに、永遠が見つけられた。奇跡としか言いようのない読書体験。

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    2017年01月17日
  • 刺繍する少女

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    善人として生きるのは、限界がある。誰もが両義的で、言葉にしてはいけない闇を抱えている。そういう短編集。

    どれも心に強い染みを残していった。

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    2017年01月14日
  • ボタンちゃん

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    小川洋子さん初の絵本ですって
    やっぱいいなあ
    2016課題図書(低学年)だったそうです
    特に劇的なことが起こるわけではないけれど
    子供の成長
    岡田千晶さんの絵が胸にしみました
    心がほっこりして本を閉じました

    ≪ ボタンちゃん 今はゆっくり 夢の中 ≫

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    2016年12月13日